IS 灰色の向こうに   作:ズーキー

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あけましておめでとうございます。
今年もそれなりの頻度で更新していきますので、よろしくお願いします。




-66-

──反動による負荷を受けきった外部装甲の隙間が大きく開いた。

空気が噴出し内部から装甲を冷却している。

ある程度の距離でも聞こえるような噴出音。

それは先の狙撃の多大な反動を示唆していた。

 

全身を駆け巡る衝撃も気にせず、少年は武装を全て量子化する。

 

『打鉄─椛』の片手にはアサルトライフル『焔備』が展開された。

もう片手には盾が握られている──それは少女にトドメをさす為ではなかった。

 

 

「───いいザマだな。出し惜しみをするからこうなる」

「!」

「な───」

 

驚きは鈴のもの。

降り注ぐ小型のレーザーガトリングが流星と彼女を襲う。

鈴は堪らずその場から大きく距離をとった。

少年は盾でそれを凌ぎ、反撃にアサルトライフルの引き金を引く。

 

「増援!?しかもあれってBT兵器よね──!?」

「───またあいつか」

 

レーザーガトリングの主は青の蝶。

その姿を見て流星は不機嫌そうに眉を顰めていた。

 

エムと呼ばれていた少女───彼女の実力を流星は知っている。

鈴と2人がかりといえど、負傷&消耗した状態──『打鉄─椛』では容易くといかない。

時間的にも相手にしている暇はないだろう。

 

鈴は龍砲で、流星はアサルトライフルで応じていた。

 

「どうするのよ、流星!?このままじゃあいつまで経っても──!」

「そうだな。これは良くない状況だ」

 

次の手を考える流星。

一応、エムならばリタのように振り切れない……という訳でもない。

手の内を知る流星が残り、鈴に本音達を任せる方が良いか──そんな考えが頭を過ぎる。

 

「さて、どうする?少年兵」

 

宙を舞うシールド・ビットが彼等へ照準を合わせる。

連戦に入ろうとする中、流星は更なる機体の反応に気が付いた。

 

「──!」

 

死角からの繰り出される蒼い閃光。

狙いはエムとリタ双方───エムはシールド・ビットを操作し容易くそれを防ぐ。

エムはその最中に残りのビット駆使して反撃──青紫の閃光が蒼い機体に向かっていく。

今度は黒い機体が現れ、それを受け止めた。

 

乱入した二機は流星達とエムの間に割り込む。

 

「2人共、無事だな?」

「ラウラ、セシリア!」

「ったく、───ナイスタイミングだ、軍人サマ」

 

駆け付けたのはラウラとセシリア。

流星はすぐに鈴と目配せすると、更に後退する。

 

「────3人共。ここは任せる」

 

「承知した。その様子だと時間が無いのだろう?」

 

「ああ、話が早くて何よりだ。──油断するなよ。あいつ相当強いぞ」

 

「……、心得ましたわ」

 

────身を翻し、流星は素早く校舎の方角へ飛び去る。

追撃も考えたエムだったが、それより先にレールカノンを放たれ目論見は阻止された。

 

 

「足止めか」

 

エムはつまらなさそうに呟くと、シールド・ビットを広く展開した。

セシリアはその様子を見ながら険しい顔でエムを睨み付ける。

エムの乗る機体は『サイレント・ゼフィルス』。

セシリアの駆る『蒼い雫(ブルー・ティアーズ)』の基礎データも使わている───英国(イギリス)のISだ。

 

「貴方、その機体をどこで─────」

「BT1号機の操縦者か…この状況を見て理解出来ぬ程間抜けではないだろう?」

「っ!」

 

殺気をもって射抜く視線。

先に動いたのはセシリア───ミサイル・ビットを放ち、同時にスターライトMkⅢの引き金を引く。

更にはビットも飛ばし、一斉に多方向から攻撃を仕掛ける。

 

エムはそれらを鼻で笑い、ミサイル・ビットを容易く撃ち落とす。

残る攻撃を視界に収めながら、余裕を持って告げた。

 

 

「──興が乗らないが、少しだけ遊んでやろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっそ、そんな事あんの?まじウケる」

 

蒼い長髪の少女──来玖留は楽しそうに笑った。

 

「慰めてよーくくるちゃーん。それのせいで折角の取材データも消えちゃったの……はぁ」

 

それに対して溜息をつく黛薫子。

彼女の溜息は深く体はぐったりと机に突っ伏している。

心底落ち込んでいる──そんな様子であった。

 

「本当にツイてないわね。バックアップもオリジナルもデータが両方とんじゃうなんて、中々ないでしょうに…」

「たっちゃんなら何とか出来たりしない!?元の状態に戻せたり──!」

「それ楯無ちゃんでも無理でしょ。物理的に壊れてんのよ?」

「そ、そこはたっちゃんだし何とかできるかな〜って!おねがい!」

「粉々になってるけど───薫子ちゃん、私をなんだと思ってるのよ」

「生徒会長」

「生徒会長を神様あたりと勘違いしてるくね……?」

 

薫子は両手を合わせ、楯無を拝んでいるようなポーズをとる。

楯無と来玖留は呆れた様子であった。

 

 

「──それよりさ、駅前にカフェ出来たのは知ってるよね。二人とも」

 

話しつつポチポチと端末を弄る来玖留。

それよりという物言いに抗議する薫子の言葉は聞き流していた。

 

「確か一昨日オープンしたところよね。海外のお店だったかしら?」

「そうだよ楯無ちゃん。これが美味しいらしくてさー(ウチ)気になって夜しか寝れないのなんの」

 

来玖留はわざとらしく頭に手をやる。

薫子ももうどうしようも無い話を切り捨て、思い出しつつ返す。

 

「タルトが美味しいって新聞部でも昨日聞いたかな」

「そうそう!さっすが薫子ちゃん、情報がはやい。でさでさどうよ?3人でこの後行ってみない?」

 

来玖留は端末の画面に表示した店のHPを2人にみせた。

2人は画面を覗き込みつつ、目を輝かせている。

 

「良いわね。今日は特に予定も無かったから行きましょう」

「学園も近いし取材にもなるかも!」

「ほい。それじゃ決まりね。ちょっと学生には値が張るかも知れないらしいけど、問題ない感じ?」

「ふっ、問題ないわよ。もしもの時は本気のポケットマネーで何とかするから───!」

 

扇子を開く楯無。

そこには無敵と書かれていた。

おぉさすがーと持ち上げる薫子を他所に、来玖留は顔を引き攣らせる。

 

「いやダメでしょそれは。あーたのポケットマネー洒落になんねーし」

「でも気になるメニューが幾つかあるのよ。出来るなら沢山頼んで1番美味しいものを探すのもやぶさかではないわ」

「──女子高生の楽しみ方じゃねぇよ楯無ちゃん」

 

前に突き出した拳を握り、楯無は力説する。

凄まじい熱意に来玖留が苦笑いを浮かべる中、薫子は画面を見て気付いたように声をあげた。

 

「あ、たっちゃんさては姉妹割ってとこ見たね?」

「なるほど、妹さん誘って今度行こうとか思ったのね。──というかさ、気まずくなってる姉に誘われても普通行かなくない?」

「む、そこはもう少し気の利いたこと言うところでしょう」

「だって事実だし」

「くくるちゃんの意地悪」

 

口を尖らせる楯無に来玖留はあっけらかんとしてそう告げた。

楯無はそのままいじけてみせる。

ニタリと笑いながら会話を続ける来玖留。

 

薫子はレアな楯無のその姿を隠し撮りしようと、こっそりカメラを構えた。

しかし、シャッターを押す瞬間に扇子が開き目論見は失敗に終わる。

そうしている内に予鈴が鳴り、3人ともそれぞれの席に戻っていく。

 

 

 

……その日の放課後に食べたタルトは──本当に、美味しかった。

 

──なんてことない日常の一幕。

 

……余計な事なんて考えたら駄目。

────惜しむ資格なんて、きっと私には無いのだから。

 

 

 

 

 

振り払うかのように眼前に没頭する。

第4アリーナの更衣室の中、振るわれる蛇腹剣(ラスティー・ネイル)と大鎌。

水を微かに纏った一振りと、電撃を纏った一閃が互いを弾く。

高速下での鋭い攻撃は床や壁に触れることは無い。

無駄のない正確無比な一撃は相応の一撃で無力化される。

踊るような美しさ──しかし爆撃のような激しさも共存している。

 

 

「────ち」

 

静かに舌打ちをする来玖留。

それは楯無に対するものだけでなく、別の対象に向けてのもの。

レーダーが示す反応はある事実を示していた。

オータムが負けた──それは亡国機業(ファントム・タスク)に属する者全員が驚く結果だった。

 

(オータムが油断した──?いや違う(・・・・)──織斑一夏のやつ、まさか正面からオータムを打ち破った──────!?)

 

「───」

 

「っ!」

 

鋭い踏み込み──来玖留は大鎌の柄でそれを受け流す。

先までと違い、かなり前のめりな一太刀。

蛇腹剣(ラスティー・ネイル)に纏わせている水流の量も増していた。

更識楯無を拘束していた枷が一つ外れた───来玖留は内心毒気付く。

 

来玖留が電撃を放とうとしても、楯無は構わず蛇腹剣(ラスティー・ネイル)を振るう。

アクア・クリスタルが銀雷(セレブロ)と相性が悪い事は言うまでもない。

 

ただ、一夏が単身敵に打ち勝った───楯無がもしもを想定し余力を残す必要が無くなった事を意味する。

 

───当然それだけでは無い。

楯無はこの少ない時間の中で、ある確信を得ていた。

 

銀雷の使用頻度と規模──それは『雷の修道女(グローム・モナヒーニャ)』の本来の性能から考えると、あまりにも大人しい。

 

室内の為か、何か他に策があるのかと警戒していたが、にしても──来玖留がこの場面で自身を前に出し惜しむと思えなかった。

 

そこである仮説が立つ。

ISの通信すら阻害する通信妨害──それを行っているのが、目の前のISであるというもの。

となれば、来玖留の立ち回りも辻褄が合う。

 

楯無は残ったアクア・ナノマシンを駆使してただ攻め続けた。

1歩退いて躱す来玖留。

だが、振るった蛇腹剣(ラスティー・ネイル)から水刃が放たれている。

 

来玖留は即座に銀雷で消し飛ばしたが、楯無は水流で盾を作りながら踏み込んでいる。

どんどん制御出来るアクア・ナノマシンは減っている。

だが、楯無は止まらない。

 

(こいつ──!)

 

「嫌がらせのつもりでしょうけど、それをしながら勝てる程──私は甘くないわよ?」

 

来玖留の手を蹴り、楯無はスラスターを吹かす。

反撃に振るわれる大鎌を躱しながら反転───斜め上からの斬撃を見舞った。

 

「ぐっ──ッ、舐めんな──!」

「甘い────!」

 

楯無は腕部の小銃による反撃を甘んじて受けながら、攻撃を続ける。

対して押されつつも来玖留は大鎌を振るう。

振り回した大鎌は散乱するロッカーを綺麗に両断していく。

 

付近にいた楯無の体も真っ二つに。

それは液状になり、たちまちただの水となる。

電撃の余波で弾ける水──分身により出来た死角から、蛇腹剣(ラスティー・ネイル)の突きが飛び出す。

 

「!」

 

来玖留の肩をそれは掠めていく。

装甲が斬れ、赤い線が肩に走った。

 

楯無に蹴りを入れて来玖留は距離をとる。

 

───結論から言えば──楯無の仮説は当たっていた。

来玖留のISには楯無が知る性能に加え、高度な通信妨害も可能である。

勿論欠点も見抜かれた通り。

それを維持しながらの戦闘となると、銀雷(セレブロ)の出力にもかなりの制限が入る。

 

───加えて意識はそちらに割く必要があった。

その状態で楯無と打ち合えているのはひとえに彼女の実力が高いからである。

 

 

(バレたか。けど(ウチ)との機体相性は変わらない。そこまで解除に必死なんだよなぁ!更識ィ!)

 

無理やり攻めている楯無のジリ貧には違いない。

来玖留はニタリと笑みを浮かべた。

放たれる電撃が一直線に楯無へと向かう。

対して楯無は壁へと滑空し、着地───そのまま天井を蹴り反転しつつ斬り掛かる。

 

最中に蒼流旋へと持ち替えていた。

蛇腹剣(ラスティー・ネイル)はいつの間にか投擲されている。

 

 

来玖留は顔を逸らし、それを躱す。

追撃の振り下ろし───警戒し来玖留は後方へ跳んだ。

ガトリング掃射は銀雷を盾にやり過ごす。

 

「な─────!!!」

 

─────瞬間、着地と同時に違和感を覚えた。

飛び退いた先の湿度が局所的に高い。

来玖留は考えるよりも早く銀雷をその場に放ち、小規模の清き熱情(クリア・パッション)を阻止───。

 

 

「─────」

「かっ──────」

 

腹部に衝撃が走る。

鈍る思考、来玖留の腹部には蒼流旋が叩き込まれていた。

 

神速の瞬時加速(イグニッション・ブースト)は、来玖留の反応すら許さない。

出力の幅、タイミング、予備動作の無さ。

どれをとっても代表候補生達とは一線を画する。

 

追撃のガトリング接射を受け、来玖留は大きく吹き飛んだ。

更衣室の壁を突き破り、彼女は隣の部屋へと追いやられる。

 

 

 

──回復する通信。猛攻により通信妨害がままならなくなったようだ。

楯無は状況を確認しながら、代表候補生達に必要な情報を送る。

 

 

「──あぁ、ほんと。ムカつく」

 

積み重なった瓦礫から銀色が広がった。

炸裂する銀雷は瓦礫すら消し飛ばし、薄暗い地下を一瞬で照らしていく。

その中央で佇む緑色の機体。

余波で旋風が巻き起こる──楯無の水色の髪が風にたなびいている。

 

 

「!──オータムだけじゃなくてあのガキもやられた、か。どいつもこいつも(ウチ)の邪魔ばっかり……!」

 

「……随分な物言いね、井神来玖留。学園祭の邪魔をしているのは貴方もでしょう」

 

「更識……っ!」

 

来玖留の顔が怒りに染まる。

対して楯無は冷ややかな視線を彼女に向けていた。

 

して一秒。来玖留はふぅ、と溜息をつくとケロりと笑みを浮かべた。

 

「──なんてね。(ウチ)としては布仏姉妹襲撃(今回のやつ)って別に失敗しても良かったし?まあ熱くなる必要もないかな」

 

「負け惜しみにしか聞こえないわよ、来玖留(・・・)

 

蒼流旋を構え、警戒を続ける楯無。

冷ややかな視線のままではあるが、その声には微かに怒気が篭っていた。

来玖留の朗らかな笑みは歪なものに変わる。

 

「だって事実だし。本当にあいつらをどうにかしたいなら──あんな役立たずを唆す必要も無かったわけ。なんていうか、アンタへの嫌がらせ兼ね戦力分散が狙いだったんだけどね」

 

「嫌がらせの為だけに、こんな事を───」

 

「え?何何?まさかの被害者ヅラ?アンタさえ居なければ──こんな事にはならなかったとは考えないワケ?」

 

「───、破綻した理屈ね」

 

楯無は静かにそう切り捨てる。

その表情は更識家当主の(かお)であった。

 

「……、アンタが、そんなんだから────」

 

冷静さを保ちつつ、来玖留はほんの少し苛立ちを露わにしていた。

銀雷が一旦収まりを見せる。

相対する二人の実力者。

睨み合いの中、来玖留は再度歪んだ笑みを浮かべた。

 

 

「──いや、いいや。今回は撤退する」

 

「……見逃すと思っているの?」

 

「うん、見逃すしか無いよね。だってそうでしょう?そっちが知ってるこの機体の性能(スペック)だけでも、暴れ回られたら手を付けられないのは分かってるハズだし」

 

「出来る出来ないの話じゃないの。私は更識楯無よ」

 

「そのように振る舞うだけってやつ?───アハハ、マジで変わってないじゃん。────ああ、ちなみに更識家(そっち)の方も(ウチ)の私兵が今頃襲撃してるハズだよ?ここで道草食ってて良いのかな?」

 

「!」

 

「うーん、動揺が少ないなぁ。良識も常識も備わってるのに、完全にソレと切り離して思考出来る。ホント気持ち悪い(・・・・・)

 

コロコロと変わる来玖留の表情。

彼女は心底不快そうに楯無を見つつ、掌を翳した。

 

「───」

 

楯無は予備動作よりも早く動こうとする。

しかし来玖留もそれは折り込み済み。

 

(───速い!)

 

銀雷が来玖留を起点に炸裂した。

それは本来の出力をもって更衣室を吹き飛ばそうとする。

その速さも───先までとは比較にならない。

─────地下を丸々吹き飛ばす気か。

 

「っ」

 

楯無は咄嗟にアクア・ナノマシンを総動員してアクア・ヴェールを形成する。

威力を最小限に抑えるべく包み込むように展開。

ぶつかり合う水と電撃───爆発と共に蒸気が辺りを飲み込んだ。

 

 

 

 

緑の機体は攻撃を放つと同時に、ある方向に向かって加速した。

崩れ落ちる更衣室の中を高速で飛行し、白い機体に迫る。

 

「な──!?」

(!成程、今のに反応するか───)

 

衝撃を前に立て直そうとしていた一夏へ蹴りが入る。

不意打ちに対し彼は反応していたらしく、雪羅のシールドで受け止めていた。

 

とはいえ来玖留の狙いはそちらではない。

いつの間にかオータムを拾い上げている。

縛られていた彼女は来玖留に拾い上げられるや否や、彼女を睨んでいた。

 

「オイテメェ、私ごと殺す気か」

「大丈夫大丈夫。そこは皆守ってくれるから」

 

楽しげに返答しながら、来玖留は片手で大鎌を振るう。

一夏を無理やり押し退け、壁に空いた大穴を背に振り返る。

 

 

「待ちなさい───」

「楯無さん!?」

 

ガトリングは銀色の光が消し飛ばす。

掌から放たれたそれを楯無は躱す──その間に来玖留は大穴からその場を後にしていた。

 

 

『じゃあね、楯無ちゃん(・・・・・)。今度は、そっちから遊びにおいでよ』

 

「っ!」

 

秘匿通信と共に送られてくるあるデータ。

追おうと動く楯無だが、大穴は瞬く間に崩れ落ちていた。

他のルートから追っても恐らく間に合わない。

今や主武装を失った楯無では、戦闘になった場合学園を守り切れない。

 

「────」

 

半壊した地下で楯無は大穴の先を睨み付ける。

すぐに彼女は回線を開き───同時に複数の箇所に連絡を取り始めた。

 

 

 

 

 

───蒼い機体を青紫の閃光が直撃した。

 

「くっ!?」

 

セシリアの体がグラりと傾く。

蒼いビットが動き反撃を試みる──もそれより速く敵のビットがセシリアを撃ち抜く。

鈴やラウラがビットや敵機を捉えようとするも、俊敏な為捉えきれず。

 

幾ら敵機が強力であっても、連携訓練まで重ねた彼女達がここまで圧倒されるのには理由がある。

エムは攻撃を繰り出す際───校舎側を射線に収めたものも織り交ぜているからだ。

 

「く、舐めた真似してくれるわね!」

 

鈴は思わず声を漏らす。

追い詰められてはいない。

どちらかと言えば鈴達は現在あしらわれている状態だ

学園の安全を優先する都合防戦寄りになっている中、鈴はそれがもどかしくて仕方がないようだ。

リタがその間に撤退したのもあり、鈴は不機嫌そうに唇を噛む。

 

ラウラは敵の攻撃を防ぎつつ、注意を促した。

 

「…悔しいが多対1のやり方からして向こうが上手だ。気を抜くな二人共」

「っ、分かってるわよ」

「その通りのようですわね……」

 

会話の合間にも青紫の閃光が3人へ牙を剥く。

セシリアは回避に専念する。

一方で防御して最小限のダメージに鈴とラウラは抑えていた。

 

相手の行動を制限すべく射撃をそれぞれ繰り出すも、エムにはあっさりと躱される。

 

「っ!」

 

セシリアは敵機のビットの配置と軌道を全て把握しつつ、自身のビットを動かす。

シールド・ビットも結局は銃口と盾部分が存在する。

要はそれぞれに適した角度を咄嗟に向けていなければ、機能しない。

戦闘を開始してそれなりといったところ、セシリアは敵機のビットの挙動は覚え始めていたり

 

高速で飛行しつつ咄嗟に導き出した複数の射線(ルート)

相手のビットと相手自身を誘導し、それを死角から別のビットで撃ち抜く──!

 

 

(姉妹機の(わたくし)が────)

 

機体の性能ならば、ほぼ同じ。

例え相手が格上だとしてもBT適性の最高値は自身である。

つまりはその分野のみならどうにか出来る筈、とセシリアは考えていた。

 

 

──それさえ甘い考えであったと、直後にセシリアは思い知る。

 

 

「な──────っ!?」

 

虚空で弧を描いて曲がる──青紫の閃光。

 

───ありえない(・・・・・)

完全に予想だにしないものに反応など出来るはずも無かった。

 

複数の閃光が同時に曲がり、セシリアを襲う。

咄嗟に動いていたのは左目の『ヴォーダン・オージェ』で真っ先に反応できていたラウラだ。

 

「セシリア───、く──っ!」

「ラウラさん!?」

 

蒼の機体を突き飛ばし、黒の機体が閃光に撃ち抜かれる。

完全に防ぎきれ無かったのか装甲が厚い『黒い雨(シュヴァルツェア・レーゲン)』もそれなりのダメージを受けていた。

 

 

「──その程度か、ドイツの遺伝子強化素体(アドヴァンスド)

 

「貴様…なぜそれを知っている」

 

「言う必要はない」

 

瞬く間に六基のビットがセシリアのビットを全て撃墜する。

偏光制御射撃の歪な軌道を前には予測しきれなかったようだ。

 

(っ──不味いですわ──(わたくし)のせいで─────っ!?)

 

抑えるどころか完全に足を引っ張る形になったと顔を顰めるセシリア。

刹那彼女はエム自身の狙撃によって撃ち落とされた。

 

鈴もその間に動く────が、背後からの三本の閃光が彼女を撃ち抜く。

 

 

「っぐ!?──な、によ───」

 

損傷具合とエネルギーの損失を警告(アラート)として表示される中、『甲龍(シェンロン)』は高度を落としていく。

 

 

「──」

 

エムは完全に体勢を崩した鈴へと『星を砕く者(スターブレイカー)』──銃剣を構えた。

 

 

「────!」

 

 

 

不意に建物の隙間から狙撃が入る。

鈴を狙って引き金を引く瞬間、エムの銃口を横から叩くようにソレは撃たれていた。

逸れた攻撃は鈴の隣を通過していく。

 

何の変哲もないIS用スナイパーライフル。

誰が狙撃主かなど──このタイミングと狙いからして1人しか存在しない。

 

 

「戻って来たか」

 

エムの口もとが三日月に歪んだ。

全員の意識がそちらに傾く。

エムの視線の先には小柄な灰の機体───『時雨』を纏った流星の姿がそこにはあった。

 

「「───」」

 

交わされる冷徹な視線。

片方が仕掛ければ戦闘が激化するのは見て取れた。

──流星の方も『同調』は済んでいる。

互いの手の内も知っている以上──今度の戦闘は死力を尽くしたものになるのは間違いないと確信があった。

 

「…」

 

睨み合いの中、ラウラは密かに立て直している。

流星が加わった際の動きや戦い方を考え、機体の状況を再確認する。

ダメージを負ったとはいえ戦闘に支障はない。

彼女もレールカノンを構えたところで──────。

 

 

「──時間、か」

 

エムの呟き───一斉に6基のビットがあらぬ方向に向けて、閃光を放った。

それぞれが別方向で曲がり多角的に流星へ。

 

「────」

 

『同調』を行っている彼は、エムが仕掛けるタイミングで察知出来ている。

反転からの高速の旋回機動。

回避仕切れない角度を盾で防ぎ、爆発の衝撃も自身の推進力へ──黒い槍をエム目掛けて投擲していた。

回避と同時の攻撃にエムは愉しげに嗤う。

彼女は銃剣でそれを叩き落とし、シールド・ビットを総動員した。

 

 

「「!」」

 

閃光を放ちながら標敵へと向かっていくシールド・ビット。

流星とラウラに三基ずつ、それらは高速で向かっていく。

 

 

──自爆。

意図に気が付いた流星とラウラはそれぞれの対応をとる。

ラウラはAICの為に手を掲げ───流星は盾と拳銃(シリウス)を持つ。

二人は敢えて自身からビットに近付き───タイミングをズラして破壊した。

爆風はそれぞれの防御手段で対応し、事なきを得る。

 

黒煙が上がり、周囲を包みこむ。

 

 

 

煙が未だ晴れぬ中、流星はエムが飛び去っていった方角を見つつ眉を顰めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと時系列が前後して読みづらかったかもしれませんので、補足を。

アリーナ地下での襲撃

流星離脱

流星側に鈴合流

一夏、オータムを単独撃破
ほぼ同時に
流星と鈴、リタを撃破

エム襲来&流星再度離脱

楯無により通信阻害解除
ほぼ同時に
流星駆けつける&潜伏している敵排除へ

来玖留撤退

『時雨』を受け取り、流星再度参戦

エム撤退


の流れですね。
大体の流れは分かるようにしているんですが、あんまり前後しても問題ないとこは明記していなかったので……。



亡国機業の被害状況。


・オータム
ISがコア以外全損(一夏によって解体された)

・リタ
ISが半壊。右腕もズタズタの重傷。

・来玖留
軽傷。だが学園内で利用していた主義者達が一掃される形になる。

・エム
ビットを爆発させ撤退。一応補充は効く模様。












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