fate/銀時も行くオーダー   作:ひとりのリク

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狙撃手へ

────炎上都市。

 

まず思い出すのは冬木の大災害。

あの日、正義の味方に救われて、同じ路を歩み始めた。

 

いまも、その心は変わらずにある。

だが、天体観測所に私たちの声は届かない。

 

「来たか」

 

狙撃手は大気の揺れから相手の動きを知り、ゆっくりとした所作で和弓と剣を手元に投影する。

 

「やはり、交わす言葉はない……」

 

ここに正義、悪を隔てる理由はない。

互いの正義が衝突するとき、負けたほうが悪になるのではなく、勝ったほうが正義に近づく。負けたから悪など、この世の半分は悪に満ちてしまう。

 

いまから始まるのは敗者のいない戦い。

人理を救う旅路の始まりだ。

 

 

 

 

 

 

刻は数分前に戻る。

 

キャスターがバーサーカーを引きつけている間、再び狙撃手対策を練り直すことになったカルデア一同。その原因を作った銀時は鼻毛を宙に散らしていた。

 

「マスター、狙撃手を相手にするなら1つ提案がある。良いだろうか?」

「おぉ、思いついたら言ってくれ。どんなモンでもとにかくアイデアが欲しいとこだ」

 

対狙撃手会議はジークの挙手で始まる。

 

「俺の宝具でマシュをアーチャーの上空に吹き飛ばす。そうすれば狙撃する暇もなく距離を詰められる」

 

『ええええええ!?ジークくん、それってバルムンクを発射台にするってことだよね!?』

 

「あぁ、心配はいらない。この宝具は魔力消費が少ないうえ、連発が可能だ。駆けつければ直ぐに打ち直せる」

「なるほど、私の盾ならそれが可能かもしれません。先輩たちを守りながら距離を詰めるよりも確実です!」

 

物事の重大性、危険性をあっさりと受け入れるサーヴァントたち。マシュは前傾姿勢すぎてロマニが引き気味だ。

 

『嘘だろ、本当に実行する気なの…!?

宝具を耐えたあとに戦闘するなんて、マシュの身体が以つか分からない。僕は…』

 

「いいわ、それで行きましょう」

 

オルガマリーがロマニの声に割って強く頷く。

 

『えぇ!?

所長こそ真っ先に反対すると思っていたんですが!』

 

ロマニの意見は最もだ。

ジークの宝具で吹き飛ばされ、即座に戦闘に移行する。簡単に言っているが、危険どころか下手を打てば敗北直行。もう少し安全で確実な意見があるはずと思いながら、所長に聞こうとした矢先の肯定。

 

オルガも自分の発言に内心は驚いていた。

燃え盛る都市のなかで頭がおかしくなったのか?

いいや、違う。

 

「マシュがやれると言ったんだもの。

私には信じることしかできないわよ」

「所長!はい、任せてください!!」

 

マシュの背中を押して、横目で見たのは銀時のアホ面。

デタラメに過ぎる悲惨な過去を聞いた。本当なのかも分からない、出会って数時間の男の過去を信じられるはずがなかった。

 

ただ、ここは右も左も分からない特異点。

脳裏にちらつく、レイシフト直前の記憶。

たまたま、銀時の言葉が届く環境に来てしまった。数十年の付き合いがあろうと譲らないはずの席に、少しだけの隙間を許してしまうくらいには時と場所が整ってしまったのだ。

 

(いまはそれに賭ける。この先、マシュ達が生き抜くためには無茶を通してなんぼよ)

 

自分の勘に頼り、デタラメな対狙撃手対策は実行が決定した。

 

「けど、サーヴァントを相手にした実践は事実上これが初めてよね。流石にマシュだけじゃ得策とは言えない」

 

考え込むオルガに、立香は反射的に挙げようとした手を引っ込める。

 

(もし、ドクターの言う通りマシュが宝具を耐えたあとに戦えなかったら……?俺が居ても何もできないんじゃないか?)

 

無茶な作戦に飛び込むだけなら喜んで挙手する。

しかし、マシュの隣に立つだけの自分になにが出来るのか。戦えない以上、根性論を叫んだところでクソの役にも立たない。それでもマシュのマスターなら立つべきなのか?

決めるに迷う立場で一瞬の迷いを生んだとき。

 

「俺も同席するぜ。銀さん、そんくらいなら耐えられっから」

 

またも銀時は危険な場所に軽々と踏み込んでいく。

 

「しかし、銀時。相手はサーヴァントです。徘徊している竜牙兵や骸骨とは比べ物になりません!」

「サーヴァントってのがどんだけ強えかは知らねぇ。けどよ、足引っ張るくらいなら最初から手挙げてもない」

 

銀時の言葉は、立香の迷いを見透かし、それは正しいものだと言うように視線を向けていた。ぽんと頭に手を置いて、不安げな表情をわしゃわしゃと散らかす。

 

「マロンが言ってる通り、マシュが戦えるとは限らねえからな。立香、オメーは騎士王さま相手にすんだ。ここは大人に任せとけって」

「…そっか。うん、四の五の言ってられないね。直ぐに追いつきます!」

 

頼もしい声に、所長が開き直っている理由が分かった気がする。レイシフト前、マシュと3人で居たときの心強さを信じることにした。

 

『僕、ロマニなんだけど』

 

彼の抗議は流されて、バルムンクによるシールダー奇襲作戦は実行に移された。

 

 

 

 

 

 

狙撃手、アーチャーの眼は燃え盛る都市から飛来する、銀色の息吹を捉えていた。

 

「あれは……まさか、宝具か!?」

 

直後、射抜くために引き絞られている矢を解き、回避へ移ろうとしたとき。更なる予想外の出来事に眉をひそめ、その場に留まった。

空を仰いだ先で、流星の如く夜空へ駆けていく宝具。凡そ狙い通りとは思えない軌道に首を傾げる。

 

「この距離だとして、これほどの威力を放つ所有者が外すか?」

 

それは見事に的を外し、呆気なく消えていく。

宝具の余波を腕で受けながら呟いた視線の先で。

 

「はああああああッ!!!!」

 

着陸する飛行機のように、地面に向かって凄まじいスピードで迫る少女を確認していた。

 

「なっ…!?」

 

束の間の驚き。

それだけで奇襲は成功したと言ってもいい。

咄嗟に矢を持ち直し、少女よりも大きな盾への防御に役割を変える。

 

「くっ!?」

 

重い一撃が矢を叩き、逃げを許さない勢いはアーチャーの身体を大きく吹き飛ばしていた。

体勢を崩すことに成功したマシュは、盾を握りしめて。

 

「浅い…!直ぐに次を、ヅアッ!?」

 

全身を駆け抜ける電流に、身体を硬直させてしまう。

 

「宝具に乗って距離を詰めるか!あまりにもバカバカしくて意表を突かれたよ。だが、その身体では奇襲目的の一撃がせいぜい」

 

あくまでも宝具を受ける形での奇襲。これほど雑で、自身を削るものも中々拝めないだろう。

 

「本命はこの間に近づくことか。その様子だとあと十秒は動けまい。せいぜい、己の実力を過信したことを悔やむがいい」

 

ゆえに一撃で仕留められれば理想。それ以外は失敗もいいところ。加えて、マシュはサーヴァントとしての力を完全に発揮できないのだ。

 

「え、それって自己紹介ですか、コノヤロー」

 

単身で乗り込んでいれば、ここで仲間たちが射抜かれる姿を見せつけられる羽目になっていた。

 

「もう1人!?」

「遅えっ!!!」

 

二重の奇襲、侍の刃がアーチャーの身体を真横から殴りつける。咄嗟の守りをかわし、追撃の一振りで顎をかち上げた。

 

「大丈夫か、マシュ!?」

「はいっ…!

銀時のお陰で硬直も解けました。感謝します」

 

僅かな遮蔽物を利用した奇襲は成功した。

 

立ち上がるマシュを横目に、血を拭うアーチャーを見てニヤリと笑って見せる。

 

「貴様……まさか、盾の少女と?」

「冷蔵庫に入って核爆弾から身を守る野郎がいるんだ。それと比べりゃ、こんな大盾に守られての奇襲なんざ波乗り気分だね」

「確かに、宝具に飛ばされているときの感覚はサーフィンのときに味わう情報と似たものでした。私、早速1つやりたい事を叶えたみたいです!」

「あ、ごめん訂正するわ。サーフィンってもっと安全だった。だから変な覚え方しちゃダメだよマシュちゃん」

 

ウキウキと目を輝かせるマシュ。

下手なことを覚えてしまえば所長や立香がうるさいため、柔らかく興奮を抑える。敵を前にして毒気を抜く、そんな雰囲気のなか。

 

「本当ですか?では、サーフィンも実現するために役目を果たします!」

「うし、海に行くのも追加だ!カメラが回るぜ!」

 

マシュと銀時は初めてサーヴァントを相手に武器を握った。

 

 

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