ご都合主義なのは、書いている人間のINTが低いせいです。諦めて下さい。
後はギャグだと思って割りきって!
因みに、ゲームの展開通りのドラゴンズホール組死亡ルートだったら、パパさんと紅蓮の魔導師を救えずに落ち込んでいるデュランを、アンジェラがお姉さん力で慰める(意味深)な話になっていました。
「デュラン、もう諦めろ。遂に竜帝様は絶大な力を手に入れた! とてもお前たちの敵う相手ではない」
黒耀の騎士の声を耳にした瞬間、デュランの身体がビクッと跳ねた。次いで信じられない、という表情で目も前に立つ鎧姿の男を見る。
以前に傭兵仲間から聞いた話を思い出す。死んだり、遠くに渡った人間に対して失う記憶は、声が一番早いのだと。だから何度もこの男と対峙して声を聞き、自分の事を知っている素振りを見せる事へ疑問に抱いても、男の正体についてはてんで見当がつかなかった。
しかし、先程自分は、よく似た声を聞いている。兜のせいで多少籠ってはいるが、黒耀の騎士の声はペダンで出会った黄金の騎士・ロキのものに。
(そんなわけがない)
まさかと頭をもたげてくる可能性を必死に否定して、デュランは黒耀の騎士に食って掛かった。そして、どれだけ否定しても沸き上がってくる考えを潰したい一心で、叫ぶ。
気安くオレの名を呼ぶな、お前は何者だ、と。
すると、男は正体を明かす。自分は黄金の騎士・ロキだと。
* * *
「デュラン、私の息子よ。こっちへおいで、会いたかったよ」
「と、父……さん?」
優しい声で名前を呼ばれ、この手を取れと腕を差し出してくる父の姿に、デュランは操られているかのようにフラフラと歩き出す。
只嬉しかった。てっきり死んだとばかり思っていた父親が、憧れであった父親が生きていて、しかも自分に会いたかったと言ってくれるのが。
状況も目的も全て頭の中から消え失せた状態で、デュランは向けられた腕を掴もうと手を伸ばす。後数歩で掴めるという距離に来たときだった。
「デュラン、行っちゃ駄目!!」
グイッと後ろから腕を引かれたかと思ったら、そのまま腕をとった状態で、誰かが立ちふさがるように前へ出る。ハッとして視線を向ければ、しがみついていたのはアンジェラだった。
「アンジェラ?」
「い、いくら将来のお義父さんだからって、デュランは渡さないわ!」
そして大きく深呼吸して、宣言する。
「デュ、デュランは私の、ひゃいせつな人ひゃんだから!!」
(アンジェラ、肝心な所で噛んでますよ!)
(んもぅ! 只でさえ鈍いデュランなんだから、ちゃんと言わないと伝わらないって!)
一方、リースとフェアリーはアンジェラの告白を固唾を飲んで見守っていた。緊張感は漂っているが、ノリは完全に卒業式に告白する友人と応援する外野だ。シリアスの空気は欠片もない。
「アンジェラ……」
だが、アンジェラ決死の告白は失敗したものの、デュランを正気にさせることには成功したようだ。
「悪い。アークメイジのお前に、剣の前に立たせることなんかさせて」
「デュラン?」
「もう大丈夫だ、危ないから後ろにいてくれ」
「う、うん」
アンジェラが背後にぴったりくっつくのを感じてから、デュランはまっすぐ黒耀の騎士を見据え、口を開く。
「ゴメン、父さん。オレは父さんと一緒には行けない」
「覚えているか解らないけれど、オレは十二年前のペダンで、父さんに会って言われたんだ。息子も、オレみたいになって欲しいって。それを聞いて、嬉しかった。父さんに、誉められるような剣士になれたんだって」
「だから、オレは今のままを突き進む! 竜帝を倒すと決めたこの道を!」
「……そう、か」
剣を構えるデュランを見つめながら、黒耀の騎士はゆっくりと伸ばしていた腕を下ろす。そして剣を両手で持ち、構えるかと思いきや。
力の限り剣を地面に突き刺し、爆弾発言をする。
「じゃあ、父さんがそっち行くから」
「え」
黒耀の騎士の言葉に、三人は目を丸くして握りしめていた武器を下ろす。てっきり「残念だ。ならば、お前たちにはここで死んでもらう」という台詞と共に、戦闘へ突入するとばかり思っていたのに、まさかの寝返り希望。
「駄目かい? デュラン」
「い、いや。闘うよりはずっといいんだけれど……」
「い、いいんですか?」
「いや、だって。確かにデュランと剣を交える為にここまで尽力してきたけれど、どちらかが死ぬまで闘うような展開は考えてなかったし。せっかく会えた可愛い息子を倒すか、倒されるくらいになるなら、仲間になって一緒にいる方がずっといいだろう」
「え、ええと。こっちに来て、竜帝の呪いとかは大丈夫なの?」
「ん? ああ。蘇ってから、行動制限のようなものはかけられていない。そんなものをつけていたら、何も出来なくなるからな。流石に竜帝様へ刃を向ければ話は別かもしれないが、君たちと行動を共にするだけなら、何もないだろう。まぁ竜帝様を倒せば、私の命も再び潰えるだろうが、一度死んでいる身だ。元に戻るだけのことだし、短い時間でも成長した息子と行動できるんだ。後悔はないさ」
「そうか……竜帝を倒すと、父さんはまた消えちまうのか」
黒耀の騎士の言葉を聞いて、顔を曇らせるデュラン。覚悟は決めたものの、やはり寂しさは拭えないようだ。そんな時、リースが「でしたら」と声をかける。
「デュランも願いの変更をフェアリーに頼んではどうでしょう?」
「そういえば、リースは願いが叶いそうだからって、フェアリーに変えてもらっていたものね」
「ええ。デュランもこの旅で、クラスチェンジをしてかなり強くなったと思いますし、私のようにお父様を生き返らせてもらうというのは?」
「その手があったか。フェアリー! 願いを変更させてくれ、『最強の剣士になる』から、『父さんを生き返らせる』に!」
「え? う、うん。解った!」
(本当はもう叶っているようなものだから、やらなくていいかと思っていたんだけれど……。仕方ないか)
少し残念に思いながらも、フェアリーは明るい声で了承する。まぁ、三人は女神を救うために奮闘しているし、特にデュランには聖剣の勇者の役目を本人の了承もなく被せた負い目もあったので、ご褒美はあるべきだろうと。
「デュラン、私はお父様とイーグルさんを生き返らせてもらうつもりなので、デュランも二人頼んでは?」
「そうか、じゃあ追加で母さんも!」
「まかせて!」
(叶えるの私じゃないからいっか!)
黒耀の騎士が、仲間になった!!
* * *
闘いに敗れ床に膝をつけた紅蓮の魔導師は、デュランたちに己の過去を語りだす。魔法王国と呼ばれるアルテナに生まれながら、どれ程努力しても魔法を習得することが出来なかった苦しみと、命の半分を代償にしてでも念願の魔力を得ることが出来た喜びを。
「だが、竜帝様から授けられた闇の魔力をもってしても、私は完全で無いことが解った。お前たちに敗れた以上、もう生きていても仕方がない……」
「止めるんだ紅蓮の魔導師! 生きるんだ!」
すっかり弱気になった紅蓮の魔導師へ、デュランは咄嗟に声をかける。倒すべき相手にあるが、殺意を抱くほど彼を憎んでいるわけではなかった。
デュランの言葉に、そうだそうだと首を降るアンジェラたちの姿を見て、紅蓮の魔導師は微かに笑う。此方は殺すつもりでいたというのに、とんだお人好したちだと。
「フッ、ありがとうよ。デュラン……」
本気で心配する彼らに短い感謝の言葉を述べ、魔力を溜める。そして、自らにとどめを刺すべく、魔法を使おうとした瞬間。
「失った寿命なら、マナの女神様が何とかしてくれる!」
デュランの言葉につい、手が止まった。思わず彼の顔を凝視していたら「そうだぞ、紅蓮の魔導師。生きるのも悪くない」と黒耀の騎士が姿を表す。
「黒耀の騎士! お前、負けて死んだのかと思ったら……裏切ったのか!?」
「いや、竜帝様と争う気はない。ただ、息子と殺し合いをするくらいなら、ついていこうと思っただけだ。それにデュランがマナの女神に頼んで生き返らせてくれると言ったし」
「それを寝返りと言うんだ、息子を最優先させて! だから私はあれほど、コイツに単独行動をさせるべきではないと竜帝様に進言したのに!」
突然の同僚出現に、頭を抱える紅蓮の魔導師。再び死んだシリアス。呻く紅蓮の魔導師に、今度はアンジェラが声をかける。
「ねぇ、デュランもお義父さんもこう言っていることだし、あんたも一緒にこない?」
「アンジェラ王女……」
「寿命を戻す事だったら、私の願いを変更すればいいわ。お母様に認められる魔法使いになりたいって願いだったんだけど、もう叶いそうだし。フェアリー、いいかしら?」
「え? う、うーん」
少しばかり歯切れの悪いフェアリー。というのも、竜帝がマナの剣の力を取り込んだことによって、更にマナの力が弱くなったからだ。これから大急ぎで聖域へ戻り、竜帝の蛮行を止めてマナの樹を救っても、四人の蘇生と一人の寿命の延長は流石に厳しい気がするのだが。
(でも、アンジェラだけ駄目って分けにもいかないし……)
「いいわよ!」
(女神様なら、きっといける筈! だって女神様だし!)
なんとかなるだろう、と変更を承諾した。
「ね? 女神様は凄いんだから」
ウィンクしながら、笑いかけるアンジェラ。
そこに、デュランたちが追い討ちをかける。
「オレに勝ちたいんだったら今度はお前が修行して、挑んでくればいいだろ」
「デュランの言う通りです。それに生きていれば、いいことありますよ」
「勿体ないぞ、紅蓮の魔導師」
紅蓮の魔導師はつかの間躊躇うものの、やがて、諦めたように目を瞑って叫ぶ。
「竜帝様、申し訳ございません!!」
紅蓮の魔導師が仲間になった!!
「あ、でもデュランは渡さないからね」
「アンジェラ王女、断っておくが私はノーマルだ! 小僧にそんな気は一切ない!」
「……本当ですか?」
「竜帝様に誓ったっていい!!」