fate/銀時も行くオーダー   作:ひとりのリク

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牢城災建帝国セプテムⅢ

 

 

握りしめた右拳を開く。

手のひらから魔力の粒子がソラに浮かんでいき、影丸の霊気が呆気なく砕けたことを物語っていた。

 

ローマ帝国に創られた仙望郷、大浴場にて。

破壊神アルテラとの戦いで影丸を引き剥がし、立香たちは喜んだのも束の間。倒れ伏したアルテラが傷ついた身体も気にせずに立ち上がるものだから、再び臨戦体制を取った。

 

「これで…消えたのかい?」

「あぁ、影丸は死んだ。ここから出ない限り、定々に感知されることはない」

「それは良かった。俺たちは直ぐに連合帝国に行きたいんだけど〜…」

 

立香の言葉は本意だが、ここから連合帝国まで直ぐに行く手段はない。少しだけ凶暴性が抜けた……ように見えるから、会話で気を収めてもらおうという考えだ。

それも、アルテラが振り上げた軍神の剣を見て、成立しないものだと悟った。

 

「次はお前だ、ロムルス。お前の霊気にいる影丸を出せ。でなければ、お前ごと破壊する」

「えっ…!?」

 

初めて聞いた……いや、あってほしくないと思っていた考えをアルテラが言い放ち、立香とマシュは詰まった声を漏らす。

全員の注目を浴びるロムルスは、一歩前に出て応える。

 

(ローマ)の霊気に影丸はいない」

 

己の霊気は不干渉だと断言した。

ロムルスが元々は連合帝国の王に据えられていたとしても、ローマを背負う父としての在り方は変わっていない。ネロがロムルスを認め、最上級の敬いを示すことからも見て分かる。

 

「………なら何処にいる。サイトウも、シゲシゲも違った。残る定々との関係者はロムルス、お前だけだ」

「ソレを止めたのが答えだ。お前自身、薄々は気づいているだろう。ここに影丸の気配はないと」

「……………………」

 

ロムルスの言葉を聞いて大人しく剣を下ろす。

戦闘の意思が見られない。これが答えということだ。

 

「じゃあ、ロムルス王は大丈夫なんだね!」

「………否。民はいまも苦しめられている。民無くしてローマ無し。今から連合帝国へと向かう。最後の影丸は”江戸城”にある」

「えっ、色々と聞きたいことはありますが…居場所をご存知なんですか?」

「見てはいない。だが、確信がある。定々が造りし江戸城は、ローマ皇帝の霊気を基に建てたもの。

そこに影丸を埋めるのは容易かろう」

 

この特異点に来て何度目かの絶句。

皇帝が退去し始めてから江戸城が建ったとは言ってたけど、それが骨組みに使われているなんて……。

 

「どう読み解けと!?」

 

とんだ伏線に立香は思わず叫んだ。

いや、事はそれどころじゃない。

 

「江戸城そのものが影丸になっているなら、銀さんたちが危ない!」

「そ、そうでした。なぜかカルデアとの通信が出来ないので、このことを伝えられません!私たちが出向くしかないですが…」

「そうだぜ王様よ、どうやって移動するんだい?

こっから徒歩半日って話だ。今からじゃ間に合わねえよ」

「タゴサク…即ち仙望郷(ローマ)よ。我らの未来のために、その力を奮ってはくれまいか」

「…そういうことか!」

 

ロムルスはタゴサクに協力を求め、逡巡したタゴサクは合点と手を鳴らす。いまのやり取り、立香とマシュは首を傾げるだけだ。

 

何をするのかタゴサクに聞くと、「ロムルス王に託すのさ」と渋い笑顔を向けられた。

 

「魔力をロムルス王へ回す。”芙蓉 伊-零號未来型”とのパスを遮断。仙望郷をローマ帝国に繋げる」

 

タゴサクが宣言する。

途端に仙望郷が揺れて、雪山景色が晴れる。

 

「な、何をするのでしょう!?外が揺れ始めましたが!?」

「嫌な予感しかしない!」

 

仙望郷が世界へと浮上する。

外を見渡せばローマ帝国に早変わり。写真を横にスライドしたかの如く、景色が一瞬で元に戻った。

 

「ほら、どこでも良いから捕まりな?

いまからちょいと揺れるよ」

「捕まるって何処に……」

 

レイに促されて、慌てて辺りを見回す。マシュと一緒にいようと思ってその姿を探していると、白い手が差し伸ばされてきた。

 

「あっ、マシュ────」

 

手を掴む。だが、すり抜けた。

 

なぜかマシュの手がすり抜けた。

 

なんでだろう?

 

首を傾げて、手首から視線を上げていく。するとそこには半透明で、反対の手には火縄銃を持っているハゲがいた。

 

「ブッ殺ス……床屋」

「あぎゃあああああ!?」

「せ、先輩!?」

 

ビックリして手を引っ込めたが、もう遅かった。

ロムルスの槍がいま、仙望郷に突き立てられたのだ。

 

「征くぞ。すべては我が槍に通ずる(マグナ・ウォルイッセ・マグヌム)

 

その声から鳴る音が、仙望郷との親和を語る。

魔力が絶え断えの神祖に、ローマ(ロムルス)への献身を示す。

仙望郷に集いしスタンドたちが束となり、魔力を惜しみなく捧げる。この時代では決して見ることのない光を灯して、ロムルスの槍はローマ帝国の全てを創造し始めた。

 

「ロムルス・クィリヌスがローマへと導こう。人類最後のマスター、藤丸 立香。しかと受け止めよ」

 

隆起する大地が仙望郷を推し進める。

この場所だけを何かが下から持ち上げて、連合帝国へと向けて発進した。

 

衝撃に耐えきれず、身体が放り出された。

慌てて手を伸ばして掴んだものは────。

 

「こ、これは!?」

「ロムルス王の宝具だ。過去・現在・未来のローマを造成して敵を倒すらしいが……お前さんたちに勝利を届けるために解放したらしい。

速いねぇ、これなら直ぐに連合帝国に着くぜ」

 

軽快に笑っているタゴサクも、感心するマシュも銭湯の壁に張り付いている。かなり上下に揺れて、三半規管を試される状況下でマシュは目を輝かせて振り向いた。

 

「す、すごい!先輩、見てますか!?」

「………うん、見てるよ。てか、こっち向いてる」

 

冷や汗を垂らして、火縄銃の先端を掴む立香。

 

「銃口が」

 

そこには絶望に目を曇らせて、三半規管どころか、運命を試されるマスターがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天守閣を染め上げて、恐怖の威厳を連合帝国にもたらした存在、徳川 定々。彼が変容したブネはいま、ファヴニールの右足によって押し潰された。

巻き上がる血飛沫。下降した魔力の粒子。

 

「ド、ドラゴンンンン!?」

「脳内にセファなんとかという単語が出てきた!」

 

そして、突然の出現に驚愕するネロと伊東。

叫んだ拍子に全身に激痛が走るネロは、その辺をのたうち回っている。

 

『あ〜、大丈夫ですよお二人とも。ほら』

 

「無事でなによりだ、マスター」

「そっちこそ。ナイス右手だぜ、ジーク」

 

ドラゴンと銀時が気さくに会話をしている様子を見て、ネロたちはドラゴンの正体に気づいた。

 

「そ、その声……ジーク!お主、ジークか!?」

「驚かせてすまない、ネロ皇帝。緊急事態だったので断りなく宝具を使わせてもらった」

「────くれ」

「えっと、なんて言ったのだろうか」

「ジーク、ローマに来てくれ!メチャクチャ格好いいではないか!その背中に余が鎮座し、ローマの空を飛ぶ!

いや飛びたい!頼む、報酬は弾むぞ!」

「えっと、お断りする」

「ガーン」

 

ジークは、オルレアンに続いて勧誘を受けたことに苦笑する。

 

項垂れるネロを見ながら、銀時はふと辰五郎の言葉を思い出す。

”また野郎の顔を見たくねえなら、コレで殺せ”

 

(っべ〜、大丈夫かな。この刀で殺さなかったけど。うん、大丈夫だよ、スレッ○も笑ってたし!俺も笑っとこ)

 

辰五郎の忠告の真意は分かず仕舞いだが、状況が状況だ。取り敢えずこの刀で斬りまくったから良いだろうと納得する。

 

「あは、あははは!」

「────はははは」

 

銀時の笑い声に重ねてきた嘲笑。

 

「こ、この声は!」

 

『これは定々!?でも霊気反応なんて何処にも…』

『………あった』

『えっ、どこ?』

『”江戸城”だ。飛び散った壁も、押し潰した床張りも、銀時君たちが立っている場所も……そこかしこから、定々の霊気反応が発生し始めた!』

 

ダ・ヴィンチの解析を聞いて、やっと声の出どころを理解した。

床が揺れる、いや…嗤っている。何処にもいて、何を見れば良いのかを分からない下等生物を見下して、人間の上位に昇った悪魔が再び現れた。

 

「言ったはずだ。私を殺す術はない、と」

「嘘、だろ………」

 

江戸城の床から、徳川 定々が浮かび上がる。

1人、2人と数を増して、瞳から生気を無くして。

江戸城をも喰らい、定々は生きることへ執着する。

 

「皆んな、俺に掴まれ!!」

 

現状では倒す術がない以上、選択肢は退避のみ。乱雑に腕を振り回して、その前足に3人とも掴まる。合図など出さず、一気にファヴニールの巨体をソラへと移す。

 

次の瞬間、江戸城は悪魔の針山と化した。

 

「我が城を”人間の毛細血管”と例えたな。あの時は肝が冷える思いをしたぞ」

 

江戸城を突き破る無数の柱。

その全てが定々がブネと名乗った悪魔。どれも同じ見た目で同じ言葉を発する。

この世で最も醜悪な音だ。不協和音では物足りない。公害と名づけるに相応しい破壊音を響かせる。

 

「連合帝国は…貴様の民草であろう!

どこまで皇帝を愚弄する、愚か者が!」

 

ネロの叫びは届かない。

いいや、人間の訴えが定々に届くことはない。

ブネという姿は、定々が人の心を捨てた姿。決して人類とは相容れないことを体現している。

 

「江戸城を造ったのは”たまたま”素材が手に入ったからに過ぎん。貴様たち皇帝の霊気(むくろ)、座に還るだけの粒子を有効活用したまでのことだ」

「………屑が!」

「実に土地に馴染む骨子だ。そのおかげで、この通り」

 

地上に現れ出でるのは、江戸城を構成する全てのもの……例えば柱、壁の一面、瓦に至るまで。無駄なく、全てが溶けて混ざり合わさって、幾つものブネが連合帝国を染めていく。

 

地上は逃げ惑うローマ市民で阿鼻叫喚だ。どこに逃げようと、逃げた先に呪いが聳え立つ。外に逃げるまでに、市民の大多数は助からない。

 

『ば、バカな!?

定々の霊気反応が十、三十、まだ増えていく!ヤバいぞ、これ全部、ブネに変わるんじゃないか!?』

 

「見よ、江戸の災建を。これが我が城である」

 

そうして、七十二のブネが連合帝国を見下ろす。

地面を引きずって家屋を壊し、連合帝国を更地にしながら進む先はローマ帝国。この数でローマ帝国を襲おうものなら、数の暴力で敗北するのは目に見えていた。

 

「おい、本体だ!本体の居場所だけ教えろ!」

 

『今やってる!やってるけど……全部本物なんだよ!

何度やっても、データを比較しても全部一緒。1つの違いもないんだぜ!双子でもあり得ない!』

 

そのための最短の道を、ふざけた現実によって閉ざされる。

 

ここからローマ帝国まで、距離にして徒歩半日。

50キロ弱の道中で、この数の化け物を3人と一体で倒し切らなければならない。

地上を這うように進んでいるところを見るに、ファヴニールで燃やし尽くすことは出来る。ジークがどこまで戦えるかにローマ帝国の未来が賭かっている。そして、魔力の使いすぎは銀時の身体にも影響が出る。

最悪、身体を酷使してでも止めることを覚悟した矢先。

 

「国家の父、定々が時代の王となる瞬間を見届けよ。

征くぞ。ローマ帝国を喰らい尽くし、人理焼却を果たす」

 

ブネは砂埃を舞い上げながら、地上から姿を消した。

 

「じ、地面に潜りやがった…………!」

「カルデアの魔術師!定々はどこまで潜った?」

 

『定々は地下100メートルまで潜ってローマ帝国に進んでいる。アルテラと同じ速度だ、30分足らずで着くぞ…』

 

しかも、十柱を連合帝国に残している。

目的は最悪だ。誰が聞かずとも、銀時たちに連合帝国ローマ市民の殺戮を止めさせるためだと分かる。

 

「一部を敢えて残し、連合帝国を襲わせている。

これは定々の時間稼ぎです。付き合ってしまえば、定々に追いつく頃にはローマ帝国が呪いで満たされるでしょう」

「……だから見放せと申すか、カモ」

「ネロ皇帝、いま追わなければローマ帝国の負けです」

 

伊東は嘘を吐いた。

地中100メートル下を進む化け物を、ジークの息吹に頼ること以外、思いつかない。だが、倒し切ることは不可能だ。銀時の身体が魔力の使いすぎで壊死するのが先になる。

 

「ジーク君、一発打って何体倒せる?」

「…………一体倒せれば良い方だ。

地面が邪魔で俺の息吹も威力を発揮できない」

「それを、定々を追いながら、連写は可能か?」

 

答えは返せない。

どの道、ローマ帝国に到着した瞬間から、六十二ものブネを相手にしなければならない。

つまるところ、ここで詰み────

 

「高度を下げてくれ」

「えっ…?」

 

伊東は全員が一致しかけた結論を、突然の指示でうやむやにする。

高度を下げるなら、定々を倒しに行くということ。だけど、自分の言葉とは真反対の指示だ。ネロは混乱しているが、銀時は伊東の意図に気づく。

 

「僕が残る。出来る限り、僕が定々を止めてみせる。だから銀時、ジーク君、ネロ皇帝。定々を倒してくれ」

「お前……」

「僕は真選組の頭脳にして神童、()() ()()()

今の僕になら、この隊服がある。やってみせるさ」

「────余の我儘に付き合ってくれて感謝する。

こローマ帝国第五代皇帝ネロ・クラウディウスの名において命じる!連合帝国のローマ市民を守り、そして帰ってこい、伊東 鴨太郎!!!」

「お任せください。必ずや果たしてみせましょう」

 

ネロの宣言を守るため、伊東は従者として最後の務めを果たしに行く。

伊東が救えないと思ったものを、ネロは救えた。生前の過ちから学ぶならば、伊東はここで連合帝国のローマ市民を守ってみせなくてはならない。

 

「ジーク、定々を追ってくれ」

「……………………分かった」

 

伊東の決意を見送り、ネロはジークに進むように頼んだ。

堂々たる瞳を見て、なにも心配はいらないと分かったジークは両翼を開き、再びローマ帝国へと羽ばたいた。

 

 

 

 

 

───

 

──

 

 

 

 

 

 

「敵だというのに、救いの手を差し伸べようとする。暴君とは思えない言動だからこそ、僕は懐かしんだ」

 

連合帝国の地面に降り立った伊東は、勢いよく飛び立っていくファヴニールの背後を見送ってから剣を抜いた。

いまの状況を確認する。ネロが救った連合ローマ兵たちによって、避難は迅速に進められていた。それでも人手が足りていない。この混乱で市民が逃げ惑い、恐怖で動けない者も続出している。

どれだけ人手があっても足りないわけだ。まるで、ローマ帝国で過ごした毎日のようだった。

 

「ローマに仕えながら、()()()を貴女に重ねていた」

 

騒がしかった十日余りを思い返して、背後に迫る定々だったものを見上げる。

 

「愚かだな、鴨太郎。ここに全員で残れば、少しは長く生きられたものを。いっそ、私の元に降ることも許したというのに」

「愚者はお前だ。ここでお前たち十柱を仕留めれば、十分に採算が取れる」

 

「十柱は残しすぎだ」と笑う。

同時に「十柱で足りるわけないだろう」と宣う。

不可思議な言葉に、定々が無い首を傾げると、ブネの身体に浮き出た眼が斬り飛ばされた。

 

「攘夷志士と繋がってたかと思えば、次はローマ帝国だぁ?これだからエリートは裏切り気質で嫌いなんだよ」

 

伊東とは真反対に付いた眼が機能を停止する。千里眼で伊東の挙動に注目していた定々は、突然の奇襲に混乱を隠せない。

 

「組織立ってしか動かない君とは違って、僕は単独でも調査してるんだ。しっかりと情報共有はしている」

 

伊東が話しかける相手を探すために周囲に目を向けて、やっと見つけた。

1人、2人、3人…。まだ増える、なぜか増え続ける人影。次々と召喚されて、方々に聳えるブネへと走り寄る。

 

「な、なぜ……どういうことだ!?」

 

────彼らは、伊東の呼び掛けに応じた。

 

真選組に所属し、承諾した隊士たちを召喚する。真選組の幹部が共通して保有する宝具、“真の絆”の能力だ。

いまの伊東では一度使えば現界も危うくなる、魔力消費の激しい宝具をここで解放した。

 

「なにも成果を上げず、”女神様”を相手に手を焼いている君には言われたくないね、()()()

 

()()()によって呼ばれたサーヴァント、土方 十四郎は伊東の直球な悪口に悪態で返した。

 

「煩えよ。成り行きでなっちまったんだ、仕方ねえだろ。好きでやってんじゃねえ」

「いやいや、嘘も大概にしてくださいよ」

 

ブネを挟んだ会話に横槍を入れたのは、土方の後ろから振られてた一閃の刀。間一髪で不意打ちを躱す土方を他所に、ブネの眼がもう1つ抉られた。

 

「犬の餌をバカにされて喧嘩売ったの土方さんでしょ」

「危ねえっ!ふざけんなよ()()ォ!あれはマヨ丼!

世界中のカロリー信者が崇拝する最強の食べ物だ!」

 

気の抜けた返事をするのは沖田 総悟。

 

「貴様ら……そうか、宝具だな。無駄なことを。生前の恨みだ、楽に死なせると────」

「いやうるせえ!」「死ね土方!」「土方死ね!」

 

三方向から雨あられの如き斬撃を浴びて、ブネは細切れとなって消滅した。

 

「お前ら俺狙ってただろ!掛け声が俺に向けてたよ!」

「気のせいだろ死ね土方」

「そうですよニコチン切れてんじゃねえですかい土方死ね」

「少しは殺意を隠せエエエエエ!」

 

そして、本気の喧嘩がおっ始まる。

 

「ちょっとオオオ!呼び出されて早々喧嘩しないでくださいよ!!()()()、俺たちじゃ倒しきれないんですから!」

 

見兼ねた山崎が止めに入った。

剣を下ろし、土方と総悟が敵を確認する。

その先に伊東は隊士たちを見て、斉藤の姿を探した。

 

「斉藤の姿は…ないか」

「斉藤がなんだって?」

「独り言だ」

 

残念ながら彼は召喚に応じていないらしい。

応じたところで記憶があるかは定かでは無い。

もう分からないことは置いておくことにする。

 

「で、コイツらは誰だ?」

「徳川 定々だ」

「─────」

「コイツらなら知ってるのか、近藤さんのことを」

「可能性の話だけどね。こんな化け物になっているんだ、叩けばなにか出てくるとは思わないか?」

 

近藤というワードを出すと、真選組全員の瞳の色が一段と獣の如き飢えを見せる。

 

伊東が真選組と行動を共にせず、セプテムに来た理由。それが近藤 勲の所在を探すことにあるとは、ネロ皇帝ですら知らない。

この話をしたところで進む物語でもない。故にここまで語らずにいたが、定々のように敵と繋がりがある者を見つけて、聞き出すタイミングを作るには別れるのが都合が良かった。

 

「優先するのはローマ市民の安全だ。その上で、チャンスはもう九柱しかない。心して臨め」

「はっ、言われなくても分かってるさ」

 

真選組全員で同じ敵に刀を向ける。

そこに、伊東自身もやっと加わることが出来た。

今更…とは嘆かない。やっと、スタートから踏み出せたのだ。

 

「行くぞ真選組!徳川 定々をもう一度討つ!」

 

ここから、伊東の真選組は始まる。

生前、最期に知った想いと共に戦場を駆ける。

 

あと1人、足りない影を埋める、その日まで。

 

 

 

 

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