fate/銀時も行くオーダー   作:ひとりのリク

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化け狸の皮算用

 

 

連合帝国を象徴する石造りの城。

一週間前までは歴代皇帝、加えてローマ歴戦の将たちが居座り、立ちはだかることでローマ帝国を滅ぼさんとしていた。伊東が一週間もの間、その襲撃に警戒せざるを得ないほどに殺意は鋭く、愛国を裏切る姿を見た伊東は心に傷を入れられたものだ。

 

「来たな」

 

連合帝国の宰相、徳川 定々は目蓋の奥の瞳をゆっくりと覗かせながら呟く。瞳の裏に視えるものは、要塞の如き装甲で大地を駆け荒らすカラクリ仕掛けの戦車。あけっぴろな天板で連合帝国へ向けて進軍するのは僅か4名の自殺志願者だ。

 

定々の笑い声を聞き届ける者は2人のみ。

アルテラ、そして……斉藤 終だ。

手元にある手駒としては心許ない。

いや、定々が信頼に足る手駒はローマに来てからは一騎、1人たりともなかった。

 

「暗殺合戦を仕掛けられ、”ローマの盾”が討たれたことが一番の痛手か」

 

定々は元よりこの世界での知名度は無く、霊気は最下位を奪い合うほどに弱い。支配下にしたと思っていた皇帝たちでさえ、謀反を企てていたほどには。例外といった特例も持ち合わせていない男の支配力など、皇帝たちを心から動かすことも出来なかったのだ。

 

故に、定々は皇帝たちの処分を実行に移し始めた。都合良く現れた破壊神を利用することに躊躇いはない。

 

「ローマ帝国との正面衝突をする他になくなってしまった。カエサル、貴様たちの思惑通りに事が運んでいるぞ」

 

状況を利用して、最善を尽くした手持ちが今となる。

一度敗北しているアルテラ、白兵戦ではA級サーヴァントに手が届かない終。表面上、敵に割れている情報を纏めれば降伏必須の布陣だ。

 

「だから決めている。歴代皇帝の残滓が残るこの地で、今代ローマ皇帝を喰らい我が国の礎としてくれよう」

 

醜く果てる唇を噛み締めて、悪鬼の心が燃え上がる。

逆境だから怒りに燃えているのではない。生きたくて未来を掴もうと拳を握ってはいない。

 

「貴様たちの愛が私の慰みモノになるところを、あの世で見ているがいい」

 

人の欲望を垂れ流すこと。

それが定々が過去を踏み荒らす理由であり、悪辣な手段でローマ帝国を嗤う正当性だと信じている。

 

「アルテラ、ローマ帝国を破壊しろ。

さすれば……貴様の望む舞台が降りてこようて」

 

定々の指揮に破壊神が動き始める。

災害のような存在を軽々と振りかざせる性根は、もはや意思を持った厄病だ。ここに部下、後輩、将軍、帝………皇帝に至るまで、定々が配慮する生命は自分自身以外には存在しない。

 

「貴様に与える身代わりはソレで最後だ」

 

無論、手駒として扱う破壊神ですら、成果を上げれば幸運、負けたら残飯という思考でいる。

食い意地が汚いが、余さずに敵を処理する最適な方法だった。

 

「分かっている」

 

破壊神は無感情に答えながら、欲望に縋るだけの獣から抜け出せない定々を視界から外して考える。

どうして私はこの男を壊さないのか、と。

少しだけ巡った思考が引き摺り出したのは、定々に剣を振り下ろす直前のことだ。

男の底に潜んでいる、言い知れない悪意を理解したが故の急停止。

 

「────」

 

あの時、定々に振り下ろした剣を止めたのは実のところ、定々の言葉が理由ではなく。

”物種あっての破壊だろ。……つっても分かんねえか”

辰五郎の言葉を思い出したからだった。定々を殺せば、全てが終わる。単に、自分の役目が奪われるのは癪だっただけのこと。ぐずっていた破壊衝動を抑えつけて、だけど直ぐに滲み出てきたものを誤魔化すかのように、城の壁を剣で破壊してローマへと飛び立った。

 

流星の出立とともに、ローマ帝国の存亡を賭けた戦いの幕は上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いっときの夜は陽によって帳の向こうに落ち着いた。

神祖ロムルスのご尊顔に漸く耐性を着けたネロが、力強く頷いて挨拶をする。

 

「おぉ、昨夜はグッスリと眠れたようだな。皆の顔を見れば一目で分かるぞ。ローマの湯と寝具で癒えぬ者などおらん!」

 

腰に手を当てて快活に笑う。

相変わらず皇帝の座には座っていないが……座には茂茂の姿は見えない。

 

「はい。カルデアの浴槽が霞んでしまうほど、ローマの大浴場は魅力が詰まっています。ダ・ヴィンチちゃんに相談して、余裕ができたら改装を検討してくれるくらいには!」

「そうであろう?そうであろう!改装の折には余を招んでくれ。さすれば、ミューズ自ら踏み入れるような美を凝らし、人理修復に貢献してみせよう!」

「「おぉー」」

 

マシュの感激にネロが応えて、それを見た立香とジークが拍手を送る。

 

「ネロ皇帝、連合帝国打倒の説明を始めますよ」

「なにを言う伊東。其方はここまで良くやった、ゆっくりと休んでよい。余が許す!だからホレ、全ての指揮は余に任せよ」

「………」「………」「よこせ」「いやだ」

 

目立ちたがりが2人もいる。

指揮権の奪い合いが起こるのは必須。

 

「伊東、定々はなにを企んでやがる」

「余の出番がないところを突かれてしまった…」

 

面倒なことを避けるため、銀時は伊東にしか答えられない質問を投げて無理やり進行を促した。

メガネを人差し指でとんと叩き、鼻を鳴らす勝利宣言にネロの頬は膨らむばかり。

 

「僕には”皇帝を排除”しているように見える」

「排除?意に沿わなくとも持ち駒に違いねえのに?」

「アルテラめの襲撃時も歴代皇帝たちを悪戯に使い潰していた。そこに付け入るかのように建てた、連合帝国に聳える江戸城。

ローマ帝国を江戸に塗り替えるには、邪魔なんだろう」

「何のために…」

「支配欲が擬人化したような男だ。アレの思考はもはや獣の類いと見ていい。理由は考えるだけ無駄だ。自らが生きることに特化した、最悪以下の獣…と、僕が言わずとも、君なら知っているはずだ」

 

銀時は答えない。

定々という人物への態度が殺意しか無いと思うほど、定々への理解が深いんだと立香は独り思った。

無言の銀時がこの考えをより肯定している。

 

「問題がもう1つある。定々は千里眼の保有者だ。

いまもローマ帝国を監視しているだろう」

「千里眼?」

 

『簡単に言えば未来を視る力だ。預言者をイメージすればいいよ。他にも過去、現在を視れる眼のことも総称して千里眼と言うんだけど…』

『定々は現在視か。……え、会話筒抜けじゃない?』

 

「安心しろ。伍丸博士がローマ全体に千里眼を阻害する特殊な魔力を張ってくれている。仙望郷に繋げてスタンドから魔力供給を受けているから維持は完璧だ」

 

『えぇ…伍丸博士、ちょっと有能すぎない?』

 

「彼の功績はまだあるが…。もう語る時間もない。ただ、こう言っていた。”千里眼持ち同士は認識し合う”と」

「どっかで聞いたことあるんですけど。スタンド出してるからって、おもっくそ名ゼリフぱくってますよね!?」

「つか、千里眼持ち同士って…」

「彼も千里眼持ちのようでな、直感的に分かるそうだ」

「ちょ、待て待て!定々もあの博士も、未来なんざ視えねえはずだぞ!」

「定々は知らんが…。伍丸博士はサーヴァントになってから、とあるキャスターに協力を仰いで開発したと言っていた。監視システムの確立を目指す最中、連合帝国から千里眼保有者を認識したらしい」

「あいつ人間辞めすぎだろ!?」

 

衝撃の事実の連続に思わず絶叫する銀時。

立香は、定々がいまもコチラを見ている意味を噛み砕いて、余りにも不利な状況下だと理解した。

 

「じゃあ、例え夜に忍び込んでも向こうは迎撃準備万端で待ってるってことだよね…」

 

いつ休むかなんて野暮な横槍は出来なかった。

なにせ、サーヴァントは寝ずに活動できるのだから。

 

『皆んなで攻めて一点突破!

そのまま定々を倒しちゃうのはどうだい』

 

「ここを留守には出来ない。こちらがもう後戻り出来ない場所まで進んだら、ローマ帝国に破壊神を差し向けてくる。そうなれば僕たちは敗北する」

「────それは」

「伍丸博士が視た、敗北のうちの1つだ」

 

ロマニの提案を却下したのは、もう居ない伍丸の千里眼だった。

 

「籠城戦でも敗けると言っていた。僕たちは二手に別れ、アルテラと定々、両者を各個撃破するしかない。

僕、銀時君、ジーク君、そしてネロ皇帝の4人で連合帝国に乗り込む。お岩殿とタゴサク殿には茂茂公の護衛とともに、仙望郷を維持してもらう」

「……待て、じゃあ」

「────」

 

銀時の抗議を手で制する。

先ずは全部を聞け、と目で伝えて。

 

「立香君、マシュ君、ローマを守りきれるか?」

 

国を背負えと、ローマ皇帝を差し置いてたった1人の少年と、まだ青い空を知らない少女に問いかける。

 

立香は、伊東の言葉を聞いて喉が枯れるような緊張感に襲われた。

ここで軽々と返事をしていいのか…という疑問がある。前回、オルレアンで竜の魔女と戦ったとき、ヴォークルールから人払いは済ませた後だった。だから死傷者を出さずに済んだが……。

今回、人払いをするには場所がない。ローマ帝国の全市民を安全圏に移し終えるまでに、アルテラの襲撃で疲弊してしまう。

なら、ローマ帝国から外に出ればどうだろう。……いや、ダメなのか。アルテラの目には破壊出来るものを優先的に捉える。俺には歯応えのある相手を探しているようには見えない。なら、外で待つ俺とマシュを無視して、そのままローマ帝国を破壊し始める可能性が高い。

 

きっと、伊東の狙いはそこなんだ。

周りに壊せるものを置いて、破壊の邪魔をする相手を優先させる環境が必要ということか。

分かってしまったら、余計に責任重大で頷くことが怖くなった。頷けば、同じ…いや、俺以上の責任とプレッシャーをマシュに頼むことになる。

 

「余は皇帝の座を追われたなどとは思っておらん」

「えっ…」

 

下を向いて悩んでいたとき、両手を頬に添えてネロが顔を上げさせた。

 

「さりとて、茂茂を糾弾する気なんてさらさらない。よいではないか、2人のローマ帝国第五代皇帝。

あれも、これも、誰もがローマである!」

 

ロムルスがいる前であっさりと、前代未聞の処遇を宣言するネロ。

こちらの迷いを力強く吹き飛ばす笑顔に…

 

「余が茂茂を許容するように、立香、お主もマシュに信頼をもっと託すのだ」

「……あはは、ローマってすごいや」

「うむ、当然の感想だな!」

 

俺の決意は流されるような気楽さで、だけど大切な想いを掴んだことを実感して笑顔で返すことができた。

 

「マシュ。伊東は愚かな指揮は取らん。

ソナタの盾を余よりも評価している。そう暗い顔をしては立香も頼り甲斐がないぞ!」

「は、はい…!マシュ・キリエライト、先輩の期待には精一杯応える所存です!!」

 

下を向いているから見えなかったマシュの不安も、ネロはしっかりと拭い去っていく。

 

「ローマ帝国の防衛、やってみせます!」

「おぉ!その返事を待っていた!」

 

決心はついた。

…もうつけていたことを、再認識できた。

 

『すごい…すごいよ2人とも。

よくここまで成長してくれた…!』

『隣の医者が父親面してる…』

 

モニター越しに1人だけ騒がしい人がいることを、立香は知らぬ人と決め込んだ。

 

賑やかな玉座を取り囲む彼らを微笑みながら眺める銀時の横に、

 

「どうやら話は終わったようだな」

 

少し準備があると言って遅れてきた茂茂が立っていた。

ブリーフ姿を想像していた銀時は、茂茂が身に纏っている紋付羽織を見て目を見開く。

 

「その格好…記憶が戻ったのか?」

「朝、起きたらこの霊衣になっていた。だが記憶は戻らずじまいだ、すまない。

ただ、この姿になれた理由は分かる。ローマの明日を見届けてほしいと……今度は友と一緒に、最後まで。

それが茂茂の願いだ。…叶えてくれるか、友よ」

「…相変わらず、変なところで漢になりやがる。

アンタと似たような依頼を頼まれててな。抱き合わせでよけりゃ、何回でも叶えてやんよ」

 

銀時が閉じたまぶたの裏側には、オルガマリーから託された依頼がしっかりと刻まれている。立香とマシュを、必ず明日に連れて行くことを託された。

ここに、誰かの依頼を混ぜ合わせても怒らないだろう。

 

「余の成すべきことも分かった」

「見届けることじゃなくてか?」

「あぁ。その為に必要なことだ」

 

記憶は無くとも、立香たちを見守るその瞳は江戸の民を守る茂茂と同じもの。いまの彼ならば、茂茂に誇れる行動を取れるだろう。

 

藻屑のように散り散りに見えて、目指す道は一条となり、一国よりも太くて強い信念が出来上がっていく。

 

「良いかな諸君。では、最後に移動手段だが…」

 

皆んなが心を1つにして決戦に挑む。

素晴らしい雰囲気が築かれるなか。

 

「ここに、平賀博士が遺した発明がある」

「そいつは…」

 

何故か城の地下からエレベーターによって送られてきた、8畳を越える面積を絞める2メートル越えの鉄の塊。

キャタピラに野太い装甲、そして正面にデカデカと貼り付けている大砲。

 

「これで一気に攻め込むぞ」

 

『ローマ帝国を改造しすぎだろ!?』

 

石造りの景観をぶち壊す、現代社会も驚きのカラクリ技術がローマの地に現れた。

 

 

 

 

 

───

 

──

 

 

 

 

 

 

アルテラが連合帝国を飛び立った頃、銀時たちは荒野の最中を爆走していた。

 

「おいネロ!運転したことあんのか!?」

「無論だ!余の戦車捌きは悪魔も恐れると評判だぞ」

「それ四輪駆動じゃないけど!?

誰だ、このバカに運転教えたやつは!?」

 

銀時の悲痛な叫びに、キャタピラ装甲の上から荒野へゲロをぶち撒けるグロッキーな伊東が答える。

 

「ぐっ…まさか…あれしきの口添えで動かせるとは思わなんだ」

「やっぱお前か。うえっ…これ乗り込む頃には全員戦闘不能になってるぞ…」

 

『はははは…。手ブレ補正?そんなものいまのカルデアには贅沢だよ。うえっ…。

ネロ皇帝、少々運転が荒いのでは…。画面見てるカルデア職員、全員の容態が悪化したんですけど…』

 

「はーっはっは!そう畏まるでない。

歌に踊り、芸術に設計と、余の才能こそ未来を創っている。ローマの地に刻むこの戦車も、いつかカルデアのためになろうて!許す、存分にデータを集めるのだ!」

 

『あ〜、ダメだこれ。才能マンだな、彼女。運動センスが高いようだ。下手な嫌味は褒め言葉に変換されるぞ』

 

ネロの運転によってカルデアのデータベースに蓄積されるのは、銀時と伊東のゲロの持続時間とゲロの飛行距離ばかり。もらいゲロをしそうなほどゲロ塗れになったデータを見ながらロマニがもらいゲロを引き起こしていると、

 

「どうやらあちらも動いたらしい」

 

ローマ帝国から連合に続く道の約7割を進んだとき、その衝撃は目視できる距離に砂塵とともに現れた。

 

「アルテラか!」

 

『宝具使って飛んできてる!?

なんて燃費の悪いサーヴァントなんだ…』

『連合帝国とローマ帝国を行き来する方法が、まさか宝具での移動とはね。あれは大浴場に奇襲するときのものとばかり思っていたよ』

 

軍神の剣(フォトン・レイ)と呼んでいた、剣と友に敵へと突撃する宝具。それを、あろうか数十キロにも及ぶ距離を移動するために解放していた。今回だけではないだろう。ローマ帝国を苦しめるたびに、この巫山戯たことを仕出かしていたのだ。

 

「マスター、俺の宝具で撃ち落とすぞ」

 

霊体化していたジークが声を掛ける。

確認を取りながら、既に体勢は宝具解放の準備を終えていた。銀時の合図があれば即座に。なくとも激突の直前に、竜を屠る一撃が放たれるだろう。当然、銀時は頷いて────。

 

「その必要はない」

「じゃあどうすんだ!?

このままじゃ俺らが消し飛ばされるぞ!」

 

伊東が合図を止めさせる。

道中、アルテラとの接敵時については元から、伊東に一任する話だったが、あの宝具は次元が違うと訴えた。

それでも、伊東は策があると目で答える。

 

「────ネロ皇帝!!」

「よしきた!!」

 

声を上げて皇帝の名前を呼ぶ。

彼女もハツラツと答えた。そして、ネロのハンドル捌きが既に常人の域から抜け出していることを、手元の動きから銀時は読み取っていた。

ここまでの荒々しい運転、そして銀時たちのゲロはこの為の予行演習だと言わんばかりに────

 

「うっ……」

 

ネロは一瞬俯いたあと、活と目を見開いて。

 

「パドルオロロオオオオオオ!!!」

 

運転酔いして遥か前方にゲロをぶち撒けた。

 

「おイイイイイイイイイイ!

どんだけゲロ飛ばしてんだよ!

結局お前も酔ってんじゃねえか!」

「それどころじゃないぞマスター!前!」

 

前方にはアルテラの宝具。ゲロに呆気に囚われたジークは、宝具を解放する余裕などない。

 

「そんな馬鹿な!!??」

「こんな死に方は嫌だアア!」

 

伊東と銀時の絶叫とともに、彼らの身体が巻き込まれる直前。

突如、宝具の進行方向がブレて、キャタピラの真横を通り過ぎて行く。

コントロールを失ったように二転、三転して地面に激突しながら、最後には勢いの削がれた紙飛行機のような勢いでローマ帝国へと飛んでいった。

 

「うげロ…。う……うむ。狙い通り…だな、伊東」

「え、えぇ…うぇっ…。作戦通りです…」

 

『き、奇跡だ。ネロ皇帝のゲロが目眩しになったか!』

『スローカメラで見返したけど、アルテラの眼球にネロ皇帝のゲロが入ってるね。うん、完璧な作戦だ』

 

「なぁにが作戦通りだ!お前後方見てみろよ。辺り一帯モザイクだらけだよ。モザイクの大地の上をモザイク塗れの飛行物体が飛んでってるよ。あれもう特異点だろうが!!」

「バカか銀時君。君は運転する時、何処を見て走る?モザイク塗れの猥褻物なぞ見てみろ、脇見運転で捕まえちゃうぞ」

「うぜぇんだよお前。なにこんな時だけ職権濫用?

俺ら環境破壊してる極悪人だからね!?」

 

ゲロを吐いて、馬鹿騒ぎをしながら進むこと数分。

 

『ちょっかいの1つは掛けにくると思ったけど、まさか宝具で轢きにくるとは!あの勢いでよく魔力が保つね』

『マスターの魔力量が一流でも、ここ一週間の暴れっぷりを見たら保つはずがない。

特殊な魔力源がない限りはね』

 

「それが聖杯ってわけか」

 

『恐らくはね。聖杯を回収すればオルレアンのように特異点は修復できる。持ち主は言うまでもないだろ』

 

ダ・ヴィンチが視線を促す。

ようやく見えたのは異様な光景。ローマの時代にありながら、江戸時代を象徴する天下の城が銀時たちの視界に映ったせいだ。

 

『なんて不細工な景観だ!』

『パスタに小豆を乗せるような暴挙だよ、これ』

 

ロマニたちがモニターを共有すると、そこには江戸城の上層をアップで映し出されていた。

その一角、大きな穴が空いた場所から覗く人影。

 

「おい、分かるか」

「あぁ…2度と見たくもなかった顔だ」

 

異様な組み合わせに目を細めていると、ボタンを押す電子音が鳴った。

 

「えっ────」

「ネロ皇帝、いま何を押したんですか」

「”定々絶殺”と書かれたものが前に出てきた!

ならば押すしかあるまい!はーっはっは!!」

 

ゲロったあとのスッキリ感でハイとなったネロ。

自分の行動1つ1つに疑問を持つ余裕なんて、あるはずがなかった。

 

『発射まで3────』

 

「なんかカウントダウン始まったけど!?

大丈夫?ねぇこれ爆発しない!?」

 

『2────』

 

「余を酔わせた恨み、貴様で晴らしてくれる!」

「さ、最悪の八つ当たりだ!!」

 

『1────』

 

装甲の前に現れたのは巨大な筒。

そして弾と思われる2つの球体。

文章だからモザイク不要のソレの先端から、

 

『FIRE────!』

 

先手必殺とばかりに、江戸城の一角。

モニターにアップで映し出された定々のいる大広間に、砲撃は勢いよく撃ち込まれた。

 

「「「定々が吹き飛んだーーーー!?」」」

 

 

 

 

 

 

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