結果を踏まえまして、ドラゴンズホール組生存ルートでいきたいと思います。
そして、苦労している紅蓮の魔導師。
すまんな、紅蓮の魔導師。
私聖剣伝説3の中では紅蓮の魔導師×デュランが一番好きなんだ……。
バン、と勢いよく扉を開けば、床に伏せたまま意識を失っているフェアリー、そしてこの国の主である理の女王の姿が視界に飛び込んできた。アンジェラが悲鳴を上げて必死に呼びかけるが、目を覚ます気配はない。
「遅かったな」
そんな彼女らへ、玉座の傍らに立っていた紅蓮の魔導師と黒耀の騎士が声をかけた。相変わらず自分たちを見下したような態度に、デュランは背負っている剣の柄に手をかけるが、牽制される。
「おっと、動かないでもらおうか。勝手な行動を取れば、フェアリーと理の女王の命は無いと思え」
「ぐっ……どこまでも卑怯な!」
「デュラン、気持ちは解りますが耐えて下さい。まずは二人を助けることが優先です!」
ギリ、と歯がみしながら睨みつけてくるデュランだが、リースの説得を受けて腕を降ろす。そして、持ってきていたマナの剣を紅蓮の魔導師達に渡すべく、両手で捧げるように持ちながら一歩一歩近づいていく。
一方紅蓮の魔導師は、悔しそうな表情を滲ませたまま、ゆっくりと此方に向かって歩いてくるデュランを高揚した気分で眺めていた。
もう少し、もう少しであのマナの剣が手に入る、と。
実際、紅蓮の魔導師のテンションは少しおかしかった。というのもマナの聖域に入ってからは禄に休息も取らず、同じようにマナの剣を狙う他の勢力と闘っていたからだ。どの勢力も自分たちと同じように他国を操り、側近と思われる人物は、自分たちと同等の能力を備えていた。実力的にはどこが勝ってもおかしくない状況下、辛くも自分たちに軍配が上がったのは、息子と剣を交えるまで死んでなるものかと黒耀の騎士が無双の活躍をした事と、たまたまドラゴンズホールで暴れていた黒ラビが、竜帝様の命を奪わんとやってきた他勢力を返り討ちにしてくれたおかげだろう。運が良かった。黒ラビの闘志が他に向いてくれたから、今回はドラゴンたちに甚大な被害は出ていなかったし。
そんな感じだったので、紅蓮の魔導師はかなり浮かれていた。例えるのなら徹夜越しの妙なテンションというか、大きな仕事を終えて打ち上げをやる時の開放感というか。
そのせいか、普段ならまず言わない事を口にしてしまった。口を滑らせたとも言う。
「オイ、デュラン」
「「え?」」
「は? 何でオレの名前を」
「貴様、此処に来るまで妙に時間が掛かったかと思えば、また武器と防具を買い替えていたのか。しかも、敵対国で。フォルセナで傭兵をしているのならば、その辺をもう少し考えたらどうだ」
途端デュランが歩みを止めて、探るような目でこっちを伺ってきた。不安そうにやり取りを見つめていたリースも、ジッと凝視している。
「な、何でアンタが私達っていうか、デュランの装備が変わったのを知ってんのよ」
唯一、アンジェラだけが一行の中で口を開いて訪ねてきた。その指先と声は震えていたが、疲れと興奮でいっぱいいっぱいだった紅蓮の魔導師は、その様子を不審に思うこともなく理由を語る。
「それほど驚くことか? だいたいミスリル製品は、我がアルテナの特産品だろう。知らないわけがない。あぁ、その前の武器はディオールで買っていたな。ハン、あれだけ人間嫌いでどうこう言っておきながら、我らの国の技術より劣るとは笑わせる」
瞬間、少女たちが動いた。二人ともどこにそんな瞬発力が、と訊ねたくなるほど機敏な動きでデュランの隣に行くと、まるで彼を庇うように立ちはだかる。
「へ? アンジェラ、リースどうした?」
「止まってデュラン! アイツ、マナの剣どころかアンタまでお持ち帰りするつもりよ!」
「な、どういう意味」
「まさか妄想が現実になるとは……。世の中捨てたものではないですね。しかし、それとこれとは話は別、そう簡単に仲間を渡したりはしません!」
「お前たち、さっきから何を……!?」
ここで紅蓮の魔導師は、自分の失言に気がつく。先程の発言だとまるで「自分はデュランのストーカーをしています」と宣言しているようなものだ。
更に彼は、女性の多いアルテナにいたのでBLについて多少の知識を持っていた。なので彼女らの反応が何を現しているのか理解してしまう。不味い。非常に不味い。
「な、違う。私は小僧になど微塵も執着していない! そもそもディオールの時だってそこにいる黒耀の」
言いかけて視線を感じたので、そちらを向くと黒耀の騎士がジッと自分を見つめていた。「あ、もうバラす? じゃあデュラン連れて行っていい?」と目で訴えながら。
その視線を受けて、紅蓮の魔導師は口をつぐむ。
もし、ここで疑いを晴らすべく黒耀の騎士の正体をバラすとしよう。間違いなくヤツは大喜びでデュランを連れて帰り「よーし、パパ頑張っちゃうぞー」と神獣討伐に行くだろう。デュランを連れて。
となると自分はドラゴンズホールに残って、あの黒ラビを追い払ったり怪我をしたプチドラゴン達の治療に勤しむことになる。一人で。ゆっくりする時間など無くなるだろう。
因みに正体をバラさずにマナの剣だけを持ち帰れば、初期の計画通り神獣討伐はデュラン達に押し付けることができる。黒ラビ対策だけに集中できるので比較的余裕は出来るだろう。
だが、その場合は女子二人に勘違いされたままだが。
名誉を取るか、休みを取るか。
しばしの葛藤の末、紅蓮の魔導師が下した決断は。
「フ、フフフ……何とでも言うがいい! さあ、早く剣を渡せ! フェアリーと理の女王がどうなってもいいのか!?」
「てかディオールにいたんなら、オレと勝負しろよ!」
「デュランだけじゃなくお母様とフェアリーにまで手を出すなんて! この変態!」
「事案ですよ!」
(コイツらが死ねば、私への偏見も無かったことになる。それまでの我慢と思えば……!)
休みの方であった。俯く彼の目尻に光るものが見えたのは、気のせいではないだろう。
* * *
「竜帝様。マナの剣、手に入れてきました」
「おお、遂にか! ご苦労だったな紅蓮の魔導師。……ん? 随分と憔悴した様子だが、何かあったか。マナの剣が合わなかったか?」
「いえ……あのフェアリーを連れている子供達が少しうるさかったので」
「そうか? まぁ、神獣達についてはフェアリー共にまかせて、我らはゆっくりしていればよかろう。聖域が開いてからは働きっぱなしだったからな」
「ありがとうございます!」