IS 灰色の向こうに   作:ズーキー

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鈴が転校してきた初日夜。

 

今宮流星は、非常に困惑していた。

 

 

「グスッ……一夏の馬鹿ァ……」

 

目の前で泣いているのは、夕方模擬戦を行ったばかりの鈴。

場所は流星と楯無の寮の部屋だが、楯無は忙しいらしく、留守にしていた。

 

事の発端はつい先程に遡る。

近くの廊下で泣きじゃくっていた鈴を流星が発見した。

第4アリーナの廊下で別れたはずだが、と流星は首を傾げつつも放ってはおけないため今に至る。

 

流石に泣きじゃくっている鈴を傍らに、参考書や資料を読み耽ることは出来なかったらしく、彼女に紅茶を用意する。

 

「とりあえず、落ち着いたか?」

 

流星のベッドでひたすら泣いていた鈴だが、泣いて少し落ち着いたらしく流星の言葉をうけ、視線を流星に向けた。

 

「ありがと、少し落ち着いた」

 

「そうかい。紅茶入れたからこっちに来ないか?」

 

「もうちょっとだけ、泣き止んでから……」

 

「……流石に枕をこれ以上涙で濡らされるのは困るんだが……」

 

困った様子でつぶやく流星の言葉に、鈴はハッとなった。

泣きじゃくっていたから気づかなかったが、自身が寝転んでいたのは流星のベッドで、顔を埋めていたのは流星の──つまりは異性の枕だ。

 

「〜〜〜〜〜っ!?」

 

恥ずかしさに鈴は顔を真っ赤にして、飛び上がるような勢いで椅子に移動した。

恥ずかしさを誤魔化すように、淹れたての紅茶を勢いよく口に含む。

 

「熱っ!」

 

「……お前、馬鹿だろ」

 

「っ〜〜、馬鹿ってなによ馬鹿ァ!も、もう一杯淹れなさいよ!」

 

空のティーカップを差し出す鈴に、流星は呆れた様子で紅茶を淹れる。

酒か何かと勘違いしてないか、という言葉を流星は飲み込んだ。

 

 

「それで、一夏と何があったんだ」

 

尋ねる流星に、鈴はほんの少し俯く。

だが、流石にもう完全に落ち着いたのか鈴は口を開いた。

 

 

「─────────」

 

 

経緯としては、鈴は流星と別れた後更衣室にいた一夏にドリンクとタオルを差し入れした所から始まった。

 

2人でしばらく会話した後、一夏が箒と寮の部屋が同じであることが発覚。

 

鈴は幼馴染が同じ部屋で良かったと語る一夏の台詞を受け、一夏と箒の寮の部屋に乗り込んだ。

 

その際、箒の反対などもあり一筋縄ではいかないことを理解。

 

そのまま、転校前にした約束の話を一夏に持ちかけた。

 

だが、それをまともに覚えていない一夏にショックを受けたとの事だった。

 

 

 

 

「その約束って?」

 

 

「そ、その言いにくいんだけどね?私の料理の腕が上達したら毎日酢豚を食べ、食べてくれる?っていう…………」

 

 

恥ずかしそうに呟く鈴を前に、流星は再び首を傾げて考えた。

少しだけ真面目に考えたが、わからないと言った様子で申し訳なさそうに鈴に尋ねる。

 

「ごめん、よくわからない」

 

鈴はジト目で流星を睨んだ。

真剣に考えている様子の流星を見て、意を決したように答える。

 

「……そ、そのね。本来、酢豚は味噌汁で言うのが正しいのよ」

 

「毎日味噌汁を飲む……?」

 

さらに困惑する流星を前に、鈴の脳裏を流星が過去少年兵をやっていた話がよぎる。

この手の話は本当に知らないのだろう。

 

「ぐっ……!その、ね!!日本では毎日味噌汁を飲んで貰うってことは要するに!毎日作って上げられる状況……!つまりね!」

 

 

そこまで言われれば、流石に流星も理解が出来た。

 

 

「あー……。なるほど、告白の類いか。なんかその、言わせて悪かった」

 

「わ、わかればいいのよ!それで一夏はなんて言ったと思う!?」

 

テーブルに両手をついて乗り出す鈴。

流星は苦笑いを浮かべながら、答える。

二人とも紅茶を飲む手が完全に止まっていた。

 

 

「そのまんま受け取ったとしか……。タダ飯食わせてくれるとか……?」

 

「………………正解よ」

 

「……」

 

呆れて声が出ない流星。

一夏の唐変木さはどこかしら察していたが、想像を超えていたものであることに今気が付いたのであった。

だが、と完全に一夏のせいにするのもいけないと流星は深呼吸する。

 

「えーっと、鈴。言いづらいんだが、それを酢豚にしたから伝わりにくかったんだと思う。相手は唐変木一夏だからな。超直球超ストレートを投げない限り……」

 

「そうね、(あたし)にも非がない訳じゃないものね。勢いで引っぱたいちゃったし……」

 

鈴はそういい、しゅんとする。

こうして自身の落ち度も省みれる鈴に、流星は感心する。

果たして自分がもしその立場であった場合、そのように反省出来るのだろうか。

そんなことを考え、流星は紅茶を飲む手を再び動かす。

 

「ありがと、明日にでもまた引っぱたいたことは謝ってみる」

 

鈴はそう言うと、紅茶を飲む。

 

 

「しかし、中国に行ってもずっと初恋の相手を想い続けてたのか。一夏も幸せ者だな」

 

 

「……うん、そうよね?」

 

どこか歯切れの悪い返事に、流星は小首を傾げる。

鈴はそれに対し、少しだけ自身に言い聞かせるようにつぶやく。

 

 

「…(あたし)は一夏が好き。それは紛れもない事実だから」

 

 

「?」

 

まるで何かを恐れているような言葉。

流星はあえて聞こえてないフリをする。

 

 

 

鈴は少し温くなった紅茶を半分ほど飲み干すと、流星に向き合い、そういえば、と口を開いた。

 

 

 

「今宮って、誰か好きな人とかいるの?」

 

「──ゲホッ」

 

不意打ちに、流星は紅茶でむせた。

少しだけ苦しそうにしながら、カップをテーブルに置く。

 

「どうなのよ?」

 

「残念ながらいないな」

 

「本当に?女の(あたし)が言うのもなんだけど、IS学園って女子のレベル高いと思うんだけど、いいと思う子とか居ないの?」

 

「他の場所をあまり知らないから何とも言えないが、そうかもしれないな。皆可愛いと思う。女子としても意識する。でもそれだけだよ」

 

流星の解答に鈴は口をとんがらせた。

 

 

 

「つまんないの」

 

「ほっとけ」

 

 

「なら、この部屋の子とかはどうなのよ?顔も名前も知らないけど、多分可愛いんでしょ?気になるとかないの?」

 

鈴は言い終わったあたりで、流星が怪訝な顔で固まっていることに気がついた。

その突然の表情の変化に、鈴は一瞬驚く。

流星はその反応を見て我に返ったようで頭を片手で抑えた。

 

「……正直な話、多分この学園で1番美人だと思うには思うさ」

 

「おぉ、意外な反応ね……」

 

「だけど、うん、その……クセがあるというかなんと言うか」

 

どう言葉に表すか困る流星に、鈴は不思議そうな顔をするしか出来なかった。

 

「よく分からないけど、ちょっと独特な人なのね」

 

 

「ああ」

 

 

「って、もうこんな時間!?明日の準備しなきゃ!」

 

 

時計に気が付いた鈴は、残りの紅茶を急いで飲み干す。

 

そしてそのまま持ってきていた荷物を背負うと部屋の入り口まで早足で歩いていく。

扉を半分あけたところで見送りに来た流星の方へ向き直った。

 

 

「その、愚痴に付き合ってくれてありがとう。お陰でスッキリしたわ」

 

「明日のランチで許してやろう」

 

「意趣返しのつもり?いいけどね」

 

 

じゃあね!と鈴は部屋を後にする。

 

 

流星はそれを見送った後、扉を閉めた。

そのまま部屋のテーブルに置いていたカップを洗う。

 

 

一通り洗い終わった後、流星は再び参考書と資料を出しテーブルに腰をかけた。

 

何か良い武装が無いかと、目を通す。

 

 

「だーれだ?」

 

「!」

 

突然、目が誰かの手で防がれた。

夢中で読んでいて気が付かなかったと、流星は読んでいたものをテーブルに置く。

 

「帰って来たのか楯無」

 

「いやーこの時期は本当に仕事が多くて困るわねー」

 

手を離しつつ楯無は身体を大きくのばす。

流星はそんな楯無を振り返って見た後、立ち上がるとキッチンの方へ足を運ぶ。

 

カーテンをかけ、部屋着に着替える楯無をよそに流星は新しいカップに紅茶を淹れ再びテーブルに置いた。

 

「あら、気が利くわね」

 

「実はセシリアに良い茶葉が手に入ったとかで貰っててな。よく分からないけど淹れ方だけ教わって淹れてみた感じだ」

 

楯無と流星はテーブルの前に腰をかけ、それぞれ紅茶の入ったカップを手に取った。

そのまま寛いだ様子で口をつける。

 

 

「美味しいわね。そして、流星くんはこれをダシに、私のいない間に女の子を部屋に連れ込んだってわけね」

 

「ブハッ」

 

楯無は目に指を当て泣き真似をする。

傍から見れば完全に本気の行動にしか見えない迫真の演技だが、慣れている流星が無駄に反応することはない。

 

流星が反応したのはリアクションではなく、楯無のその言葉の方だ。

 

「言い方が悪くないか」

 

「事実でしょう?」

 

「その通りではあるけど」

 

「生徒会長として悲しいわ……まさか流星くんが女の子を部屋に連れ込むようなケダモノだったなんて……っ!」

 

「紅茶取り上げるぞ」

 

「いやん、それはダメ」

 

楯無はそう言いつつ、再びカップを口へ。

紅茶の香りと風味を楽しみ、満足したように一息ついた。

 

 

「鈴ちゃんと模擬戦、したんでしょ?」

 

楯無の言葉に同じく紅茶を飲んで一息ついていた流星は楯無に視線を向ける。

 

「情報が早いな。まさか見ていたのか?」

 

「ちょっと小耳に挟んでね。第3アリーナで記録(ログ)を見たの」

 

「それで、コーチ的にはどうだった?」

 

流星の問いかけに、楯無は扇子を何処からか取り出し開いた。

そこには『大健闘』と達筆な文字で書かれていた。

 

「流星くんの戦い方が上手なのもあるけど、基本動作も順調に出来て来てると思うわ。瞬間的な凄まじい射撃精度も、上手いこと活かしてたからね」

 

「それで、悪い点は?」

 

「そうね、欠点は織斑先生に先に言われちゃったけど、戦い方に合わせて武装を増やす事とやっぱり基本的な技術ね。基本足回りになるわ」

 

「やっぱりか」

 

「だから特訓メニューはそれを意識したものにしてきたから。はいこれ」

 

と、楯無は何処からか取り出した紙を流星に渡す。

そこに書かれていたのは流星の特訓メニューが書かれていた。

流星はその紙を読み、頭にある程度叩き込むと楯無に視線を戻した。

 

 

「ありがとう。忙しい中ここまでしてくれることには頭が上がらないな」

 

「ふふふ、その分生徒会の用事もたくさん用意してるから、また明日の朝楽しみにしててね」

 

「頭が痛くなってきた……」

 

積み上がる書類の山を思い出し、流星は思わず頭を抱える。

黙々とこなしてはいても、疲れるものは疲れるのだ。

 

「流星くんがいると事務的な作業捗るのよね~」

 

「はいはい…。絶対生徒会の人数増やすべきだと思うんだけど?」

 

「そうは言われても中々いい子が居なくてね?元々忙しい子も多いし、他にも私が信用できるかっていうのもあるからね〜」

 

 

「難儀な話だ」

 

 

流星は溜息を付き、椅子に大きくもたれ掛かる。

 

現生徒会長は更識楯無だ。

 

だから現在の生徒会は学園を、生徒を守るという側面が大きい。

生徒を真に守る側に──IS学園側につけるかどうか、が判断材料になる。

 

その点、国家代表候補生などは国家寄りの部分がどうしても出てしまう為、簡単には入れられなかった。

 

その本人が忙しいというのもある。

 

だが1番は、その国家代表候補生や国家代表が信用たる人物であったとしても、後ろにいる国があるため問題は複雑になるからだ。

公平性が欠けるというイチャモンを付けられる問題ももちろん発生するだろう。

更識家関係者以外は。

 

その点、国籍が曖昧な状態の流星はその手の問題は発生しない。

 

もちろん、それもまた簡単ではない。

楯無が性格を見極める必要があり、信用出来ると判断される事も必要である。

 

 

「と、なると簪が入るのがやはり1番理想なんだけど───────わかった、わかったからそんな顔するな。悪かったって」

 

理由は姉妹の不仲というか、すれ違い。

それを自覚しているからこそ、楯無は俯く。

流星はその様子を見て罪悪感を感じたのか、近くの棚から菓子を取り楯無に渡した。

 

 

「ありがとう。でも確かに流星くんの言う通りなのはあるのよ。私が生徒会長のうちに、簪ちゃんを入れられたらいいと思うんだけど……」

 

「もし、手伝えることがあるなら手伝うさ。とは言っても流石に出過ぎた真似はしないけど」

 

流星は飲み干したカップをキッチンへ運びつつ、そう告げた。

楯無は自身のカップに残っている紅茶を眺めながら、不安を口にする。

 

「……仲直り出来ると思う?」

 

「わからない。それは姉妹の問題だ」

 

「そうよね……」

 

「だけど重要なのは仲直りしようとするか、だと俺は思う。仲直り出来る機会が作れるならそれは逃さない方がいい」

 

と、流星は何か思い出したように目を伏せる。

簡単な内容だが、実際はそう簡単な話でも無いのはわかっている。

 

だが、流星は知っていた。

実際に仲直りの機会が、二度と来なくなってしまうよりは何度も失敗する方がよっぽどマシだと。

 

「わかったわ。簪ちゃんの方が一区切りついたら頑張って話し掛けてみる」

 

 

そう言い、残りの紅茶を飲み干す楯無。

流星は自身のティーセットを洗い、片付けるとふと思いついたように呟いた。

 

 

「今日はこの手の話多くないか……?」

 

 

◽︎

 

翌日の朝。

流星は生徒会での仕事を朝早くからこなし、その後整備室に足を運んでいた。

要件はもちろん、先日言われた通り武装を増やす為である。

 

専用機である『時雨』は元々は日本のある企業が作った、特に目立った所のないISだった。

目指したのはラファールのような質のいい量産機。実現しなかったのは言うまでもない。

その企業はとうに潰れ、展示会で展示されていたものに流星が触れて起動し、彼の専用機となった。

 

その後、『時雨』はIS学園側のISとして学園が支援する事になった。

基本的な武装は既に用意されている。

それ以外の武装は自作するか、学園を通じて外注するしかない。

 

 

「ここはこうなって……」

 

流星は基本的に学園の用意してある武装を、ほぼ流用することにした。

補充するにしても何にせよ、すぐに替えがきくからである。

ISの拡張領域などを確認しつつ、武装のチェックも済ませる。

 

今そのまま導入したのは、『打鉄』に使われるような近接ブレード、ラファールに使われるようなアサルトライフル、そしてナイフだ。

 

 

(もうひとつ欲しいな……)

 

残り少しの容量になった状況で、流星は悩んでいた。

流星の戦い方的に、相手の虚をつけたり搦手に使えるものが理想だ。

好みは勿論量産されているような汎用的な武装であるが…。

 

 

しかし、流星は思いつかず、持っていた調整用のキーボードを横の棚に置く。

 

 

「!簪か」

 

「おはよう……」

 

「ああ、おはよう」

 

整備室の扉が開き、入ってきた簪は流星に挨拶だけすると、自身の調整中のISに向き合う。

 

互いに基本交わす言葉もなく、各々の作業に向かい合う。

それが普通。

 

だった。

 

 

「なぁ、簪」

 

「……何?」

 

唐突に声をかける流星に、簪は少し驚いた様子で振り返った。

流星は簪の方に身体を向け、資料を見せつつ尋ねる。

 

 

「容量が少なくて済む武装とかのアテってないか?」

 

「……え?」

 

「残りの拡張領域(バススロット)が少ないんだが、まだ武器が欲しくてな。俺の戦い方的に武装が多い方がいいらしいから、なるべく詰め込みたいんだが、何か武装はないか?」

 

昨夜から本気で悩んでいた流星は、ISとよく向き合っている簪だからこそ何かないかと尋ねたのだった。

簪もそれを察したのか、流星の問いに戸惑いつつも答える。

 

「容量が少ないならまず火器は外す必要があるかも。……IS用の武器だと容量をとるから……」

 

「……なるほど」

 

真剣に簪の意見に耳を傾け、聞きに入る流星。

そのまま少し俯くようにして考え込んでいる。

その様子を見てどこかほっとしていた。

流星は簪を更識ではなく、簪として見ている。

 

おそらく、整備室でこうして作業していなければ互いに話す事すらなかっただろうが簪にとってはそんな始まりだからこそ、そう確信していた。

 

 

「なら、ブーメランとかどうだ?」

 

「容量を考えるとブーメランは粗悪品しか多分積めないから、厳しいと思う……。返ってこない可能性すら……」

 

「弓矢とかは……」

 

「……矢がいるから、結局ある程度容量がいる……」

 

「……厳しいか」

 

悩む流星。

簪は顎に手を当てつつ、静かに考えていた。

 

「……」

 

脳裏に浮かぶは先日の彼と中国の代表候補生との模擬戦。

実は、偶然居合わせた簪もアレを見ていたのだった。

 

「今宮君は…」

 

「ん?」

 

「本当は、純粋な武器が欲しいわけじゃないんでしょ……?」

 

「ああ、そうなってくるな」

 

自身の考えを読まれ、意外といった様子で目を丸める流星。

その様子を見て簪は少しだけ得した気分になる。

 

「なら、左の腕に何か着けるとか…」

 

「何か……か」

 

「例えばISにはダメージをほとんど与えられないけど、対IS用ではない小口径の銃とか……っっっ」

 

と、そこで何か思い出したように口を噤んだ。

今の発想はどちらかというとISからではなく、自身が見てるようなヒーロー物などの特撮やアニメといったものからの発想だからだ。

思わず出てしまった為、簪は1人恥ずかしさに悶えていた。

 

だが、そんな簪に気が付くこともなく、流星はその意見を聞き、考える。

 

そして、彼の表情が何か閃いたものに変わるのは早かった。

 

 

「ありがとう簪!お陰で思い付いた」

 

「え?えっ!?」

 

「腕にあるものを着ける。これならいい感じに使えそうだ!」

 

笑顔でそう言い放つ流星は、即座に自身のISに向かい合う。

基本的にいつも本か何かに向かい合ってるイメージと掛け離れた、珍しい満面の笑み。

時々見せている、意地の悪そうな笑みともぜんぜん違った。

簪は困惑しながらも、流星に尋ねた。

 

「な、何を付けるの?」

 

「ちょっと待ってろ、えーっとな」

 

流星は近くにあった紙と鉛筆を手に取ると、簡単にスケッチを描く。

描き上がっていくそれを見て、簪はすぐに理解した。

 

「フックショット?」

 

「ああ。ワイヤーと先端のフックを撃ち出して引っ掛けるだけになるんだが、割と有用だと思ってな」

 

「巻き取り、というか、引き寄せる機能は?フックの細かい形状は……?」

 

こころなしか目を輝かせて見ている簪に、流星は気付く。

こういったものに興味があるのか、と流星はスケッチを改めて眺めた。

 

「巻き取り機能は……そうだな、容量的にあるには有るが、反抗する相手を引き寄せる程の力はなく、不意打ちで引き寄せる形か、こちら側がスラスターを節約して近付く感じになるな。フックの形状はフックが相手に食らいつくような形にするつもりだ」

 

「作るの?」

 

簪の言葉に、流星は少し考え込んだ。

IS学園ということもあり、材料は揃っている。

そして武装の構造は到って簡単だ。

 

 

「他の火器とか作るより遥かに楽だろうが、俺はそういう装備を作ったことは無いからな。難しいな」

 

だが、と流星は簪と向かい合って近くの資料を掲げてみせた。

 

 

「材料も資料も揃っているし、丁度いいから、自分でやってみようと思う。出来る保証はないけどな」

 

「あ、あの今宮君……」

 

「?どうした簪」

 

簪を突き動かすのは純粋な好奇心。

簡易的な武装だが、ロマンを感じる武装。

彼はその武装を使いこなせる気がした。

それが見たかったというのが、1番だった。

 

 

「私も、手伝っていい……?」

 

 

目を丸めて驚く流星。

簪がこんなことを言い出すと思わなかったからだ。

 

「ありがたい話だがいいのか?簪は専用機を作ってるんじゃないのか?」

 

「うん、でもこの武装はそんな時間かからないから……」

 

「ならよろしく頼む。心強いけど簪も忙しかったら無理しなくていいからな?」

 

「大丈夫」

 

簪の言葉に、流星は並々ならぬ力強さを感じた。

流星は近くの端末に手を伸ばしつつ、簪に向かって告げる。

時間はHRまで、まだ少しある。

 

 

「じゃあ、早速設計図を作るか」

 

 

こうして、2人は武装製作を開始した。

 

 

 




今更ながらの改めての補足。
既に出ていますが、流星は瞬間的な射撃精度と槍が武器。

早撃ちと狙撃が合わさるような瞬間的な狙撃は優秀。
とはいえセシリアもかなり早く、純粋な狙撃の精度ではセシリアに勝てない。


槍は少し使っていた事がある+楯無さん仕込み。
実はナイフの方が慣れているがISではあまり使えていない。

武器の扱いが雑なのは、それに気を遣える程器用では無かったから&余裕がなかった。
または奪ったり拾う、修理するなどで事足りて居たから。




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