メタ注意。
「レフ助けてレフ助けてレフ助けてレフ助けてレフ助けてレフ助けてレフ助けてレフ助けてレフ助けてレフ助けて」
オルガマリーは体操座りで遠くを見つめ、呪文の如くレフの名前を呼んでいた。
そんな彼女に声を掛けられず佇むのは立香、マシュ、銀時。青髪の男性、キャスターはというと、耳糞を掻き出していた。
「おいキャスター、うちの所長になにしてくれてんだ」
「FGO2部の後半OP観せた」
「ネタバレじゃねえか!いまは1部だ馬鹿野郎!」
「いやアンタもなに言ってんだ」
立香の冷ややかなツッコミに動じない銀時。
マシュに至ってはこれまでの経緯をオルガマリーの耳元で囁いていた。
なお、マシュが研究服から戦闘服になっていたり、キャスターといつ遭遇したのかは割愛する。
読者はほかの2次創作で腐るほど読んだことだろう。
「まあ良いじゃねえか。オメーさんたちの探し人も見つかったし、あとは本陣に乗り込むだけだ」
「さっさと行こうぜ。セイバーってのを倒せば万々歳なんだろ?カルデアってのと連絡できねーんだ、勝手にやっちまおうぜ」
「それで事態が収まるなら意義なーし。マシュのことも気になるし、早く終わらせるに越したことはないよね」
「所長がお疲れですので、不肖マシュ・キリエライト頑張ります」
「フォウ!」
それぞれが意気込みを見せる。
4人と1匹の和気藹々とした雰囲気をオルガマリーは横目で確認。
(な、な、なんだというのこの空気はッ!?)
うわ言を漏らす外面とは裏腹に、内面ではかなり焦っていた。
(マジなんなのよ、同窓会に遅れてきたポジション!?
中学時代パッとしなかったのをそのまま引きずってる感じ?
サイレン○サイレンの『吉○さん』みたいなやつじゃない!もうすでに最悪の事態なのに、帰りたくても帰れないじゃない!」
両手で頭を抱えながら上半身を逸らしていく。
無論、カルデアの目的云々も立香と銀時には説明済みだ。
ここにきてオルガマリーのボッチが加速するのは誰も口に出さない。
「所長、途中から声に出てます」
「そりゃあ出るわよ!なんなのよこの新オープニング!
私これどこに沈んでんの!?第二部ってなに!?それにこれ、Aチー……」
混乱が混乱を呼び、ついに吹っ切れたと言わんばかりにオープニングにツッコミを入れる。その途中、電子音が立香の腕につけたバングルから鳴った。
『つ、繋がった!?おおい、誰か聞こえる!?』
全員の注目が集まる。
声の主はロマニ。必死な様子から咄嗟に藤丸が反応した。
「ドクター!よかった、ご無事だったんですね!
こちら藤丸、マシュ、銀さん、フォウ、それに所長がいます!」
最後に聞いた切迫した声と変わらないことから、カルデアの状況を想像しながら先ずは生存報告を優先する。
『おぉ、藤丸くん!それに皆んなも無事で……って、えぇ!?所長もそこにいるのかい!?』
ロマニの安堵も束の間。
所長の生存に大袈裟な反応を見せる。
「……ロマニね。余計な言葉は気に食わないけど、それよりもなぜ貴方がそこにいるの。レフはどこよ?」
冷ややかで苛立ちが込められた言葉。
生存を喜んでいないと受かったオルガマリーの機嫌は最悪だ。しかし、銀時はロマニの反応に別の意味があることを察した。
『本当に所長の声だ……。っと、失礼。
所長、落ち着いて聞いてください。カルデアはいま、原因不明の爆発によって職員の生存者は20人もいません。そして、僕が指揮を執っているのは僕より上の階級がいないからです』
「…………は?」
ロマニの言葉を咀嚼出来ず、だがふざけた事実だと根底で理解する。その返答はアホのように口元を開け、恐怖から顔を背けようとする声だった。
事態はそれでも待ってはくれない。ロマニはその反応を初めから知っていたように、受け止めろと意味を込めて続ける。
『レフ教授がいた管制室が爆心地。つまり、彼の生存は絶望的です。通信手段はおろか、近づくこともままなりません』
「あ、あ……レフ、嘘よ……」
膝から崩れ落ち、いまにも泣きそうな顔で地面を見つめる。それだけの存在だったことが想像できるが、ロマニは追悼に費やす時間がいまではないと判断している。
『心中お察ししますが、現状について……』
早口でマスター候補者の容態……危篤状態を告げる。
到底無視出来るものではないと、流石にオルガマリーは意識を切り替えて47人の冷凍保存を指示した。許可のない冷凍保存は重犯罪だが、状況を鑑みて生存を優先させた。
ことの確認を終えるや、オルガマリーは疲れ果てた声で告げる。
「少し、1人にさせて」
出会って数時間の立香だけでなく、マシュやロマニもかける言葉を持ってはいなかった。
オルガマリーの背中を横目で見ていた銀時は、頃合いを見て歩き始めた。
───
──
─
瓦礫にもたれかかるオルガマリーは無気力そのもの。
このさき、永遠に会うことの叶わない存在に馳せる時間。人類史の存続を引き換えに1秒の失意を過ごしているとしても、心が立ち直れないことには本人にもどうしようもない。
「隣、いいか?」
そんなとき、最も話したくない男が隣に現れた。
「さっき私は1人にしてと言ったはずよ。アナタ、女性のあとをつけるなんて失礼にも程があるのではなくて?」
厳しく言葉を突きつけるつもりも、声音は宙を浮遊するほどの勢いしかなく。簡単に男の相席を許してしまう。
「トイレっつーわけでもなさそうだったからな。
え、まさか……」
「いま思ってること口に出したら呪い殺すわよ」
言動一つに苛立ち始めたとき。
「ま、骸骨が跋扈してんだ。ガキンチョ1人ってのは心配なわけよ。心配ついでの独り言だ、煩かったら立香たちんとこに戻りな」
最もらしい理由を押しつけて、銀髪を瓦礫に落ち着かせながらゆっくりと語り始めた。
▼
「とあるガキがいた。親も知らず、兄弟もいない。知ってるのは血の臭いと、戦場での生き方だけ。一日中駆け回って身体を返り血塗れにする、そんなヤンチャ坊主だ」
目の前のヤツを斬って殺して、漁って飯を喰らう。
そんな当たり前な日々を過ごしていた。ハタから見れば異常な生き方も、ガキは物心ついたときからしてきたこと。だから悪いとも思わない。それを指摘する人間も現れず、意味も考えずに敵を斬り続けていた。
”屍を食べる鬼がいると聞いて来てみれば……。
随分と可愛い鬼がいたものですね”
そんなある日、1人の男がガキに手を差し出した。ガキは男を殺さず、言われるままに男のあとを追った。
ガキは男のもとで初めて文字を、言葉の意味を知った。
男はやがて塾を開き、身寄りのない子供たちを集めて教えを説く。日が進むにつれて子供たちは増え、ガキはいつしか仲間も手に入れた。戦場じゃ永遠に知らなかった道徳だ、ガキは徐々に人らしくなっていった。
”筋は良い。けど残念、私には届きません”
そして、初めての負けも知った。男は強かった。戦場で幾万人も斬ってきたガキを笑顔も崩さずに圧倒するほどに。あまりの悔しさに1日中挑んだが、ついぞ勝つことはなかった。それも新鮮で、ガキはそんな時間が好きになっていった。
ガキは次第に男を恩師として見るようになり、周りもそれを面白おかしく言っていた。んな日々が永遠に続けば良いと本気で思っていた。
そんなとき、恩師はとある組織に連行されて行った。
名目は不穏分子の育成という名のテロリスト。国にあだなす人間として、恩師は冤罪で牢に繋がれ、やがて死刑を言い渡された。
ガキは怒り狂った。ガキの仲間もそれに同調し、先生を奪った国から先生を奪還するために剣を握った。
たった1人のために国を相手にしていたら、いつの間にかクソみてぇなヤツらが割り込んできて、瞬く間に地獄は完成した。しかし、ガキはよーやく先生の元にまでたどり着くことができたんだ。
「戦場でな」
「……え?」
拘束された恩師が戦場にいる。
唐突な話にオルガマリーは思わず疑問符を漏らす。
なぜ戦場にいるのか、と。
自分の話に存外聞き入り、鋭く感情に表れるほど熱中していることに不思議な感情を抱きながら、銀時は少しだけ視線を上げた。
この先にある、どうしようもない結末をまた噛み締める。
「目の前には斬首を待つ先生。後ろには拘束された仲間。
早い話、負けたんだよ。何年も闘って、沢山の犠牲を積み上げた果てに、負けちまったんだ」
「───あ」
僅かな間をおいて、オルガマリーは結論にたどり着く。
頭の良さが窺い知れるほど想像力がある。そして、悲嘆と恐怖で結末を察する表情には、冷徹で完璧であろうとする姿はない。オルガマリーの本当の顔を知れた銀時は、自分の話に意味があったと確信して話を続ける。
「ヤツらは選択を迫った。
先生の首を斬るか、仲間を斬るか。どちらかしか助けられず、もう片方は死ぬ。それ以外の道は……思い浮かばなかった。
仲間は必死に自分を殺せと言う。当然だ、自分の命よりも先生の命が大事だったからな。俺だってそう言うさ」
「それで……なにを選んだの?」
オルガマリーの問い。
どっち、ではなく、なにを。
ほかの何かを選択したことを期待していたのだ。
でないと、男は報われないではないか。
息を呑み、銀時の次の言葉に注目する。
銀時もオルガマリーの様子を知りながら、ただ事実のみを口にした。
「先生を斬った」
”ありがとう”
恩師の最期の言葉を思い出しながら。
「この手で、首を斬った」
返答に期待通りの答えは出来ない。
オルガマリーは顔を俯かせてしまった。
報われないということを、いまの自分と薄らと重ね合わせていた。幼少期から壮絶な人生を歩んでも、結局たどり着く未来は望む場所じゃない。なら、自分だってそうなることも大いにあり得る。
「だがよ」
「あ……」
ポン、と。
オルガマリーの頭に手をのせる。
暗い心に、明るく声をかけた。
「斬ったのも、そこに立ったのも自分の意思だ。後悔してねえし、後悔しちゃならねえ。それだけが成長したガキに出来る責任の取り方だった」
ようやく。
オルガマリーは銀時の表情まで見る余裕が生まれる。
そこには作り話では到底作れない、朗らかな笑みを向ける強い意志がある。
「戦場で大切なモン失ったガキには、何故か人との縁が繋がって大切なモンが増えていった。だから今度は取りこぼさないように、テメェに出来ることなら全力で身体張って守った。
だから今も、どこかでしぶとく生きてる。失ったモン忘れないように、手に入れたモン失くさないように足掻いてんのさ」
嘘と吐き捨てるのは簡単だ。
いままでも自分がしてきたことをここで繰り返せばいい。
だが…。
罵詈雑言を浴びせたにも関わらず身を案じて様子を見にきた。挙句、きっと身の上話をして背中を叩いてくれている。
「もう2度と、守れなかった笑顔がないように」
「……そう」
所々、隠しきれてはいなかったけど。
銀時の実体験を語っているのだと確信した。
銀時はオルガマリーの表情から陰が消えるのを見届けてから立ち上がる。
「オルガマリー、俺たちを信じろ。
汚くていい、完璧じゃなくていい、笑ってりゃなんとかなる。完璧じゃ誰も寄りつかねーし、完璧装っても知恵は出ねえ。
俺たちは互いに欠点補いながらこの
それに、と銀時は付け加える。
「こんな局面で後から死んだやつが現れても、きっとロクなもんじゃねえさ」
そうやって、銀時は耳糞をほじくり出しながら立ち去っていった。
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(両方)かまわん、やれ