クソ雑魚メンタルなTS娘はマッマの所為でVTuberデビュー   作:totto

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27話 閑話5 音町アリアの禊

「お姉ちゃん! 相談があるんだけどいいかな?」

「妹よ、出来ればノックして返事を貰ってから入ってきて欲しいかな」

「あっ……ごめんなさい。ちょっと焦ってて」

 

 悩んで中々答えが出ない私は、一番身近に居る人に頼ることにした。

 

 そもそも何に悩んでいるのか。

 私たち3期生はオフコラボリレーを終えてからも順調にチャンネル登録者数を伸ばしている。しかし、私こと音町アリアは少し伸び悩んでおり、このままでは同期達に置いて行かれるのでは、という考えを脳裏に過らせて焦っていた。

 

 同期であるシロネは3期生のトップを走り、それに続く様に私たちも伸びており、イズモが6万人間近でメメは6万人突破。でも私だけは5,6万人と伸びが微妙。

 何が原因なのかは、なんとなく分かっている。しかしそれが正しいのかも、どうしていけば良いのか分からずに悩んでいた。

 

「なるほど、それで可愛い可愛い明奈ちゃんは、お姉ちゃんに相談しに来たのだね」

「…………そうなんだよね……」

 

 私のお姉ちゃんは歳が3つ上で、大学の時始めた小説投稿がウケてそのまま作家として生計を立てている凄い人だ。勉強も出来て頭も良く、こう言うとシスコンっぽいけど綺麗で素敵な人。でも家事全般がダメという生活力皆無で、私が同居するまで外食オンリーで、部屋も……うん、女性が住む場所ではなかった。

 

 昔からよく一緒に居るおかげで、アニメやゲームなどお姉ちゃんの影響を多分に受けており、お互いに趣味の話で困ることはない。それぐらい仲が良い姉妹だと自負しており、困った時は良くお姉ちゃんに相談をしている。

 

「ふむふむ、原因は確かにシロネちゃんとのオフカラオケ配信が切っ掛けだろうね」

「…………だよね……」

 

 本人(シロネ)には既に謝っているが、それを快く思わない人たちも居る。

 私と同じく、今回の原因はそこにあるのではないかとお姉ちゃんは推測した。

 

「じゃあ、、どうすれば良いんだろう……」

「時が解決してくれるのを待つしかない、という訳にもいかないだろうし……よし、お姉ちゃんが良いことを思いついたから、1つ放送で(おこな)ってみようか」

 

 まさかコレが、あんなことになるなんて、私はこの時何も予想できなかった。

 

『《音町アリア/Vワールド3期生》業火に見舞われる禊コラボ《振上シロネ、音姉》』

8,716人が視聴中  ↑259  ↓3

 

音鳴(おとなり)さんのみんな、こんアリア。歌う事が大好きな女の子、音町アリアだよー」

 

コメント:こんアリア!

コメント:こんアリア!

コメント:こんアリア!

コメント:コラボと聞いて

コメント:シロネちゃんと後1人は誰だろう

コメント:もしやお姉ちゃん?

 

「こんにちわー音鳴さんのみんな、アリアちゃんのお姉ちゃんの音姉だよ。諸事情により参加することになりました」

 

コメント:おおおおお!

コメント:まさかのお姉ちゃん参戦!?

コメント:これは神展開の予感

 

「そしてもう1人のゲストであるシロネ」

 

シロネ『こっこんミャアー。振上シロネ、です。猫耳ついてるけど猫じゃないです』

 

コメント:こんミャア!

コメント:こんミャア!

コメント:猫やんけ!

コメント:猫だろ!

コメント:猫と認めていけ!

 

シロネ『ミャア!?はっはい、猫ですごめんなしゃい……』

 

「シロネちゃんは押しに弱いねぇ」

 

シロネ『そっそんなこと……なっなくもないかも、しれないです……』

 

 お姉ちゃんの言葉にしどろもどろに答えるシロネ。

 

「今日はお姉ちゃんが一緒と言う事で、緊張気味なシロネだけど今回のメインは私だから気楽にしていってね」

 

シロネ『うっうん……』

 

 会ったことも無い相手と一緒なのは申し訳ないけど、これに関しては事前に本人から了承を得ている。

 

コメント:それで今回はどういう企画?

コメント:何に対しての禊?

コメント:禊とは

 

「コメントにも来ているので、そろそろ本題に入りたいと思います。私、音町アリアは以前シロネとのコラボでオフカラオケコラボをいたしました。その配信の仕方が騙し討ちで相手に対して配慮が余りにも無かったという事で、配信後にシロネに謝罪をして許していただけましたが、シロネの好意に甘えすぎているという事で禊によりその罪を浄化しようと思います」

 

コメント:あぁ~あれか・・・

コメント:人によってはダメって言うよな

コメント:あれか

コメント:あったなぁ

コメント:どんな反省方法にするのか楽しみだ

 

「この企画はアリアちゃんに相談されたお姉ちゃんこと音姉(おとねえ)である私が発案させてもらったモノです。題して、まさに地獄の業火!?超激辛焼きそばを食べきって浄化されろ!」

 

コメント:えっ!?

コメント:マジ・・・?

コメント:あのやヴぇーやつか

コメント:あっっっっ(察し

コメント:あれはアカン

コメント:アリアちゃん食べれるの・・・?

 

「えっと……私は一応辛い物は食べれるけど……すごく得意という訳でもないんだよねぇ…………でも、禊の為にがんばります!」

「という訳で、それをちゃんと食べきれたかどうかを、私とシロネちゃんが見守る係という訳なんだよね」

 

コメント:アリアちゃん無理はしないでね

コメント:いったい何人のライバーが犠牲になったか・・・

コメント:食べきれるのか?

コメント:辛い物好きのライバーも、食べきれずに轟沈してたよな

 

「みんなぁーーーそんなに不安を煽らないでよ!?ただでさえ事前情報だけで不安なのに!」

「という訳で、用意した超激辛焼きそばをどうぞ」

 

ペリッ

 

「痛ッ!?えっ、湯気が目に入っただけで痛いんだけど!!!こっこれ、食べれるの……?」

「大丈夫、ちゃんと人が食べれるものだから。はい、牛乳を先に飲んで」

「牛乳……?うん、ゴクゴクゴクッ」

 

コメント:音姉準備万端すぎるw

コメント:牛乳で胃に膜を張るのかw

コメント:どこまで通用するかな

 

「それじゃあアリアちゃん、逝ってみようか」

「……よし、逝きます!」

 

コメント:2人ともイントネーションwww

コメント:逝ってら~

コメント:なーむー

 

「あーーーむ…………ンンンンンンンンンンンンンン!?水水水水水水!」

「はい、お水」

「ゴクゴクゴクゴクゴクッ、かぁっっっっらあああああああああああ!?水飲んでも全然収まらないんだけど、というか痛いよコレ!ダレ、これ作ったヤツ!今すぐに口の中に突っ込んでやるぅぅぅううう!!!」

 

コメント:良いリアクションw

コメント:草

コメント:草

コメント:草

 

「ほらアリアちゃん、まだ一口しか食べれてないよ」

「ヒッ……」

 

 こんなのをあと何口も……。

 既に口の中は炎が暴れまわっている様に熱くて痛いし、お腹も熱い。早くも挫けそう……。

 

シロネ『……アリア、その……僕はもう許してるし……無理しないで良いんだよ……?アリアが、辛い目に遭うのは……嫌……だし……』

 

「シロネ…………」

 

コメント:シロネちゃん天使

コメント:シロネちゃん優しい

コメント:シロネちゃん天使過ぎ、結婚して

世闇イズモ✓:シロネちゃんは渡さないぞ!アリアがんばれ!

花咲メメ✓:アリアちゃんがんばってください。あとシロネちゃんはあげません

コメント:同期おるw

コメント:同期もよう観とる

 

「みんな……」

 

 私はシロネを巻き込んで、早々に挫けそうになっているの?

 何のための企画だと思っているの?

 ケジメをつけて、自分自身を叱咤し、前に進むためでしょ?

 

「ごめんねシロネ、ちゃんと食べきれるから。そこで見守ってて?」

 

シロネ『うっうん……わかった……がんばれ、アリア!』

 

「よっしゃーーーがんばるぞぉ!あむっ、ンんんンンンん!?」

「アリアちゃん、がんばれ、がんばれ、がんばれ」

 

コメント:姉音さんその応援の仕方はアカン!

コメント:ワザとかな?

コメント:がんばれ♡がんばれ♡がんばれ♡

 

「アムアムアムッンンンンンンンンンンン!!!!!」

 

【お隣の音鳴さん¥10,000 がんばれ♡がんばれ♡がんばれ♡】

【¥500 がんばれー!】

【¥2,000 がんば!】

 

 こうして、私の激闘の火ぶたが落とされた。

 

「んんーーーゴクッ、ゲホッゲホッゲホッゲホッ。からひからひよ……おみゅじゅ……」

「はい、お水」

「ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクッ……べろがいたひ…………」

「うーーーん、えぐいぐらい真っ赤だものね、この焼きそば」

 

シロネ『がっがんばれ、がんばれ、がんばれアリア」

 

「ほら、半分まできたよ。がんばれ、がんばれ、がんばれ」

 

花咲メメ✓:ファイトですよー

世闇イズモ✓:がんばれアリアちゃん!

コメント:がんばれええええええ!

九坂かかえ✓:がんばえーーー!

塔道あきり✓:がんばれ

コメント:1期生もきちゃ!

犬崎チロ✓:がんばれアリアちゃん!

執仕ベル✓:がんばってください!

黒神フェン✓:まあ、あたしは楽勝だけどがんばりなさい!

コメント:↑草

コメント:↑↑草

コメント:↑↑↑草

黒神フェン✓:なんで草生やしてるのよ!!!

 

 少し前にVワールドでもチャレンジした人が居て、その1人がフェン先輩。

 もちろん完食ならず、1口で撃沈していた。

 

「はひぃ、はひぃ……はひぃぃぃ……」

 

 みんなのやり取りを見て気を紛らわせているけど、口から胃まで全てが痛い。

 汗が額から垂れて、身体がもう食べるなと訴えてきている様だ。

 自然と口に運ぶ手も止まる。

 

「アリアちゃん、手伝うかい?」

 

 お姉ちゃんはこの事を予期しており、今回ゲスト参加という形で私の隣に居てくれていた。

 でも、ここで手伝ってもらったら自分自身に負けたような気がする。

 

はん(がん)……はる(ばる)……!アーーームッンンンンンンン!!!」

 

 口の中に焼きそばが触れた瞬間に痛みが走る。

 考えたヤツ、これ食べるとかただの罰ゲームでしょ!?

 

シロネ『がんばれぇ!アリア、がんばれぇーーー!』

 

 シロネの一生懸命な応援が耳に届く。

 私の都合なのに付き合ってくれて、健気に応援までしてくれる。

 これに応えなきゃ女が廃る!

 

「アムッアムッアムッアムッアムッアムッ!」

「すごい、一気に口へ頬張ってる。あと3分の1まできたよ」

「ゲホッゲホッ、アムアムアムアム……!」

 

コメント:すげぇ・・・

コメント:これは完食するか・・・?

コメント:今の所完食したVは0人だよな

コメント:おれらは伝説を目にするのか!?

【ぺけぺけぺこ\10,000 がんばれーーーー!】

 

「あともう少し……がんばってアリアちゃん!」

 

 趣味のこと以外はクールなお姉ちゃんが熱い言葉で声援を送ってくれる。

 目の前には、あと2口程の焼きそば。

 でも、私の口はヒリヒリと痛みを訴えており、胃の中もグルグルと熱い物がせり上がろうとしてる感覚がある。

 体力もマラソンをした後の様にフラフラで、シャツが汗で張り付いてる。

 

 あともう少しなのに、手が進まない。

 よく頑張った、ここまでよく食べた、ここで終わったとしても誰も責めないでしょ、なんて弱い自分が顔を覗かせる。

 

 余りの辛さに心が挫けそう―――――

 

シロネ『アリア………………信じてるよっ!』

 

 そんな絶妙なところに、シロネの一言が心を繋ぎとめた。

 

「アーーームッ、アムッ!」

「食べきった!!!よし、今写真撮ってツイッターにあげるね」

 

 お姉ちゃんは空の容器を私のライバー用のスマホで写真を撮ると、私が食べ切ったという脱音のツイートが写真と共に投稿される。

 

コメント:すげーーー!

コメント:写真きた!

コメント:88888

コメント:888

コメント:アリアちゃんおめでとう!

世闇イズモ✓:アリアちゃんおめでとう!!!

花咲メメ✓:おめでとう!

九坂かかえ✓:すごいよ!おめでとう!

塔道あきり✓:おめでとう!

犬崎チロ✓:完食すごい!

執仕ベル✓:完食おめでとうございます!

黒神フェン✓:よくやったわ!

 

シロネ『アリア……すごい……おめでとう!』

 

「あっ……ありあ(ありが)……ほう(とう)……」

 

 ちゃんとお礼を言いたいのに、口が痛すぎてまともに喋れない。

 

「アリアちゃん良く頑張ったね、えらいえらい」

 

 お姉ちゃんはそう言うと、私の頭を撫でてくる。

 心の中が、やり遂げた実感に満ちていく。

 

おねーはん(おねえちゃん)も、ありあおー(ありがとう)

「どういたしまして」

 

コメント:音町姉妹てぇてぇ

コメント:アリシロてぇてぇなぁ

コメント:それにしても、アレを食べて良く平気だよね

コメント:辛い物得意なのかな?

 

 チラッと見たコメントで、先ほどまで忘れていたお腹の調子を思い出した。

 

 グルグルグルグル

 

「あう……ごっごえん、トイレいってくうーーー!」

 

 私は猛烈なお腹の変調に耐えきれず、トイレへと駆け込んだ。

 

コメント:あっ

コメント:あっ

コメント:あぁ・・・

コメント:あっっっ(察し

コメント:俺達は何も見てない

コメント:南無

コメント:(-人-;)ナムナム

 

シロネ『……えっと、どっどうしましょう……』

 

「そうだね、とりあえず目的は達成したのでこの辺でお開きとしようか。リスナーのみんな、音鳴さんのみんな、それにアリアちゃんの同期や先輩方、応援ありがとうね。それではまた次回、バイバーイ」

 

シロネ『ばっばいミャア……』

 

 【この配信は終了しました】

 

 この後、ツイッターでは私が超激辛焼きそばを完食したことがバズったとか何とか。しかし、トイレで悪戦苦闘していた私は知る由もなかった。

 

 もうあんなの食べないからぁーーーーー!

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