ちなみに捩じ込む場所がなかったので書いてないのですが、竜帝様はドラゴンズホールに戻って大人しくしてます。
女神様の腹パン&デュランたちにフルボッコされたので「筋肉は裏切らない」と筋トレに勤しんでいる姿をご想像下さい。
これにて完結ですが、思い付いたらアニス話も書きたいです。
「ここに来るのも久しぶりだな」
「あら、フォルセナから直ぐなのに以外と行ってないのね」
「こんな穴だらけの場所、大砲で飛ばされない限り来ようとも思わないだろ」
「この先にある宝石の谷で宝石をとったら、強い武器を買いたいって行ってましたよね。それでも行かなかったんですか?」
「あそこに行くには、フラミーから降ろしてもらわないとだろ。アンジェラが太鼓持っている以上、オレだけじゃ無理だ」
「あ、そう言われればそうね。だったらついでだし、宝石の谷も行っておく?」
「いいよ、別に。それより話ってなんだよ」
「えっとね……」
デュランに促されると、アンジェラは俯いて手遊びを始める。だが、少しすると顔を上げてデュランを真っ直ぐ見据えながら宣言する。
「す、好きなの」
「何が?」
「デュ、デュランの事」
「……誰が?」
「私に決まってるでしょ! 他に誰がいるっていうのよ!」
最後は顔を真っ赤にさせながら、アンジェラはデュランに対して愛を叫ぶ。そして告白を受けたデュランは、言われた意味をすぐさま理解できなかったらしく、しばらく無言で思案してから。
「ええ!?」
酷く驚いてみせる。今初めて知ったという素振りの彼にアンジェラは呆れ、リースは苦笑いを浮かべた。
「アルテナに戻った時、デュランの顔見ながら『魔法よりも素敵なもの見つけた』ってさりげなく告白したのに、微塵も気づいてなかったのね。まぁアンタの態度からして、そうだろうとは思っていたけれど」
「それにしても、見事な驚きっぷりですね。あれだけ好意を寄せられていたのに気がつかないから、私とフェアリー何時もハラハラしながら見守っていたんですよ」
二人の言葉を聞いたデュランはバツが悪そうに頭を掻きながら「だってよ」と呟く。
「アンジェラもリースも、王女様だろ。一緒に旅をしていたから、こうやって軽口を叩ける仲になっているけれど、普通ならお目通りすら叶わない身分差だから、そんな風に想われているなんて想像していないってか出来ないというか」
あぁ、あんな態度とってたけれど、そういうことは考えていたんだと、二人は少しばかり感心する。何しろ道中では、まるで同僚に接するかのように普通に話しかけられていたのだ。全く畏まる様子がなかったので、この男は生まれには頓着しない性格なのだと思っていたのだが、どうやら違ったようで。
「男女が旅で一年間、行動を共にしてたのよ。惚れた晴れたがあって当然じゃない。その可能性を考えなさいよ」
「だから無茶言うなよ。お前は王女様で、オレは唯の市民。下級の貴族ですらないんだ。夢を見ることすらおこがましいだろ」
アンジェラは顔を曇らせて俯いた。好きな相手から否定されるような事を言われると、まるで「お前を好きになることは出来ない」と断られているような気分になってしまう。
「デュラン」
「けどよぉ」
リースがたしなめてみるもののやはりデュランの考えは変わらないようで、頑なな態度にアンジェラの気持ちは、どんどんと萎んでいってしまった。だが、ドン底まで落ち込んだら今度はフツフツと怒りが込み上げてくる。何で好きと言っただけで、ここまで拒否されなければならないのか。誰かが誰かを好きになることは、別に悪いことではないはずだ。
やがてムシャクシャした気分のまま、アンジェラは癇癪を起こしたように大声を出す。
「何よ何よ! 何でデュランの事が好き、って言っただけで、こんなに嫌な気分にならないとなのよ!」
「いいじゃない、王女が兵士を好きになったって! 世界を救ったご褒美に、恋の一つくらい叶えてくれたっていいでしょ。というか、よく考えたらフェアリーに叶えてもらった願いだって、私個人の望みじゃなかったんだから、叶わなかったら理不尽だわ。旅をしてなかったケヴィンたちですら結果的に願いが叶っているようなものなのに!」
一気に捲し立て、肩を揺らして大きく呼吸しながら様子を伺えば、デュランどころかリースも大きく目を見開いてこっちを見ていた。
「……悪かったよ。お前がそれだけ真剣に考えてくれてたのに、ケチつけるような事ばかり言って」
息が整わず荒い呼吸を繰り返していると、まだ怒っているのかと勘違いしたのか、デュランが頭を下げて謝ってくる。その言葉で少しだけ心に余裕が出来たので、アンジェラは落ち着いた声で彼の名前を呼んだ。
「どうしたよ」
「私がアンタの事好きなのって、迷惑? 嫌?」
「そんなわけないだろ。アンジェラも、もちろんリースも、町中にいれば殆どの奴が目を向けるくらい美人だし、性格だって悪くない。好かれて不快なんて感じねえぜ」
「だったらさ、デュランも私の事、好きになってくれる?」
「さっきも言ったけれど私、身分とかそういうので諦めたり身を引いたりとか考えてないの。かといって今すぐに結婚してとか、アルテナに一緒に来てというものないけど。どう、かな?」
改めてこう言うと、恥ずかしくなってくる。
そして言われたデュランも照れているのか、若干顔が赤い。あーとかうーとか呟くように唸った後、返事がくる。
「国王陛下が、近々アルテナに何名かの騎士を向かわせるつもりでいるらしいんだ。関係修復の使者としてな。確実に選ばれる保証はないけれど、オレも立候補してみる。アルテナには何度か脚を運んだし、お前とも仲もあるから、多分選考は有利になると思うんだ」
「じゃあ!」
「ああ。今さらかもしれないけど、こちらこそ宜しくな」
その後「え、まだおとうさんたちに馴染んでないのに、お兄ちゃん遠くに行っちゃうの? 私も付いてく!」とウェンディが言い出したり、ロキが「リチャード王子、デュランが独り立ちするのはまだ早すぎるかと。一緒に暮らしてまだ一年も経ってないのに」等とごねて一悶着あるのだが、それはまた別のはなし。とりあえず今は。
「めでたしめでたし、ですね」