【完結】マナストーン珍道中   作:飛沫

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ペダンがバグった話。
過去に行けるなら、こんなことが起きてもいいんじゃないでしょうか。
それにしても、六人動かすのって難しいですね。


PS4「電源を切っています。絶対にあーーッ!!」

 どことなく重苦しい雰囲気に、アンジェラとリースは気不味そうに顔を見合わせる。この嫌な空気の発生元は、若干ぼんやりしながら歩いているパーティーのリーダー、デュランだ。

 

(リース、ど、どうしよう)

 

(どうしようと言われましても……。私も、何も思い付きませんし)

 

(私が話しかけても、デュラン無反応だよ。よっぽどさっきの出会いが効いたみたい。ココはアンジェラ、貴女の色気で!)

 

(そんなんでデュランが落ちるなら、とっくに闇クラスのメイガスを選んで襲いかかってるわよ!)

 

(どのみち、光クラスのアンジェラには無理じゃないですか)

 

 後ろでコソコソと。そんなやりとりをしていても、デュランは全くの無反応のまま。

 これは重症だと、三人はコッソリとため息をついた。

 

*  *  *

 

 七体の神獣を倒したものの、最後のマナストーンの場所が解らずに立ち往生していたデュランたちに、助言をくれたのはネコ族のジョセフィーヌ。防具を購入した時に、ペダンという町の事を教えてくれたのだ。

 そこで彼女の言葉を信じて、ペダンがあるという場所にまでやってきたのだが、存在していたのは、とてつもない災害に見舞われたのかと錯覚するような廃虚の街。捨てられて何年間も経ったような有り様に呆然としていたが、あの商売上手なジョセフィーヌが嘘を教えたとも思えなかった。とにかく探してみようと散策していたら突然の大雨に降られ、慌てて比較的損傷の少ない建物に駆け込む。そのまましばらく過ごしてみるも止みそうにないので、仕方がなくその建物内で夜を明かすことにした。幸いにも宿屋だった建物らしく、ベッドは使える。一夜過ごして状況が変わらないようなら、もう一度ジョセフィーヌに詳しく聞いてみようと決めて、寝て起きたら。

 不思議な事に廃虚だったペダンが、活気溢れる町へ様変わりしていたのだ。

 呆気にとられていると、アンジェラは何かを感じ取ったようだ。どうもこの辺りはマナの力が不安定らしく、おそらくだが滅ぶ前のペダンにやってきたのだろう、と言っていた。戻るには、同じように宿屋で眠ればいい筈だとも。

 詳しい仕組みはアンジェラも解らないようだが、お陰で目的は果たせそうなので深く考えないことにする。

 そして武器を新調し町の人間の話を聞いていると、このペダンにはマナストーンを調べている学者がいるということも知ることができた。

 その学者に会えば、闇のマナストーンについての情報を得られるかもしれない。デュラン達は、直ぐに学者がいると教えられた場所に向かったのだが、途中で通りがかった防具屋で見てしまったのだ。

 若き英雄王と、デュランの父親・黄金の騎士ロキの姿を。ハッとした表情でデュランは駆け寄り二人、特にロキに向かって必死に話しかけた。父さん、竜帝との戦いに行っては駄目だと。

 しかし、ここは既に起こってしまった過去の世界。ロキはデュランの言葉に「人違いだろう」返すと、英雄王と共に防具屋を後にした。信じてもらえぬ事にショックを受けたのか、過去を変えられぬ事にショックを受けたのか。或いは両方か。

 以後、闇のマナストーンの場所を聞き出したものの、デュランはずっと上の空の状態だ。

 

(この調子じゃ、ガラスの砂漠に行っても神獣を倒せるかどうか。ううん、それ以前に怪我しちゃう。ここは私の、お、お姉さん力でデュランを!)

 

 様子を見守っていた三人だったが、遂にアンジェラが行動を起こすことを決意する。頬を叩き気合いを入れ、デュランの隣に並び「ねぇ」と声をかけようとするが。

 

「ちょっとデュラン、アレ見てよアレ」

 

 瞳を大きく見開くと、デュランの腕を揺さぶり正面を指差した。強く腕を引かれてたたらを踏んだデュランは、我に返って「何するんだよ」と抗議するが、アンジェラから「だから、アレ見てよ」と言われて渋々視線を向ける。

 

「アレ? アイツら……」

 

 そこにいたのは、見覚えのある三人だった。名前は確かケヴィンにシャルロット、そしてホークアイだったか。

 

「何でここにいるんだ? それにアイツらの格好」

 

 以前彼らと会った時、全員もっと軽装だった。だが、今の彼らはどうだ。武器も防具も、随分と金と手間をかけた物に見える。

 そして強さも、今の自分たちと引けを取らないくらいの実力を持っているように見えた。別れた後、彼らも不思議な巡り合わせで共に旅をするようになったのだろうか。だがこんな短期間で、これ程の強さを手に入れることが出来るのだろうか。

 首を傾げていると、あちらもこちらに気づいたようだ。目を見開きながら、向かって歩いてくる。

 

「えと、デュランだっけ? ひ、久しぶり」

 

「おお、確かケヴィンだったよな? アレから、月夜の森を出たんだな」

 

「え、何言ってる? デュランこそ、フォルセナを出て、いいのか?」

 

「は?」

 

 どうも話が噛み合わない。互いに疑問符を飛ばしながらも、会話を続けようとした時だった。

 

「えぇ!? 嘘、どうなってんの!?」

 

 突然、デュランの中からフェアリーが飛び出してきたかと思ったら、ケヴィン達を指差して叫ぶ。オイ、それは失礼にあたるぞと注意しようとすると。

 

「ちょっとぉ!? 何で私がいるのー!?」

 

 ケヴィンからもフェアリーが飛び出してきて、指差しながら叫んだ。

 

*  *  *

 

「ええと……。つまりオレたちは、別の世界からやってきた聖剣の勇者一行ってことでいいのかな」

 

 借りている宿屋の一室にてフェアリーたちの話を一通り聞き、ホークアイが確認するように訊ねる。

 あの後どうして、何でと大声を上げるフェアリーたちに気づいて、町の住人が集まってきたので、騒ぎになる前に宿屋へと戻ってきたのだ。

 

「うん。正確には別の世界と言うより、可能性の一つなんだろうけれど」

 

「どういうことでちか?」

 

「つまりね。ここにいる六人、事情は様々だけれど聖都ウェンデルに向かっていて、アストリア周辺に集まっていたでしょう? だから、全員が聖剣の勇者になれる可能性があったのよ。今回はたまたま、私に選ばれたデュランと」

 

「私に選ばれたケヴィンが、このペダンで出会ったって言うわけ」

 

「ということは私やアンジェラが、フェアリーに選ばれている道もあるのでしょうか」

 

「今回会わなかっただけで、きっとあると思うわ。勿論、ホークアイやシャルロットが選ばれる可能性もね」

 

「で、何だってこんな風に出会うことになったんだ?」

 

 デュランの疑問に、ケヴィン一行は考え込む。

 

「オイラたちも、闇のマナストーンの場所探しにペダン、きた」

 

「それで、博士から闇のマナストーンはこの近くの幻惑のジャングルにあるって教えてもらったんだ」

 

「それでいこうかとおもったんでちが、どうせならケヴィンがもっとつよくなる、よるにでようってはなしになったんでち……ねぼうしちゃったでちが」

 

 彼らの事情を聞いて、デュランたちは合点がいったように顔を見合わせる。

 

「てことはオレたちがペダンにきたのと、ケヴィンらが出ていこうとするのが、ちょうど被ったんだな」

 

「私たちもペダンにやってきたのですが、廃虚でびっくりしてたんです。そして雨に振られて宿屋に入り、一夜を過ごそうと眠ったんです」

 

「なら、私たちとケヴィンたちが眠る時間をずらせば、ちゃんと戻れるわね……ちょっと待って」

 

 ここでアンジェラが、ホークアイの口から出た言葉に反応する。

 

「幻惑のジャングルって……アンタたちはガラスの砂漠に行かないの?」

 

「ガラスの砂漠? 違う、オイラたちが行くの、幻惑のジャングル」

 

「そして、わるいかめんのどうしってのをやっつけて、ヒースをたすけるんでち! デュランしゃんたちはちがうんでちか?」

 

 シャルロットの言葉に、デュランたちは驚きながらも頷く。

 

「ああ。オレたちはガラスの砂漠に向かうんだ。マナの剣を奪ったのは竜帝だしな」

 

「フェアリーの宿主が違うと、敵とマナストーンの場所も変わるんですね」

 

「フェアリー、この違いも可能性ってやつになるの?」

 

「多分ね。あの三つの陣営は実力は拮抗していたから、ちょっとした事でどこかが有利不利になったんだと思う」

 

「ふーん。ところでさ、お互いの事情は解ったことだし、後はどこかでお茶でもしながら会話を楽しまないか? フェアリーも落ち着いたから、騒ぐこともないだろうし」

 

「ホークアイしゃんのいけんに、さんせいでち! シャルロット、おなかすきまちた!」

 

「オイラも、賛成! それに皆で食べる、食事美味しい!」

 

 ホークアイの提案にシャルロットとケヴィンは笑顔で賛同するが、デュランたちは渋顔だ。

 

「悪い、飯に行けるだけの金が残ってない」

 

「このペダンで装備を揃えたら、殆ど使い果たしてしまって」

 

「え、種から武器と防具、出ないか? オイラたちの装備、いくつか種からの。ペダンではあんまり、買ってない」

 

「種なんて……そんなちょこちょこ拾えないわよ」

 

「ありり? ホークアイしゃんはよくたねをみつけてくれたでちよ」

 

「どうやら同じ旅路でも、違いはあるみたいだな」

 

「まぁ、特別上手いモンじゃねーけど、簡単な物ならオレが厨房借りて作ってくる」

 

「あ、じゃあ私、飲み物作るの手伝うわよ!」

 

 デュランが席を立つとアンジェラも後に続き、二人は部屋から出る。後ろ姿を見送ってから、ホークアイはリースに囁く。

 

「あの二人、付き合ってんの?」

 

「いえ。デュランが全然気付いてないので、アンジェラの片思いです」

 

「えー!? あんなにすきすきおーらがでているのにきづかない? そんなことあるんでちか」

 

「オイラ、よく解らない」

 

 そんな話で盛り上がっていると、アンジェラたちが戻ってくる。差し出したのはハーブティーと、チョコレートソースが掛かったバナナとオレンジを添えたクレープだ。

 

「おいしそうでち!」

 

「この皮、夜営する時によく作るんだよ。それに割れたぱっくんチョコ溶かしてな。果物は、宿の主人が余ったってのを貰った」

 

「ホラ、暖かいうちに食べちゃいましょ」

 

 作った料理はシャルロット達の口にも合ったようだ。

 特にケヴィンは相当お気に召したようで。満面の笑みでデュランを見ると、口を開く。

 

「オイラ、デュランとも結婚する!」

 

 ケヴィンの言葉にデュランは茶を吹き、アンジェラ焦り、リースは歓喜で立ち上がる。

 

「おま、何言って」

 

「そ、そんな困ります! デュランは紅蓮の魔導師とアンジェラのアルテナサンドイッチが一番美味しいと思っていたのに……ここで、新しいカップリングに目覚めさせないで下さい」

 

「ちょっとリース、私の応援は!?」

 

 一方ホークアイとシャルロットは、苦笑しているだけで慌てた様子はない。

 

「ケヴィンのけっこんするは『おいしいりょうりをありがとう』と、どうぎごでちよ。きにしちゃだめでち」

 

「オレも、食事作る度に言われるからな」

 

「ええ!?」

 

「イヤ、何でそんなに嬉しそうなの?」

 

 疑問が出ながらも、そのまま両パーティーの会話は盛り上がる。

 

「そういえば君たち、クラスは? オレはローグだけど」

 

「オイラ、デスハンド! 青龍殺陣拳、凄く強い!」

 

「シャルロットはセージでち。かいふくとセイバーまほうはまかせるでち!」

 

「オレはロードだ。全体回復と状態異常回復魔法が覚えられるからな」

 

「アークメイジよ。全体攻撃は任せて」

 

「私はドラゴンマスターです」

 

 なんて会話や。

 

「そういえば、旅してないオイラたち、どうしてるんだ?」

 

「ケヴィンとは、月夜の森で別れたな。ホークアイはジェシカって子助けて、ディーンで看病してたか。シャルロットは……ディオールに置き去りにしちまった形になるのか、アレ?」

 

「言われてみれば、そうかもしれません」

 

「んまー! ひどいひとたちでちね!」

 

「へー、ジェシカを助けたのはニキータじゃないのか。コッチじゃデュランは、アルテナのフォルセナ襲撃時に一緒になって、英雄王さんの前で別れたよ。リースはローラント奪還の後、弟探すって別れたし」

 

「ねぇ、私はどうなったのよ」

 

「そういえば……どうしてたっけ?」

 

「オイラ、ジャドで叩かれた後、見てない」

 

「シャルロット、アンジェラしゃんとは、ここではじめてあったでち」

 

「ちょっと! そっちの私は何してんのよぉ!」

 

 等々。

 そして、互いに親交を深めた後。

 

「オイラたち、行く!」

 

「シャルロットもがんばるから、デュランしゃんたちもがんばるんでちよ!」

 

「そっちのオレ達の事も、よろしくな」

 

 手を振りながら、ケヴィン達は部屋を出た。

 

「結局、私は何してるよ」

 

「まぁアンジェラ、落ち着いて。でも、向こうの皆さんも頑張っているんですね」

 

「そうだな」

 

「あ、デュランようやく何時もの調子に戻ったね。良かった」

 

 フェアリーの言葉にデュランが振り向くと、三人がホッとした表情で自分を見つめていた。ここで、先程ボーッとしていた事によって、彼女らに心配してもらっていた事に気づく。

 

「悪い、不安にさせちまったみたいだな」

 

「ううん、平気。でも、本当に大丈夫?」

 

「ああ。よく考えれば『行くな』なんて言葉だけで命をかけた戦いに向かう父さんたちを止められるわけないんだ。後、言ってただろ『息子も、オレみたいに育ってほしい』って」

 

「それってつまり、オレはちゃんと父さんが望む姿に成長したってことだろ? 父さんに誇れる剣士になれたって解っただけで充分だ。さぁ、行こうぜガラスの砂漠に! これで最後だ、闇の神獣を倒して、今度こそ紅蓮の魔導師と決着をつけてやる!」

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