fate/銀時も行くオーダー   作:ひとりのリク

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永続狂気帝国セプテム-民の先導者-
台風対策よりも特異点修復


 

 

瓦礫と焼却の世界を歩き回って、生存者がいないことに1人の男性が喉を噛み殺してため息を吐いていた。

なんて声を掛ければいいのか分からない。初めての体験に自分が整理をつけられていないんだ。

 

十六年生きてきて、昨日まで人々の活気に溢れていたはずの無人街を散策することはなかった。

………いいや、あって良いはずがない。今なら悲劇の主人公として名乗りを挙げても許されるだろう。だって、否定してくれる人がここには居ない。残された人間達は、資格ある人間に主人公になれとは言わない。

彼らの出す選択肢は2つ。人類史を背負うか、不明瞭な戦いを課されるか。

 

”なんて、真剣に言われても困りますよ”

 

いつか問われたとき、ドクター・ロマニにそう返事した。後ろではマシュが見守るなか、背筋を伸ばして胸を張る。

特異点Fから戻ってきて、人生の岐路に立っていることを自覚したとき。最初に思い浮かんだのはオルガマリー所長の背中だった。

 

”所長の背中について行きたいと思っているので”

”……ありがとう、本当にありがとう”

 

微力でもいいから意志を継ぎたかった。

 

「────あ、ゆめか」

 

約1ヶ月ぶりの特異点修復の朝。

あれから、所長の夢を見ることは少なくなった。けど、やっぱり特異点修復の前夜だけは必ず夢に見る。

ここまで来たら恒例行事と言っても差し支えない。守れなかった悔しさを思い出して、次に自分の背中を押してくれた想いに励まされるんだ。

いつまでも見守ってくれている実感が湧いて、絶対に負けてたまるかって気持ちのまま特異点修復に臨める。

 

「よし、やるぞ」

 

藤丸 立香は負けられない。

また1つ、大切なものを背負う旅を始めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

世界でも稀有な環境下にある職場、カルデア。

 

世界が燃えようと生き残る職場の食堂、ど真ん中で。ロマニ・アーキマン……愛称ロマニは職員の健康に配慮した太陽光灯を仰いで涙を流していた。

 

「日本の和菓子には無限の可能性がある。昔立ち寄ったとき、大福を食べながらそう思ったよ」

 

ロマニの反対側に座り、両手を世話しなく動かしているのは坂田 銀時。突然始まったロマニの和風語りに耳を傾けて、その想いを聞き届けようと真剣な眼差しを向けていた。

 

「餡子を包む白い皮、アレはお米を潰して薄く広げたものと知ったときの感動はいまも覚えている。日本の主食をまさか甘味に合わせるなんて……どうやったらその発想に至るのか、開発した御仁が英霊として召喚されたら詳しく話を聞きたいくらいに僕は胸に刻み込まれたんだ。大福の素晴らしさを」

 

そう涙を流してひと口。

箸を動かして、手元の丼から大福のように色めいたソレを口いっぱいに頬張る。

 

「銀時君、これはダメだよ…………」

「────いいんだ、しっかりと味わえ」

 

丼を持つロマニの手が震える。

銀時はその様子を満足そうに見たあと、優しく歓迎の言葉を贈った。

 

「白米に餡子乗せなんて美味しいに決まっているじゃないか!!これは冒涜だよ、大福の開発者への!!

この味、この手頃さ、そしてコスパの良さ!僕は歴史の分岐点に立っているんだね!」

「お前なら分かってくれると信じてたぜ?元から素質があるとは思ってたが、まさか俺についてこれるとは………。

あれ、もしかして俺、特異点になってる?」

「うん、間違いないよ。特異点発生を解明する偉大な発見をしているかもしれない!!」

 

両者の手元、丼に盛られる具材はたった2つ。

ほくほく白米と缶詰のなかの小豆。

聖杯の泥に食わせるくらいの用途しかない食事、宇治銀時丼同盟に1人の猛者が加入した。

 

「「こんな特異点なら生まれて良いよね!!」」

「おりゃあ!」

 

ダ・ヴィンチの微小特異点修復パンチが2人の頬に炸裂。

 

こうして、人理焼却は解決しましたとさ。

めでたし、めでたし。

 

「なにも終わってないよ!?」

「そうとも。おっさん2人の殺人甘味開発を止めただけさ。監視室の特異点メーター(適当)が振り切れたときは何事かと思ったよ」

「レオナルド…!いくらキミでも、この宇治銀時丼を封印指定させるわけにはいかない!」

「するわけないだろ、こんなもの」

「なんだとてめぇ!

する価値もないってか?ふざけんなコラ!」

「めんどくさっ!怒り方が酔っ払いのそれだよ!」

 

宇治銀時丼を片手に抗議する2人の真横。

箸を動かしていたジークの顔が真っ青になる。手元には宇治銀時丼。どうやら律儀にも2人に付き合ったらしい。

 

「うぷっ…。まさか血を飲み込むより…きつい味がこの世にはあるのだな。いい体験をした………。

………今日はこの髑髏烏帽子を倒せば良いのか?」

「違うよジーク。台風対策をするんだ」

「それも違います、先輩。

次の特異点を修復しに行くんです」

 

意識が飛びかけているジークをこちらに引き戻しながら、その原因である宇治銀時丼に目を向ける。

……やっぱりこれは無理。食べ物に見えない。

銀さんが食事当番のときに出てきた日、カルデア職員の半数が倒れた伝説の食べ物。ロマンは治療に専念していたから食べられなかったらしいけど、まさか適合できるとは思わなかったよ。

 

 

───

 

──

 

 

 

場所を移って管制室。

 

「さて、今回の特異点の概要もスルーするよ。モタモタしてると読者離れに繋がるからね」

「別にいいだろ、そんくらい。こちとら台風が休日出勤してるせいで危うくこっちも仕事するとこだったんだ。

誤魔化すの大変だったんだぞ。千利休が来るから忙しいってことで誤魔化せたけどさ」

現実(さくしゃ)の話も原作の話もいまは置いておこう。

私が再周知しておくことは1つ。銀時君のいた世界についてだ」

 

ダ・ヴィンチが端末を起動する。

するとホログラムが宙空に映し出される。

それは簡単な見解図だ。俺たちの世界、銀さんの世界を別軸に置いたものになる。

 

というのも、銀さんが別世界の人間だと知ったのはオルレアンを定礎して少しあとのこと。

地雷亜という忍びはこちらには存在しない。だけど銀さんは知っていたことで、ダ・ヴィンチが個人的に事情聴取をしたとのこと。銀さんの過ごしてきた世界を聞いたとき、流石に全部は信じられなかった。

あまりにも情報量が膨大で、まだ全部は聞き出せていないと言うし…。

 

ま、俺はちょっと無茶をしたから2日寝てたんだけどね。

 

「宇宙人……いや、天人が来訪した世界。我々の知る江戸とは似ても似つかない人物。銀時君の世界を”パラレルワールド”と呼ぶべきか、はたまた”空想世界(物語)”に分類するかは未定だ。

現状では”人理焼却”が起こったゆえの”空想交錯(エラー)”と私は予想している」

「レオナルド、その話は長すぎるから後にしてくれ」

「はいはい、分かったよ。ちょっと先だししたかったんだ、伏線ってやつさ。

…銀時君から聞けた情報はざっと3割ってところだ。

特異点で君の知り合いに会ったときは判断を任せる」

「危険人物たちは既にリスト化しているのを読んでもらったね。ある程度は敵味方の判断に使えるけど、オルレアンでのマルタのように聖女が敵になるケースもある。

皆んな、十分に注意してくれ」

 

2人の言葉に全員で頷いた。

 

そして、説明も終わり俺たちはレイシフトを決行した。

 

 

 

レイシフトが成功したことを確認して、ダ・ヴィンチは独り呟く。

 

「坂田 銀時。

なぜマスター適性No.47に登録されている」

 

異邦の侍へ投げた問い。

本人には決して聞かない嫌疑。

触れて開けてしまったとき、なにが起こるか分からない。割れ物を羽毛で隠すように、聞こえない刻に本人の顔を見ながら問う。

 

「前所長が招いたのか、それとも割り込み?

もしくは────運命。……な〜んて、ね」

 

スリルに浸る声はロマニにも聞こえはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜とある男の独白〜

 

あぁ、あそこにも戦禍は刻まれていた。

未解決のまま次に来た。きっと、答えても正否には至らない。外堀ばかりを埋めても、肝心の居城は空の上だ。

冬木の状況とはまるで違う。■■の余力を削るための準備を整えていた。

1つの肯定を。残りは否定を携えて駆け回っていた。それでも、結末を焼き尽くすには質が足りない。

 

「なぁ■■、死ぬ覚悟は出来たか」

 

焼け爛れた口調で否定する。

積み重なった禍根をなにも解決()たせていない。いま身体を休めろと言うのは、永遠を一瞬に変えろと神に縋る行い。

俺は、あの丘で**を────。

 

「…………なんだっけ」

 

思考が途切れる。

何か、大切なことを思い返していた気がする。

記録に残らないものだ、忘れたのなら唸っても仕方がない。思い出したときにまた考えればいいから。

 

 

 

 

 

 










お久しぶりです。
台風が近づき、ご自宅で安全に過ごされているかと思われます。
どうしても時間が余ってしまう読者さまへと、予定を早めてセプテムを投稿していきます!
あくまでも前半パートのみになります。ギリギリ下書きしているので、現在進行形で執筆中です。完成次第、直ぐに投稿します。
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