ノーフューチャーの難易度がどれくらいなのか今から楽しみです!
とはいえ今はツシマやっているので、そっちが終わってから手をつけるつもりですが。
この話もあと一話で終わりです。最後までお付き合い願えれば幸いです。
「ええと……これを仕上げたらおしまいっと」
ペタンと書類に印章を押してから、アンジェラは大きく息をつく。椅子から立ち上がって背筋を伸ばしてから、最終確認の為に机の上に置かれた書類の束に目を通す。内容に問題はないし、印章の押し忘れもない。大丈夫だ。
トントンと纏めて書類を束ねてから、アンジェラは部屋を出る。女王の元へ向かう途中の角で、紅蓮の魔導師と肩がぶつかった。
「すまないアンジェラ王女。っとそれを女王の元へ持っていくのか?」
「ええ、後はお母様に最終確認してもらわないと。あ、そうだ。私はこの書類で仕事は終わりだから、少し出掛けてくるわ。数日留守を頼むわね」
「やれやれ、またフォルセナか。王女も飽きないな、そんなにあの小僧がいいのか」
「うるさいわね、好きなんだからしょうがないじゃない。それよりも、留守ちゃんとしててよね。アンタの命は私が助けてやったようなもんなんだから、感謝してるならキリキリ働きなさいよ」
「やれやれ、仰せのままに。ついでだ、その書類も女王様の元へ持っていこう」
肩を竦めながらアンジェラが手にしていた書類を掌へ収めると、紅蓮の魔導師は踵を返す。その姿に「素直に持っていけばいいのに」と思うものの、余計な事は口にせず礼だけ言ってアンジェラはバルコニーへ通じる通路へ向かい、外に出てから以前の旅で使っていた風の太鼓を手にする。
マナの女神を助ける旅が終わった後、持っていたアイテムを分ける際、アンジェラはコレを受け取ったのだ。貴重品だが、分配時に揉めることはなかった。リースはローラント城から天の頂に向かえば直ぐにフラミーに会えたし、デュランもブースカブーを呼び足せるピーヒャラ笛がある。なので何も持っていないアンジェラが、太鼓の所有者になったのだ。
アンジェラが慣れた様子で太鼓を空へと翳し、手首を使って左右に振ると、数分もしないうちにフラミーが東の空から現れる。見慣れた姿だから驚きもしないが、背中に予想していなかった人物がいたので思わず「あら」という言葉がこぼれた。
「リースじゃない、久しぶり。あ、もしかして出掛けている最中だった?」
「いえ、エリオットと一緒に天の頂でフラミーと会っていたら、彼女が呼ばれたような仕草をしたので。あぁ、アンジェラだなと分かったので乗せてもらったんです」
行くんですよね、フォルセナに。と問われてアンジェラは苦笑しながら頷いた。誰にでも知られているくらい想いを寄せているのに、肝心の本人には全然気づいてもらえていない。だが、それも今日で終わりにするつもりだ。
「ええ、そのつもり。でもリースが一緒で凄く嬉しいわ。心強いもの」
「友達なんですから当たり前ですよ。さぁ、日が暮れないうちに向かいましょう。ついでだし、口説き文句も一緒に考えます?」
「いいかも。でも、普通こういうのって逆よね」
「フフ、そんなデュランだからアンジェラは好きになったんですよ」
「そっか。そうね」
笑顔で差し出されるリースの手を掴んで、アンジェラはフラミーの背中へと乗り込む。
目指すはフォルセナ、デュランの元だ。
* * *
「デュラン!」
フォルセナの上空、英雄王の像の傍を歩いている目当ての相手を見つけて、アンジェラは大きな声で名前を呼ぶ。デュランの方も声で誰か解ったのだろう、特に驚く素振りも見せず顔を上にあげると、立ち止まる。
「アンジェラ、リース。一ヶ月ぶりだな。この前手紙が届いたけれど、どっちも元気でやってるみたいでなによりだ」
「ええ。アルテナも随分寒くなったけれど、覚悟していたより冷え込まないからなんとかなりそうよ。今は戦争に使っていた兵器の技術を応用して、室内で使える暖房器具を紅蓮の魔導師を中心にして作成しているところ」
「ローラントもゆっくりとですが、再建の道を歩んでいます。エリオットが戻ってきたのもあるけれど、やはりお父様がいてくれることが、大きいんでしょうね。ナバール盗賊団の方も、ホークアイが手紙を書いて色々と教えてくれて……イーグルさんが生き返った事の喜びの書状を見ると、本っ当に良かったって思います!」
それぞれの現状を、軽く報告しあう。旅が終わって、それぞれの故郷に戻っても育んだ絆を失くさないようにと、三人はしょっちゅう手紙のやり取りを行っていた。いや、三人だけではない。ペダンでの事を思い返して、ケヴィン・シャルロット・ホークアイたちとも、手紙やりとりをしていた。
手紙によれば彼らたちの未来も、そう悪いものではないようだ。親友だという狼のカールを殺してしまったと悲しんでいたケヴィンだったが、実はカールは死んでいたのではなく仮死状態に陥っていたとのこと。
そして、カールを助けてくれたのは父親の獣人王で、カールを返してもらう際に彼の真意を聞けたことにより、ほんの少しだが歩み寄ることが出来たという。今は月夜の森で、カールと赤ん坊になったルガーと共に修行をしながら過ごしているという。
シャルロットの方もウェンデルに戻り、以前と同じ生活に戻ったそうだ。探していたヒースが、祖父を助けるために自分の命を代償に禁呪を使ったと知った時は大泣きしたそうだが、それから数日後、ひょっこり戻ってきたのだという。驚くシャルロットに、ヒースは笑顔でネタばらしをする。何でも、マナの女神がフェアリーだった時の命を与えてくれて生き返ることができたのだそうだ。その時「こーなったらとことんやってやるわ!」と半ばヤケになっていたらしいので、彼を生き返らせたのは自分たちの願いを叶えた後だと察することができた。
願いを叶えた後「もぅマヂ無理」と倒れかけていたので、そのまま眠りについたかと思っていたのだが、最後にもう一仕事していたようだ。フェアリーもちゃんとマナの女神らしいことしたんだなと、手紙をみて笑った記憶は比較的新しい。
ホークアイはリースが言っていた通り、体調が回復したジェシカ、リースの願いで復活したイーグルと共にナバール盗賊団に戻って、少なくなっていくオアシスの水と砂漠の民のために、緑豊かな大地にする方法を探しているのだという。砂だらけの大地に木々を生やすという行為はそう簡単ではないだろうが『君たちが世界を救うという奇跡をやってみせたんだ。オレも頑張るよ』と手紙には書かれていたので、彼らならきっとやりとげるだろうと信じている。
「そういえばデュラン、今日は警備の仕事は?」
「休みだよ。前に比べてずっと平和になったし、父さんもいるからそんなに忙しくないんだ。とは言っても、騎士になったら解らないけれどな」
「そういえば、私たちがお義父さん連れてきたら英雄王さん、凄くビックリしてたわよね
」
「アレは、少し笑ってしまいましたね」
アンジェラたちが言っているのは、拘束魔法をかけられ、殺されそうになっても動じなかった英雄王が「リチャード王子! お久しぶりです」とロキが黄金の騎士の姿で挨拶した時「ロ、ロキ!? シモーヌもか!?」と動揺を見せた姿の事だ。あそこまであわてふためく姿を目にしたのは初めてだったので、陛下もこんな表情をするんだな、と妙な感動をしたのは覚えている。
因みに両親は、自分が五才の頃の年齢で戻ってきた。ステラは驚きつつも『これが世界を救った褒美っていうのなら、女神様もなかなか粋なことをするもんだね』と笑っていたが、両親の記憶がほぼないウェンディは、突然家にやってきた二人にどう接していいか解らず、ますます自分にべったりになってしまったのは少し問題かもしれない。とはいえ、ぎこちないながらも「お父さん、お母さん」と呼んでいるので、時が経てば良好な関係になれるだろう。
「ねぇ、デュラン。今日お休みなら、予定は入ってるの?」
「別にないけど、どうした?」
「あ、あのね。ちょっと話をしたいんだけれど」
「せっかくなので、モールベアの高原まで行きませんか?」
「何がせっかくなのかよく解らないけど……いいぜ。じゃあ向かうとするか」