IS 灰色の向こうに   作:ズーキー

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夏休みが始まって、1週間が経過した。

特別何か起きる事もなく、平穏は続いている。

早朝からの一夏の稽古は続いている。

神社周りのランニングや筋トレも増えた事により、苛烈さは増している。

2日目からゲロゲロと吐くまでが日課になっていた。

ここ2日は収まってはいるが、体力が増えたのか慣れてしまったのかは謎である。

 

流星の方は、2日に1回程の頻度でIS学園に登校していた。

曰く、生徒会の仕事が多いんだそう。

 

そんな織斑一夏と今宮流星の2人がトランプで遊んでいる中、インターホンの音が鳴り響いた。

 

「ん?誰か来たのか?」

 

「見てくる」

 

流星は欠伸をしながら立ち上がり、インターホンの確認に向かう。

画面に映る来訪者の姿に彼は思わず眉を顰めた。

映っていたのはセールスや宅配でもなんでもなく────。

 

「あー…」

「どうした?流星。セールスっぽいなら断ってくれても────ってシャルか?」

 

彼の反応が気になったからか、後ろから一夏も画面を覗き込む。

映っていたのは見慣れた人物──シャルロット・デュノアである。

照り付ける炎天下の中、気合いの入った私服姿に何処か緊張した面持ち。

笑顔ではあるのだが、絶妙に硬い。

隣の鈍感は気が付かないであろうが、彼は見抜いていた。

 

すぐに通話ボタンを押そうとする一夏に流星は待ったをかける。

 

「俺、二階行ってるよ」

「どうしてだよ?お前シャルと仲悪かったっけ?」

「違うさ。ただ、向こうは俺がいるって知らないだろ」

「流星が居たらダメなのか?」

「…ダメだと思うけどな」

 

首を傾げる一夏を前に流星は溜息をつく。

これ以上の発言はシャルロットに悪いと判断した為だった。

 

呆れる流星を他所に一夏は通話で返事だけして玄関へ。

流星はトランプを片付けにかかった。

 

『シャル?突然でびっくりしたぜ』

『ほ、本日はお日柄もよく──!?』

『?』

『あ、いやそのー。IS学園で同じクラスのシャルロット・デュノアです───おお織斑君はいらっしゃいますか───じゃないや、えーっとその…き───』

『き?』

『来ちゃった…っ』

 

通話状態で放置されたインターホンから聞こえる声。

心の準備が追い付いていなかったのか、テンパっているシャルロット。

 

明らかに嬉しそうなシャルロットの様子に、流星は頭を抑えたくなった。

十数秒して、居間のドアが開く。

一夏はシャルロットの為に麦茶を用意しに台所の方へ。

彼に連れられ入ってきたシャルロットはすぐに流星に気がついた。

 

「あれ……?流星も来てたの?」

 

「悪いな、2人きりにしてやれなくて」

「な、何言ってるの流星!?ぼぼ僕は別に──」

「来ちゃったって言うくらいにはしゃいでただろ」

「そ、それは言わないで!?」

 

シャルロットは慌てて流星に詰め寄る。

はいはい、と軽く流す流星。

ところで、とシャルロットは訝しむような視線を彼に向けた。

 

「昼一に来たつもりなんだけど、流星ってもっと前から?────もしかして───」

「怖気が走る想像はよしてくれ。ここの所泊まってるんだよ」

 

すぐにライバル認定しようとするシャルロットに対し、流星は語気を強めて返す。

それもこれも女子9率割以上という環境により、一夏からすれば同性の友達が貴重であるのは当然。

一夏の鈍感さも相まって焦がれる者から警戒されるのは分かるのだが…。

 

納得するシャルロット。

今後一夏について相談する相手にしようと胸中で呟く。

 

そんなことも露知らず、一夏は麦茶とコップを片手に戻ってきた。

ソファに腰をかけるシャルの対面に一夏もまた腰を下ろす。

 

「ほい麦茶。今朝いれた所だからちょっと薄いかも」

「ありがとう。家の事って基本一夏がやってるの?」

「千冬姉は基本働いてるし、ずっと家を空けてたからなぁ。あ、夏休みは流星と分担してるぞ」

「当番制を忘れた一夏が全部やる事もあるけどな」

 

流星の言葉にそうだなぁと苦笑いの一夏。

──楽だから良いけどな、と続ける流星の言葉を聞きつつ一夏も頭に手をやる。

曰く、いつも一人でやってたからとのこと。

 

シャルロットは部屋をさりげなく見回す。

カウンター越しではあるが台所を見ても、この居間についても綺麗に片付いていた。

生活感はそれなりにある。

ホコリも無いあたり、物がない訳でなく整理整頓と掃除がなっているのだ。

 

「一夏っていい旦那さんになりそうだよね」

「ん?おう?ありがとう」

「あ、いや!その、今のはつい───じゃなくて!」

 

顔を真っ赤にするシャルロット。

その相手を咄嗟に妄想してしまったとは言え無かったらしい。

 

──と、不意にまたインターホンから音が聞こえた。

直感からくるものか、はたまた何か感じたのか。

あー、と間延びした声を漏らす流星。

確認しに向かう家主を他所に彼はもう1つコップを取りに行った。

 

 

…存外にも、予感というものは当たるらしい。

 

 

「ふふ、それではお邪魔しますわ───シャ、シャルロットさんに流星さん!?」

 

「あはは…や、やあセシリア」

 

「ようセシリア」

 

一夏に連れられ入ってきた客人(セシリア)は思わず2人を見て固まる。

ライバルの来訪&そもそも2人きりを期待していたシャルロットもまた、どんよりと凹み半分でいた。

脱いだ女優帽は玄関のコートハンガーに掛けられている。

帽子の高級感は周囲からかなり浮いて見える。

 

私服姿の2人。

普通なら彼女達の新鮮な姿に男子は心ときめかせるものである。

──が、一夏は特に気にした様子もない。

 

(流星さんは兎も角…シャルロットさんがどうしてここに。まさか抜け駆けを狙ってましたの?)

 

(とほほ、セシリアも同じ事を考えてたんだろうなぁ)

 

警戒しつつもセシリアは手に持っていた箱を机の上に置いた。

外箱の印字を見て流星はピクリと反応を示す。

 

「それって確か二駅先の───有名なやつだな」

 

「ええ、これを買いに来たのでどうせならとここに───。どうぞ戴いて下さいまし」

 

「確かシンプルなケーキで勝負してるんだっけ。生クリームも絶品らしいが何より生地が良いと聞いた。あと結構高いとかなんとか」

 

「最近思ったけど流星そういうの詳しいよな。…好きなのか?あ、サンキューセシリア。食器取ってくるよ」

 

慣れた様子で人数分の皿とフォークを用意する一夏。

 

並べられ各々の皿に違う種類のケーキが乗せられた。

自然と4人は食べ始める。

流石は有名店、と一夏は舌づつみを打つ。

無言で黙々と食べる流星、頬に手を当て美味しそうに食べるシャルロット。

綺麗な佇まいで静かに食べるセシリア──絵になると一夏は思わず注視していた。

 

その視線に気が付いたセシリアは小首を傾げ、誤解する。

笑顔で自身のケーキを切り分け、ケーキの一部を一夏の眼前へ。

───あまり褒められた行為ではありませんが、とだけ彼女は弁明しつつも嬉しそうに欲求に従った。

その手があったかと便乗するシャルロット。

自分のフォークで食べればいいだろうにという一夏の主張は勿論通らない。

流星は我関せずを貫く。

彼女達はおそるおそる一夏のケーキも気になると仄めかす。

真意はともかく意図を理解した一夏に彼女達は自身に食べさせることを要求────食べさせ合う光景が誕生した。

 

 

────そして、3度目のインターホンの音が部屋に鳴り響く。

 

新たな来客は3人。

箒、ラウラ、鈴であった。

何故かいる先客達に顔を顰める箒。

タイミングが悪かった、と鈴は苦笑いを浮かべていた。

ラウラに関していえば、気にした様子はない。

 

 

一同が並んで座っている中、一夏は眉間に手を当てた。

来客自体は別に構わないのだが──。

 

「どうして誰も来るって言わないんだ…」

「た、偶々今日が空いていただけだ」

「そ、そうですわ」

「そうだよ!」

 

「私は突然来て嫁を驚かせたかったのだ。どうだ、嬉しいだろう?」

 

「「「「───」」」」

 

「…連絡位入れても良いと思うんだけど…」

 

ラウラの言葉を前に押し黙る4人。

それとは別に一夏は居た堪れない様子で呟く。

何とも、自身がここに居る時点で彼女達の『一夏と2人きり』という目論見は端から破綻していた。

鈴は呆れる彼を横目にため息。

弾から流星がここに居ると聞いて遊びに来たのだとは誰も知らない。

肩を竦めてみせる流星を前に鈴はソファにもたれ掛かる。

 

「何よ。(あたし)達が突然来たら困るの?なになに、エロい物でも隠してたりするわけ?」

「ねーよ、人の家だぞ。何よりあの千冬さんから隠せると思うのか」

「つまんないわね」

「まっ、そういった類いのものは弾に預けてきたんだけどな」

「え゛っ」

「冗談だ。本気にするやつがあるか」

 

変な声を出して驚く鈴を見て───というよりは、流星の発言に固まるラウラ以外の女子sを見て彼は半目でそう告げた。

一夏は冗談と分かっているので突っ込まない──というより下手に発言したら疑いを持たれそうだからである。

話題を変える為にも一夏は提案する。

 

「とりあえず何かして遊ぶか。外は暑いし室内がいいよな」

 

 

こくりと頷く女子達。

横目で流星は困り顔を浮かべた。

 

「この人数で何するんだ?」

「んー、この人数でとなると…そうだ!」

 

一夏の頭上に電球が浮かぶ。

ドタバタと二階に上がり数分。

皆が首を傾げる中、何やら大きな箱を持って居間に戻ってきた。

一夏は手際よく準備を行う。

 

テーブルに広げられたボード、サイコロ、コマ、粘土、その他諸々。

薄いルールブック表紙や箱には『バルバロッサ』と表記されている。

ルールブックを見つけたラウラはそれを手に取り読み込んでいた。

 

暫くして、準備が終わった頃に流星はボードを覗き込んだ。

 

「ボードゲームってやつか?こないだやった人生ゲームとは随分違って見えるな」

「バルバロッサ──ふむ、これは我がドイツのゲームだな。流星、感謝してゲームに励むがいい」

「はいはいそうします。で?何時までそれ(ルールブック)睨んでるんだよ。セールのチラシじゃないんだ、サッと流せよ軍人サマ」

「───ラウラだ。流星、急かす男は嫌われるぞ」

「早合点する女も同じだろう」

「まずお前に足りないのは寛容さだな。もう少し嫁を見習え」

 

慣れているのか元兵士と現役軍人のやり取りに皆は無関心。

多少棘ついてはいるものの、互いへの戦闘時の評価は高いあたり仲が良いともとれる。

一夏もサイコロや粘土を手に取ると、立ち上がり皆にルール説明を始めた。

 

ゲーム名はバルバロッサ。

粘土で作ったものがどういうものか、伝わるか否かが肝である。

ポイント制であったり、サイコロやピンも使用する。

それぞれ作った粘土へ質問をする場合は、限られた解答しか出来ない等の補足も入った。

 

初めてのゲームではあるが、そこは代表候補生達。

理解は早かった。

 

ゲームは混沌を極めた。

開幕からラウラが出した粘土の塊に皆困惑を隠せなかった。

ベタりと板の上に置かれる粘土。

それは先が尖っているが、それ以外特徴が分からない。

重力に従って粘土の一部が下に垂れているようにも取れる。

 

箒はラウラに問いを投げ、確信を得られず。

箒は油田と答える───全員がその答えにも顔をひきつらせる中違うとだけ告げられ彼女は肩を落とす。

 

「答えは山だ」

「いやいや待て待て。山はこんなに尖ってないだろ」

 

一同の意思を代弁するように一夏がツッコミを入れる。

むぅ、とラウラは不満顔で彼の顔を見た。

 

「そんな事は無い。エベレストはこんな感じだろう」

「それならエベレストって特定しないと分かんねぇって!?」

「うるさい奴だな。それでも貴様は私の嫁か」

「だから嫁じゃねぇし!?」

 

やり取りを眺めながら鈴は嫌な予感に従い視線を横にズラす。

セシリアの作ったものも気になる所ではあるが、問題はオレンジ髪の少年の方だ。

ラウラと一夏のやり取りを他人事のように聞き流す流星。

その手元には直方体の粘土があった。

 

 

「…あんた、それ何」

「今聞くのはルール違反だろ」

「いや、あんたのそれラウラと変わんないわよ?多分」

「俺は特定してるからな?」

 

口を尖らせる流星。

鈴は呆れた様子でため息をつく。

セシリアはそれを見ながら眉を八の字にして考え込んでいた。

 

 

ゲームは進む。

気付けば流星の作品をセシリアが質問する流れになっていた。

 

「それは地球上にあるものですの?」

「ああ」

(わたくし)達が見た事あるものですの?」

「ああ」

「それは勉強に使えまして?」

「いいえ、だ」

 

読みが外れたのか悩むセシリア。

くつくつと愉しそうな流星を前に、彼女が捻り出した答えは───。

 

「工具箱ですわ!」

「ハズレだ」

「くっ…!」

 

悔しがるセシリアとは対象的に、一夏はキョトンとした締まらない表情であった。

彼の意図を察した鈴が口を開く。

 

「もしかしてあんたも分かった?」

「ん?そうだな。直感に近いけど妙な確信がある。って鈴もか?」

「ええ。分かったらあほらしくなってくるわ」

 

「随分余裕そうだな。なら、答えてみろよ」

 

2人の余裕そうな様子に流星は不満顔。

対して一夏も鈴は顔を見合わせ、タイミングだけ合わせると答えを口にした。

 

 

「「豆腐だろ(でしょ)」」

 

「──────」

 

 

───撃沈。

様子を見ていた箒やシャルロットは目の前の光景をそう形容した。

口元をひくつかせてなんとも言えない表情で押し黙る少年。

 

 

順番は替わり、シャルロットの番となった─────。

 

 

────して、1時間半程経過した。

波乱万丈なゲームも一度幕を引き、次のゲームへ移行する。

各々が次の粘土を話しながら捏ねる中、ガチャりと居間のドアが開いた。

 

 

「騒がしいと思えば、何だお前らか」

 

 

居間に入ってきたのは学園から帰宅した千冬だった。

彼女はソファとテーブルに集う少年少女へと視線を移し、納得した様子。

玄関にあった靴の数と種類から大方察しは付いていたのだろう。

 

「おかえり千冬姉。外暑かっただろ」

「ああ」

「お茶いれるよ。熱いのと冷たいのどっちがいい?」

「そうだな。外が暑かったし冷たいのを貰おうか」

「分かった」

 

慣れた様子で千冬の鞄を受け取り、一夏はそれを棚に置くと台所へ。

千冬も上着を脱ぎながら一夏にお茶を頼む。

箒やセシリア、シャルロットは唖然とその様子を見つめていた。

 

(何なのだこれは)

(仲が良いのは普通ですが…!これでは───)

(まるで熟年夫婦みたいだよぉ…)

(ふむ、実家での教官はこうなのか)

 

さながら、その光景から夫婦を連想していたのだろう。

ラウラは顎に手を当て、貴重なプライベートの織斑千冬を観察している。

 

「───いや、いい。すぐ出る。仕事だ」

 

千冬も向けられる視線に気が付いた。

完全にプライベート全開になりかけていたのを引き締め、顔を一夏の方に向ける。

 

「え?今から?」

「教師は色々忙しいんだ」

「そっか。夜ご飯は?」

「食べてくるさ」

 

千冬の言葉に首を傾げながら戻ってきた一夏に千冬は素っ気なく告げる。

一夏も必要事項だけ尋ね、送り出す。

千冬は上着と財布だけ拾い上げ、箒達の方に視線をやる。

 

ゆっくりしていけと告げ、彼女はそのまま部屋を後にした。

泊まりはダメだときっちり念は押している。

 

玄関の扉の音を聴きながら、一夏、流星、ラウラ以外の4人の肩から力が抜ける。

 

「あんた相変わらず千冬さんにベッタリね」

「そうか?普通だろ」

「一夏、織斑先生のお嫁さんみたいだったよ。…はぁ」

 

シャルロットと合わせてセシリアや箒も溜息をつく。

臨海学校で欲しいなら奪ってみせろと言われたのを意識しているのだが、男子二人が知る由もない。

実に大きな壁である。

 

余談ではあるが、もう片方の男子としては見慣れた光景である為違和感などない。

判断材料が乏しい為か、こういうものが普通と認識しているらしい。

 

 

もう1ゲーム終わり、体を伸ばす一夏。

彼は時計に視線をやり、晩御飯の時刻が迫っている事に気がついた。

 

「夜ご飯どうする?食べていくなら食材を買いに行ってくるけど」

 

「せ、折角だ。私が作ってやらんことも無いぞ一夏」

「───抜け駆けは良くないなぁ。お邪魔してる訳だし、僕も作るよ」

「そういうことならば私も作ろう。なに、日本の食べ物については予習済みだ」

「わ、(わたくし)も────!」

 

 

という訳で────何故か全員で買い出しに出る事に。

 

とりあえず食材を買い揃えにスーパーへ。

何度も皆説得を試みたが、結局セシリアも料理を作る事になってしまった。

以前の事を思い出し、お腹に手を当てる男子2人。

ただ、今回は台所に複数人立つのだ。

問題はない……はずだ。

 

織斑家に戻り、夕食作りの仕度を各々が進める。

男子2人組は女子全員の要望により待機。

居間で仲良くポーカーで遊びながら暇を潰している。

 

正確には、暇を潰しているというより気を逸らしていると言うべきか。

 

「切る……切る……」

 

小刻みに聞こえるまな板の音。

普通に包丁を使っていれば気にならない程度なのだが、音が明らかに大きい。

チラリと気になって一夏はラウラの方を見る。

じゃがいもをサバイバルナイフで切る姿が見えた────不安だ。

 

「……大丈夫だよな?火炎放射器で焼いたりしないよな?」

 

「じゃがいもを丸焼きにする日本の料理なんて無かったはずだから、大丈夫だろ」

 

「そういう問題じゃないような………」

 

一夏の発想には一切触れていないあたり、有り得るというのが共通認識なのだろう。

ソワソワする一夏をよそに流星はカードを交換する。

 

 

「───なあ、台所にブルー・ティアーズが見えたんだけど」

 

「爆発音聞こえないから気のせ─────いじゃ無かったみたいだな」

 

「………禍々しい色の液体が飛び散ってた……」

 

「IS料理とかトンデモワードまで聞こえて来たな」

 

流していた流星も聞こえてくる音や声に思わず頭を抑える。

このままでは織斑邸が吹き飛びかねない。

 

大きく溜息をつきながら、男子2人はセシリアの方へ向かう。

 

 

 

────色々あって、無事夕食を食べる。

先のじゃがいもはどこへやら。

ラウラの作ったおでん(仮)は衝撃的だったが、味は普通。

彼女の日本文化の情報源である副官が一夏は気になって仕方がない。

 

箒はカレイの煮付け、鈴は肉じゃが、シャルロットは唐揚げ。

それぞれが見た目、味ともにハイクオリティのもの。

 

錬成された『焦げた鍋』には誰も触れない。

というより触れない方が良さそうだ。

中身が吹き飛んだ事に心の底から感謝する男子二人であった。

 

楽しく話しながら皆夕食を摂る。

それぞれの作ったものに舌鼓を打ちつつ、レシピの教え合いなどもしていた。

 

 

 

───と、不意に流星が何かに気が付く。

箒が作った味噌汁を啜りながら、彼は懐の端末を取り出した。

 

「───…」

 

来ていたのはメッセージの通知。

送られてきたメッセージ、その送信元を見た彼の表情は訝しむようなものへと変化した。

 

 

その送信者の名は─────『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』の操縦者ナターシャ・ファイルス。

 

内容は取るに足らない展示会への誘いであった───────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────同時刻。

ある港で金髪の女は端末を手に取り口を開く。

暗闇の中、周りに倒れる武装集団など気にも留めない。

コツコツとヒールの音だけを響かせながら端末に向かって言葉を投げかけた。

 

 

「───エム、少しお願いがあるのだけど───────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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