IS 灰色の向こうに   作:ズーキー

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出会いは、特に派手なものでも無かった。

 

私が本当に『楯無』を継ぐ前のこと。

対暗部用暗部の長──その後継として父親に連れられて私はある家を訪ねた。

 

『井神家』──日本の対暗部用暗部の1つ。

対暗部なんて性質的に数える程しかなく、それも殆ど『更識』の一部だったりする。

そんな中『井神』の規模は『更識』に劣るものの、対暗部用暗部としての格はかなりのものだった。

 

 

──今でも覚えている。

本家と同じくらい大きなお屋敷に、少々派手な日本庭園。

年季の入った屋敷なのは言うまでもない。

庭に見える池には大きな錦鯉。

そこには在るべき素朴さも趣も感じられなかった。

やけに整えられていた。

旧さを活かし古さを破棄した空間。

 

節々から財を感じる。

自分の家も規模としては大差ない屋敷であるにも関わらず、あまり良いとは感じなかった。

 

それは家の中も同じ。

折角の味わいを装飾過多が押しつぶす。

現当主の趣味だろうか。

 

親同士の話が盛り上がっていた為、特にやることも無い私は縁側へ腰を下ろす。

ぼんやりと鯉の動きを目で追っている時だった。

パタリと歩く音。

傍で立ち止まった誰かは驚いた様子だった。

 

『────あれ?まさか、あなたが十七代目の…』

『ええ、そうよ。あなたは──?』

 

真っ先に目に入ったのは長く青い髪。

外側にはねている自分とは違い、見事なまでのストレートだった。

緑の着物に身を包み、落ち着いた印象。

彼女はゆっくりと私の横に腰を下ろした。

 

(ウチ)は十一代目井神家当主、井神来玖留。よろしく楯無ちゃん』

 

 

来玖留はそうはにかんだのだった。

 

話が驚くほど合った。

境遇を考えれば当然、彼女も次期当主の人間だ。

多少の差異はあれどあらゆる知識や武術、交渉術、人心掌握の術などを教え込まれている。

 

天才と期待された点も同じ。

その時点で私と彼女にさしたる違いは無かった。

 

雑談に花が咲く。

学校の同級生や、高校はIS学園に入る事───様々だった。

 

(ウチ)はさ。正直使命とか責任とかよく分かんないけど────』

 

話の途中に、来玖留は遠くを眺めて両手を床につける。

空を見上げるような姿勢で思いを告げるのだった。

 

 

『──(ウチ)自身が善いと思った道を歩いて行きたい』

 

 

──雲ひとつ無い空の下。

井神家次期当主の器である彼女の純粋さは──この上なく輝いて見えた───。

 

 

 

 

 

「──、」

 

微睡みから、意識が浮上した。

静かに身体を起こし、視線を周囲へ。

寝ていた場所はホテルの一室───周囲に異常は見られない。

 

 

夢を見た感覚がはっきりと残っている。

中学一年生終わり、私がまだ当主を継いでいない時の思い出。

 

別段、その後IS学園に進学するまで彼女と大した付き合いはない。

その時には私が楯無を継いだ──彼女の父親を■■した後にあたる。

 

 

──事の発端は私が楯無を正式に継いですぐの事。

 

十代目井神家当主『井神忠人(いかみ ただひと)』が裏で犯罪組織や反政府組織と繋がっていた事が発覚した。

それも捜査の為でも何でもない。互いに援助し合う完全なクロ。

 

『更識』は捜査に乗り出し、証拠を特定。

関わりのあった組織の人間を拘束し、首謀者の井神忠人を捕らえんと屋敷に乗り込んだ。

あくまで騒ぎを大きくしない為、私は直に井神忠人と会おうとした。

それが甘かった。

 

───井神忠人は完全に悪人だった。

動機は家を大きくする為。金の為、いずれ裏から国を牛耳る為。

話し合いになどなる訳がなく、実力行使で私を排除しにきた。

更識に思うところもあったらしい。

 

結末は前述の通り、私は生け捕りに失敗した。

最後の最後───短刀による強襲。

普段の私ならきっと上手く凌げたのに、それが出来なかった。

 

 

「…」

 

外はまだ暗い。

日が昇りきっていないからか、曇っているのか。

気分は良くないけど落ち着いてはいた。

服を着替えつつ、本家から来た報告に目を通す。

 

 

そうして私は───人を殺めた。

未熟だったせいで…友達の肉親を手にかけた。

当然、覚悟はしていたわ。

 

 

けど、今でもあの時の来玖留の顔が脳裏に焼き付いて離れない。

憎悪と悲しみに満ちたあの表情が。

 

──私は悪くないと、言ってくれた人達は居た。

悪いのは井神忠人や状況で──私が気に病む必要など無いと。

仕方が無かった(・・・・・・・)のだと皆が口を揃えた。

来玖留でさえも───学園から去る前まではそう言っていた。

 

きっと割り切る事が1番早いのだろう。

けど、それでも事実は──過去は消えない。

 

「──」

 

責任を取ろうと考えた。

償おうとも考えた。

だけど──なんて考えが脳裏を過ぎる。

 

私がそうして当主を降りたら────次の当主(楯無)はどうなるの?

そうよ、楯無(わたし)

貴女が考えるまでもない。その選択肢は私にはない。

 

私が■■に戻るなら、次に楯無(当主)になるのは簪ちゃんだ。

 

こんな重荷を……あの子に背負わせるなんて絶対駄目。

どうせ私の手はもう汚れている。

 

───なら、例え嫌われても、疎まれても。

私は何時だってどんな時だって──更識楯無であり続ける。

強く、聡く、自由。

表も裏もこなして、誰よりも優れた───誰よりもいい姉になる。

そうやって走り続けて来た。

 

だから、この件は私の手でケリをつけなきゃいけない。

他の誰にも背負わせちゃいけない。

 

来玖留はもう真っ当ではない。

学園祭の襲撃時、更識の本家を私兵を使って攻撃する程にイカレてしまっている。

今回は無事だった薫子ちゃんもいつ狙われるか分からない。

 

私の事情で──学園を危険に晒す事は避けるべきだ。

 

 

 

 

考えている内に支度は終わった。

部屋を出る前に虚からの報告に目を通す。

IS学園側には特に問題は起きていない。

壊れた施設の修復も上手くいっているみたい。

生徒会の仕事も忙しくはあるが順調。

頼んでいたフォルテちゃんも早速流星くんに接触したとのこと。

 

 

 

(───流星くんが知ったら、なんて言うかしらね)

 

脳裏に気難しい元ルームメイトが浮かぶ。

一夏くんなら私は悪くないときっと言ってくれるだろう。

けど、彼は…どうなのだろうか。

 

同じように割り切る事を善しとしなかった(・・・・・・・・)人間ならば、どう答えるのだろう。

 

「────」

 

ああ、随分と甘えた思考だ。

私はこの後に及んで誰かに頼ろうとしているのだろうか。

そんなことは許されない。

ましてや、一般人を巻き込むなんて。

 

 

真っ向から考えを切り捨て、私はドアノブに手をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

第2アリーナ。

雨が降りしきる中、『時雨』に身を包んだ流星は降り立つや否やフォルテに睨まれる事になった。

 

「遅いっスよ、今宮」

「仕方ないでしょう。更衣室遠いんですから」

「だからって雨の中でレディを待たせるなっス。男の甲斐性?ってやつ見せるっス」

 

流星をビシリと指差しながらフォルテは小言のように呟く。

対して少年はため息だけを静かについた。

 

「そもそも、俺がくるまでピットに居れば良かったんじゃないですか」

「そっちの都合に合わせるの面倒くさいっス」

「…」

 

おい、と喉まで出かかったツッコミを少年は全力で呑み込んだ。

フォルテはそんな流星など露知らず、両手を叩く。

 

「さて、早速始めるっスよ今宮」

「お願いします」

 

フォルテのレクチャーが開始される。

とりあえず、ひと通りの基礎技術のおさらいからである。

フォルテが指示を出し、その通りの行動をとる。

流星自身の基礎技術力を測る為──それは行われた。

欠点があればそこをつつくつもりでさせたフォルテであったが、予想は覆る。

 

当然、入学からこの方楯無に仕込まれてきた流星である。

更には『同調』の副次的作用によるISへの急激な慣れ、襲撃等の実戦を重ねた今、粗など特に見当たる筈もない。

 

(これは──)

 

感心しながら、フォルテは動きを観察していた。

更識楯無が彼を副会長に任命するだけはある。

現時点で代表候補生クラスに匹敵する精度だと彼女は考える。

 

「…これなら問題無さそうっスね。降りて来ていいっスよ」

「ありがとうございます。どうでしたか?」

「粗は見当たらなかったっス。突き詰める分にはまだまだ出来ることはありそうっスけど、今回の本題はそこじゃないから省くっス」

 

本題?と首を傾げる流星。

フォルテは構わず話を変えた。

 

「今宮は第三世代兵器についてどこまで知ってるっスか?」

「各機体についてはともかく、ざっくり言ってしまえば特殊兵装の搭載された機体ですよね?ISの性質──イメージ・インターフェースを武装に活用しようっていう」

「そうっスね。だからその性質上、普通の兵器ではとても扱えないようなデタラメな攻撃が出来るっス」

 

こんな風に、掌の上にで拳大程の氷塊が出来上がった。

特定の座標、特定のタイミング、精度。

ISというデタラメだからこそ成立する特殊兵装をフォルテは分かりやすく見せたのだった。

楯無のISにより、特異な現象は見慣れている流星だが改めてされる説明に静かに耳を傾けている。

 

流星の持つ特殊兵装『シリウス』は、つまるところ第三世代兵器ではない。

デタラメさはあれど要は普通に引き金を引いてエネルギー弾を撃つだけの武装。『時雨』でなくては使えない──訳でもなかった。

──要は高度な後付装備(イコライザ)のようなものである。

 

 

「──これは更識からの受け売りなんスけど、第三世代ISと第二世代ISが向き合った時、基本的に第二世代だと絶対に負ける部分があるんス」

 

「絶対に負ける部分──」

 

流星は手を顎に当てて考え込む。

単純な武装の規模や破壊力は、各ISによって変わる。

特異性という点は確実に勝るだろうが、そんなもの負けると表現するはずも無い。

対策のされにくさ?そんなものも一括りに出来ない。

 

となれば───。

 

 

「──攻撃までの時間ですね」

 

「うげ、なんで気付くんスか。これ理論値前提な上、第三世代IS使ってる私も勘づく程度だったのに。───まぁいいっス。ほら今宮、サブマシンガンを出して私を撃つっス」

 

口を尖らせるフォルテに急かされ、流星は腕を跳ね上げつつサブマシンガンを展開。

───素早く引き金を引こうとしたところで、指とサブマシンガンが氷漬けになった。

 

「!」

 

少年は動かそうと試みるが右人差し指はビクともしない。

空気中の水分を凍らせて流星の手先とサブマシンガンを固めつけている為だ。

流星は実演に納得しつつも、どこか不満げに目の前のフォルテを睨んだ。

 

「やる必要あったんですか?コレ」

 

「そりゃー、実際に体感する方が速いっスから。ちなみにこっちは今宮が武器を手に取ってから発動したっス。やっぱり挟む工程が少ない分全然違うっスね」

 

得意げに納得するフォルテに流星はサブマシンガンへ視線を落とす。

今のは距離が近い&相手の行動が分かっている──等の前置きこそあったが理論値前提ならば同時では勝てない────を体現している。

 

実戦に於いては策次第と流星は考えているが───。

 

 

「やる事としては単純っス。────要は多い分の工程を纏めればいいんスから」

 

「!」

 

リタ・イグレシアスとの戦闘が流星の脳裏を過ぎる。

あの時『撃鉄』を接射した流れがソレに近い。

 

「ぶっちゃけ今宮はもう出来てかけている事───らしいんスけど、武装の『呼出(コール)』と『照準(ロック)』、『攻撃(アクション)』をほぼ同時に行うんス。─────これは高度な空間把握能力と戦闘経験から来る読みや超速の反応が必須だって更識が言ってたっスね」

 

「……成程」

 

顎に手を当て彼はあの時の感触を思い出す。

あの時は『撃鉄』の座標や角度を、無意識下で先読みした箇所に呼出(コール)───敵へと攻撃をねじ込んだ。

 

彼は武装の呼出が速いと楯無に評価されたこともあった。

それらをひとつの技能として確立させるのが、今回の目的である。

 

 

 

フォルテによる話は続く。

コレは高速切替(ラピッド・スイッチ)と似て非なるもの。

 

高速切替(ラピッド・スイッチ)拡張領域(バススロット)を利用している都合により連続しての使用も可能──弾の補充にもひと役買う為、継戦能力も高めのもの。機体的条件だけでなく、並列処理のスキルも高くないといけない。

 

一方で今回の技能は、高度な空間把握能力と多彩な経験値、読みがあれば理屈上は可能。

 

長所は高速切替(ラピッド・スイッチ)をコンマ数秒上回る攻撃速度。

───高速切替(ラピッド・スイッチ)と違い、攻撃の動作すらひとつに纏めているからだ。

短所はそれが故に連続しての使用は厳しい、というもの。

 

ここぞと言う時に使うものだろう。

 

余談であるが、かつて一夏はシャルロットと流星の違いを線と点(・・・)と表現していた───それが奇しくもこの二つの技能の差異に表れている。

 

 

「よし、じゃあ早速実戦形式で練習するっス」

 

「え?」

 

フォルテの唐突な提案に流星は思わず声が出た。

こういうのは普通、練習してから実戦形式なのではないだろうか。

手本も何も無い。理屈だけ聞いて後は実戦───投げやりである。

 

流星の返事を聞いて、フォルテは溜息をつく。

やれやれ、と肩を竦めた様子だった。

 

 

「仕方ないじゃないっスか。ソレ、出来る人いないんスから」

「な────」

高速切替(ラピッド・スイッチ)に比べて、使い所が難しい上に戦い方によっては必要ないっスからね。──何より、狙って出来る人間はいないんスよ」

 

偶然出るケースはあるんスけど───と呟きつつ、フォルテの機体は上昇していく。

流星は言い返す事もせず、静かに上空へと移動した。

頭に手をやりつつも、以前の感覚を事細かに手繰り寄せる。

 

二人向き合ったところで、模擬戦が開始される。

無量子移行(ゼロ・シフト)』──そう呼ばれるものの習得へと少年は踏み出すのだった。

 

 

「ほら、今宮!展開がさっきより遅れてるっスよ」

 

「──くそ、無茶を───」

 

 

 

 

 

 

ロシアの首都──モスクワ。文化的な建物が存在する中で、先進国らしい現代的な建物が多く建ち並んでいる。

また、大都市らしく高層ビルや広い道路も目立っていた。

薄暗い空模様、広大な都市の中を人々は行き交う。

 

そのなんて事ない建物の一部屋。

更識楯無はガチャりとドアを開け──その惨状を目撃した。

彼女の目的は現地の諜報員との接触であった。

 

(……)

 

楯無は部屋に入り、倒れ伏す者達のもとでしゃがみこむ。

つい先刻、定期連絡が来なかった時点で想像はしていた。

 

様子からして時間は一日経過したところだろう。

死体は複数あった。

本来ならば集まることの無い諜報員。

それがこうも集まって殺られている。──いや、集めたのだ(・・・・・)

楯無が来る事も想像通り。

つまりは見せしめ。

 

 

IS学園時に来玖留は本家を私兵を用いて襲撃していた。

ただそれは怪我人が出た程度で収まっている。

確証は無かったが、なんらかの襲撃がある事は直前に本家側で察知出来たからだ。

ただ此方に関してはそうではない。

 

 

(目的は一時的に更識家の活動を弱める為……。来玖留も何か準備中ってことかしら)

 

となれば一連の行動にも納得が行く。

勿論復讐もあるだろうが、あくまでこれらの本命は邪魔者を抑えることにある。

 

(…)

 

楯無は本家側に端末を操作しつつ立ち上がった。

すぐに部屋を出て外へ向かう。

向かう先は当初の予定通り。

 

彼女は街に出つつ端末に耳を当てる。

向こうから聞こえてきたのはドスのきいた男の声であった────。

 

『十七代目、何か御用でしょうか?』

「こっちの状態を確認したわ。諜報員がわざわざ集められて殺されてた。完全に来玖留個人の動きね。感じからして全部は発見出来てないみたい」

『──ならそっちは今手薄ってことですね。何人か手配しましょうか?』

「それは辞めた方が良さそうね。むしろ逆よ。今残ってる人員を一時的に避難させて頂戴。来玖留個人が動いてる以上、腕が立つ人間でも最悪ISを持ち出されたら生き残れない」

『まさか、十七代目単独で動かれるのですか?』

『───』

 

無言の肯定に対し、相手は押し黙ったままであった。

確かに今現在モスクワに潜伏している来玖留に対し、人員を割くのは危険だ。

襲撃されたばかりの本家や今回失った分の立て直し、加えて学園を狙う存在への警戒は続けなくてはならない。

かと言って来玖留を放置するのも危険だ。

 

 

「解析が必要なデータや、重要な情報はそっちに送ることにするわ。実質的な現場の指揮は暫く内海、貴方に任せる」

 

『承知』

 

内海──そう呼ばれた男は楯無の指示に短く応じる。

案ずる言葉も不要、男は楯無の覚悟を尊重しそれで口を閉ざす。

通信はそこまでだった。

 

端末を仕舞い、彼女はISにあるデータを確認した。

楯無にのみ見えるように映るISのディスプレイ。

虚空に浮かぶそれらをモニターしつつ、楯無はある情報に目をやった。

 

 

(まず追手をどうにかしないとね)

 

纏う空気はそのまま、静かにスイッチだけが切り替わる。

入国時から追われている気配は無かった。

恐らくこの付近をマークしていたのだろう。

 

楯無は角を曲がり、広い通りに出る。

追手を捕まえる事も出来るがどうせロクな情報は持っていないだろう。

騒ぎを起こすリスクも僅かながらある為、ここは撒いた方が良いと彼女は判断する。

 

どの道彼女にとっては造作もない。

雑踏へと紛れながら相手を誘導し、自然なタイミングで視線を切る。

僅かに外れた複数人の視点。その隙に彼女は別の建物へと入った。

 

裏手から外に出て、別の場所で着込んでいた服を別のものへと変えた。

目立つ水色の髪も茶色に染めてそのまま郊外を目指す。

 

公共機関を乗り継ぎ少し遠回りをする。

そうして時間をかけて彼女はある場所に辿り着いた。

 

 

(───)

 

彼女の視線の先にあるのは、モスクワ郊外のある研究施設だ。

来玖留の駆る『雷の修道女(グローム・モナヒーニャ)』の開発場所でもある。

 

──『雷の修道女(グローム・モナヒーニャ)』は欠陥機であった。

そのコンセプトこそ上手くはいったが、主にコア周りの問題諸々を解決出来ず凍結されたはずの機体。

だが、来玖留の扱っていたソレは明らかに問題をクリアしていた。

 

考えられる要因は最近の亡国機業(ファントム・タスク)の福音のコア強奪。

これだけならなんの関連性も無いように思える。

ただ、福音のコアは独自進化を遂げ───エネルギー兵器に関しての適性はずば抜けたものとなっていた。

 

それを組み込んで、またはデータを流用出来れば『雷の修道女(グローム・モナヒーニャ)』の問題も解決するだろう。

 

ここで浮かぶ疑問が二つ。

来玖留が福音のコアをもってして完成させたか。

はたまた来玖留は完成させる為に協力しただけなのか。

 

 

ここまでは、学園祭襲撃の時に楯無が考えたことである。

彼女が態々リスクを犯す程のものではない。

しかし───来玖留は立ち去る際、楯無にあるデータを渡していた。

 

(まさか、自分が福音のコアを持っている事をバラすなんて……)

 

加えてロシアで待っている、とのメッセージ。

彼女のISが完成しているとなると、その殲滅能力は『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』クラスに相当する。

来ないなら学園を火の海にする───言わずしても意図は理解出来た。

 

一応、決戦に向け準備(・・)は終えている。

だが『雷の修道女(グローム・モナヒーニャ)』とコアの件について確認する必要はあった。

 

 

(───確認するしかなさそうね)

 

 

 

 

 

 

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