リースがかなりアレなので、好きな方はご注意下さい。
後、よければアンケートに答えてもらえると嬉しいです。
「城内にモンスターを放つなんて……ナバール盗賊団、絶対に許しません!」
蒼と躑躅色が混ざり合う瞳に、静かながらも激しい怒りを宿しリースは槍を振るう。
賢者ドン・ペリから受けた忠告に従い、無事に風の精霊ジンの協力を得ることができたデュラン達は、その足ですぐさまアマゾネス達が秘密基地としている場所へ戻り、眠り草の花びらをジンの力でローラント城まで運んでもらった。
バタバタと音を立てるようにして眠り込んでいくナバール兵たちの姿を見て、これならと淡い期待を抱いていたのだが、向こうも万が一の状況は想定していたらしい。城内の奥に進むに連れて、イビルソード等の魔法生物やチビデビルといった魔族が侵入者の行方を阻むように配置されていた。あくまで迎撃の為だからか荒らされた様子はないが、自分が大切に思っている城を魔物に占領されて面白く感じるわけがない。
「リース、残りはどれくらいだ!?」
「もう半分以上は進んでいます。後少しです!」
「んもぅ! 次から次へと、鬱陶しいわね!!」
逸る気持ちを抑えられず、思わず駆け足になって城内を進むリースだったが、仲間のデュランとアンジェラは文句も言わずに着いてきてくれていた。ローラント城に入ってから走りっぱなしに加えて、連戦とも言える戦闘の数だが二人とも息切れ一つしてしていないのはクラスチェンジしたおかげだろう。かく言うリースも、かなり激しい戦闘をこなしているというのに、疲労を全く感じていなかった。
(風のマナストーンでクラスチェンジできたのは僥倖でした)
全体的に能力が上がったからか、今までの戦闘でも特に苦戦はしていない。このままいければ、城奪還もそこまで苦労はしないだろう。
同時に、何度も戦闘を繰り返して確信をした。捕虜として捕らえても様子のおかしかったナバール兵、そして城内にいる多数のモンスター。特に魔族など使役できる人間は限られてくる。盗賊として名を馳せていたナバールには、あまり縁が無いはずだ。となれば。
(おそらくこの忍者の集団を操っている人物がいる筈。その者がエリオットを!!)
手にしている槍を強く握りしめてリースはまだ相見えぬ敵相手に闘志を燃やす。
「デュラン、アンジェラ、こっちです!」
二人を先導しながら、更に奥へ進もうとした時だった。部屋の先に若い男が一人立っていたのだ。ローラントやパロでは、見たことのない顔。ならば。
「何者です! ナバール兵ですか!? 父の敵、覚悟なさい!」
槍の穂先を男に向けて叫べば、隣に並んだデュランとアンジェラも、それぞれ武器を構えて戦闘態勢に入る。一方、突然三人に殺意と武器を向けられた男の方は「ちょ、タンマ!」と慌てて両手を振って敵意が無いと懸命に伝えてきた。
「ち、違うんだ、話を聞いてくれ! オレはホークアイ。確かにナバール盗賊団だったが、今は逆に追われている身なんだ。今回の事はイザベラって女が盗賊団を乗っ取り心を操って、ローラントを占領させたんだ。オレはそれを止めに来た。信じてくれ!」
必死になって訴えてくるホークアイの姿に、リースは警戒を解かないものの穂先を下げる。
「リース、いいのか?」
「彼の鬼気迫る表情で、嘘をついているとは考えにくいです。それに、心を操る……今までのナバール兵の様子に覚えがありますので」
リースの話を聞いて、デュラン達もとりあえず武器を収めた。緊張は続くもののだいぶ和らいだ殺気に、ホークアイは「信じてくれてありがとう」と微笑むと、自分がナバールを抜けた理由やイザベラを追うわけ、更にイザベラについて知っている限りの情報を三人に語る。
デュラン達は大人しくホークアイの話を聞いていたが、ある単語を耳にした瞬間、リースの肩がピクリと跳ねた。やがて語り終えると「……分かりました」と頷く。
「私はローラントの王女だったリースです。父や殺されてしまったアマゾネス兵の仇はとりたいですが、何も罪のない女性の命を犠牲にすることはできません」
「本当かい!? 恩に切る!」
「とこほでホークアイさん、一つお訊ねしたいことがあります」
「え? 一体……何だい?」
「その親友だったというイーグルさんですが……いつから一緒にいたのですか?」
「そのことかい? 物心付いたときからかな。ずっと兄弟みたいに育ってきて、いつかアイツが盗賊団の首領になったら、その隣に立つものばかりだと思ってたのにさ」
「……そうですか。分かりました」
その答えを聞いて、リースは決心をした。そしてジッとホークアイを見つめると、高らかに叫ぶ。
「ホークアイさん! 私が(せめて妄想の中で)貴方(とイーグルさん)を幸せにします!」
「おい、リース!」
「いきなり何いってるの!?」
突然のリースの宣言に素っ頓狂な声を上げるデュランとアンジェラ。だが、それ以上に衝撃を受けていたのはホークアイだ。突然現れたローラントの本来の主から、情熱的な告白を受けたのだ。しかも、彼女は清純が服を着て歩いているような清らかな美少女だ。ドキドキしない方がおかしい。
(一体この短い会話のどこでオレに惚れたんだ。いや、その前にこんな熱い告白をされて何もしないなんて、男としての沽券に関わる!)
そうして彼のとった行動は。
「ひゃっほう! さすがは王女様、もうキスしちゃう!」
少々ヤケクソ気味に叫びながら、リースの頬にキスをすることだった。
驚くデュラン達と固まるリース。顔を真っ赤に染める彼女の姿に、ホークアイは何時もの調子を取り戻すと礼を言って去っていった。
「リース、ボーッとして大丈夫か?」
「いきなりキスなんて……ち、ちょっと羨ましいかも……」
未だ動かずにいるリースを気遣って、声をかけるデュランとアンジェラ。一方、リースはと言えば。
「そ、そんなに喜んでくれるなんて……頑張ります!」
全くブレていなかった。
* * *
そしてジェノアとビル・ベンを倒し、奥の玉座にまでやってくると、異国の衣装を纏った女が、玉座に腰を掛けていた。ナバール兵とは違う空気を放つ女に、リースが問う。
「何者です!」
「私は『美獣』。黒の貴公子様にお仕えしている者さ」
「なら、貴女がナバール兵とモンスターを操って城をこんなに!?」
「おや、この城の生き残りか。そうだと言ったらどうするんだい?」
こちらを完全に見下した言い方に、リースは眦を釣り上げるが、叫ぶのは堪えて静かに告げる。
「貴女を殺す事は、とある人と約束したので今回は我慢する事にします。しかし! 父や沢山のアマゾネス兵を殺した事、エリオットを連れ去った事! そして」
「リアルになったかもしれないイグホの夢を摘み取ったことは絶対に許しません! さぁ、私と勝負しなさい!」
槍を構えると戦闘態勢に入る。
「……はぁ?」
「小さな頃からの幼馴染みカプというのは、意外と貴重なんですよ! それを簡単に……。貴女を倒したら、BLの素晴らしさをたっぷりと教えて上げます。かかってきなさい!」
「なぁ、リースは何の話をしているんだ?」
「知らなくても問題ないわよ。生きることに支障はないから(教えてもらったから、解っちゃうのがちょっと悲しいかも)」
「……」
美獣は無言でリースを見た。普段なら後ろの二人を合わせても、恐れるに足りないような力の差だ。だが、彼女からは何というかよく分からない気迫というか凄みがある。もし、万が一。万が一に負けることがあれば。
今まで密かに胸に抱いていた大事な想いを、変えられてしまいそうな気がする!
結局、用心して美獣のとった行動は。
「フ、フン、こんな城にもう用はない。欲しけりゃくれてやるよ!」
逃げる、要は戦術的撤退であった。
* * *
こうして、何とかローラント城を取り戻したリース達だったが、完全に晴れ渡った表情というわけにはいかない。
「城を取り戻す事ができて本当に嬉しいです。デュラン、アンジェラ、協力してくれてありがとう。でも、お父様は……」
そこまで言うと、リースは何かを思いついたらしく勢いよく顔を上げ、フェアリーを呼ぶ。
「何ー? どうしたの?」
「女神様への願いを変更したいのですが、いいですか? ローラントの再建は何とかなりそうなので、お父様とイーグルさんを生き返らせるにしたいんです」
「うーん?」
(ええと。最強の剣士になるのと、お母様に認められる魔法使いになるのと、お父様とイーグルさんの復活? ちょっと多いかなぁ)
マナが少なくなってきているので、難しい気がする。でも、女神様ならできるかもしれない。
しばらく悩んでみるものの答えは出ないので、考えるのを止めてフェアリーは叫ぶ。
「任せて、マナの女神様に不可能はないわ!」