思いついたアニス戦は、こんな感じになりました。
何だかデュランたちの常識人枠が怪しくなってきた……。
ノーフューチャーモードですが、根性のない自分はゴーヴァ戦で心が折れて、ベリーハードモードでクリアしました。ラビのスリッパ欲しかったなぁ……。
パーティーはデュラン・アンジェラ・シャルロットでした。キャライベント&スキル回収が終わってからはずっとこのパーティーです。理由としては
シャルロット→パーティーに入れないとEDでヒースが助からない
アンジェラ→パーティーに入れないと魔法が使えるようになりたいという願いが叶わない
デュラン→パーティーに入れてかつ竜帝ルートいかないと紅蓮の魔導師に勝つ願いが叶わない
からです。出来れば皆の願いを叶えてやりたいんだよ!
「は?」
手にしている本から飛び出してきた内容に、デュランは気の抜けたような声を上げた。自分でも、随分と間抜けな声だなと思ったが出てしまったものは仕方がない。
隣にいたアンジェラたちにも目を向ければ、彼女らも言葉は発しないものの困った表情をしている。やはり思うことは一緒のようだ。一方、掌に収まっている本もとい大魔導師グラン・クロワは表情が見えないせいでデュランたちの察することができずにいたので、聞こえなかったと勘違いしたのか先程と同じ言葉を繰り返す。
『聖剣に選ばれしものたちよ、このままでは大魔女アニスが復活してしまう。今すぐに手に入れたオーブを持ち、マナの聖域にてクラス4となり、アニスを』
「あー、それなんだけれどね。大魔導師さん」
マナの聖域、もう閉じちゃっててクラスチェンジできないのよ。
『……何?』
今度はグラン・クロワが聞き返してきた。それに答えるのはリース。数ヶ月前に竜帝が復活し、マナの剣を狙って世界のマナストーンの封印を解き、世界を滅ぼそうとしたこと。
最後の力を振り絞ったマナの女神の助けを借りて、竜帝の野望を阻止することは出来たものの肝心のマナの女神は死んでしまい、代わりに共に旅をしていたフェアリーが新しいマナの女神となったが、今は失われたマナを作り出すために眠りについてしまっている為に聖域の扉は閉ざされてしまっていることを。
説明を聞いて、グラン・クロワは重いため息をつく。
『まさか、アニスが目覚める前にそのような事が起きていたとは……。マナの聖域には行けない、マナストーンも無い、何よりクラスチェンジにはフェアリーの助けが必須だ。すまん、若者たちよ。せっかくオーブを手に入れてきてくれたというのに』
「まぁ、それは仕方がねぇよ。オレたちもあんたも、互いの事情を知らなかったんだから。とりあえず……どうすればいい?」
『そうだな……こうなったら今の状態でアニスがいる禁域へと赴いてくれぬか?』
「別に構わないけれど……このクラスで勝てるわけ?」
『全く可能性がないとは言えぬ。難しいとは思うがな。行ってみて状況を教えてもらえれば、何か助言ができるやもしれん』
「確かに、こうして悩んでいてもアニスは待っていてくれませんからね。幸いフラミーは私たちに懐いてくれているので、移動に関しては問題ありませんし。ではグラン・クロワさん、私たちはどこへ向かえば?」
『うむ、アニスの禁域だが感じる魔力から推測すると』
こうして、グラン・クロワからアニスがいるであろう場所を聞き出したデュランたちは禁域へと向かう。だが、彼らの表情は固い。マナがほぼ無くなった状態に近い今、魔法が殆ど使えなくなっているのだ。そんな自分たちが、はたして大魔女と呼ばれる存在と戦えるのか。不安はあったものの、禁域についたらそれは消し飛ぶ。なぜなら。
「敵が強い! 修行が捗る!」
「なんか知らないけれど、魔法が使えるわ! しかも威力が前と変わらないし! あの時はああ言ったけれど、やっぱり魔法が使えるって最高ね!」
「二人とも凄く嬉しそうですね、気持ちは凄く分かりますけれど。ヨルムンガンド!」
禁域内は、旅をしていた時同様に魔法が使えたからだ。どうやらアニスが作り出した世界は、外の世界とは少しばかり勝手が違うらしい。その魔力の凄まじさに三人は改めて大魔女の名は伊達ではないと知るが、どちらかと言えば、クラスチェンジによって手にした能力を存分に発揮できる嬉しさと楽しさの方が勝っていた。金に物をいわせて山のように買ってきた回復アイテムや戦闘用アイテムを贅沢に使い、どんどん奥へと進む。時折、悪意ある故郷の改編に悪態をつきながら、モンスターを倒して走ること数時間。
「この先が……アニスのいる空間か?」
「今まで進んできた場所とは明らかに違うわね。行き止まりになっているし」
「空気も何だか重苦しくなってきてます。間違いないでしょう」
ゴクリと喉を鳴らしながら、三人は目の前に聳え立つ階段の手前で足を止める。後はこのまま突入するだけなのだが、何故かその場から動かない。なぁ、と声を上げたのはデュランだった。
「このまま行って……アニスに勝てる自信……あるか?」
問いに、アンジェラもリースも頷くことはしない。勝てそうな気はするものの、確証は持てなかった。というのも、強くなったという感覚がいまいち持てなかったからだ。
初めは、敵を倒すと身体の中から力が沸き上がるような高揚した感じがあったのだが、ある程度敵を倒したところで、この高揚感がまったくなくなってしまった。多分、クラスチェンジで鍛えられる限界に達してしまったのだろう。
もう一段階クラスチェンジができれば、またまだ伸び代はあったのかもしれないが、出来ないのでどうしようもない。
一度は滅亡の危機にあったこの世界。存続することが出来たのは、精霊たちと幾人もの人の力を借りたお陰だ。出来ることならこの平和をずっと維持していきたい。多少強引な手段を使ったとしても。
しばらくの間、沈黙が辺りを支配していたが、リースが口を開くことによってそれは破られる事になった。
「不安ならば数で押すというのはどうでしょう?」
「オレたち以外にも戦ってもらうってことか? でも、候補が思いつかないぜ」
「ペダンであったケヴィンたちは? 彼らの強さは、私たちに劣らないように見えましたし」
「うーん。人選は悪くないんだろうけれど、どうやって連絡とるつもり? あそこで会えたのは偶然の産物みたいなものだし、マナが極僅かな今だと、ペダンの宿屋で眠ったところで過去に戻れるかも微妙よ」
「あ、そうですね。すみません」
アンジェラの指摘に、リースは直ぐに謝る。いけるのではないかと思ったが、やはり咄嗟の思い付きでは駄目だったようだ。
そのまま考えてみるものの、代案は浮かばず。コレはグラン・クロワに助言を求めるべきかと思っていると、デュランが「あ」と声を上げる。
「どうしたのよ、デュラン」
「いる」
「いるって……何がですか?」
「リースの言っているオレたち並みに強い連中だよ。しかも、皆知ってる奴」
「え……あぁ! そっか、いるわねアイツらが!」
「っ! そういうことですか、確かにペダンでケヴィンたちに再開できるかの可能性に賭けるよりは、現実的ですね」
「よし、そうと決まれば一旦出て説得しに行こうぜ」
「任せて! フラミー、お願い!」
アンジェラが持っている風の太鼓を鳴らせば、数秒もしない内にフラミーが禁域内にやってきた。急いで背中に乗り目的地を告げると、返事をするようにフラミーが鳴き、禁域を後にする。
* * *
階段を上る数人の気配に、アニスは漂わせていた意識を浮上させた。目覚めてから数日、どうやらグラン・クロワと共にいた人間どもが、自分の元へとたどり着いたらしい。
階段を上りきると同時に、アニスは姿を現す。
「ふふふふふ……逃げ出すことなくよくきた……な?」
侵入者へ目を向けた瞬間、彼女は表情こそ変えなかったものの怪訝な声を上げた。グラン・クロワを見つけた時、奴と共にいた人間の気配は三人。それが何故か増えているのだ。
「決して叶うとは思っていなかった、息子との共闘、まさか実現するとは。大魔女アニス、その点にだけは感謝するぞ!」
茶髪の少年の左側に立つ、黄金の鎧を纏った騎士に。
「この溢れる魔力と広さ、申し分ない。竜帝様よりいただいた闇の力、とくと味わうがいい!」
紫色の髪の少女の右側に立つ、深紅のマントを羽織る魔導師。
「フハハハハ、小僧たちよ! あの時見せられなかった超神のなったワシの力を見るがよい!」
金髪の少女の後ろに立つ竜の力を身体から放つ男と。
誰だコイツらとアニスが視線を向けていると、茶髪の少年が答える。
「お前に勝てるか微妙だったから、助っ人を頼んだ」と。
そう、デュランたちが思いついた候補は『ドラゴンズホール』で戦ったこの三人だった。彼らは「父さん、力を貸してくれ!」「紅蓮の魔導師、エインシャント撃ち放題の場所見つけたわよ!」「ドラゴンマスターの命令です。命を助けたのだし、聞いてくれますよね?」と声をかけて連れてきたのだ。
思わず遠い目をするアニス。そしてグラン・クロワの人を見る目の無さを呪う。お前が声をかけた人間、勝てばよかろうなのだの人種だぞ、と。
だが、逃げてしまっては沽券にかかわる。何より勝ち目は薄いが、絶対に負けると決まったわけではない。
まるで自分が魔王に挑む勇者になったような気分で、アニスは叫ぶ。
「わたしの望みは、ただひとつ! 魔界の扉を開き、世界を滅す! 世界は滅ぶのだ! この大魔女アニスの手によって! さあ、見るがいい、わたしの力を! そして絶望にその身を焦がすがいい!!」
こうして、最後の戦いは始まった。善戦するものの、やはり六人という数の暴力には押し勝つことができず。
大魔女アニス。永い眠りから目覚めた彼女は、起床時間数日で再び眠りに着くことになったのだった。
完結させたので、ご褒美として評価や感想いただけると嬉しいです。