ファヴニールの息吹…否、くしゃみでカルデアスに突っ込んだレフ。一同が呆気に捉われるなか、何事もなくレフの全身が沈んでいくのを見届ける。
「え、終わり?悪の幹部ポジションなのに」
「えっと、はい。恐らくは」
首を傾げる2人。実は残機があるとか、本体は別にいるとかいう雰囲気でもなく、少しずつ現実を受け入れている。
転身を解いたジークは汗を流しながら、ぐっと親指を銀時に向けていた。
「や、やったな!さ、作戦通りだぞ、マスター」
「う、うんうんん、良くやった。俺の指示通りだな!」
「いま思いっきりくしゃみしたよね。
めちゃくちゃ偶然の産物だったよね!?
レフとかいう裏切り者、自分のフサフサの髪の毛が仇になってカルデアスに突っ込んだよ!!」
いやいやいや、あれを作戦で誤魔化そうとするな。
格好良く決めたかったのは分かるけども。
『ふ、藤丸くん、それ以上はやめよう。格好つけておいて、くしゃみで死んだなんて笑い話にしか……プッ』
ロマニも吹き出しているように、レフ教授だったなにかの死因がくしゃみであることは揺るがない周知の事実。
いますぐにでも新聞でデカデカと載せてやりたい気分だ。
「レフ……」
「所長、あの……レフ教授はもう、私たちの知る人ではありませんでした。なので、その〜…」
などとテンション高めの立香から変わり、レフの裏切りを受けたオルガマリーにどう声をかけるか迷うのはマシュ。
俯くオルガマリーは、あたふたするマシュをチラリと見ると、頬を綻ばせてワナワナと震え出す。
「え、えっと、あれえ?」
肩が震えているのだが…その震えにマシュは首を傾げる。なんというか、怒りよりも別の感情しか見えないのだ。言うのなら、お笑い番組を観ているときとか、その類のものを知識から想像する。
オルガマリーはマシュの素っ頓狂な声に、ついに感情を爆発させた。
「ギャーッハハハ!
ざまあみなさい、私を今まで騙してきた罰よ!
自分が開発した地球で焼却されなさい!!!!」
「ほえ?」
「年中ニコニコして他の女性職員にも甘い言葉かけるわ、夜通し女性職員と資料作成に付き添うわ、挙げ句に男性職員とランチするわで私に独占されないんだもの。
そんなやつ居なくなって清々するっつーの!」
「うっわあ、独占欲の塊」
「しかも最後はまともじゃねーか」
オルガマリーの妬みに顔を歪める2人。マシュについては立香が耳を塞いだため聞こえていない。教育上宜しくないから正解だ。
「なによ、言いたいことあるなら聞こうじゃないの」
『薄々思ってはいたけど、所長って一途なんですね』
ロマニの褒め言葉には、かっここれがマギマリなら喜んで受け入れるんだけど魔弾と暴言吐く上司はキッツイなぁかっこ閉じる、という行間が入る。
「ロマニ、顔にこれがマギマリなら喜んで受け入れるんだけど魔弾と暴言吐く上司はキッツイなぁ、って浮かんでるわよ」
『げぇぇっ!?なんでバレたんだ!?』
「生死を彷徨うと地の文を読めるようになったの」
「すごいメタじゃないですか」
「冗談だって。あのゆるふわの考えそうなことなんて、お菓子かオタクのことだもの。……やっと、接し方が分かってきたのに残念ね」
賑やかな雰囲気は、オルガマリーが耐えきれずに溢れ出した涙で終わりを告げる。
皆んなが口籠るなか、ジークが聞く。
「…聞きにくいが、あの男が言ってたことは」
「うん、私、もう死んでるみたい」
「本当、なんですね………………」
事実として受け止めたことを微笑んで示す。
オルガマリーが認めるからには、もう誰にも生命が終わったあとに否定することなんて出来ない。
だから、立香とマシュはこみ上げる熱を噛み殺してオルガマリーと向き合う。
「マシュ、立香。ここにきて俯いてるようなら魔弾お見舞いしてやるところだったわ。その顔、覚悟、そして想いを忘れてはダメ。
誰かの犠牲を越えて行くんじゃない、人の想いを励みに立ち上がりなさい。何度でもね」
理不尽な現実に殴られて、握る拳を解くにはまだ時間が必要だった。けれど、未来を歩めない人から激励されて立ち直るのに一瞬も要らない。
「うぐ………えぐっ……………はいっ…!」
「忘れません………いつまでも、覚えています…!」
力強く、何度も頷いてオルガマリーの言葉を脳裏に焼き付ける。
そして、大気の揺れとともに別れは訪れた。
『………名残惜しいだろうけど、もう特異点が崩壊を始めた。全員、退去準備に入ります」
「えぇ、そうしてちょうだい」
ロマニも覚悟を決めて、自分の成すべきことに意識を切り替えた。
これなら大丈夫だと一息ついて、オルガマリーは銀時を見る。
「銀時、ここまでよく働いてくれたわ。きっとレフの後始末で忙しくなるでしょうけど、魔術師もびっくりの身体能力があるから心配してない。
マシュを……カルデアを終わらせたら呪ってやるからね」
「あぁ、任せろ。俺は頼まれた依頼はなんでもこなす”
「ふふ、そんな仕事があったのね。案外楽しそう。山籠りに飽きたら雇ってもらおうじゃない」
「そんときは会計頼むわ。あ、俺含めて給料も出してほしいんだけど」
「さ、最低です銀時!会社の利益からびた一文捻出する気概を感じません!」
「もしかしなくても自転車操業じゃないか!」
軽口を叩き合って、最後の一秒までオルガマリーの横で約束をする銀時。
「いやいや、そういう月も年に12回くらいあるだけなんだって。いやまじで」
「年中無給だろうがっ!」
「カルデアの労働環境以下です。
いますぐに転職をオススメします!」
「転職先なら安心なさい、私のカルデアで面接免除で雇ってあげる。年中無休でね」
ぎゃいぎゃい騒ぐ彼らを微笑ましく、そして忙しなく準備をしているロマニの視線で計器が振り切れる。
『これは……!急げ!早く藤丸くんたちを───』
晴れた表情を全て曇らせる風が吹く。
「よくぞ騎士王を倒した。
これで特異点冬木は定礎される」
気づけば佇んでいた影。
「えっ…?」
カルデアの計器が異常値を感知する。ロマニの緊迫した声が警鐘を鳴らすよりも先に、その影は和やかに収束する雰囲気を嘲笑う。
「苦痛と生きる道を君たちも歩むとはね」
見上げる銀時たち。
誰もが凝視するも、誰一人としてそのその影を姿形も捉えることは出来ない。まるで星でも見るような感覚…影との距離感がまるで分からないのだ。
「ぐぅ…これは…!?」
「立つことが…恐ろしいと感じます…!」
「ちょっと、どうしたの2人とも!?」
会話どころか、言葉を聞くだけで平衡感覚が奪われる感覚に陥る。そんな2人にオルガマリーが身体を支えようと寄るなか。
「──────誰だ、お前」
坂田 銀時は怖じけることなく対峙していた。
「その質問はおかしい。この世の誰もが私を知っているはずだ。全ての私の産みの親は君たち、人類史なのだから」
『い───、───て!』
モニターが砂嵐のようにブレ、ついには通信が切断されてしまう。
「おめでとう諸君。君たちは選んだ。無駄な足掻き、その一歩をいま歩み始めた。人間、愚かで臆病で、残忍で醜悪な
この異常事態は全て、影が落とした歪み。
対処する術はなく、立つことだけが銀時たちの抵抗となる。手を出せば死ぬことくらい、オルガマリーにでも理解できた。
「それでいい。じきに此処は崩れる。
長くはない生命、終末へと進む一秒をしっかりと堪能する権利だけは奪わない。己の幸福に気づくことなく、天命を全うするがいい」
「随分と好き勝手に言いやがる。騎士王さんの影で高みの見物してるオメーがこの街を燃やしたのか」
「答える義理はない。だが、レフの名乗りくらいは代弁しておこう。
彼は2015年担当。我らの王が人類を一掃するために遣わせた、人理焼却を担う一柱だ」
「我らが王…それに、人理焼却だって?」
「2017年以降は消失したのではない。カルデアを残して人類史は焼却されたのだ。
君たちが死なずとも、カルデアは刻を待つだけで2017年をもって灰と化す。本当に、幸せな種族だ……」
仮面着けたように表情が分からない影でも、声の抑揚だけは知ることが出来る。
(影は俺たちを…いや、人が死ぬことを喜んでいるのか?)
いま立たされる状況なら怒り浸透になるはずが、立香は影の主張に疑惑を抱く。さらに思考を加速させようとするが、意図があるかの如く重苦しく精神を掻き乱されて中断した。
「さようなら、ただの人間。解り合えぬ愚者たち。地球に永劫は無いと知りなさい」
「待ちやが、っ!?」
ついに、前に飛び出そうとする銀時の襟を掴んだのはオルガマリーだった。
「坂田 銀時。あのボロマントの言葉を受け入れるの?私たちは……人間の魂は朽ちるって、そう肯首する?」
「いいや、絶対に認めるもんかよ。誰よりも、所長…アンタの目が諦めちゃいないんだ。俺が負けるもんか」
「えぇ、よく言ったわね鈍間。いまの顔、最高に憎たらしい笑顔してるわよ」
銀時の意志を確認して、全員の前に踏み出す。
鼻を鳴らし、腕を組んで影を睨むさまは、人理保障機関のトップに相応しい出で立ちをしていた。
「何者か知らないけれど、よっぽど人間のことを嫌ってるようじゃない。けどね、私の部下を好き勝手に言わないでもらえる?
私のことを侮辱されたみたいで気に食わないから」
立ち去ろうとする影が足を止めた。
気まぐれか、興味が湧いたのか。若しくは、死の淵で気高くあり続ける少女の声が立ち去っても届くと思ったのかもしれない。銀時でも止められない帰還を止めた価値を背中で聞く。
「聞きなさい、”首謀者”!アンタが誰であろうと、レフのファッション並みにくっだらない企みはカルデアが阻止するから!」
これでもか!と右腕を伸ばし、人差し指を向けて。
「人理継続保障機関カルデア所長、オルガマリー・アニムスフィアが宣言します!
藤丸 立香、マシュ・キリエライト、そして坂田 銀時が王様気分の汚いど出っ腹に風穴を空けるわ!覚悟しろ!」
走馬燈を消し去る勢いで、影しか見えない敵に勝利宣言を終えた。
胸の奥に勇姿を刻み込む銀時とジーク。
立香やマシュは溢れんばかりの信頼に涙が出ていた。
「…………………………」
そして、影は全てを聞き終えると音もなく消える。
ボロボロと流す悔しさに浸る暇もなく、銀時たちの足元から光の粒子が発生した。ロマニの言っていた退去だと直ぐに分かると、ジークが最初にカルデアへと帰っていく。
時間差は僅かしかない。
銀時は2人の背中を押した。
「行くぞ立香、マシュ」
「ぎ、ぎんとき……っ」
「う、ぅっ……………」
最後にオルガマリーに視線を向けた立香。
「所長!」
喉から、自然と叫んでいた。
「俺、まだなにがなんだか分かりません!居眠りしてアナタに蹴り飛ばされて、ドクターたちとお菓子食べてたらあちこち真っ赤になってて!」
涙声で不格好に言葉を続ける。
オルガマリーはゆっくりと頷いて、最後まで聞き流すまいと涙ぐみながら視線を合わせ続ける。
「こんな場所に連れてこられたかと思えば人外魔境だし、所長も助けられない!
もうこんな想いはごめんだ!
絶対にやり遂げます。貴女の人生が無駄じゃないと証明する!役立たずで終わらない!だから、だから……」
マシュと2人で頷き合う。
2人同時に勢いよく涙を拭い、憎たらしいほどの笑みを浮かべて。
「「いってきます!!」」
元気よく出発の挨拶をして、銀時とカルデアへと退去していった。
「えぇ、任せたわ。私の分まで、しっかりと生きなさい」
所長が見せた笑顔は、涙を流す立香とマシュの背を押す。そして、それ以上に2人の心に不屈の覚悟を持たせる瞬間となった。
ここに、世界の垣根を越えた物語を綴る。
新しく、人理焼却に抗う戦いが始まる。
これは、銀色の侍と紡ぐ聖杯探索だ。
【次回予告】
「我が真名はジャンヌ・ダルク。カルデアのマスター、協力の申し出感謝します。共に、この絶望を振り払い未来を取り戻しましょう」
七つの特異点、最初のオーダー。
オルレアンの歪みがカルデアに立ちはだかる。
「我が名はジャンヌ・ダルク。オルレアンを焼き払い、忌々しい歴史を塵芥に還してあげる働き者の名よ」
白と黒、正義と悪意、救国者と復讐者。
死を望まれた生命が二つ、在るがまま対峙する。
「此処に忍の立つ瀬がある。
見ろ、俺があの月と見間違えるほどの器だ……」
「礼には及ばぬ。だが先ほどの戦いぶりを見て、無用と考えていた褒賞が欲しくなってしまった。そこな侍、拙者と手合わせ願う」
入れ替わる英霊と始める
2022年初頭、開幕‼︎
【原作不参加サーヴァント(諸事情含む)】
ジークフリート
清姫
エリザベート
ゲオルギウス
※ストーリーの都合により変更する場合があります。
【一章先行ピックアップガチャ開催】
一章公開を記念して、新規サーヴァントのピックアップガチャを開催します。
レア度:SSR(星5)
真名:地雷亜
クラス:アサシン
宝具:Art
「月を詠う」
敵全体の強化状態解除&強化無効を付与(1回)+自身に毎ターンスター獲得状態付与(3ターン)[Lv.1]〈オーバーチャージで獲得個数アップ〉&弱体状態解除
”滅私奉公”の体現者。主人に逆らう者は例え同胞だろうと殺す、伝説の忍。そして、最後には主人の首すらもその手の上に乗っていた。
誰も、彼の意図に気づくことなくこの世を去った。
ここから独り言なので、最後のアンケートまでトんで大丈夫です。
お久しぶりです、ひとりのリクです。
こうして、銀時も交えた聖杯探索は幕を開けました。
敵も味方も、ここから少しばかり変わっていきます。
1章でもすでに変化があります。各章タイトルにも原作との違いがはっきり見てとれます。
味方陣営に誰が入るかは、読者の皆さまは察しておられることでしょう!
オケアノス、ロンドンのタイトルを見たら思いつく人物がいるかと!幣作では原作との違いを楽しんでいただけるよう、工夫していきますのでこれからも読んでください!
最後に、アンケートを実施します。
前回、『イベントは読みたいですか?』の投票結果を踏まえて、特異点攻略の合間で幾つかのイベント(番外編)を開催する予定にしています。
アンケートで1番人気のタイトルは必ず執筆します。
アンケートの見方。
『○○-☆☆-』
○○:元にするFGOイベント
☆☆:イベントのタイトル(仮)
ここで注意していただきたいことがあります。
アンケートで1番人気以外も執筆する可能性があります。また、アンケートで1番だからと最初に書くとは限りません。ストーリーの進行を踏まえての開催となります。全てのイベントの執筆は難しいです。
どしどし投票待ってます!投票期限は今年中とします!
すみません、もう1つ。
今回、フォウは入れるとテンポ悪いのでリストラしました。
これからも執筆していきますので、どうぞよろしくお願いします!
気になるイベント名に投票してね!
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