fate/銀時も行くオーダー   作:ひとりのリク

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大浴場での防衛戦

 

サーヴァントのクラス、バーサーカー。

理性を失う代わりにステータスを上げる、与える英霊を間違えればその技能を失ってしまうクラス特性が特徴だ。召喚する英霊が戦力として見込めない場合、または逸話として狂った人物が当てはまる。

 

「あんた死人を黄泉に帰す良い案内人だったろ。

なんでバーサーカーなんだ。つか理性あるじゃねえか!」

「俺が裁定者(ルーラー)を名乗るには早すぎる」

 

ならばお岩、そしてタゴサクはなにをもってバーサーカーのクラスとなったのか。

答えは両方である。

ステータスが低く戦闘にはスタンドを必要とするお岩、死後も仙望郷を守り続けたタゴサク。2人にはうってつけのクラスと言える。

お岩・タゴサクのクラス特性、狂化は”C”。このランクならば理性が持っていかれて当然である。2人が理性を欠片程度失うだけで済んでいるのは、タゴサクの第二宝具と狂化を紐付けし、ロックを掛けているからだ。

第二宝具は死者を取り込み、魔力に変換する。サーヴァントも該当し、取り込んだ数だけ狂化に侵される。

 

「俺の理性だなんだ言うが、お前こそ強すぎだ。

徳を積んだからって強くなるなんざ、異世界転生に影響されすぎじゃねえか?」

 

十数秒の近距離戦を経て、膝を着いたタゴサク。

第二宝具がタゴサクの脳裏にチラついたのは、辰五郎に押され始めていたからだ。

 

「あぁ、これか?

連れていけと煩いんでよ、ちょいと霊気に居座らせてやってんだ。いわゆる複合サーヴァントってやつ」

「……どのみち、流行りってわけか」

 

複合サーヴァント。

自身の霊気に複数の英霊を取り込んだサーヴァントのことだ。辰五郎の口調から一騎を入れているように聞こえるが、タゴサクは違うと見抜いた。

 

「お前に着いてくる物好きが二騎もいるとはね」

「うへぇ…黄泉の番人してるだけあるわ」

 

鼻の中に溜まる流血を圧し出して、後ろ目に立香たちを見る。宝具によるステータス強化込みとはいえ、全員ギリギリで踏ん張っていた。

 

「よそ見とも思ってないだろうが、今の俺を見誤ったな」

「おいおい、本気か?」

 

見る、と言っても視線を逸らしたわけではない。あくまでも振動や声を拾っただけで、警戒はそのまま…のつもりでいた。

しかし、気配も察知出来ずに懐に入られた。

タゴサクの知らない辰五郎の動き。距離を無くしたような技を見破るのはタゴサクには無理な話だ。

 

「悪気はないんだ。ただ、俺も仕事で来てる」

 

よそ見は手土産。

戦に生き、戦で死した者たちの掟に染まれなかった。

 

「悪く思うなよ」

 

いや、そもそも。

寺田 辰五郎は問答無用を実行する人間ではない。

これは、確実に別の側面に影響されている。

複合サーヴァントの強みに気づいたときは手遅れ。辰五郎の十手は翻り、タゴサクの胸を目掛けて飛び込んでいた。

 

「悪く思うなよ」

「───っ!?」

 

十手の先が上空を眺めている。

アルテラが破壊した跡から覗く陽を仰ぎながら、血の一滴もない事実に辰五郎の思考は一瞬だけ停止した。

いま、自分が吐いたセリフを返した人物を見ながら。

 

「俺はな、家に帰るために戦ってんだ。

他人を自分の布団に寝かせるヤツの気が知れないね」

「テ、メっ────」

 

十手よりも銀色に輝く視線を浴びて、坂田 銀時の仕業に舌を巻く。打ち上げられた右腕、固く握り締める右腕。どちらが次の一撃を見舞うか、素人でも分かる。

サーヴァントと人間の垣根を軽々と飛び越えて、侍の木刀が不貞の岡っ引きの横面に叩き込まれた。

 

「ギン、良く帰ってきた!」

「俺の手、スタンドに掴まれた!まじで勘弁して!?」

 

辰五郎を吹き飛ばした光景に興奮して、タゴサクがニカッと笑みを向ける。銀時はスタンドに触れられた嫌悪感をぶつけて応えた。

背後では熱線が舞っている。ここで銀時が倒すべき相手は1人に絞られた。

 

「つーわけよ、辰五郎。

ここは裸になって背中流し合えば許してやるぜ」

「遠慮しとくわ。ここには風呂上がりに寄る良いスナックがねえんだ」

 

乾いた返事にタゴサクは目を瞑る。

辰五郎の言葉、声を聞いて静かに失望のため息を漏らす。

 

「うーし、そんじゃ公僕殿ォ。痴漢と覗き、あと建造物侵入罪と人理焼却加担罪で逮捕するっ」

「あぁん?後輩のクセに生意気言いやがる。

こいよ、公務執行妨害でオメーら全員、死刑だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

坂田 銀時が気を失って手助けは望めない。

立香は後ろでまぶたを落とす銀時を見て、足りない戦力以上の重圧を両脚に感じていた。

オルレアンの時のように、分断された恐怖とは別物。意識がない大切な仲間を、この特異点最強の敵から守らなければならない。避ける行動1つに注意しなければ、銀時たちの身体は破壊神によって散り散りになるだろう。

 

「その文明を破壊する」

 

アルテラは3色の剣をゆっくりと天に掲げて、悠然とこちらを見下ろす。悠長に構える余裕を有り難いと思った。

1秒未満の空白は心を落ち着かせるには十分だから。

 

「マシュ、任せた」

「はいっ───!」

 

初手もクソも自分にはない。サーヴァントの行動を読むのは難しいが……アルテラは単純だ。子供のように、興味が強い方に飛び込んでいく。だから、マシュに出てもらった。

予想は的中し、アルテラの興味がマシュに集中する。だが、攻撃方法は想像の範疇を越えていた。

 

「まずはお前だ」

 

掲げた剣を天使の降誕の如く優しく下ろして、3色の閃光が直線を描く。熱量を収束した3色の魔力がマシュの大盾を押し退けた。

大浴場のタイルを踏み割りながら耐えたとき、衝撃で身体が硬直したことに気づく。

眩い輝きを放つ剣の魔力量が一段と上がる。破壊神は真名解放に最も近い魔力を剣に与え、大盾ごと破壊する暴挙を呆気なく実行した。

 

「早計だな………っ!」

 

破壊衝動に割り込んだ蒼い息吹。

両腕に纏う大英雄の鎧を駆使し、破壊神の一撃をその細身で弾き返す。

 

「ありがとうございます、ジークさん!」

 

破壊衝動が進む行方に彷徨うなか、動ける程度に回復した手足を無理やり動かしてマシュが前に飛び出した。ボディ打ちのように大盾を構えて、アルテラのリバーへと打ち付ける。

 

「っ────」

 

アルテラの目蓋が凹み、視界の上側が沈んでいく。死角となった上から、踏み込んだジークの剣が大英雄の両腕ごと落とされる。

 

「そのようだ。次は気をつける」

 

大英雄の両腕を載せた剣を、破壊神は引き戻した剣で押し留めた。瞬間的に英雄ジークフリートの筋力を引き出して、あと1ミリ剣を落とすことが出来ない。根本的に出力が違うことを見せつけられた。

アルテラの瞳に力が入る。次の瞬間、魔力放出とともにジークの身体は吹き飛ばされるだろう。

 

「反撃は命取りだ。立香ッ‼︎」

 

ならば、その算段を一瞬だけ先送りにする。

自身の両腕、変身した鎧に魔力を叩き込む。魔術回路を行使して、魔力放出の妨害は成功する。

ジークの珍しい叫び声に合うように、既に立香の右指はアルテラを捉えていた。

 

「ガンド!!」

「ガ──!?」

 

アルテラが気づいた時にはもう手遅れだった。

破壊神の身体に付着する呪いのマスカラ。再び目蓋は重くなり、身体が軋んだように自由を奪われる。視界を映えていく苦しみから逃れるため、空を仰いだとき。

 

「行け!!」

「切り倒す」

 

剣を持ち直して、両腕の鎧を解いたジークが剣に魔力を込めていた。アルテラはすぐに死ぬ場面で、油断したとか、後悔の感情は一切湧かなかった。あるものは1つ。

 

「再…接、続」

「待て少年!」

 

誰よりも壊れやすく、しかし破壊神が壊せない者たち。

彼らへの興味がアルテラ自身の退去を許さなかった。

 

「なにっ!?」

 

振り下ろしたジークの剣は、アルテラの蘇った剣撃で本人ごと大浴場の壁に吹き飛ばされてしまった。

雑に剣が転がり、ジークがうつ伏せでタイルに転がる。

 

『ガンドが効いてないのか!?

呪いに耐性がある霊気には見えないぞ!?』

『いや、効いてるの間違いない。

データ上、アルテラはガンドの呪いが残っていふ。それでも動けるのなら、彼女はアルテラじゃないんだ』

 

アルテラじゃない?

だめだ、言っている意味が分からない。彼女はどう見たってアルテラ本人じゃないか。なのに、納得するしかない現実がある。

 

「先輩、私に強化を…」

「遅い。軍神の剣(フォトン・レイ)

 

大盾に切っ先を置いて、溜めていたであろう魔力を真名解放に注ぎ足した。マシュに伸ばした手が強化の魔術を起動する前に、破壊神はトドメを出力する。

 

「ぐあ………あぁーーー!」

 

拮抗など出来るはずがなかった。

宝具に対抗する地力はこちらにない。宝具には宝具を充てる。防御として成り立たなければ、盤上の展開など素人にも読める。

 

「ローーーマッ‼︎」

 

ここに建国王が居なければ、だが。

ロムルスの雄叫びとともに樹木がタイルを突き破り、マシュの大盾を支え、アルテラの宝具に特攻していく。

地面に突き立つロムルスの大槍が成す加護。

防げる。そう確信するのに時間は要らない。最強の皇帝の後押しだ、ここで負けてなるものかとマシュの背中に手を置いて強化の魔術を付与しようとして。

 

「えっ、あれ!?」

 

急に軽くなった衝撃にマシュ共々困惑する。

まるで力尽きたように3色の破壊衝動は収まった。何事かと前方を確認しようとしたとき、大盾を蹴って高々に飛び上がるアルテラを目撃した。彼女の目的は……!

 

「ロムルスさん!!!!」

「邪魔だ、建国王」

 

大浴場の宙空で翻り、破壊神が無防備の建国王に剣を向けた。

彼女の視線はもうこちらには向かない。俺も、マシュもまだ2人の間に割って入るだけの余裕を取り戻せずにいる。

タゴサクさんは…まずい、あっちも押されて応援を頼むどころじゃない。なにか手はないか……!?

 

軍神の(フォトン)────」

「逃げて………」

 

逃げて、どうする。

ロムルスの背後には銀さんとネロ皇帝がいる。

それに、ロムルスの霊気はボロボロという話だ。アルテラの宝具を防ぐことが出来るはずもない。最悪の結果が脳裏を横切る…。

 

「案ずるな」

 

ロムルスは一言、そう放った。

死を恐れていない?…いや、死ぬつもりがないんだ。ローマある限り未来が続くと言ってくれた。俺たちはどんな苦境でも、上司の声に応える義務があるだろう…!

 

「マシュ、無茶を承知で行ってくれ」

「っ、はい、もちろんです!」

 

そして、0秒。睨み合う2人の頂点が覚悟を決めた。

 

「よくぞ耐えた、異国の美少年美少女よ!」

 

彼らの間に割って入る喝采。

頂点に咲く洛陽の花ならば、この絶望的状況を彩るに相応しい。ロムルスの背後から飛び上がる赤い影。声高く剣を手にして、宝具解放に薔薇の乱舞が突き刺さった。

 

「再び顔が見れて嬉しいぞ、褐色の半裸娘!」

「………相変わらず巫山戯たヤツだ」

 

宙空から降り立つ破壊神。

……ていうか、寝起きにアルテラの宝具を止めるってどういう身体なんだ!?

 

ネロ皇帝が目覚めている。ということは…やっぱり銀さんもタゴサクの応援に行っていた。なにがあったから分からないけど、起きてすぐ行動する胆力は見習いたい。

 

「余の配下であるゲンガイとゴマルを倒しおって!

この借りを返さねば余の気が済まん!!!

今すぐに壊した文明とやらのツケを払って…」

「やああああーーーー!!!!」

 

ネロ皇帝が勝鬨を上げる最中、全力で駆け抜けたマシュによる全力の一撃が怯んだアルテラの顔面に炸裂した。

 

「………………えっ」

 

大浴場の湯気を蹴散らし、壁に減り込む破壊神。

白目を剥いたその姿に、口上を邪魔されたネロは勿論、全員が言葉を失う。ただ1人、ドヤ顔で立香に「やりました!」と宣言するマシュを除いて。

 

「ははっ、すごいぞ!」

 

立香はぶち壊れた雰囲気のなか、某プロデューサーのような返事しか出来なかった。

 

 

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