IS 灰色の向こうに   作:ズーキー

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(…気まずくてアリーナに来たはいいけど…練習に身が入らないわね…)

 

第4アリーナのど真ん中で鈴は一人佇んでいた。

整備室へは今日は行っていない。

顔が出しづらかったのもあり、鈴は自身の練習を理由に行っていない。

 

この時間、奇跡的にも他に使用者は居なかった。

甲龍を装着した状態で溜息をつく。

その表情はどこか暗い。

 

高速で移動しながらの射撃練習中だったのだが、いつもより精度が悪かった。

思い当たる節はある。

技術的でも身体的でもなく、メンタル的なことだろう。

 

 

 

「ちょっと鈴さん、宜しくて?」

 

 

突然声を掛けられ振り返る。

そこにいたのはISスーツ姿のセシリアだ。

 

「セシリア、模擬戦なら悪いけど今日は───」

 

「いえ、模擬戦を申し込みに来たのではありませんわよ?」

 

その言葉に鈴は小首を傾げる。

だとすると一体なんの用があって、ここで自分に話し掛けたのだろうか。

ISに関しても理論派なセシリアが感覚でやっている自身に聞くとは思えなかった。

 

「聞きたい事が少々。宜しくて?」

 

「?別にいいけど、何よ?」

 

コホン、とセシリアは一拍置く。

改まった様子で鈴に向き直ると口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「───鈴さんは、流星さんが好きでして?」

 

その言葉を聞いた瞬間は鈴も意味が分からなかった。

唐突であり反応が遅れた鈴だが、意味を飲み込むうちにみるみると顔が赤くなっていった。

ビデオの再生ボタンを押したように唐突にむせ返る。

何かを発しようとしたのだろう。

 

 

「ぶはっ!?いきなりなに言い出すのよ!?っていうかなんでそう思うのよ!?」

 

「女の勘…ですわ。その反応だと図星と見まして?」

 

「……」

 

得意げになるセシリアに鈴は押し黙る。

こればかりはバレたくなかった。

同じ人物を好きになってたが故、非難や嫌悪されると感じたからだ。

いや、されるべきだと鈴は柄にもなく考える。

 

 

「……フラれたばかりなの、言ったでしょ?それなのにそんなことなんて────」

 

「───あら?失恋から一転、また新たな恋というのもロマンチックでありだと思いますけど…」

 

「そ、それは…そうかもしれないけど…」

 

いつになく歯切れの悪い鈴を前にセシリアはその理由を察する。

視線をあまり合わせようとしないあたり、後ろめたさでも感じているのだろう。

軽くため息をつく。

普段はさばさばしている彼女も、恋愛が絡むとこうも乙女になるものか。

──いや、自身も傍から見るときっとそうなのだろう。

 

 

「…実はと言うと、(わたくし)と箒さん2人ともあの時部屋のすぐ外に居ましたのよ?」

 

「え…」

 

セシリアの言葉に息が詰まる。

過ぎた事ではある、しかしそれを他人に聞かれたいたとなると話は変わってくる。

どうしてあのやり取りを知っていて、自身を非難しないのか。

困惑を隠せずにいる鈴を前にセシリアは続ける。

 

 

「ですから、1部始終は失礼ながら知っています」

 

「だ、だったら余計…軽蔑するでしょ?おかしいと思わない…?」

 

鈴は俯きつつ、消え入りそうな言葉を紡ぐ。

どのような形であれ、一夏が好きだった──それなのに今は別の人物に好意を抱いていることは正しいのだろうか。

しかも、こんなにも早く。

 

セシリアははっきりと答える。

 

 

「いいえ、軽蔑なんてしませんわ。オルコット家当主としてそのような事はありえないと誓いましょう」

 

「…!」

 

「鈴さんのそれは歪な形であったかもしれません。とはいえ、気持ちは本物でした。一つが終わって、新しいものが始まった。それだけでしてよ」

 

 

それに、とセシリアは続ける。

 

 

「何より鈴さんは(わたくし)達の中で一番最初に想いを告げました。その勇気を笑う人が居るなら(わたくし)────セシリア・オルコットが許しませんわ」

 

「セシリア…」

 

「ですからお顔を上げてくださいな。自分を許すのも大事ですわよ?」

 

セシリアはそう告げると、鈴に優しく微笑んだ。

鈴はほんの少し呆気に取られた様子でいたが、すぐに我に返るとセシリアの言葉を心の内で反芻する。

そして、一連のセシリアの肯定の言葉もまた今の鈴には何よりも力強かった。

少しだけ目頭が熱くなったが、意地でそれを抑え込むと顔をあげる。

 

その瞳に、ここ最近までの悩みと先の弱々しさは既になかった。

 

 

「ありがと。セシリアって意外と良い奴?」

 

「ふふ、意外も何も私は最初からパーフェクトな淑女ですわ」

 

「あ、そのノリは相変わらずなのね…」

 

「そ、それに(わたくし)も友人がそんな顔をしているのは…あまり気分が良くありませんでしたし…」

 

恥ずかしそうに言うセシリアに鈴は自然と笑みが零れた。

 

 

「──あんたのこと、応援してるわよ?」

 

「──お互いに、ですわね」

 

 

「ふふ、ありがと。さぁ、これで心置き無く───!」

 

「ふふふ、そうですわね。手合わせ願えまして?」

 

そのまま2人は自然に模擬戦へと移る。

何時になく晴れやかな気分だと鈴は思った。

アリーナを軽やかに駆けながら、衝撃砲を放つ。

降り注ぐ閃光を凌ぎ、接近戦を挑む。

セシリアはそれをかわし、逃げながら鈴の隙を伺う。

絶え間なく入れ替わる攻防。

射撃戦ではセシリアが、接近戦では鈴が。

それぞれ踊るようにISを駆る。

 

それを影から見ていた本音は事情を把握し、ホッとひと安心する。

鈴の様子が気になった本音は、途中で整備室を後にし此処にやって来たのだった。

セシリアとは違い、どのように声を掛けていいか分からなかったがどうやら無事に解決したようだ。

ここ数日見れなかった曇りない鈴の笑顔。

それをこうもあっさりと取り戻してみせたセシリアへ視線を移す。

 

「凄いな〜…セッシー」

 

見抜く事は出来てもかける言葉が思い付かなかった。

親友とギクシャクしていた時もそうだ。

普段の鈴や今回のセシリアの様にはいかない。

だからこそ、本音は尊敬の念が篭もった視線を上空で舞う2人に向ける。

 

カッコよくて誇らしい友人達を眺めつつ、1人呟く。

 

 

「でも負けないよ〜、りんりん」

 

 

1人呟く宣戦布告。

本人も恥ずかしがっているのもあり、なんとも締まらない。

 

 

 

「負けないって、何にだよ?」

 

 

「───うひゃあ!?いいいいまみー!?」

 

いきなり背後から現れた流星に本音は驚き飛び退く。

その動きは普段から掛け離れた俊敏なものだ。

 

 

「本音、そんな俊敏に動けたんだな…」

 

「本音、驚き過ぎ」

 

「か、かんちゃんも?どうしてここに」

 

「部分展開しての試運転かな?」

 

本音の動きに対しマイペースな反応で応じる流星。

どうやら彼自体は先のつぶやきにあまり興味はないらしく、それ以上聞かなかった。

理由を答えた簪は腕部分を展開しながら見せる。

流星は自身の待機状態のISから投影ディスプレイを出し、簪のISの数値をモニタリングしている。

すっかりそういった姿が板についてきた、と本音は内心考える。

 

「今宮君、どう?」

 

「今のところ問題はない。そこに並べてある試験用の箱とかは掴めるか?」

 

「うん。こっちの方では力加減も問題無さそう。数値は?」

 

「誤差の範囲内」

 

「じゃあ今度は───」

 

淡々と進んでいくやり取りを前に本音も手伝おうと流星に歩み寄る。

すると流星は本音に端末を手渡した。

視線をディスプレイから離さずに用件を告げる。

 

 

「脚部分の値がちょっとズレてるから、頼む」

 

「どーんと任せて〜」

 

手馴れた手つきで操作し、本音は調整を進める。

整備科志望なこともありその調整も絶妙である。

すぐに脚部分の調整が終わり、テストする。

調子は良好。

流星の担当していた腕部はまだかかる為、簪は軽くその状態で走ってみる。

コケるくらいならば絶対防御がある為怪我の心配は皆無だった。

再び数値が表示され、それと本音は睨めっこする。

また、その間簪は感度や重心のがかかり方などを直接調整していた。

 

そうこうしているうちに腕部の調整が終わる。

物を持ち上げ、掴み、振り、投げる。

また細かな角度や振り向き時、等々更にデータを細かに調整する。

 

 

そして腕部脚部ともに作業を終えた所で、空中にいた鈴が此方に降りてきた。

模擬戦をしていたセシリアも同じように降りてくる。

地上に降り立った所で2人はISを解除する。

あー良い汗かいたー、なんて台詞を吐きつつ3人の方にやってくる。

 

 

「簪ー、今どんな感じ?」

 

「今ちょうど、腕部と脚部の最終調整が終わったところ」

 

「成程、でしたら見た所あとはスラスターと武器…と言ったところですのね?」

 

「う、うん」

 

横から簪の部分展開しているISをセシリアは興味深そうに見つめる。

簪は困った様子で流星のいる方へ半歩下がった。

それ以上下がらないのはセシリアへの気遣いか。

と、そこで簪の気まずそうな表情に気付いたセシリアは頭を軽く提げた。

 

「紹介が遅れましたわね。(わたくし)、イギリスの国家代表候補生セシリア・オルコットと申します。お名前、伺っても?」

 

「…日本国家代表候補生、更識…簪」

 

日本の国家代表候補生と聞きセシリアの眉がピクリと動く。

更識という名前に反応したのかと一瞬不安になる簪だったが、セシリアの行動に目を丸くした。

プライドの高そうな彼女がその綺麗な金髪を下に垂らせ、頭を下げている。

何事かと驚く簪にセシリアはその意味を口にする。

 

 

「───(わたくし)、貴女の事を身の程知らずと言ったことがありまして…。努力している事なんてすぐ見抜けた筈ですのに。ごめんなさい、私が愚かでしたわ」

 

「え?えっ!?」

 

一体なんの話だと簪は更に困惑する。

陰口を誰かに叩かれた事はある。

それを聞いた事も。

しかしまさかその程度の──ある意味客観的に見て正論と取れる発言を謝罪されるとは思わなかった。

反応に困る。

 

「えっと…、別に気にしてない…」

 

「お優しいのですわね。よろしければ同じ代表候補生同士、これからも仲良くして下さいませんか?」

 

「う、うん…」

 

スッキリしたような表情のセシリアと未だ困惑する簪。

本音はどこか満足気であった。

そのままセシリアは簪のISに興味を示したらしく、簪を質問攻めする。

本音はおそるおそる答える簪の補佐をしていた。

 

鈴はというと、クラス代表決定戦に関する話をセシリアや本音から聞いており事情は知っている。

故にもう1人の当事者である流星に視線を移す。

 

 

「『流星』、もしかして簪にあの発端話してないわけ?」

 

「ん?え、ああ?そりゃ当然話してない」

 

一瞬違和感を感じた流星だが、それが呼ばれ方が変わった為であることにすぐに気がついた。

別に呼び方などに殆ど流星は拘らないし、他人行儀な呼び方よりは不思議と気分が良い。

故に違和感の正体に気付いた後は特に思う所もなく、普通に返していた。

鈴自身は少し思い切ってやった事だったらしく、少しだけ照れたように顔を逸らしていた。

 

平然と自身の作業に戻る流星に気付き、頬を膨らませる。

一夏とはまた違った唐変木である事を鈴は再認識する。

そして此方だけが一方的に意識しているのが、また何とも悔しくて。

 

 

──見てなさい、そのうち振り向かせてやるんだから───!

 

 

捨て台詞のように心の中で呟く。

 

 

 

───素直になるのはもっと先かもしれないけど。

 

 

 

1歩近付いて流星のディスプレイを覗き込む。

屈託のない笑顔で彼に話し掛けた。

 

 

 

鈴が汗をかいていたことに気付き、臭いを気にして流星を殴るのはそれから2分後の話。

 

 

 

 

 

翌日の放課後。

別のアリーナにて一夏は模擬戦や訓練に励んでいた。

 

 

「──はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…っ」

 

雪片を地面に刺し、杖代わりにして立つ。

立て続けに行う練習、そして模擬戦。

それは決められたメニューではなく、闇雲に行っているもの。

反復する基礎のメニューを行い、相手を変えて模擬戦の繰り返し。

ひたすらISの訓練に躍起になる一夏に対し同席していた箒、セシリアやシャルルは不安そうな眼差しを向けていた。

 

 

「一夏さん、そろそろ休まれた方が…」

 

「まだだ、次はシャルル…頼む」

 

「一夏、流石に休んだ方が───」

 

「そうだ。休まなくては身に付くものも身に付かないぞ一夏」

 

心配する3人を見て、一夏はありがとうとだけ呟く。

 

───どうすればシャルロットを守れるか。

その事について考えに考えた一夏は己の無力さに改めて気付かされた。

守られてばかりで結局、時間稼ぎの事項を提示することしかままならない。

そんなものはいざと言う時まるで意味が無い。

 

世界最強の姉は誇らしいし、自慢の姉だ。

しかし自分はただその弟でしかなく、結局は何も出来ない。

 

 

「強く、ならなきゃいけないんだ。だから、休んでなんかいられない!」

 

ビジョンなど見えていない。

しかし、自身が強くなれば何かを守れる筈だと拳に力を入れ雪片を地面から引き抜く。

護られてばかりのガキではいられない。

 

それが、独りよがりな考え方だと気付くはずもなかった。

 

 

「一夏…。分かった、それじゃあ準備するね」

 

一夏が言う事を聞く気がないと悟り、シャルルは装備を確認する。

自身の事で思い悩んでいるという事を理解しているシャルルにとっても、それは居た堪れないものだった。

しかしどう声を掛ければいいのか、シャルル自身にも分からない。

 

 

「おい」

 

 

と、そこで唐突にアリーナの上空ハッチ付近から声が聞こえた。

ISを通して発している為、当然地上にいる一夏達にも聞こえている。

顔を上げ、一同は声の主を見つける。

上空に浮かぶ黒の塊。

ゴツゴツとしたそれは大きなレールカノンが付いていることもあり、さながら砲台のようだ。

そんな黒のISを纏ったラウラは一夏を睨み付ける。

 

 

「織斑一夏。私と勝負しろ」

 

「断る、お前とやる理由がねぇよ」

 

「お前にはなくても私にはある。貴様さえ居なければま、教官は…!」

 

「嫌だ。断る」

 

一夏も頭では理解している。

ラウラと模擬戦を行うのは貴重な経験であり、やるべきだ。

反射的に断ったのは、上から目線が気に食わなかった──それだけだった。

険悪な空気が二人の間に流れる。

一夏は相手にしたくなかったのか、背を向けシャルルに向き直る。

ラウラはその行動に怒りを顕にした。

 

 

「そうか。ならば無理矢理そうさせるだけだ」

 

ラウラのISの砲身が静かに動く。

照準を一夏に合わせると共に、レールカノンを撃ち出した。

 

「!」

 

一夏は即座に反応して雪片弐型を振るおうとする。

振り返り雪片を振るい始めたところで、二人の間に割り込む影があった。

 

 

「ドイツの人って随分と沸点が低いんだね」

 

「シャル…」

 

割り込んだのは盾を構えたシャルル。

照準を定めた瞬間から一歩早く動き出していた為間に合ったのだ。

弾を盾で逸らし、一夏を守る形となった。

シャルルはライフルを構えラウラと向かい合う。

 

「フランスの第二世代(アンティーク)如きが、私とシュヴァルツェア・レーゲンに適うと?」

 

「どうかな?未だ量産の目処すら立っていない機体よりは戦えるかもね」

 

「良いだろう。まずは貴様に力の差を教えてやらねばな。…!」

 

と、そこでアリーナのスピーカーから教員の声が鳴り響く。

唐突にハッチ部分から攻撃したのだ。

危険極まりない行動であった為、注意されるのは必然だった。

教員の怒声と注意喚起が聞こえる中、ラウラは砲身を上げ踵を返す。

 

「興が削がれた」

 

特に悪びれる様子もなく立ち去るその背を見ながら、一夏はある確信を持っていた。

共に織斑千冬に憧れる身。

しかしあの姿に見出したものはまるで逆だという事に。

拳に力が入る。

気付かずして心のうちにある思いを彼は呟いていた。

 

 

「強く、ならないと…」

 

 

 

「へぇ、そんな事があったのか」

 

「ええ、そうですわ。全く、あの転校生には困ったものですわ」

 

時間は経過し、同日寮の食堂。

夕食を食べながら流星は事の顛末をセシリアから聞いていた。

あらかた話終わり、やれやれと溜息をつくセシリアを前に流星は何とも言えないリアクションを返す。

関心が全くない訳ではないが、彼にとってはあくまで他人事らしかった。

正確には、予想通りという事もあり驚いていないだけなのもある。

 

彼の近くに座っていた簪や鈴、本音もその様子を聞いている最中だ。

彼の対角線上に座る一夏やその隣のシャルルは黙々と夕食を食べ進めている。

前のやり取りから、特に最低限の会話以外はしていない。

険悪な訳でもないが以前ほど一夏から流星に関わる事はここ少しの間減っていた。

 

ハンバーグを食べながら、セシリアの話を聞いている流星。

本音はそんな中違和感に気が付く。

主に流星というよりは、一夏やシャルルの視線から見抜いたのだった。

 

 

「そう言えば、おりむーっていまみーと喧嘩でもしたのー?」

 

投げかけられる質問に一夏は少しドキリとする。

発端がシャルルの件なこともあり、迂闊に説明は出来ないからだ。

更には、喧嘩したと言うにも少し違う。

平静を装いながら、一夏は応じる。

 

「別に喧嘩したとかじゃあないぞ?」

 

「ほんとー?ならいいけど」

 

本音は一夏の言葉を信用したのか、それ以上突っ込むことは無い。

それが聞こえていたのか、セシリアは少し心配そうに流星へ視線を戻した。

 

「一夏さんはあのように仰ってますけど、本当に何も無かったのですか?」

 

「ああ。喧嘩した訳じゃない」

 

別に隠す気はないが、別段好んで流星もシャルルの話を振る気は無い。

かといって特別歩み寄る気もない。

強いて言うならば、一夏もシャルルもある一言を発すればいいだけ。

それが状況を良い方へ動かす可能性を秘めている事に気付いていなかった。

 

喧嘩した訳ではない以上、セシリアも取り付く島はなかった。

複雑な気持ちで納得する。

 

「そうでしたか。ごめんなさいな、余計な詮索でした」

 

「問題ないな」

 

それより、と話題を切り替えるべく流星はセシリアに問いかける。

彼はいつの間にか定食を食べ終わっていた。

片手には何故かISの資料がある。

 

 

「話していい範囲でいいから、BT兵器について教えてくれないか」

 

「え、えぇ」

 

いつも通りの流星の様子にセシリアは少し苦笑する。

この様子がブレないのならば、鈴もこれから苦労するだろうと心のうちで呟く。

 

その様子を見た一夏は素早く食事を終わらせると席を立つ。

 

「一夏?随分と早いな」

 

疑問に思った箒が尋ねると一夏は振り返る事もなく、答える。

 

「ちょっと食後の運動でもしようかなってさ」

 

「運動?根を詰め過ぎるのも身体に毒だぞ」

 

「いや、大丈夫だ。ありがとう箒。シャルルは先に部屋に戻っててくれ」

 

「え?…うん、わかった」

 

足早にトレーを持ってその場を去る一夏。

彼はそのまま自室に戻り、私服に着替えるとここ最近箒に借りている木刀を持って部屋を出る。

そのまま、寮の敷地内にて一人素振りを始めた。

 

がむしゃらに木刀を振るい、雑念を振り払う。

明確な無力感を痛感したのはシャルルの件以降。

しかし、始まりはクラス対抗戦の襲撃事件直後だ。

 

守ったつもりが結局逆に守られていた。

かつて姉に救われたからこそ、そちら側であろうとしたのに。

自分はいつまで守られる存在なのだろうか。

 

木刀を握る拳に力が入る。

 

 

「一夏…」

 

その様子を箒は心配そうに遠くから見つめる。

明らかに一夏は何かに悩んでいる。

その理由までは分からないが、想い人が悩む様子をいつまでも見ているのは辛いことだった。

 

力になりたい、相談に乗りたい。

だが、自身には幼馴染であるということ以外何も無い。

セシリア達のように専用機を持っていれば何かが違ったかもしれない、と彼女もまた力を欲していた。

 

そんな2人の様子を、遠巻きに銀色のリスは覗き見ているのだった。

 

 

 

 

 

 




ここから週更新でいきます。
ファンシーで小柄な動物って何居ますかね…。

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