大赦愛媛支部記録 記録
決戦は終わった。勇者3名は生存。被害は来島海峡大橋崩落のみと人的被害が出なかったのは本当に喜ばしいことである。来島海峡大橋の崩落事故は老朽化による事故として公表された。実際には世界の命運を賭けて少女3人が戦ったということを私たちは忘れてはならない。「それなのに」だ、本庁は次世代型勇者システムのデータのみを残してそれ以外はすべて抹消せよとの命令が出た。私は内心反対しながらも支部のサーバーの中でどれが勇者システムに関連するデータで、どれが関連しないものなのかを選別していた。もちろん防衛ラインとして稼働させた来島海峡大橋の運用データや次世代型勇者システム本体のデータは残す。しかしだ、彼女ら3人の記録は抹消しなくてはならない。私はどうしてもすべてのデータが必要に思える。確かに本庁が言わんとすることも理解できないわけではない。勇者というものが大赦外に出たときにこの社会に与える影響は計り知れない。そういう点では本庁は非常に合理的な判断をしているのだ。それでも世界を繋いだ勇者であることに違いはない。私は2つの狭間で葛藤していた。
そんな時だ。あるフォルダーが私の眼に止まった。作成者はうまく偽装されていて不明だ。一通り目を通した。これは大赦支部記録の原本じゃないか。原本なら本庁に送られて検閲済のものしか残っていないはずだが…。それも複製された痕跡もある。今これを消したところでサーバー外のどこかで保存されることになる。誰だ…。心当たりがある人物は…一人しかいない。
「青野か…。」
不意に呟いていた。そうか、それが彼女の勇者との向き合い方であったということか。私は本庁に反感を持ちながらも大赦の神官としてこの役目をになっていた。一方で彼女は勇者の神官としてこの役目に就いていたのか。彼女の不鮮明だった姿勢がようやく理解できた気がする。ならば私もこの件についての考えがまとめよう。私は勇者達に付く。勇者自体の記録もシステムのデータにもぐりこませれば問題ない。
数日間でデータの選別が終わった。といっても3名の勇者の記録は何一つ抹消するリストには入れておらず、むしろそれらを残すための理由をあれやこれやと考えていた時間の方が長かった。ただしあの原本だけはどうしても残すための理由が見つからなかった。そこでコピーをして保存することにした。紙ならばたとえサーバー内をくまなく探しても見つかることはない。そして今日は3名の勇者に最後の報告をする日でもある。私は必ず伝える。
「いい先生を持ったものだ。」と。
大赦愛媛支部記録 ー終巻
この外伝最終話を持って結城友奈は勇者である二次創作小説「松尾琴美は勇者である」は完結となりました。ここまで読んでいただきありがとうございました。また次の作品で会うことができると信じて!