fate/銀時も行くオーダー   作:ひとりのリク

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すべてのローマはブリーフに通ず

 

 

 

「思いっきり知ってる顔なんですけどオオオ!?」

 

本来、将軍の座に相応しいとされる、日本一のもっさりブリーフへ向けて。世界の垣根を越える勢いで、本日2度目の銀時の絶叫が轟く。

 

『えええええ!?あのネロ皇帝と顔見知りって、銀時君いま何歳!?』

 

「何歳もなにもネロとかいう名前じゃないからね!?

親の顔より見てるよ、あのブリーフ!」

「貴様、皇帝に向かってその態度はなんだ!」

「ブリーフ一丁のお出迎えより失礼なことあるか!」

 

ローマ兵の指摘に青筋を立てて言い返す。

 

「なんと!その親しみの篭った声、余が忘れようとも解る。同じ志しを持ち、肩を組み合う友に違いない!」

「いや、あんた将軍!おれ侍!

てか茂茂、お前また記憶無くしてんのかよ!」

 

銀時が指差しながら突っ込んだサーヴァント。

江戸幕府十四代征夷大将軍、徳川 茂茂。

堂々とブリーフ一丁で立ち尽くすその姿、あまりにも似合い過ぎている。むしろ服を着ろと進言するほうが間違いだと思えてきて、突っ込むのをやめた。

 

「見ての通り、茂茂公は一時的な記憶障害となっておられる。皇帝ネロ失踪のおり機能が麻痺したことでローマ兵の不満が積もってな。

ネロ皇帝を模したサンドバッグが欲しい。ローマ兵のそんな想いから、ブリーフを履かせたサンドバッグが作られたのが発端だ」

 

『いや意味が分からないよ!?

なんでネロ皇帝とブリーフがイコールになってるの?普段どんな格好してるんだい……』

 

ロマニの疑問に伊東が答える。

 

「ネロ皇帝は普段から薄着でね、ローマ兵の鬱憤が溜まっていたのだ。そこで、とある職人に依頼して、ブリーフを履かせたサンドバッグを作らせて鬱憤を発散していたようだ。これが民衆に知れ渡り、たちどころに大盛況。

芸術家たちも加わり、ブリーフはサンドバッグからネロ像へ。興味は石像から神殿に移り、支柱や入り口に使われ始めた。やがてブリーフの彫刻は芸術的価値が認められ、民衆に浸透したのだ」

「いや殆どブリーフにしか興味向いてないけど!?」

「えっ、ローマ市民みんなブリーフでした?伊東さんの話に集中してて気づかなかったけど…」

 

『これはっ!』

『どうしたんだ、レオナルド』

『ほら、前話の茂茂公と会う直前の地の分のところ。

”一瞬だけ引き絞られた雰囲気に皆は気づきながらも、聞き返すことはせず。ローマ帝国の賑わうブリーフのなか、皇帝のもとへと歩いていった。”

ここに賑わう町、とかじゃなく。ブリーフと書いてある』

 

「いや分かるかアアアアアア‼︎

こんなもん誤字と変わらねえよ⁉︎

読者皆んなスルーか誤字報告してくるよ‼︎」

「知らなかった。

ローマではブリーフが一大ブームとなっているなんて…」

「私もです。現地に行かなければ分からないものですね。勉強になります!」

 

『やめて2人とも!そんな文献1つもないからね!絶対に偽ネロ皇帝の仕業だから!!』

 

「なにか勘違いしているな、カルデアの者。ブリーフが流行ったのは茂茂公が召喚される前の話だ。

断じて我らの将軍は痴態に塗れてなどいない」

「ならなんでローマにブリーフがあんだよ。ブリーフってこんな時代からあったのか?」

「それはな────」

 

”あっ、サンドバッグのパンツ持ってくんの忘れた。

……………ま、俺の替えのブリーフでいいか”

 

「と、サンドバッグ職人……もとい平賀博士が履かせたブリーフに触発されたものと予想される」

「お前が発端かいイイイイイイ!!!!

こんなとこでなにしてんだあのクソジジイ!!」

「無論、彼を止める者もいた」

「だ、だろうな。普通の神経してたら止めるだろ。んで、誰なのその健常者って」

 

”おい源外、サンドバッグにブリーフとはどういう了見だ。飾り付けはメイド服だろう”

 

「伍丸博士だ」

「お前も召喚されてたんかいイイイイイイ!」

「伍丸博士は最期までメイド服を推していたが、残念ながらメイド服がブリーフに勝てる道理はないに等しい。

メイド服は完敗だった……」

 

『勝てる道理しかないよね!?

メイド服がブリーフに負ける世界なんてここだけだよ』

 

「こいつら仲が悪いことは知ってたが、こんな低レベルのイザコザしてたのかよ」

「そんなこんなで、ブリーフがローマに浸透していってな。伍丸博士は試行錯誤の末、サンドバッグと龍脈を繋げたんだ」

「…………………まさか」

 

 

───

 

──

 

 

 

 

サンドバッグを殴って鬱憤を晴らすローマ兵の前に、その男は突如として現れた。

 

「あぁ?なんだお前ェ。

一丁前にブリーフ履きこなしやがって」

「余はネロ。ネロ・クラウディウスだ」

 

ローマ兵の詰所に変質者同然の姿で現れた茂茂。

この時、ブリーフ一丁の姿でネロ皇帝を名乗るジョークが流行っていたことが不幸中の幸いと言えよう。

 

「ぶはははははは!!!」

「確かに皇帝レベルでブリーフは似合ってるけど!」

「おいおい、ブリーフが似合うからって俺らのところに乗り込むかよ!」

「ほら、ネロ皇帝ってんなら、皇帝らしさ見せてくれよ!」

「それは拳を痛めてまで殴るものなのか」

「そりゃちょっとは痛いけどよ、布を巻いて殴ればスカッとするんだぜ。よし見てな?ほらこうして………思いっきり!!」

 

少し皮膚が破けるが、ローマ兵として強くなる手段ならば喜んで受け入れる。まだ若きローマ兵は過ちに気づかず、ブリーフのサンドバッグへと拳を振り抜いた。

 

「サンドバッグのように座して民の不満が晴れるのなら、皇帝としていくらでも甘んじよう」

「!?」

 

ローマ兵の拳を受け止めたのは茂茂の掌だった。

ただ悲痛に思ったのならローマ兵は激怒しただろう。

 

「然し…このやり方は間違っている。みなの声に黙するだけの皇帝(サンドバッグ)は終わりだ」

 

茂茂はローマ兵の……この場にいる彼らの拳を見て涙した。自らの記憶がなくなり、誰かにネロと揶揄われたことからネロ・クラウディウスという名前と勘違いしてしまった。

それでも、茂茂の涙を見たローマ兵たちの心に届く。

 

「民の想いに共感し、みなの拳が痛まないように尽くす。これまで道を指し示してやれない愚かな皇帝に……拳の痛みを分けてはくれぬか」

 

言葉なら幾らでも吐き出せる思いやり。

何度と聞いてきたものだけならローマ兵たちが傅くことはなかった。

 

「────ネロ、皇帝」

 

1人が認める。男の瞳に、主従の真髄を見たのだ。

 

「………なんてお方だ」

 

愛おしく拳を包むその姿に、また1人が認める。

 

「万歳!ブリーフ万歳!」

 

そして、誰もが認めた。ブリーフ一丁の男を見て、轟々しく、この場の誰よりも薄着で立っている王にローマ兵は立ち上がったのだ。

 

 

 

──

 

───

 

 

「そうして混乱するローマを纏め上げ、一夜で皇帝の座に就いた。流石は江戸を統べる征夷大将軍であられる」

「これ下着がブリーフになっただけだよね!?」

「いまではもっさりブリーフがローマのシンボルになりつつある。見てみろ、土木、青果店、浴場の番頭に至るまで、あらゆるところでもっさりブリーフが浸透している」

「ただの変態国家じゃねぇか!

なんでブリーフにエプロン掛けで接客対応!?」

「ふっ…分からないか、坂田銀時。

あれがローマの絆というものだ」

「そんな絆があってたまるかアアアア‼︎」

「なんだ、お前たちにはブリーフの前面から出ている絆のイトが見えないのか。…………ふっ」

「なんで『分かってないな、こいつ』みたいな反応されてんの!?伊東お前知らねーかもしんねーけどよ、将軍のブリーフから出てんの絆じゃいからね?あれもっと汚いナニかだから!

取り敢えずお前は水着プール回観て出直せ!」

 

銀時の反論に伊東はキレた。

生前の最期に見えた絆の糸を否定された気がしたからだ。…本当に気のせいなのだが、説得も聞かずに刀を抜いて襲いかかっている。

 

「まあ…皇帝交代の経緯は理解した」

「けど、本物の皇帝ネロはどこなんだろう」

「偉いし、風呂知ってるし、薄着だからどっちも同じだろ」

 

『ブリーフ一丁の変態に乗っ取られるローマ皇帝って大丈夫なのかい…。

ん、レオナルド?俯いてどうしたんだ』

 

ロマニが首を傾げる。

次いで聞こえる奇声でロマニはひっくり返った。

 

『すごい!こんなイカれた発明家が近くにいたとは!

なあ鴨太郎くん、その2人を私に紹介しておくれよ。

いまどこに居る?銀時くん、至急向かってくれ!』

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ。

自身を性転換する変態………イカれたサーヴァント。銀時は彼に平賀 源外や伍丸弐號の話をしているため、一挙両得の状況に鼻穴をふた周り広げられずにはいられなかった。

 

モニターいっぱいに広がる鼻穴に、銀時と揉める伊東は動きを止めると。

 

「……………………退去したよ」

「!?」

 

レオナルドの問いに非情な現実を返した。

 

『なに。どういう事だい』

 

「伍丸弐號、並びに平賀 源外はアルテラの破壊活動によって霊気を砕かれて退去している。

門を入る直前、大きなクレーターを見たか。アルテラの宝具、星の涙、軍神の剣(ティアドロップ・フォトンレイ)による殲滅の跡地だ」

 

『………確かにあるね。

映像を見返したら、村規模のクレーターを見つけた』

『アルテラか。そんな英霊は存在しない。かと言って銀時君も知らないときた。記憶を無くした茂茂公と関係があるのかな』

『伊東くん、次は平賀博士たちがしていたことを教えてもらえる?』

 

「伊東、ここは任せてよいか」

「えぇ、大丈夫です。お出かけですか」

「これから城下町を視察しようと思っていたのだ。護衛として彼らを連れて行きたい。付き合ってはくれぬか」

 

ネロ皇帝もとい、茂茂の気遣いによって、沈んだ雰囲気から銀時たちは連れ出されることとなった。

 

 

 

 

 

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