牢城と化した帝都ローマに光が満ちる。
地下に潜んだ三十二柱、そして地上で暴走する三十柱、全てのブネが外側から崩壊した。
同時に、帝都ローマが祝福を奏でる。
大地を愛でるように壁が下がり、人類を激励する音を立てて地下のローマがソラへ舞い上がる。立香の背中を押して、マシュの未来を願いながら、全てのローマが魔力とともに在るべき場所へ還っていく。
「────終わった?」
「はい、この光がそう教えてくれました」
ソラを仰ぎながら、張り詰めた緊張の糸を呼吸とともに緩めきる。
「定々が消滅した場所に聖杯があります!」
へとへとの立香とは対照的に、マシュは宙に浮かんだ淡く輝く器を見つけて走っていった。
『や、やった!銀時君が本体っぽいブネを斬った途端、全部のブネが消滅したぞ!これは本体で間違いない!』
『聖杯の回収も確認した。
特異点の修復も始まったようだね』
ダ・ヴィンチの言葉を聞いて足元を見る。
足先から微かに光が漏れて、感覚が遠くなるのが分かった。特異点の修復が終わったから、自動的にカルデアへ戻る準備をしているんだ。
「────ローマの行く末、しかと見届けた」
「神祖ロムルス…」
それは特異点に召喚されたサーヴァントも同様だ。
ロムルスが光に包まれていく様子を、ネロが悲しげに見つめていた。
「其方が守りしローマは、立香たちが受け継いだ。
人理は必ず続くと、ローマが保証しよう」
凛と胸を張って、両腕でネロを包み、神祖の愛を注ぐ。言葉と行動、2つの愛を受けたネロは瞳を上げて、涙を溢しながら父に応えた。
「ネロ、あとは任せたぞ」
「……勿論だ。ローマは永遠だからな!」
ニカッと笑う愛し子を見届けて、ロムルスは光の向こうへと消えていった。
最後まで、ロムルスはローマのことを愛し続けてきた。敵の頭として召喚されながら、ずっと魂の在り方を忘れなかった。反転など永劫しないという姿を教えてくれた。
そんな最高の王に、感謝のお礼をせずにはいられない。偉大な建国王の姿を送り届けて顔を上げる。
「立香やマシュも消えてしまうのだな」
足元から光が発生し始めた俺たちに、ネロはロムルスと同じ度合いの気持ちを込めて聞いてきた。
「私たちは未来を取り戻しに行きます。
ロムルス王がネロさんに託したローマを、私たちも繋いでみせます!」
「くっ…嬉しいことを言いおって!
良い胸の張り具合だぞ、マシュ。それを見て心配は吹き飛んだ!ちっとも寂しくなんて思っておらんからな?」
「えっ……そんな………」
「嘘、嘘オオ!すごく悲しい!残ってほしいなぁ!
………あれ、余に勝ち目なくない?」
最強のハメ技に成す術なく白旗を上げた。
マシュはネロの姿を見て、特異点修復のあとについて口に出さずにはいられなかった。
「ネロ皇帝。この特異点の修復が終われば、きっと全てが元通りになります。連合帝国に殺された人たちも、普段の生活に戻れます。
………そして、私たちと戦った記憶も」
「余の言葉をマシュは覚えているのだろう?
ならば問題ないッ‼︎ローマは其方たちの胸にあり‼︎」
「────はい、その通りでした!」
「ローマ!」「ロ、ローマ!」「ローマY」
ネロがマシュたちの帰還を惜しむように、この戦いをネロが忘れることをマシュは寂しいと感じていた。ネロの激励でしっかりと心構えを教わって、その心も大事なことだと学んだ。
こうして、ネロと熱い握手を交わして立香とマシュは退去した。
「………ところで、余はここから1人で帰れと?
ち、違うであろう…?こう、ビュンと時が戻るのであろう?あれ、誰もいない!
誰か、応えてくれエエエエエ!!」
そしてネロは独り、荒野のど真ん中で叫んだ。
時を同じくして、銀時は退去し始めた茂茂に声をかけていた。
「やっと定々を江戸の法律で裁いてやれたな」
「────そうだな。といっても、記憶が戻らなかったから実感は薄い。将軍として果たすべきだと思ったから、きっと影丸は余を認めてくれたんだ。
全ての友に感謝し足りないほど、良い場所だった」
暗殺によって生涯を終えた定々。
本来ならば法による裁きを与えて、罪を贖う時間があるはずだった。その機会が出来たことを複雑に思う。
彼の瞳に後悔はない。茂茂が自らを犠牲にしてでも果たしたかった結末に辿り着けたのだ。彼が誰であろうとも、茂茂として責務を務め上げたことに誇りを持っている。
そんな彼に、銀時は褒美を求めるように言う。
「記憶がないんじゃ聞いても仕方ねえか」
「なにを聞こうとしたのだ?
今の余に答えられることかもしれんぞ」
「定々の中に茂茂の影丸がいたって、どういうことだ」
「────────簡単な話さ」
一度だけ目を伏せる茂茂。
ちらりと覗いた瞳に、赤い景色を見た気がした。
「前日譚があったのだ、きっと」
再び顔を上げた茂茂の瞳は黒く、普段と変わらない。
気の抜ける返事に銀時は無礼千万なため息で答えた。
「きっとって、知らないってことかよ……」
「あぁ、時間がない。許してくれ、伝えるには一言じゃ表せなくてな。
いつか会ったとき、酒でも交わしながら語ろう」
「この約束まで忘れないでくれよ?」
友と友、右手を交わして再会を約束する。
寂しい音を聞き届けて、銀時はまだ残っているお岩に視線を向けた。
「なんだ、まだ成仏してなかったのかよ」
「うるさいね。物事には順番があるだろう。伝えとかなきゃならない事があるんだよ」
「伝えたいこと?」
「辰五郎のことさ」
今回、寺田 辰五郎の行動には理解が追いついていない。
将軍の首を狙いに来たかと思えば、定々を殺す武器を渡してきた。あまつさえロムルスに定々の生前を伝えて、殺し方のヒントを与える。徳川家を殺すと考えれば筋が通るように見えるが、とんでもない。
人理焼却を否定したならば、茂茂の首を狙っては定々を殺すことは出来なかった。どこに一貫性を見出せばいいか、このままでは分からない。
ヒントになるかもしれない。
お岩の言葉に耳を傾ける。
「辰五郎は、攘夷戦争を続けている気がする」
「……戦場で死んだって話だったな。
もう終わったと言っても、納得いかねえのか?」
「いいや、納得はしていた。一度は惚れた男さ、目を見りゃ分かる。
あいつ、まだ死にきれてなかった。何処かで続いている
脳内に届いた言葉を噛んで、苦い味だと気づく。
まだ噛み千切れない。辰五郎から感じていた想いだけは、お岩の考えと似たものだった。あの戦いで失ったものの重さを知っている。取り残して、ずっと過去を見ていた侍を何人も見てきた。
「ギン、次に会ったら説教してやってほしい。
早く戻って、お登勢に顔見せろ…ってね」
だからこそ、お岩は銀時に辰五郎を託すことにした。
仙望郷の呪縛を解き放った銀時になら、辰五郎の抱える鎖も千切れると信じたのだ。
「ババアに滞納してる家賃の利子くらいは準備しとかねえとだし?
まあ、そのうち伝えといてやんよ」
「捻れた性格は相変わらずさね。
レイ、あんたの好みはダメ人ング!?」
ぶっきらぼうに後ろを向いた銀時に、呆れた声を上げるお岩。だが突然、言葉が掻き消されたので振り向くと、レイが笑顔で立っていた。
「なんて?……あれ、レイか。お岩は?」
「あぁ、退去したよ。疲れてたからね、仕方ない」
明らかに作為的な退去の跡が見えたが、レイの無言の圧を見ては言及できなかった。
「…………はぁ。背中は流せそうにないね」
「そりゃ、仙望郷も消えたしな」
見渡す限りの荒野を見て、レイは肩を落とす。
ここで夢を果たせないのは残念だが、考えようだ。サーヴァントの一部として召喚されたなら、また機会は訪れる。ゆっくりと出来るタイミングで、好きなだけ流せばいいのだから。
「ギン、頑張りな。どんな世界だろうと、燃やすなんて許しちゃダメだ。負けるな、頑張れ!」
「あぁ、ったりめーだ。まあ死んでも、仙望郷に行って身体借りて世界救いってやらぁ」
「あはは。その時こそ、背中流してやるよ」
いつか流す背中を押して、2人はそれぞれの場所へと退去する。
長い疲れを癒やす日を、夢に見て。
▼
「ふむ。人理焼却に加担する勢力。そして
セプテムから帰還してバイタルチェックを受ける銀時。傍らではダ・ヴィンチがデータを確認しながら、特異点で起こった話を聞いているところだ。
「夢の中?思念体?精神と時の間?みたいな所で話したってのに、あっさり信じるのかよ」
「信じるもなにも、私たちは四方八方が暗闇だ。どんな情報でも欲しいし、蜘蛛の糸にも縋る思いで手探りしてる。
手繰り寄せた糸を登るか、離すかを決めるまでは手元に置き続けるのさ。そのうち役に立つかもしれない」
「ま、そこら辺のことさ任せっからいいけど。
…詰みを狙うってどういう意味と思う?」
「例えば、海を渡るためのたった1隻の船を剥奪、若しくはその船長を抹消しておく。
例えば、世界に1つだけの扉の鍵を私たちの手の届かない場所に保管する。なんて、物語の前提を破壊する行為と予想するしかないね。
最悪なところは、私たちが知らないこと。
特異点に来た時点で詰みなんて、判別のしようがない」
物語に必要なキーパーソンを掠め取る。
アーサー王伝説のエクスカリバーを、本の外でアーサー以外が引き抜いて持ち去るような暴挙だ。物語は成り立たなくなるし、その本はアーサー王伝説という名前すら付けられない廃棄物となるだろう。
ここまで戦ってきて、何かが欠けていたと思ったことはない。いや、知らないだけで既に手は回っていた可能性がある。
序盤だから影響が無いだけで、特異点を攻略するごとに加担者の妨害が苛烈になれば────
「報告してくれてありがとう。
今回は謎が多い。寺田 辰五郎の所属と目的、定々と手を組んでいたブネという悪魔……まあ細かいことは纏めて考えるとして」
考えるのはやめた。
どうせ似たようなことを考えて、分からずに終わる。
無理なときは無理だ。無理と分かってから別の出口をこじ開ければいい。
「君にしか分からないことも多々ある。きっと、次の特異点でも銀時君の知識が必要不可欠。
いざ頼りたいときに疲れてちゃ意味ないからね。ゆっくりと英気を養っておくれ?」
「ならジャン○の続き読ませてくれよ」
「ん〜!そのうち作家サーヴァントを召喚しよう!」
なにせいま銀時に迫る危機は、ジャン○が読めないという一点しか頭にないのだから。
※次回予告は一番下にあります。私の独り言なのでスルーして大丈夫です。
お久しぶりです、ひとりのリクです。
牢城災建帝国セプテム、いかがでしたか。
幣作のレフはカルデアスに溶けてしまいましたよね。この特異点を狂気に染める人物が消えてしまったことで“永続狂気帝国“は生まれず、代わりに乱入した定々によって“牢城災建帝国“となったわけであります。
レフ、お前のせいでストーリー考えるの面倒だったんだぞ。もう一回カルデアスに沈めよ。
今回、色々と謝罪したいことが…!
意味深な描写を入れ過ぎたせいでテンポ悪くなってしまいました。定々の影丸設定はもうちょい序盤で分かりやすく匂わせるべきだった。など…全体的に書いてるときから反省しまくりのセプテムでした。
テンポ悪くて申し訳ありませんでした!
セプテムはちょっと話数が多くなっちゃいましたね。魔神柱定々との決着戦ということもあり、生半可な改造だと私が納得できなくて……!
オケアノスはシンプルな構成にします。練り直します。定々の強さを爆上げしたこと、本当に反省してます。1部トップクラスの生存力を持たせてしまいました。
本当なら今頃、ぐだイベを執筆していたのですが、お察しの通りボリューム増えまくって余裕で間に合いませんでした。
車に轢かれてから立ち直る間、定々の強さを盛り盛りしていたのが原因です。やってしまったものはしょうがない!
……イベント執筆、夏になります。別作品の投稿予告日が迫っているので、イベントをずらします。申し訳ありません!
謝罪に追加しまして、訂正です。
イベントのアンケートにて、『ぐだぐだ本能寺-3ブリーフの野望-』と記載していましたが、正しくは『ぐだぐだ本能寺-ブリーフ3の野望-』でした。
牢城災建帝国セプテムも読んでくださって、ありがとうございます!
たびたび感想を頂いてやる気が出ました!
オルレアン以降、4人もの読者さまが評価をしてくれて、大変嬉しく思います。50文字制限あるのよ……熱量すごい!ありがとう!こんなの最後まで書くしかないですね?
お気に入り登録、ありがとうございます!銀魂×fateというクロスオーバーに飢えた読者さまに、目一杯楽しんでもらえる作品を目指します。どうかこれからも、『fate/銀時も行くオーダー』を宜しくお願い致します!
【次回予告】
本編から少しだけ離れて、ぐだぐだしたサイドストーリーを読んでみませんか?
「初めまして、諸君。私の名は
金林檎農園”栄チーム”を運営する農家だ」
食べればスタミナが回復するという不思議な食べ物、金林檎の栽培に励む少年がカルデアに現れる。
「そして彼は
「………なんでだよ。………なんでだよ!」
頭を抱えて白目を剥く玄人、角憑。
2人の訪問からイベントは幕を上げた。
「金林檎ってなに?」
「スタミナを回復するアイテムのことだ」
「スタミナってなに?」
「APのことだ。金林檎なら全回復する。ホーム画面の左下を見るんだ。そこに緑色のゲージがあるだろう。
これがある限り、君たちはクエストに行くことが出来る。要するに素材周回をするのに必要なアイテムさ」
「いやそうじゃなくて!!
なんで俺らにスタミナの概念があるんだよ!?」
ゲームの闇が銀時たちに迫り来る!
「我らが農園、栄チームを守っていただきたい」
「つか、守るって誰からだよ」
「それは……ブリーフ3からさ」
「魔獣ですらない!?」
お楽しみに!
【ぐだぐだ林檎農園 配布サーヴァント】
レア度:SR(星4)
真名:ブリーフ3
クラス:アルターエゴ
宝具:Quick
「すぐ成仏する三武将」
味方全体に回避付与(1回)+自身に[謝罪状態]を付与する※
※スキルを全て使用した状態のターン開始時、先頭のサーヴァントに宝具威力アップ&攻撃力アップ(3ターン)付与〈オーバーチャージで効果アップ〉+ NP付与[Lv.1]+自身に即死付与【デメリット】