松尾琴美は勇者である   作:時 司

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外伝3話 大赦愛媛支部記録 三、

大赦愛媛支部記録     記録 速水 誠一(はやみ せいいち)

 

ゴールデンウイーク、それは旧世紀から続く祝日が連続した連休のことであり、人々はみな旅行に出かけたり、友人と集まったり、とにかく好きなことに打ち込む日々である。

去年の支部内でもゴルフに出かけるもの、他県に遊びに行くものなど多くの人が連休を享受していた。しかし今年は一切そのような光景は見られない。

勇者による結界外調査がゴールデンウイーク初日に決行されたのだ。前回の記録から改善を施した次世代型勇者システムは前回の比にならない距離の遠征の中でも勇者自身を保護する役割を完遂していた。

また前回耐熱性に難がありサンプルの回収に失敗した羅摩であるが改良を加えた結果今回は成功した。ここで得られたサンプルは本庁に送られ、あるものの開発に利用されるのだという。詳細は聞いていないが、どうやら神樹様の力を外の大地へと投影して勇者以外の人類でも結界の外で生存できるようにするらしい。

しかし問題点も発生していた。勇者の武器が調査に適していない可能性が高いのである。そこで武器システムに銃剣と盾を追加した。持ち替えの動作なく射撃と斬撃が繰り出せる銃剣ならば結界外のバーテックスの群れにも対抗できるであろうし、盾は旋刃盤とは違い当然守るために設計されているためサンプル採集の際に役立つと期待されての採用である。

この二種の武器は理論上すべての状況の敵に対応できるため、次世代型勇者システムの初期からある複製、量産の際には過去5種の武器は削除されて銃剣と盾のみが採用される可能性が高い推測される。

ところでー、

 

 

 

ここまで書いたところで部屋の扉が開き一人の神官が入ってきた。大赦の仮面を付けているがおおよそ誰かは予測が付く。

「速水神官で間違いないですよね。」

「ああ、青野神官…ですね、日々の管理役職ご苦労です。」

「今日はその管理役職についての話で来ました。」

「ほう。」

彼女はいわば勇者3名のお目付け役、直接あったことはなかったか。

「速水神官は本当に出雲までの派遣を決行させるのですか?」

出雲大社…神樹様の一部になられたと言われる神様が西暦の時代に祀られていた場所。過去の暦では11月、神有月に日本全国の神様が集まると言われていた場所。そして本庁が何かこの状況を打破できるものがあると踏んでいる場所…。

「なにか、異議があるのですか。」

「はい。現在の3名では出雲への遠征はできません。」

「…なるほど。一番近くで勇者を見ている青野神官の言うことはもっともですね。もちろんいきなり出雲へは行かせません。私も本庁の神官ではないのでね。彼らは支部のことだと無茶を言い出す。…失礼、つい愚痴を。」

「いえ。速水神官は本庁の無理な指示をそのまま受け入れる人とは思ってませんので。」

ずいぶん信頼されているようだ。しかし何も本庁への反抗心のみがこの決断をさせているのではない。

「あまり私を買いかぶらないほうがいい。君ほど勇者に肩入れしてる立場ではない。」

「そう…ですね。確認したかったことはできたので私はこれで失礼します。」

「大変な役目ですが頑張ってください。」

静まった部屋で私は支部の計画に眼を向ける。比婆山…。神々の母の御陵ありし土地。

私も本庁に反感を抱きながら、何一つ変わらないのかもしれない。

 

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