IS 灰色の向こうに   作:ズーキー

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俺達の前に現れた人物は、元凶というか、諸悪の根源であった。

この人まで出てくるとかありかよ。

俺は隣のエージェントに目をやる。

流星(エージェント)は苦虫を噛み潰したようであった。

 

 

────黄色い歓声が上がる。

楯無さんのファンがかなり存在している事は知っていた。

何せ1年1組内にもいる程だ。

最強にして才色兼備、自由人にして愛嬌もある。

のほほんさんのお姉さん───虚さんから聞いた話を思い出す。

関係ない話だけど──楯無さんが打ち負かしたロシアの元国家代表も現在は熱狂的(・・・)なファンらしい。

曰く、楯無さんとルームメイトである事実を間違っても口にしてはいけないとのこと。

どういう事なんだろう。

 

 

 

閑話休題。

目の前にいる楯無さんは小悪魔的な笑みを浮かべていた。

格好は童話シンデレラに出てくる魔法使い。

皆をシンデレラにした事を考えればこれ以上ない配役だ。

 

…俺達からすれば、魔女にしか見えないけど。

 

 

「流石簪ちゃん。奪うのではなく仕組みがあることを予測、解除して平和的に譲って貰おうなんて思い付かないわ」

 

「お姉ちゃん…。邪魔しに来たの?」

 

「ぐ、ぐぬ。そんな目で見ないでよ簪ちゃん。これでも主催なの。仕組みそのものを()解除されるととーっても困るのよね」

 

歯切れが悪い楯無さん。

妹に睨まれ狼狽えるあたり、相変わらず簪さんには弱いみたいだ。

 

それを見て、ニタリとあくどい笑みを浮かべるエージェント。

簪さんのいる此方へと駆け寄ってくる。

あ、何か思いついたな。

 

「簪。楯無を迎撃する手っ取り早い策がある」

「えっ?できるの?」

「ああ、簪なら出来る。というか簪にしか出来ない方法だ」

 

先までの険しい顔から、一気に明るい表情へと変化する簪さん。

心做しか流星が悪い事を唆しているようにしか見えない。

 

────楯無さんも察したのか、一気に表情が強ばった。

同時に恐ろしいオーラが。不味い。これは不味いぞ!!?

 

 

「こう言えば一撃だ。お姉ちゃんなんて──────ぐあああっ!?」

 

「「りゅ、流星───!?」」

 

突然流星が発光した────電流だコレ!

いきなり流れ出した電流でエージェントは膝から崩れ落ちる。

流星のリアクション的にさっき迄より威力は高そうだ。

 

 

「ど、どうしてだ?王冠は外してないのに!?」

「だ、大丈夫?流星」

 

驚きながら近寄ったところで、直感的に顔を上げた。

視線は正面の楯無さんの方へ。

 

 

「───ん?どうしたのかしら?」

 

サッと手に持っていたものを隠す。

やけにボタンの大きい、レトロなリモコンを持っていたような…。

 

 

「楯無さん、今何を隠したんですか」

 

「隠した?何も持ってないけど、どうかしたのかしら?」

 

「いや、でもつい今───」

 

「いやん一夏くんのえっち。女の子の体を舐め回すように見るなんて駄目よ?」

 

「…」

 

駄目だ。取り付く島もない。

口調は軽いけど楯無さんのオーラは物語っていた。

曰く、これ以上その事に触れるな。

 

 

「こんにゃろ…まさか手動スイッチまで備えてるとか、ふざけやがって…」

 

「流星…!大丈夫か!?」

 

ヨロヨロとだが、起き上がるエージェント。

さっき凄い音が出てたのに、もう起き上がれるのか。

青筋を立てている流星に対し、楯無さんはもう一度リモコンを取り出した。

 

 

「ふっ、私に簪ちゃんの言葉(じゅもん)で勝とうなんて百年早いわ!喰らいなさい!」

 

「させるか!」

 

「!」

 

流星が踏み込もうとした瞬間、楯無さんがリモコンを前に突き出す。

気付けば投擲された飛刀がリモコンを貫いていた。

破片を撒き散らしながら、楯無さんの掌から落ちるリモコン。

背後の壁に飛刀が既に刺さっている────今のは二本目なのか!?

 

と、取り敢えず、これでリモコンは壊れた!

 

 

「甘いわ流星くん!───エクスペクトッ!パト〇ーナム!」

 

「に、2個目だと─────かっ…!?」

 

 

確かに魔法使いですけど──────!

一瞬の情報量に俺と簪さんは置いてけぼりだ。

電撃を受け、再度崩れ落ちる流星。

簪さんと俺は慌てて駆け寄る。

意識はあるようだが、立ち上がれないようだ。

 

 

「お姉ちゃん…そこまでして邪魔するの…?」

 

簪さんの声のトーンはいつになく低かった。

ギョッとしたのは俺だけじゃないみたいで、楯無さんもビクッと体を動かす。

 

「あ、いや!?そそういう事じゃないのよ!簪ちゃん。これは成り行きというか、流星くんがとんでもない事を口走りそうだったからつい────」

 

「自分は(同室でも)いいのに私は駄目なんだ…」

 

「そ、それはその───簪ちゃんが心配で…」

 

「………、流星を疑ってるの?」

 

「まさか!───だって流星くんよ?私が裸エプロンになっても、タオル一枚で抱き着いた時も特に反応が薄かった流星くんよ!?」

 

今のが明確に地雷発言だったのは俺でも分かった。

──え、と簪さんが目を丸めて驚く。

これは、アレだな。

姉がそんな事をしてるなんて知って、情報処理が追い付いてない感じだ。

 

 

「あ」

 

楯無さんも遅れて気が付いたようだ。

きっと1番の被害者は流星なんだけど、これは黙っておこう。

 

「裸エプロン…?タオル一枚で抱き着いた…?本当…なの?お姉ちゃん」

 

「ちょ、ちょっと待って簪ちゃん。これはね?」

 

「そう。事実なんだ…」

 

凍てつくような視線に、楯無さんは冷や汗を流す。

先までの空気よりも遥かに怖い。迫力だけなら最強だった。

 

「えーっと…」

 

弁解しようと考えている楯無さんだったけど、言い訳すら思い付かないらしい。

内容が内容だからなぁ。

楯無さん()がそんなことしてるってなったら、簪さん()もそうなるか。

 

「誤解──そう、誤解なのよ簪ちゃん!」

 

「──話し掛けないで、……更識先輩」

 

「ぐはっ……!?」

 

拒絶の意思が明確に叩き付けられた。

本当にショックなのか、胸を抑えながら楯無さんは倒れ込む。

血を吐いているようにも見えた。

簪さんの言葉に深々と心を抉られたらしい。

 

 

「倒れてる…。よっぽどショックだったのかな?なあ、簪さん。楯無さんはどうする?ボタンくらい取り上げとくべきかな?」

 

「放っておけばいいと思う。どうせ仕掛けを解除する物もないだろうし…」

 

「…」

 

いつになく冷たく言い放つ簪さん。

少し背筋がゾッとした。

楯無さんといい、たまに形容し難い凄みがあるのは姉妹揃ってなのか。

 

 

「…仕掛けを解除するから。織斑くん、動かないで」

 

「分かった」

 

エージェントと魔法使いの2人が倒れたままなのを横目に、俺は簪さんの前で座る。

『WINNER 更識簪』なんて文字がつい脳裏に浮かんでしまった。

 

「ここは…こうなってて…」

 

装置を取り外しにかかる簪さん。

思ったよりもハイテクな装置らしい。

 

 

「今更になるけど…装置を解除したら、王冠を…その…」

 

「ん?勿論構わないぞ」

 

「あ、ありがとう…!」

 

目を輝かせて喜ぶ簪さん。

以前、流星に簪さんの事を尋ねた際、『端的に表現すると可愛い』と言っていた意味が理解出来る。

 

そんな事を考えてると、背筋を悪寒が走り抜けた。

 

 

「いーちーかー?」

 

 

「「!」」

 

揺らりと簪さんの後ろで何かが揺らめいた。

慌てて離れるように簪さんが飛び退くと、王冠を何かが掠めた。

俺も驚いて身を少し引いたのが幸いした。

危ない!銃弾だ。

 

 

「ダメだよ?一夏。僕以外に王冠をあげちゃ」

 

「ひいっ!?シャル!?」

 

奥の物陰からシャルが現れた。

持っているのは先と違い拳銃。

ニッコリと笑顔なのにどうしようもなく怖い。

 

 

「簪さんには悪いけど、王冠は僕の物だよ」

「…だめ。これは私の物…!」

 

簪さんは工具を構えて向かい合った。

ただ、2人だけの戦闘が始まる──なんてことは無い。

 

「追い付いたぞ!嫁よ!」

「観念しろ一夏!」

(わたくし)を忘れて貰っては困りますわ!」

 

 

「うわぁぁぁ!?」

 

飛び交う銃弾、振り下ろされる刃物。

ガラスの靴が床を蹴りつける音がそこらから聞こえた。

追い付いてきた3人も加わり、もう収集は付かなくなっている。

 

全員が互いに争いながらも、俺に向かってくる。

 

あ、そういや誰か忘れてるような───。

 

 

「貰ったぁぁあああ───!」

 

「っ!?」

 

突然鈴が物陰から飛び出してきた。

何やら長物を持っている。

偃月刀!?多芸過ぎないか鈴のやつ!

 

一刀目を躱したけど、流石に対応し切れなかった。

体のバランスを崩して尻餅をつく。

好機とばかりに鈴の目の端が光った。

殺られる───!

 

 

「お前ばかり追われるのは、流石に妬けるな」

 

「っ、引っ込んでなさいよ!」

 

甲高い金属音が辺りに響く。

すんでのところで流星が飛刀で弾いたのだった。

流星が復活してきたってことは───。

 

「ふ、ふふふ。嫌われた訳じゃない嫌われた訳じゃない嫌われた訳じゃない。だから大丈夫よ大丈夫…」

 

視界の端でのそのそと起き上がる魔法使い(楯無さん)

まだ(心の)ダメージが残ってるのか、動きにキレがない。

やっと立ち上がったと思えば、襟に着いた小型マイクに向かって話しかけた。

 

 

『さあ!ただいまよりフリーエントリー組の参加です!皆さん王子様の王冠目指して頑張って下さい!』

 

 

 

「「は?」」

 

思わず俺と流星は固まってしまった。

釣られて鈴も怪訝な表情。

 

遠くから地響きが聞こえてくる。

フリーエントリー組という言葉から察しがついた俺と流星は、互いに顔を見合わせた。

 

おそるおそる舞台袖付近を覗き見る。

今まさに大量のシンデレラがこの城に雪崩込んでいる真っ最中であった。

脳が理解を拒む。

 

バタン!とセットの一部が倒れた。

どうやら隠し通路となっていたらしい。

大量のシンデレラが目の前に出現した。

 

 

「織斑くん、大人しくしなさい!」

「一緒に幸せになりましょう、王子様」

「私にも構って!今宮くん!ある程度ツンツンした後に優しくして!」

「王冠をよこせええええ!」

 

ゾンビ映画も真っ青な圧に、頭が痛くなる。

 

「…なんか、変なの居ないか?───いや、それよりもこの人数は不味いな。一夏!」

「お、おう!」

「使え!」

「サンキュー!───って使えるか!」

 

渡された飛刀を床に投げつける。

あの大量のシンデレラを倒せってか!?

俺は一目散に背を向けて逃げ出した。

 

「仕方ない。逃げるか」

 

不満そうにしつつ、エージェントもついてくる。

その更に背後からは、鈴や箒達、その更に後ろからはフリーエントリーのシンデレラ達が追ってくる。

 

このままじゃあ逃げ場なんてすぐに無くなる。

 

「そこの塀に最後の飛刀を投げた。俺が手伝うからそれを足場にしていけ」

 

「助かる!」

 

「ま、あとは頑張って逃げてくれ。頼むぞ王子様」

 

皮肉げにエージェントは笑う。

 

我ながら、スムーズに事は進んだ。

流星に持ち上げてもらう形で塀に飛び移る。

その際に刺さった飛刀の柄を蹴り、そのまま何とか飛び越えた。

 

そのままセット城の中へ。

 

「飛び越えて逃げた!?」

「ものどもであえであえー!」

「下の階からなら入れるよ!」

 

ここも安全とはいかないみたいだ。

ドタドタと追い掛ける足音が聞こえる。

ガラスの靴だからか機動力が低いのが救いだ。

 

城に押し入ってくるシンデレラ。

風情も何も無い。というか、時間制限がないのか。

 

上で逃げるのは悪手と判断して、おそるおそる1階へと移動した。

物陰をこそこそと経由して奥へ奥へ。

 

上の方へと皆が走り去っていく。

ひとまず脅威は去ったとひと息ついた。

 

 

けど、ここにい続けるのも危険だ。

どうしよう。

 

 

──そう考えている時だった。

 

誰も居ないはずの背後。

正確には斜め下から声が聞こえた。

 

 

「───こちらへ」

 

「へっ?」

 

瞬く間に、俺はセットから転げ落ちる形でその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

一夏が移動した先は、セットの隣部屋であった。

ドタバタと音が聞こえる中、彼は誰かに案内されるままに移動する。

アリーナの裏手側。

一般解放されていないため、通路に電気はついておらず薄暗い。

辛うじてついているのも足下の照明のみ。

相手の顔もよく見えなかった。

 

「着きましたよ」

 

案内されたのは更衣室。

アリーナのものである為、普通よりは相変わらず広い。

今は照明が落ちたままである。

 

と、一夏の目がようやく暗さに慣れてきた。

先導していた人物の顔を見て、一夏は首を傾げる。

 

「巻紙さん?どうしてここに?」

 

「この機会に『白式』をいただきたいと思いまして」

 

「…は?」

 

言葉の意味が咄嗟に理解出来なかった。

目の前の女性は笑顔を崩さず、それでいて敵意さえ感じられない。

 

「いいからとっとと寄越せよ、ガキ」

 

「…冗談、じゃ無さそうですね」

 

「あ?冗談でテメェみたいなガキと話すかよ。マジでムカつくぜ!」

 

「っ!」

 

唐突に纏っていた雰囲気が変化した。

一夏の中で警鐘が鳴り響く。

鍛錬により叩き込まれた嗅覚が、最初から女性が只者で無いことを見抜いていた。

女性の不意打ちに近い蹴りを彼は後退する事で躱す。

女性はニコニコとした表情のまま、その身のこなしに感心した様子。

 

「へぇ思ったよりいい反応するもんだな。ったく、顔が戻らねぇじゃねぇか」

 

「企業スパイって訳でも無さそうだけど…、あなたは一体何なんだ」

 

「企業の人間になりすました謎の美女、ってところか?」

 

「B級映画かよ…」

 

とはいえ、一夏は非日常に慣れていない。

誰かに悪意を向けられる、その感覚も。

何処かの誰かを真似して皮肉げに呟いてみたが、やはり動揺は収まらない。

 

「ほらよぉ!」

 

「『白式』!」

 

突然、巻紙と名乗っていた女性の背から何かが飛び出した。

一夏は『白式』を展開──PICにより重力を相殺しつつ、天井に着地。

───背後にあったロッカーを何かが貫いていた。

 

「IS!?本当になんなんだよ!」

 

「おーおー、いい反応するねぇ。言うなら悪の秘密結社──の1人ってトコかぁ?」

 

蜘蛛のように女性の背から生える八本の脚。

装甲に覆われ、先端が鋭く尖ったソレはさながら爪のようである。

 

(これは───)

 

ロッカーから腕を引き抜く動作を読んで、一夏は『雪片弐型』を持ち変えた。

天井蹴り、一気に仕掛ける。

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)を今使うべきでないとの直感的な判断。

刀はフェイント。本命は雪羅のクロー攻撃だ。

 

「このオータム様にそんなもん当たるかよ!」

 

迷いのない攻撃だったが、それは空を切る。

オータム──そう名乗った女性に対し、息をつかず腕を突き出す。

雪羅の射撃形態───避けられると同時に切り替えは済んでいた。

 

「チッ」

 

(速い!)

 

雪羅による射撃に対し、八本の装甲脚が一斉に動き出す。

オータムの背から生えた脚は地面を蹴り、軽快に躱してみせた。

 

オータムがISを完全に展開する。

黒と黄の機体。フルフェイスであることやシルエットも相まってISにはとても見えなかった。

 

(──、銃口!?)

 

オータムに装甲脚を向けられた一夏は慌てて横に飛び退く。

脚の先端が開き、放たれる実弾がその場を蜂の巣にした。

 

装甲脚は近接武器だけでなく、射撃武器としても機能しているようだ。

断定は出来ないが、近〜中距離に適性のある機体だと一夏は推測する。

砲門は8、故に手数は圧倒的にオータムが多い。

 

──被弾。

衝撃が体を叩く中、彼は敵を見据えていた。

 

(なら!)

 

「!」

 

脚の長さから懐ならば、と彼は再度床を蹴る。

スラスターを吹かしながら射撃。

オータムの弾丸については機体を微かに傾け躱した。

 

精度は兎も角、相手の回避行動に合わせるように瞬時加速(イグニッション・ブースト)で距離を詰める。

 

(──!福音の時より目に見えて制御の仕方が上達してやがる。加えて牽制と距離の詰め方を学んだか)

 

だが、とオータムは笑う。

織斑一夏の成長を理解しつつ、彼女は敢えて前に飛び込んだ。

 

 

「懐が弱点だと思ったかよ?残念だったなぁ!」

 

(脚の可動域が広いっ!?八本をここまで細かに操れるのか!)

 

「ほらほら、ちゃんと防がねーと串刺しだぜ?」

 

「っ!」

 

八本の装甲脚があらゆる角度から一夏を襲う。

四方だけでなく、上下左右。

躱した先から少しずつ一夏を追い詰めるように、しなやかで繊細な操作。

 

「くそっ!」

 

雪羅のシールドを叩き付けるようにして、彼は何とか離脱した。

数回切り付けられた為、シールドエネルギーが減ってしまっている。

オータムはまだまだ手加減しているように見えた。

 

──完全な格上。

一夏の頬を汗がつたう。

自身が一番得意な間合いで勝つビジョンが見えない。

先の一瞬でやられなかったのは、完全に訓練の賜物であった。

 

──オータムもまた、それを見て口角を吊り上げる。

愉しげに目を細めある事実を告げた。

 

「あの時からは随分と見違えたなぁ、オイ」

 

「あの時?」

 

「なんだよ。気付いてねーのかぁ?折角の感動の再会だろ?──第二回モンド・グロッソの時のよぉ!」

 

「まさか──、」

 

「そのまさかだよ。あの時お前を拉致ったとはうちの組織だよ!ハハハハ!」

 

「お前───────っ!!」

 

内から湧き出る激情に駆られ、一夏は飛び掛かった。

雪片を握る手に力が籠る。

無我夢中で発動する『零落白夜』。

冷静さも何もかなぐり捨てた全力の一刀。

 

純粋な踏み込みや速さなら、目を見張るものがあった。

ただ、読まれていれば(・・・・・・・)意味は無い。

 

「やっぱりガキだな。そんなもん、『王蜘蛛(アラクネ)』の前じゃ無力なんだよ!」

 

「っ!?」

 

オータムが指先で弄っていたものを放り投げた。

それは瞬く間に拡がって網状になると、一夏を絡めとる。

エネルギー・ワイヤーで形成されたそれは引きちぎる事も難しい。

 

(全身に拡がるのが早い。なら雪羅で無理矢理──)

 

「させるかよ!」

 

全身に伸びるよりも先に──と、機転を効かせた一夏よりも速く装甲脚が一夏を押さえ込んだ。

 

「っはっ!?」

 

壁に叩き付けられ、吊るされる状態。

肺の空気を吐き出し、怯む一夏の胸元に何かの装置が取り付けられる。

 

「終いだ。じゃあ貰うぜ『白式』をよ」

 

「何を──がっ!?あああ!」

 

一夏の体に激痛が走った。

それは電流とは似て非なるエネルギー。

文字通り、ISを引き剥がす──『剥離剤(リムーバー)』によるものだ。

彼の絶叫が空間に響いた。

とはいえ、広く閉じた空間。外には漏れることは無い。

 

暫くして、一夏の体が網から床に落ちた。

背中から落ちたが未だ感覚がハッキリとしない。

何とかオータムに向き直るも、ISは解除されていた。

 

──そして、オータムの手には菱形立体のクリスタルが。

感覚的に一夏はそれが『白式』であると理解した。

 

「ぐっ!?」

 

取り返そうと体を動かし始めた瞬間、彼はオータムによって軽く投げ飛ばされる。

5m程床を転がり起き上がろうとするも、一夏は胸元を踏みつけられた。

オータムに慢心はあれど、油断は無かった。

 

「くっ、そっ…!かえ…せ!」

 

「やるかよ、バーカ」

 

「がはっ、ぁ…く、そ、かえ、せ…!」

 

「ギャハハハハ!返せと言われて返す訳ねーだろうが!」

 

「ぐぁっ!!」

 

一夏は腹部を蹴られ、投げられ、ボロボロの状態で床を転がっていた。

無力感が襲ってくる中、闘志だけで突破口を模索するが痛みのせいで頭も回らない。

 

オータムは暫く嬲った後、満足したのか装甲脚の爪の部分を彼に向けた。

 

「あばよ、ガキ。もうてめぇに用はねぇから殺しといてやるよ」

 

台詞が終わると共に、装甲脚が振り下ろされる。

 

───直後に、金属音があたりに響いた。

 

 

 

 

 

 





一夏の戦闘については、やられこそしましたがエネルギーは原作より温存出来ている想定です。
ただ、鍛錬を積んだところでオータムのような実戦慣れした実力者には流石に分が悪かった様子。


オータムさんの描写にも気を付けていきたいところ。
さあ学園祭後半、開幕。





話に影響しないので、ただの興味本位ですが…『本作中における、読者の推しヒロインは誰?』

  • 本音
  • 楯無
  • 一夏
  • 清香
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