外伝1話 大赦愛媛支部記録 一、
大赦愛媛支部記録
神世紀269年年末よりこれを記す。 記録
西暦の奉火祭より約270年、我々人類が神樹様の結界の内に身を潜めてから長い年月が過ぎた。しかし最近になって結界の外に天の神の使いである「バーテックス」が現れた。
これを受けた本庁は西暦の時代に表向きには凍結していた勇者システムを改良し、来るべき時に備えよと命令を下した。そこで白羽の矢が立ったのがこの愛媛支部である。
白羽の矢が立った以上は何もしないという訳には行かない。勇者システムを扱うのは無垢な少女でなければならない。選ばれたのは松尾琴美、八木伊雪、須田彩葉の三人。須田以外は愛媛県外在住であり、他の支部や本庁を通じて集めてもらうことになった。彼女らのお目付け役の教員も決まった。名前は青野…と言っていたかな。
記録者である私の記録を忘れていた。私は速水誠一、今回の「勇者」についての記録統括を拝名した神官である。
勇者システムについてをここから記録する。
勇者システムとは神様の力を人間に投影するいわば降霊術のようなものだ。私も実際に眼にしたことはないが、西暦の時代には勇者システムを駆使し、天の神からこの神樹様をお守りになった勇者様がいることから強大な力を投影できたのだと推察する。
先に述べたように西暦の終わり、そして神世紀のはじめにこの勇者システムは表面上は凍結されていた。しかし実際は秘密裏に研究が進められており、この緊急時において正式に凍結を解除された。この研究自体も何をしていたのかはわからない。
とにかく、今私に課されている任務は勇者システム…、そうだな、ここでは次世代型勇者システムと呼称するものとしよう。その次世代型を実戦で使っても十分な性能を引き出せるものにすることである。
西暦の記録から武器を選定した。刀、手甲、旋刃盤、ボウガン、それと鎌である。鎌だけは本庁の上里様から直接のご選定をいただいた武器である。個人としてはなぜ鎌を選定されたのかは謎であるが立場上疑問の声をあげることはしない。
この武器選定についてであるが、使用データを取ったのちの変更はあり得ることを明記する。これは事態が西暦と異なっている可能性があることと、使用環境が異なるからだ。
西暦の時代ではバーテックスに明確な侵攻意志があったために神樹様による結界内の樹海化と呼ばれる防御結界が展開され、勇者様方はその樹海で戦われていたという記録があった。しかし今回の場合は現在は明確な侵攻意志は見られない。
そのため、同時に結界外の調査も行われることとなった。現在結界外の観測は
加えて次世代型の試験型とな今回のシステムでは神樹様のエネルギー負担を軽減させるためにシステムの統一化が行われることとなった。簡潔にいうならば勇者システムの量産化である。さらに試験型を簡素なものにして誰にでも扱えるものに統一しておけば、いざ発展させる時にあれこれ付け加えるだけでよいからだ。
さて…3月から実際に次世代型勇者システムの運用が始まるわけではあるが、私にも何が起こるのかは予測できない。しかし、バーテックスが現れた以上は行動しなければいけないのだ。
神世紀270年2月