fate/銀時も行くオーダー   作:ひとりのリク

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ジャンヌと地雷亜

ジャンヌ・ダルクが現界したとき、自身のクラスが裁定者(ルーラー)であることを自覚した。そして、クラス特性の殆どがサーヴァントに通じるか怪しいほどに弱体化していることも。

前情報すら入らない状態で周囲を見れば、すぐに故郷の地であることを理解した。なんてない、見慣れた風景が広がっているのだ。問題は時間、いつの時代でどういった聖杯戦争が起きているのか。見た感じ、あまり変わっていないことから生前と近い時代だと予想したとき。

 

『幻想種!?』

 

空を横切る影、ワイバーンを目撃する。

目が合ったと分かったとき、戦闘の火蓋は切られた。

ものの1分程度、霊気の出力低下により苦戦したが倒すことができた。手応えは通常の2割、聖杯からのバックアップは蜘蛛の糸もあれば良いほうだ。

 

『ひとまず、どこか街に…』

 

異常事態を知るべく足は自然と動いていた。

向かう先はドン・レミ。自分の故郷であり、戦場に旅立ってから1度も帰ることのなかった場所。人間として帰ることが叶わず、いまの自分には帰る資格すらないと分かっていながらも、向かわずにはいられなかった。

 

1時間ほどで到着し、そして故郷の前で。

 

『ーーー!ーーーーーーーー!』

 

声にならない悲鳴。

生前、それこそ火刑のときですら発さなかった激情を空に轟かせていた。

ドン・レミ。愛する家族のいる故郷は焦げて、灰黒に塗り潰されていた。

溶岩でも降ったのか。略奪の果てなのか。真相を確かめるべく、整わない心のままに地獄と化した故郷に足を踏み入れた。

 

戦場の跡地よりも無惨な姿が広がっている。

敵にだって情けの1つもある。だがここは心が篭っていない。情けがない。略奪にしても規模が大きすぎる。

アレでもない、コレでもないと現実と現象を結んでは解きを繰り返す。友人の家も、自分の家も、馴染みのもの全てがこの世から消え去っていた。

吐き気を堪える────せめて原因を突き止めねば。

ヒントはある────ワイバーンだ。

誰が召喚した────。

 

『……ほう、これは驚いた。

蘇った竜の魔女、手配書通りの顔だ』

 

その疑問を教えてくれたのは、灰の家から出てきた1人の男だった。彼はサーヴァントだ。ジャンヌの目に真名がぼんやりと映るが読めない。警戒心を剥き出すよりも先に、彼が腕に抱いた小さな子供を見て。

 

『あ、あぁ…。良かった、生きていた…。あの、子供を助けていただきありがとうございます』

『感謝…?

フランスを滅ぼそうと宣う魔女が、なにを言う』

『滅ぼす?それに、竜の魔女というのは…』

 

この時、戦闘に発展しなかったことをジャンヌは感謝した。子供を近くの街に送る道すがら、ジャンヌは男からフランスの現状について聞き知ることとなる。

 

男が地雷亜という名前であること。

時代はジャンヌ・ダルクが火刑に処されてから僅か十日後だということ。

そして、蘇ったジャンヌ・ダルクがワイバーンを引き連れてオルレアンを占拠。昨日、ドン・レミを巨竜によって壊滅させたこと。

 

『そんな…』

『名目上、フランス未曾有の危機はジャンヌ・ダルクの復讐ということになっている。どうだ、心当たりはあるか』

『私が火刑に処されたのは事実です。しかし……私は最期までフランスを愛していました。復讐など、あり得ないのです…!』

 

困惑したが、ハッキリと宣言できた。

フランスに対する復讐心などありはしなかった。ここまで歩んできた全てを受け入れてこれたのは、ひとえにフランス…そして故郷への愛があったから。

 

『分かった。ジャンヌ・ダルク、お前さんの言葉を信じることにしよう』

『…えっ』

『なにを驚く。助かった子を見て、泣くほど喜んだ姿を演技とは思えなかった。それだけのことさ』

 

地雷亜はジャンヌの言葉に頷いた。

証明する物はない。だが、地雷亜だからこそ理解できることをジャンヌはまだ知らなかった。月詠という弟子によって、地雷亜の最期が救われたのだ。サーヴァントとして現界した彼がジャンヌ・ダルクに手を貸すのは必然と言えた。

 

 

───

 

──

 

 

 

「どうだった、竜の魔女は」

「え…」

 

立香たちがレイシフトするまでの話に一区切りついたとき。水袋を喉に傾けた地雷亜がジャンヌに問う。オルレアンを焼き払う魔女になにを感じたか、いつまでも心を散らかしていては終わらない。

 

「彼女が何者なのか、私には分かりませんでした。ですがジーク君が言ったことは私の言いたいことだと思います。

そう信じて、竜の魔女を倒してみせます」

 

ファヴニールと対峙したときを思い出すジャンヌ。胸の前で右拳を握る横顔が俯いていた。ジークは彼女の瞳が決意で満ちていないことを直ぐに理解する。

 

「それは決定事項なのか?」

「はい」

 

だから投げかけた分岐路。ジャンヌはジークの意図を汲んだうえで即座に肯定した。

話をして解決するなら良かった。然し、竜の魔女は罪のない人々を殺めた。命は戻らない。

 

「火刑されたジャンヌ・ダルクは早々に消えるべきです。例え、私を語る偽物の所業だとしても」

「それは…」

 

ジャンヌの意志は確固たるものだ。焼き払われた自らの故郷を見て、二度と過ちを繰り返さないと誓った。別世界でジャンヌと旅をした者であるからこそ、終止符を打つ手を止められなかった。

 

「どっちが本物とか、どうでもいい。

どっちも納得できる答え見つけりゃいいさ」

 

ジークの想いを銀時が言語化する。

余計なお世話だと引っ込めた言葉にジークは目を見開き、ジャンヌは呆気に囚われた。

 

「いい加減なことを。

…いや、これが月詠を変えた男だったか」

 

頬杖をしながら答える地雷亜はゆっくりと夜空を仰ぐ。

柔らかい雰囲気が後押ししてジークたちは続く。

 

「竜の魔女には恐ろしいものを感じた。俺の知る、諦めの悪い男と同じ執念だ。

ルーラーは1人じゃない。遠慮なんて捨てて、俺たちを頼ってほしい」

「そうだよ。昼間だってジャンヌは出来てたんだ。きっと竜の魔女を相手にも出来るよ!」

「私もそう信じています。辛いこと、私たちも背負いますから!どうか気負いすぎないでください!」

 

横に並んで励ます彼らにジャンヌは目をパチクリとさせた。

 

きっと、気を遣っての言葉なら苦笑いしただろう。

綺麗な笑顔を見せて感謝を述べたかもしれない。

 

けど、彼らは背中を押すのでは足りないと肩を並べた。自分が一歩退がってしまえば、人々を虐げる彼女となにが違うというのだろう。

 

「竜の魔女に、私は答えを与えることができるでしょうか」

 

並ぶ者たちへ問いを投げた。

自分の苦悩を手に乗せる。独りで抱えたものを見せたジャンヌに、銀時は微笑んで答える。

 

「アンタがどうしたいかだろ。

持ってないモンは渡せやしないさ」

 

竜の魔女は許されないことをした。歴史の修正が出来るとしても、犯した罪は本人がいる限り残る。自分の分身かもしれない存在だとしても、ジャンヌ・ダルクはきっと罪を背負う。

自死をいとわないジャンヌの心は、ここにきてほぐされた。

 

「本当に、その通りです」

 

自決が遠ざかる。代わりに新しい風が吹く。

 

ジークたちの視線を受け止めたジャンヌは力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

「此処に忍の立つ瀬がある。

見ろ、俺があの月と見間違えるほどの器だ……」

 

ヴォークルールの広場から少し離れた石段の上。ジャンヌとジークたちが談笑する姿を眺めていた地雷亜が、寄ってきた銀時に放った言葉だ。

 

「お前、まさか…」

「勘違いするなよ。地雷亜の人生は1つも作品を生まずに完結できた。同じ過ちを繰り返して、月詠の努力を無駄にするほどバカじゃない。

興味が湧いただけの話だ。

師のいない月は、どこまで輝けるのか」

「…竜の魔女が来るとどうして分かった」

「それこそ愚問だな。オルレアンに潜入して動向を探った。忍びの得意分野さ」

 

銀時と地雷亜、肩を並べてパンを口に含みながら腹を探り合う。意図的なものではないが、お互いに生前のことを知るせいで雰囲気は良いものにはならなかった。

 

「お前こそ、なぜここにいる?」

「そりゃこっちが聞きたいね。知らねー天井があって、面倒な連中に絡まれたかと思えば世界救うことになった」

「道化が綴る詩みたいだな。俺も、まさか死後に月を見上げる日が来るとは思わなんだ」

 

2人して夜空を眺める。

あの時と似て、ここにも2つの月がある。無愛想な月と似た、苦悩を背負う姿。どちらも成長していく。きっと明日には2人の想像もしない場所へ行く。

 

「強いな、女は」

「どこでも、いつの時代もな」

 

そんな想いを零していた。

 

感慨深く息を吐いた地雷亜は、石段を降りて銀時に問う。

 

「いまは流されるまま、ひと時の戦いに身を投じている。お前はこの状況をどう思う?」

「知るか。俺はジャンプ読めなくて困ってんだよ」

 

銀時が訊こうとしていた本題。

月から落ち着いた疑問は宙で右往左往する。

 

「テメーはなにか知らないのか」

「あの、銀時。先輩がどこに行ったか知りませんか?」

「!?」

 

横から話しかけたマシュに肩をびくつかせる銀時。

 

「さっきしょんべんに行ってたぜ」

「…言われてみれば、あの小僧の気配を感じない」

「先輩…!」

 

気を遣って位置を変えた地雷亜も事態に気づく。

嫌な予感が走ったとき、マシュは駆け出していた。

 

「まさか!?さっき負けたばっかじゃねえか」

「油断するにはもってこいの条件だ…」

 

椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がった銀時。

ジークたちを呼び、立香の捜索が始まった。

 

 

 

 

 






投稿予定日から大幅に遅れてしまい申し訳ありません!

執筆時間が確保できたので投稿していきます!
今月中に1章を終わらせます!
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