転生チート吹雪さん   作:煮琶瓜

18 / 92
島風の吹いた日

 お給料の明細がえらい事になっている。

 宮里艦隊発足から一月、私達は二度目の給料日を迎えた。提督が大本営へ会議に行ってるのもあって今日は私や戦闘部隊の皆、収集部隊の人達も鎮守府で待機だったので、受け取った給料明細を開いてみたら嫌な汗が出ること出る事。

 給料明細って九桁行けるもんなんだね初めて知ったわ。

 いやなんすかこれ、億超えてるんですけど頭大丈夫ですか。そう思ってちゃんと詳細を確認したら割と納得行った。

 訓練生の時も貰った基本給、訓練所卒業して艤装を扱う免許を取得した故の技能給、旗艦やってるために発生した管理職手当。ここまでなら前世と比較して滅茶苦茶高給って程度で済むんだけど、それら以外で悪さしてる奴が居やがったのだ。

 それが討伐報酬である。これは報奨金の掛けられた深海棲艦を倒した艦隊に与えられるもので、その対象は現時点では姫級と鬼級全て。姫級一体一千万、鬼級一体八百万。これを人数割して支払われる。あんまり差が無いのは実は姫級鬼級を決めてるのが妖精さんで名前付けてるのもそうだからだろう。たぶん金額決めた側がどれくらい差があるのか分かってない。私もよく分かってない。

 それで、私が先月倒した姫級と鬼級は全部で四十体を超える。そして私の所属する第四艦隊は人数が一人なので姫と鬼が同数だったとして、締めの日の関係で40体からは少し減るはずだから30体としても1000万~800万×30÷1でもうなんだこれ。たぶん前世で定年まで生きてたとしてもこんな稼げなかった自信があるぞ私は。

 こんな事になったのはたぶん、この組織が軍隊ではないという事になっているせいだろう。私達は一応公務員なのだが、法律的には資格を取って国に雇われた深海棲艦駆除のプロというのが近い。戦闘行為じゃなくてただの駆除作業ですよという建前なのだ。だから厄介な案件にはしっかり手当てがついてくるという訳だ。

 うん、実はこの日本で深海棲艦って文書の上では敵性体や侵略者と見做されていない。人権とかなんとか以前に、あいつらは法律上、ただの害獣扱いなのである。それが私達が軍隊じゃないのに戦える法的な根拠になってるらしいんだけど詳しくは知らない。

 なのでたとえば何らかの方法で人間が艦娘使って攻めて来たとしたら私は艤装で応戦する権利が無かったりする。あくまで砲口を向けていいのが深海棲艦だけなのよね。

 

 話が逸れたがこの大金どうしよう。いや無理に使う必要とか無いから取っておけばいいんだけど、有るとなるとちょっとくらい贅沢しても許されるかなって気分になったりならなかったりする。プレミアム付いてる昔のLDとか見てみたいのあるし。

 あ、でもお金使うのに書類書かないといけないのかなり面倒くさい。ちょっと意欲が萎えた。成程、天引きじゃないのはこういう理由か。っていうかカードとか無いから通販するにしても振り込み? 鎮守府から出来るのかそれ。

 

 自分の贅沢は置いといて、誕生日がそろそろの父に何か送っておこうと思って酒保へとやって来た。今、私の両親は国に保護されていて家に居ないので何か届けたり出来るのかよく分からない。だから確認する必要があったんですね。

 酒保では深雪が仕送りのために書類を認めていた。今日は一人で来ているようで、こちらに気付くとおはようと軽く手を振った。

「吹雪は買い物?」

「買い物もするけど、今日は荷物届けたりとか出来るのか聞きに来たのがメインだね」

 深雪に返してレジのお兄さんにやりたい事が出来るのか聞いてみると、お兄さんも判断が付かなかったようで確認してきますと何処かへ消えて行った。事例が特殊過ぎただろうか。

「……吹雪の親って避難所生活してんの?」

「ん、ああー、いや私のあれで実家特定されちゃって保護されてるだけだよ、妙に目立っちゃったみたいだから仕方ない」

 明確に特別扱いされてるけどまぁ艦娘の身内だからそんなもんなんだろう。

「うへぇ、ゆーめーぜーって奴か。家まで変なの来んの?」

「来たらしいよ。私は戻ってないからよく分かんないけど、家に入ろうとして捕まった人とかも居るらしいし」

「何それ怖っ」

「ねー」

 暫く買うものを物色しながらそんな話をしていると、書き込んでいた深雪の手が止まり、ペンをくるくる回して悩み始めた。覗いてみれば送る金額で迷っている。

「先月と一緒じゃ駄目なの?」

「叢雲もそう言ってたけどさ、今月かなり増えたからどうしようかなって……あ、吹雪も増えた?」

「ああうん、滅茶苦茶増えた」

 3億くらい。

「でも、あんまり送ると怒られるんでしょ」

「そうなんだよなーやっぱ、前と同じでいいか」

 そう言って深雪が残りの部分と格闘している間にレジのお兄さんが帰ってきて、届けるのは大丈夫だけどあんまり大きい物は止めて欲しいと伝えてくれた。私ほどじゃないけど読む方だし、レアな古漫画でも送ってみるかな……?

 

 

 

 

 

 翌日、宮里提督が帰ってきておっしゃる事には、私達はこれから四国に向かって変色海域を開放していく仕事に就くらしい。それに伴って護衛部隊は戦闘部隊に配置換え、収集部隊は継続するものの今までのような強行な遠征は行えなくなってしまう。

 再来週にも第二期の適性検査が行われ、私達と同じならその二週間後に招集。そこから一月後には新人が配属になる。私達もその時点でまだ三カ月目なんだから新人って気もするけども。

 暁教官長は無事に訓練所に戻れるらしく、とりあえず今月中には一旦お別れらしい。後々はどうなるか分からないけど今の調子だとまたこっちに戻される気もする。

 私の所属する第四艦隊だが、変色海域を攻めるにあたって他所の鎮守府から貰ってきて一人増員されるらしい。まぁ島さんだろうなと思ったら案の定島風だった。やべぇ鎮守府来てから一回も走ってないわ。聞き込みされたらサボってたのバレるわ。

 その日は収集部隊最後の大仕事として変色海域ギリギリを探索してきた。結構儲かったので良かったと思います。まる。

 

 翌朝、背中に張り付いていた島風を掛け布団に包んで縛って床に放って朝食を食べに行こうとしたらその状態からドロップキックされた。避けたけど。

 

 

 

「やっぱりあっちとは味付け違うんだねー」

 呆れかえった曙が解放してしまったので仕方なく三人連れ立って朝ごはんに行ったら、島風は鮭の西京焼きを頬張りながら食レポを始めた。なんでも全体的にこっちの方が丁寧な味がするらしい。前の鎮守府に居た給糧艦の人は艦娘になるまで料理とかあんまりした事無かったんだとか。

「それでなんで私の布団で寝てたの」

「布団が温まってたから」

 今の時期だともう暑いだけじゃないかそれは。真面目に理由を聞いてみると、真夜中に鎮守府に到着して部屋に案内されたのはいいけど移動中全部寝てたから眠気もなく、ちょっと出歩いてみたら私の部屋を見つけてしまい、まだ起きていた曙に部屋に入れて貰ったらすぐ眠くなってきたらしい。

 つまり曙のせいでは? と思って味噌汁を飲み干した彼女の方を見てみると、スッと露骨に目を逸らされた。まぁ悪い事した訳じゃないからいいんだけども。

「そういえば一人部屋なの島風」

 この艦隊、収集、偵察、戦闘、護衛部隊に分けて運用されてるんだけど、艦娘なら寮内での扱いは平等である。なので別部隊の人と同室も有り得るけど今は合計して偶数だったはず。部屋は余ってるけど人は余っていなかったと思うので、一人で移籍してきた島風はあぶれてしまう。

「そうだよ、二段ベッド一人で使えるよー」

「意味無ぇー……」

 まだ荷解きもしてないけどねと卵焼きを口に放り込んだ島風は、思った味と違ったらしくしょっぱいと漏らした。前のとこの卵焼きは甘かったらしい。

「良かったら私と部屋を代わる?」

 突然そんな事を言い出した曙に、島風は目を丸くしてオウッと鳴いて返した。

「どうせ入り浸るんでしょ? 実質三人部屋になるじゃない。訓練所みたいにやたら広いなら別にいいけど、ここでやられたら狭いし暑苦しいのよ」

「じゃあ代わってあげる!」

「なんで恩を売ったみたいな言い方したし」

 まぁどうせ毎日来るだろうし、同じ部隊で働く以上悪い事は無いだろうから島風と同室なのは構わんのだけども。

「曙はいいの? 一人で大丈夫?」

「人を寂しがり屋みたいに……別に何にも問題ないわよ」

 部屋の入れ替えはちゃんと申請すれば許可してもらえるはずなので、制度的にも大丈夫ではあるんだろうけど。

「いや寂しがりとかそういう事でなく、曙は何かこう一人で放っておくと……抱えたものを放出できずに色々ため込んだ挙句増幅して行って勝手にドツボに嵌りそうというか……」

「あんた島風が来たとたん遠慮が消え去ったわね!?」

 声が大きくなった曙に視線が集まる。この後戦闘部隊は招集が掛かっているのもあり、朝食を取っているのは私たち以外にも大勢居たわけで。曙は少し恥ずかしそうな表情になった。

 島風は曙の言葉を疑問に思ったのか、私を指差して言う。行儀悪いぞ止めなさい。

「吹雪って元々あんまり遠慮なくない?」

「島風や初雪くらいよ、気を遣われてなかったの。こいつ鎮守府に来てからすごく良い子してたんだから」

 ええー、と島風がこっちを覗き込んでくる。暫く見つめ合ったのち何かに思い当たったのか、そうかそうかと頷きだした。

「吹雪は人見知りするから」

「待って、それだと私同室の子にも一か月慣れなかったコミュ力って事になっちゃう」

「自覚無いの?」

「あるけども……!!」

 潜水艦の二人とか加賀さんとかまともに話した事無いくらいのコミュ力だけれども! 結局長良さんともほとんど顔つき合わせてないからお互い全然打ち解けてなかったりするけれども!!

「ああ、吹雪ってPC越しと対面で結構違うもんね、口調とか態度とか。あっちが素なんでしょ?」

「あれも素とは言い難いんだけど……」

 そんな風に思ってたのか曙さんよ。でも違うからね。ネットで使うミーム飛び交う口調が素だったらヤベー奴だからね。どんな萌えキャラだと。

「遠慮してると話もしてくれないけど、自分の方から行けば慣れてくれるよ」

「野生動物の餌付けか何かかな?」

「って金奈枝が言ってた」

「金剛さん……!?」

 いや確かに向こうからグイグイ来られて最終的に仲良くなったけどさぁ。その感想は知りたくなかったかな!

「慣れたら扱いが雑になってくるよ。遊びに行っても放置されたりとか」

「ほぼ毎日来るからだよ?」

 部活帰りに島さん、休日に島さん、訓練所で島風ってなったらそんな扱いにもなるわ。一年生後半はもう年末年始じゃなくてもうちで夕ご飯食べてたんだぞこの娘。

「召集の前から仲良かったってのは聞いてたけど、友達っていうかむしろ姉妹みたいね」

 曙の言葉に島風と顔を見合わせる。成程、とお互い頷き合った。

「でも吹雪は妹より弟って感じかなー」

「え、何歩か譲っても私が兄だよね」

「訂正するのそこ!?」

 まだまだ心根は男子だからね。TS転生者特有の精神変容とか全然起きる気配が無いから仕方ないのだ。たぶんそういう調整にしたんだろう、あの自称魔法使いさんが。

 

 結局、その場に提督も居たので許可を頂き、島風と曙は部屋を交換する事になった。提督は年相応な所を初めて見た気がすると感心したような様子だったが、私の中身もしかして子供っぽいんだろうか。前世と合わせたら幾つになるっけな?

 

 

 

 

 

 朝食を終え招集時間になり、私達は会議室に集まった。まずは島風の紹介から始まって、明日以降の予定に話が進む。

 まず設定された目標は四国攻めの出来る拠点の確保になっている。そのために私達が先だってやる事は何かというと、紀伊半島の解放である。この鎮守府からはそれなりに近いけれど、流石に毎回往復する訳にも行かないので泊りがけになったりもするらしい。というか変色海域から解放出来たらそっちに引っ越す予定だとか。ちなみに紀伊半島はまだ内陸部には人が住んでいる。まぁ広いからな紀伊半島。

 私達が居なくなったら今の海域はどうなるんだろうと思ったら、別の鎮守府が一緒に受け持つようになるらしい。範囲凄い広くなると思うんだけど大丈夫なんだろうかその鎮守府。

 ともかく変色海域の核を壊す事に注力させてくれるらしいので第四艦隊も遠慮なく最前線で戦わせてもらえるのだ。島風も入ったから速度もばっちりだしね。

 

「変色海域へ積極的に攻撃を仕掛けるようになるので、今まで以上に厳しい戦いになると予想されます。初日の時はなり立てでしたが、今後攻めるのは去年の深海棲艦の侵攻以来、一度も取り返していない地域……変色海域化してから時間が経っているため、完成した基地などもあるでしょう」

 宮里提督も苦い顔つきである。一艦隊でやる仕事なのかそれ、と思ったけど自衛隊の精鋭部隊なんてもっと少ない人数でやってたわ。もしかしなくても凄い人達だったと再認識した。

「皆さんの戦績を見れば今のままでも戦えないという事は無いでしょうが、大本営側としても出来うる限り戦力を整えてから任務に挑んで貰いたいと考えているそうです」

 目標は達成してもらいたいけど、無理して犠牲を出すのはよろしくない。結局適性値が150を超える艦娘って150人居ないらしいからなぁ。給糧艦とかは除いた数だけど、全人口合わせても千人行くか怪しい気がする。

「そのために今回、個別の改造が許可されました」

 今までは誰がどこを伸ばすべきなのか未知数だったのもあり見送られていたため、現状で改造までしてある――所謂『改』になっている艦娘はこの鎮守府に二人しかいなかった。ちなみに龍驤さんと川内さんだそうである。川内さん私に何かあった時のためにそこまでしてたのね……

 龍驤さんは元の艤装だと体に合わなかったとかなんとかそんな噂。

 

「改造の詳細については明石達を交えて個別に相談したいと思います。それ以外で何か質問がありますか?」

 その言葉に静かに挙手したのは夕雲さんだった。昨日提督から軽く話をされた時からなんだか張りつめている。元気がない訳ではなさそうなんだけど。

「大きな作戦になると各鎮守府から選抜されたメンバーで挑む事になる、という事ですが……その、基準などはあるのでしょうか」

 ああ、と宮里提督は何かに納得した顔になって、すぐになんとも言い辛そうな声色で返答した。

「基本的に選抜される艦娘は、その鎮守府の提督や秘書艦達が推薦して、大本営が最終的な決定を下す形になります。推薦自体に明確な基準は無いですね、優秀だと判断されれば得意分野が何であるかは関係ないんです……けど」

 宮里提督の言葉が止まり、目が泳ぐ。

「そもそも四国奪還作戦、宮里艦隊の戦闘部隊は全員参加です」

 ん? と誰かから疑問の声が漏れる。数秒の沈黙の後、それとは別に龍驤さんが声を上げた。

「うちら、そんなにヤバい事になってた?」

「なってましたね……」

 一部の世情に疎い娘とそういう話の苦手な娘以外は概ねそのやり取りで理解出来た。私もPCを通して他の鎮守府の戦果を知っているため大体の理由は察せられる。とても良い事をしたはずなので誇っていいと思うのだけど、長門さんも難しい顔になっていた。

「つまり、我々はやり過ぎた訳だな」

「言い方は悪いですが、そういう事になりますね」

「あの、具体的にどれくらいだったのかお聞きしてもよろしいですか?」

 青葉さんが興味津々に切り込んで行った。何の話か分かってなさそうな一部の人間以外は皆関心あり気で、私もどんなリザルトになったのかはかなり気になる。宮里提督は言って良いものか少し迷ったようだったが、最終的にはこちらをちらりと見ながら口を開いた。

「吹雪の戦果は除いて……」

 なんで?

「それでも次点の提艦隊と比べてダブルスコアですね」

 どよめきの声が上がる。分かっていなかった人たちもようやく内容が呑み込めたようで、驚いたりオレ達なら当然だなって態度だったりしていた。うんまぁ、そんな事になってたら全員参加だわ。なんだそのエース部隊。っていうか、その成績+私の撃破数が出せる海域って本当に何なの。よく誰も死ななかったな……

「……この艦隊の人数は他所より多いと聞いています。それなら個人の戦果はさほどではないのでは」

「いえ、人数で割った平均スコアです」

 加賀さんが正確な所を問うが、当然のように考慮されていた。逃げ場は無いね!

「なんで吹雪除かれたの?」

 一人だけ何も把握してない島風が小声で聞いてきた。私だけ別の事してたからだと思うけど、今する訳には行かないから後でちゃんと説明してやんよ。

 

 結局最後の方は宮里艦隊の強かった所や褒められた所、逆に課題になっている点の振り返りになった。

 宮里提督によると、第一から第三艦隊で特に想定以上の戦果を挙げたのは第三艦隊、つまり天龍さん率いる水雷戦隊だったとの事。他の二艦隊が悪かったのではなく、第三艦隊が思っていたよりも遥かに攻撃性が高かったのが原因だと言う。

 自衛隊にほとんど居なかった駆逐艦の火力が思いの外強かったらしいのだけど、その筆頭が秋雲先生だというから驚いた。訓練所じゃ優秀な部類には入ってもそんなに目立つ方じゃなかったんだけどなぁ。あれか、私には当たらなかったからよく分かってなかったとかそういう事?

 

 

 

「貴女が改造……? 資源が無限にある訳ではないのよ」

「どういう意味よ!?」

 会議が終わり部屋へ戻ろうと歩いていると、廊下の先から加賀さんと瑞鶴さんの声が響いてきた。冷静っぽく見えて完全に言葉の足りてない加賀さんと、素直にそれを受け取っちゃってトサカに来ちゃう瑞鶴さん。ここで暮らしていると割と見られる光景ではある。

「あの二人って仲悪いの?」

「そんな事は無いと思うなぁ」

 関係性を全く知らない島風には急に喧嘩し出したように見えたらしい。ただの日常会話なのだけど。

 

 我々の場合、改造は滅茶苦茶資材を使う。

 というのも、私達が今使っている艤装は初めから出来得る限りの底上げをしてあるからである。ゲームで言ったら近代化改修をフルにしてある状態なのだ。改造しようにも出来るだけの余剰が無いし、無理やりやれば下手すれば壊れる。

 なので今ある艤装を改造するのではなく、新しい艤装を建造してそれを個別に調整してから最大まで近代化改修的な事をする形になる。そのために資材を阿呆ほど消費するのだ。今使ってるのは鎮守府に予備として置いておくんだとか。川内さんが改造を許されたのは、たぶん戦闘部隊じゃないからほとんど建造時のそのままで使用していたのが理由だと思われる。

 更なる問題点として、この世界の改造は総合的にはそこまで強くならない癖に燃費は悪化する、というのがある。なんでも本来の形からずらすと燃料効率が低下していく傾向が見られるのだとか。そのくせゲームのように全体的な能力が上がるような事にはならず、あくまで長所を伸ばす、短所を補う程度の効果しか見込めないのだ。

 

 はっきり言えばこの改造、私はする意味が全く無い。

 

 だって私、能力的にはオールラウンダーという名のナニカだもの。長所も短所も特に無いんだもの。強いて言うなら攻撃力が強みだろうけどこれ以上そこを伸ばしてどうする。現状でもオーバーキルだぞ。

 まぁ、制服が変わる訳でもない辺り『改二』は別にありそうな感じはするんだけど、吹雪さんの不在が続いてるからその辺り聞けないんだよなぁ……

 

 閑話休題、とどのつまり加賀さんの言いたい事はたぶん、『現状でバランスが取れていて目立った欠点の無い瑞鶴は改造する必要性が薄い』って事だと思われる。タイプとしては私と同じですな。

 そんな訳で、私含めて今回は改造を見送る娘も多い。例えば深雪や青葉さんなんかも現状のバランスが合っているためそのままの方がいいらしい。

 逆に大幅に改造するらしいのが叢雲と天龍さん、それに秋雲先生と夕雲さんである。

 叢雲と天龍さんは二人揃って近接寄りの性能にするらしく、瞬発力や肉体強化を底上げしていくのだとか。訓練所だと推奨されてなかったけど、天龍さんとか砲弾切り払い出来るらしいし適性次第なんだろう。

 秋雲先生と夕雲さんは装備の種類を固定して柔軟性を無くしてしまう代わりに、それらの運用の効率を上げて行くとの事である。

 ちなみに島風はさらに速度特化にしたかったらしいけど、そもそも宮里艦隊での使用感がまだ不明なため改造自体許可されなかった。

 

 

 

 

 

「一応確認しておくが、海に出たら命令には従って貰うぞ。分かっているな」

「……ちゃんとした命令なら、聞きます」

「なら良し! 心配は要らないぞ、宮里はまともな提督だ」

 艤装を付けて途中で一緒になった宮里提督と集合場所まで出向くと、島風と長門さんが話をしていた。こちらに気付くと島風は駆け寄ってきておそーいと周囲を跳ね回り、連装砲ちゃんたちも一緒になってぴょんぴょんする。かわいい。それを見た自衛隊の二人はくすくす笑っていた。なんか私が恥ずかしいじゃん止めて。

 今日は私と島風が第四艦隊として上手く噛み合うかどうかテストのために海に出る。流石に即実戦投入は怖いものね。

「それじゃあ吹雪、島風を指揮下に入れてください」

 オウッと島風が驚きの声を上げた。この場合の指揮下に入れるとは、提督として無効化貫通能力を付与する事なんだけども。

「戦闘部隊は全員、提督が供給なさるんじゃないんですか?」

「基本的にはその予定だったのだけど……その方が島風は安心でしょう?」

 そうですけど……と呟いて、島風はちょっと悩んでから答えた。

「宮里提督なら別に、いいですよ」

「ありがとう、島風。でもごめんなさい……実は、私もう供給できる人数が一杯で……」

 オ、オゥと島風が困った声を上げた。珍しい。

 

 海に出ると島風は付いて来れるかと言わんばかりにタービンを回し、私を速度の地平へ誘おうとしてくる。競争するんじゃないんだけども、最大船速で並走できるかも大事っちゃ大事かなと思って一緒になって全力でやってみたら、ほぼ同じくらいの速度で延々追いかけっこする羽目になった。

 今回は哨戒ついでのテストなので敵が居たらある程度島風に戦わせなきゃいけなかったんだけど、やらせてみたら結構普通に戦えるようで、イ級くらいなら鎧袖一触。火力は物足りない感じだけど速いってのはやっぱ強いね、被弾ゼロだったし。

 島風は戦闘中はともかく走り回ってる間は終始楽しそうで、帰港した時も満足気だった。連装砲ちゃん達も嬉しそうだったし仲はとても良好なんだなこの子たち。

 

 

 

 

 

 検証を無事終えて運用に支障なしと判断されたため、これで私と島風の二隻で第四艦隊結成となる。宮里提督も帰り着いた私達を安堵の表情で迎えると、改めてよろしくと島風と挨拶を交わした。

 久々に思いっきり走ったよーと気分の盛り上がりまくった島風は、そのテンションのまま私の手を取ると寮の裏の広場まで走って行く。当然掴まれた私も走る事になった。途中すれ違った間宮さんズに微笑まし気に見られたのがちょっと恥ずかしい。

 

「それじゃあ走ろっか」

「ええ……散々走り回ってきたのにまた?」

「海の上と陸の上は別腹でしょ!」

 広場に付くと島風は一緒に走るよと私の背中を物理的に押してきた。一応ちゃんと整えられたスペースになっていて、走る事は可能だ――というか、現在進行形で長良さんが走っている。短距離的ではなく長距離か中距離の走り方をしているように見え、結構速い……と思う。

 実戦という名の運動をしてきた後なので体はまだ温まっているが一応軽く体を伸ばしていると、こちらに気付いた長良さんが恐る恐ると遠巻きにこちらを窺ってきた。そうだよね、今まで一回もここで走ってなかったのに急に来たら気になるよね。

 その視線に目ざとく気付いた島風はテトテト走り、ストップウォッチありますかーと話しかけに行った。ほぼ初対面でもさらっと話しかけてくる島風に、長良さんはここにまとめて置いてあるよとすぐ傍の保管場所を示す。艤装での計測とかにも使うため誰でも使っていいらしい。知らなかったわ。

「吹雪ー、長良が測ってくれるって!」

「え、いいんですか? 自分のトレーニングしてたんじゃ」

「う、うん。いいの、もう終わるところだったから……それより二人のを見てみたいなって」

 全然接して来なかったせいかまだ私と話すのに緊張している長良さんは、島風というか島さんの事も知っているらしかった。島さんは私を除けばあの地域の同年代でぶっちぎりの一位だったりしたので記録会に参加していたなら当然かもしれない。

「あんまり期待しないでくださいね……」

 手は抜くからな!! 私この一年でちゃんと練習したからね、記録出し過ぎないように!

 

 

 

「きゅ、9秒93っ……!?」

 私と島風二人のタイムを測り、手元に目を落とした長良さんの声が裏返った。

 そうだね、この二カ月は全く練習してなかったね。しかも海の上では遠慮なく全力疾走してたわけで、完全に感覚が麻痺してたわ。残念ながら当然と言える。

「んー? 吹雪遅くなってない? サボってた?」

「いや九秒台なら遅くはなってないでしょ……」

 あれぇー、と島風が顔に疑問符を浮かべる。何か納得が行っていないらしい。フォームでも崩れてたかね?

「島風はどうなのさ、訓練所でやらなかったブランクとか大丈夫だった?」

 停止していた長良さんが私の言葉ではっと気が付いたようにもう片方の手に持った島風の記録にも目をやった。そしてあっと声が上がった。

「10秒49……」

 オウッ!? っと島風からも声が上がった。いや待って、公式世界記録タイじゃん。私が遅くなったんじゃなくて島風が速くなってんじゃん。流石におかしくね?

「計測ミスかな、ごめんね」

 なんだ押し間違いか、と三人で笑ったけど、その後何度か計測してみてもやっぱり島風は十秒台だった。故障かと思って別のストップウォッチも使ってみたけど、それでもやっぱり記録は変わらない。島風も長良さんも混乱して、私の記録どころではなくなった。

「……っていうかさ、島風スタミナもおかしくない?」

 息も切らせてない私が言うのもなんだけど、艤装で全力滑走するのは一般的には疲れる行為である。私と張り合い続けてすぐ、まともな休憩も取らずに100m走で十秒台連発するのはいかにもおかしい。

 どういう事なのか三人寄って考えてみるも、文殊の知恵は出てこない。霊的資源たっぷりのご飯のせいで成長しちゃったとかだろうかという説をなんとか絞り出した時、突然パシャリと音がした。

「あ、どもども、恐縮です」

 反射的に音源へ顔を向けた私と目が合ったのは青葉さんだった。珍しい組み合わせに話題の新人まで入って顔を突き合わせていたものだから、つい撮ってしまったらしい。困っている私達の様子を見て、何かありましたかと好奇心全開で議論にも参戦してくる。こういう場合有難いなぁ。

 

「特に記録が上がるような覚えは無いし、むしろ下がってもおかしくない状況だったと。ははあ……」

 事情を聴いた青葉さんは少し考える素振りを見せると、メモを取りながら眉を顰めた。

「私は個人的に色々と情報を集めてまして、他の鎮守府の方々ともネットを通じて交流をしているんですが……そこで耳にした噂と合致する状況ですね」

 おおっと感嘆の声を上げる私達に、あくまで噂ですよ、と青葉さんは前置きする。

「えと、私達が艤装を使うと精神面に影響を受けるのはご存じだと思いますが……」

「おうっ!?」

「えっ!」

「そうなんですか?」

「あ、そこからでしたか」

 青葉さん曰く、訓練所では明言されていなかったがこれはほぼ確定だという。でなきゃなんで一般人の我々があんなに勇敢に戦えるものかと。嗜好なども影響を受けて艦娘に引っ張られるらしく、こちらは特に自衛隊の人達に顕著に見られるとの事。今まであまり興味の無かった厨二文化に触れたくなったり、蟹や兎を飼いたくなったりするんだそうな。その他語尾や口調がすごい事になってる人達も居るらしいクマ。

 あれ、私が姫級撃ち殺しても何も感じないのってチート能力じゃなくてこっちの影響? でも吹雪さんってそういうイメージじゃないんだけど。心ブリザードさんだったりはしないと思うんだけどよく分からん。どっちだったとしてもどうしようもないけど。

「それでどうも、肉体面もかなり影響を受けるのではないかという話になってましてね。顕著なのはやっぱり髪ですね。いくら切っても艤装を起動するとこの長さになりますし」

 髪の毛以外がそうでも不思議じゃないですよ、とピンクのような褐色のような色をしたそれを弄りながら青葉さんは言う。ただそれ以外に関しては今まで明確な証拠は挙がってなかったらしい。

「精神だけでなく肉体も強化される可能性はあると思います。悪影響があるのかは分かりませんし、まぁ、そもそも確証の無い話なので全く別の原因だったりするかもですけどね」

 他所の鎮守府だと、胸部のおもちが増えたの減ったのそんな話になっていたそうな。思ったより数段平和な話題だったわ。

「つまり、解決法はとりあえずなさそうな感じですかね」

「そうなりますね。申し訳ないですけど」

 新しい説は手に入れたけど対処とかには一切繋がらない。使うの止める訳には行かないからねぇ。

「じゃあ提督に聞いてみようよ」

 話を聞いていた島風が出し抜けに言った。確かにこの話が正しいなら提督かつ自衛隊員な宮里提督は何か知っていそうではあるけれども。

「知ってたとしても機密じゃない?」

「大丈夫! 昨日ここ来た時に分からない事があったら何でも聞いてねって言ってたから!」

 それは寮生活と仕事の話じゃないかなぁ。

 

 

 

 本当に執務室へ突撃した島風のハイテンション口撃に宮里提督が当惑してしまったため、一旦島風を回収してどうどうと落ち着かせていると、その間に長良さんと青葉さんが事情を説明してくれた。提督はどうやら心当たりがあるようで、何やら悩み始めた。

「それに関しては私が説明しよう」

 執務室のドア――私達の通った入り口ではなく、横に付いている休憩室か仮眠室か何かに繋がる扉をズバンと開けて、長門さんが入室された。制服のへそ出しルックではなくパンツルックな私服で、頭のパーツも未装着という珍しい格好をしている。提督の側へ歩み寄ると、二人で頷き合ってから口を開く。

「まず勘違いしないでもらいたいのだが、我々も正確な所は知らない。この件に関しては一切通達がされていないからだ。ここで聞いた話も他言無用……正しいか分からないからな」

 話してくれるのは、実際に影響が顕著に表れた艦娘が出た場合、流石に放置は出来ないからだそうである。経過を見て問題があるか判断したいらしい。

「島風の足が速くなっているという話だったが、確かにそれと似たような例は一部の自衛隊員にも表れている。というか……いや見せた方が分かりやすいな」

 そう言って長門さんは部屋の片隅から古新聞を取り出すと、折り畳まれたそれを折り畳まれたまま、素手で二つに引き裂いた。さらにそれを重ねるとまた二つに裂き、唖然とする三人を尻目に散らばらないよう丁寧に元の場所へと戻した。

「見て貰った通り、私自身が前例なんだ。ただ、私がこうなったのは最近……ここ二カ月くらいか。使い始めてからの半年ほどはここまでの影響は無かった。だが島風は私のそれよりも遥かに症状の出が早い」

 はやいという単語に島風がオッっと反応した。いや褒めてるわけじゃないからね?

「そうなると、適性値が関係しているかもしれないが……いや、それは置いておこう。ともかく、この現象に関して分かっている事は少ない。明確に出ているのが私と島風を含めても片手の指で収まる人数しか居ないんだ」

 少なくとも長門さんは力が強くなっても制御し切れているそうで、間違って物を壊したりはしないらしい。一応精密検査なんかも受けたらしいが健康そのものでむしろ発症前より調子は良いくらいなんだとか。でも明らかに筋肉量を超越した腕力が出るため、何らかの異常であるのは間違い無いと言う。

 艤装の使用を止めれば治る物なのかも試す訳に行かないため不明、上がり続けるのか現状で止まるのかまだ上がるのかも不明。ただ集合体の長門さんは悪い事にはならないと言っていたらしい。ただそれは戦闘面での話な訳で。

 

 これ、艦娘止めても影響が抜けたか証明出来なきゃ私達競技会とか参加できなくね?

 

 私的にはね、参加しなくていい大義名分が向こうからやって来たようなもんなんだけど、この場に洒落にならないのが二人ほど居る訳で喜べない。まぁ片方は明らかに何も勘付いてないですごいなーって顔してるけど、長良さんは気付いてしまったようでSAN値が削られた表情をしていた。ドーピングだよねぇこれ。

 

 結局提督たちもただちに健康に害はないはずという事しか分からないらしく、経過観察のためにこまめな報告をするように言われて話が終わる。途中で出て来た島風の適性値の話に青葉さんが食いついて聞き出そうとしていたけれど、長門さんが自衛隊で一番適性値が高かったが島風はそれ以上である事しか教えて貰えなかった。

 ついでなので明日の予定を提督に確認しようと思ったら、話があるので私だけ残るようにと言って来た。気落ちした様子の長良さんと特に変化の見られない島風、まだ色々聞きたそうな青葉さんの退出を見送り提督と向き合うと、私に心配気な眼差しを向けてくる。

「長門が話した症状が現れている自衛隊員は、全員適性値が元精鋭部隊でもトップクラスの艦娘です。そして今回発症したと思われる島風はその精鋭部隊よりも適性値が高い」

 それも遥かにな、と長門さんが付け加える。そんな事言われると私も具体的な数値知りたくなってくるんですけど。

「そして吹雪、あなたはその島風よりも適性値が高い。ですので、吹雪も発症する可能性が高いと言えます……いえ、むしろ、もう症状が出ているのではないですか?」

 長門のを見た時もあまり驚いてなかったですし。と言われてしまうと返答に困る。長門さんのは自分も同じ事出来るから驚愕より感心になっちゃったからだと思うけども。私のって艤装の影響じゃないからどう答えればいいんだこれ。いや、むしろ既成事実を作るチャンスか? 正直最近、転生はともかくチート能力の事は伝えてもなんかオカルト的なあれこれと思って貰える気もしているんだけど。霊能力者が普通に居たし。

 とりあえず明言は避けて、先ほど長門さんが仕舞い込んだ古新聞を取り出し、それを両手で掴む。そのまま二つに引き裂くと長門さんと同じようにまた重ねてもう一度分割して見せてみた。ついでに結構細かくなってしまったので両手で握りこみ、ばらけない様に圧縮して、ピンポン玉のようになったそれを執務机に転がした。

 絞り出すように分かりましたと言った提督と私以上かと呟く長門さんを見て、正しかったのかやらかしたのか判断に困ったのが私です。でも、もしもの時は艤装なくても力が強いよって知っといてもらうのは悪くないと思うんだよなぁ。

「いつから、そうなんですか?」

 そのまま明日の予定の話も終えて退出しようと思ったら、提督に聞かれてしまった。

「最初からです」

 命令で艤装を毎日使ってたからとかじゃないから安心して頂きたい。そう思ったのだけど、むしろ二人の表情は険しくなった。なんでやろなあ。

 

 

 

 島風と曙、二人の引っ越しを終え、部屋で暫く島風と話をしながら適当にネットを巡回していたら、気付けばもう日が変わろうかという時間になっていた。明日も早いから寝ようと言ってPCをスリープさせて布団に潜ると、仰向けに寝そべる私の横に温かい物が滑り込んで来た。それはおやすみと囁くとさらにこちらに体を寄せて来る。

「島さんのベッドは上だよ?」

「連装砲ちゃん達が上で寝ちゃってるから」

 普段仲は良いけど流石に一緒に寝ると硬いらしい。だからしょうがないよねとぐいぐい体で私を押して、自分の領域を広げにかかる。仕方ないので少し壁側にズレてやると、空いた隙間に躊躇なく飛び込んできた。

 島風は私より体温がちょっと高めなのか、触れていると温かい。冬場ならともかく夏も近くなってくると暑苦しいかも。なんて思っていたら、すぐに横から寝息が聞こえてきた。初めての所で働いて、なんだかんだで疲れていたのだろう。

 実の所、島さんは一緒に居てもそんなに手がかかるタイプではない。構って欲しそうにはするし、なんなら突撃してくるが、それでもほっといたりすると一人で遊んでいるような娘で、あんまり直接的に甘えては来ない。だから一緒に生活した時期でも同じ布団で寝た事はそんなになかったりする。それが二日連続で、というのは珍しい。

 たぶん前の鎮守府でなんかあったんだろうなぁ。提督も何となく気遣ってる様子だったし、島さん本人も前の所の話はほとんどしようとしなかった。比叡さんの事とか、食事の味とか、集合体の島風とかけっこして勝ったとかそんなのは話してくれたけど。

 言いたい事は愚痴も文句も言ってくる娘なので、前の鎮守府の事は言いたくないんだろうと思う。無理に吐かせるのも違うし、言いたくなったらちゃんと聞く事にしようか。そう思いつつ、寝返りでこちらに寄って来た島さんに毛布をちゃんとかけてやり、以前より長くなったお互いの髪が絡まないように微調整していたら、そのうち私も眠ってしまった。

 

 翌朝、起きたら島さんはまだ眠っていて、私の腕に収まっていた。どうしたもんかと周りを見回したら、先に起きていたらしくこちらを覗き込んでいる連装砲ちゃんとその上に乗っかった妖精さんと目が合った。連装砲ちゃんは手で目を覆うようなジェスチャーでいやんいやんと頭を振って、なんだか恥ずかしそうな雰囲気でキューと鳴き、妖精さんはこちらをじっと見て、ゆうべはおたのしみでしたねと妄言を吐いた。そういうんじゃない。

 

 

 




もう大丈夫かと思ったら別の色々が起きたでござる の巻
まぁ半分くらいはやりたい事が重なりまくった結果なんですけど。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。