うわあなんだか凄いことになっちゃったぞ。
生放送を終えて暫く。第二次適性検査が実施された事もあり、ネット上はまだまだお祭り騒ぎが続いていた。書かれているのは私の事だったり、島風の事だったり、金剛さんの事だったり、北上さんの事だったりするが、内容は割と好意的で案外叩かれてない。いや勿論案外なだけで叩いてる書き込みもけっこうあるんだけど。
私はやっぱり失言が不味かったらしく、アダルトゲームについては散々笑われている。いいじゃん、Fateは文学だよ?
島風は制服が叩かれているだけでほぼほぼ本人は叩かれていない。全部龍驤さんのおかげである。放送が終わった後に二人でお礼を言いに行った時にはなんだか遠い目で声もエエンヤデとか細い事になってたけど。そんな龍驤さんは、楠木提督に君が居てくれてよかったと震え声で本気で感謝を伝えられ、流石に面食らった様子だったけれど、翌日にはある程度復活していた。
金剛さんは平常運転だった。平常すぎて普通にお叱りの声が多かった。怒ってるとか憎まれてるとかじゃなくて叱られてる感じなのは人徳で良いんだろうか。まぁ提督には頑張って貰いたい。なんかフラグ立てると不味そうな子にフラグ立っちゃってるみたいだけど。
北上さんは……どこから突っ込めばいいんだろう。まず、私の勘違いからだろうか。私、北上さんは知り合いじゃないと思ってたんだけど、普通に知り合いだったわ。っていうか身内だったわ。具体的には叔母。私の母方の祖父の再婚相手の連れ子で血は繋がってないんだけど、一応交流もある人だった。ちなみに歳は母より私との方が遥かに近い。っつーか高校生である。
最初配信を見た時はリアルに噴いた。だって知ってる顔なんだもの。そんなに連絡とる方じゃなくて今何やってるか全く知らなかったから、まさか艦娘になってるとは思わなかったんだよ。慌てて母に電話してみると、母はちゃんと叔母が北上として働いている事を知っていて、聞けば私に招集の知らせが届いた翌日には話をされていたらしかった。
じゃあなんで私は知らされてなかったんだよという話になると思うのだが、これに関しては北上さん本人から電話で理由を聞きだす事に成功した。曰く、びっくりさせたかったから。いやお前ふざけんなよ。訓練所も配属先も違ったから機を逸したじゃねーよ。下手したら知らない間に身内が戦いで亡くなってたじゃん。いや北上さん糞強いらしいけど。
仲は交流の薄さの割には良かったと思うけど、配信者やってるとか全然知らんかったわ。でも炎上(物理)はヤベーだろどんなショッキング映像だよ。当然のように各方面からぶっ叩かれて、ネット上でも北上は叩いていいみたいな風潮が出来上がっている。けど、これたぶんわざとだよなぁ。
身内の贔屓目だけど、やっていい事と悪い事が分からないタイプじゃないと思うんだ。なのであれは悪目立ちする事で叩くなら私を叩いていいのよってヘイトコントロールしてるんじゃないだろうか。まぁそれにしたってやり過ぎなんだけどな!! ちなみに本人は何も言わなかったので真相は知らない。ただの悪ノリかもしれない。
「ヘーイ、ブッキー! 画面とにらめっこしてないでサー、もっとお話でもしまショー?」
現行スレで艦娘叩きをする奴とレスバトルを繰り広げていた私に後ろから話しかけてきたのは、不満気な顔をした金剛さんだった。振り向けば腰に手を当て頬を膨らませたご尊顔をこちらに向けている。畳張りの床では寝そべった初雪と壁にもたれ掛かって座った島風が、二人とも漫画を読みふけっていた。初雪はじっくり読んでいるためまだ数巻しか進んでいないが、島風はもう全体の半分を超えている。そこは速くしなくていいのでは。
二人が読んでいるのは私が島風の誕生日に贈ったものだ。結局生放送で言っちゃったから本人からリクエストが来たのである。曰く、なんか最近よく名前聞くけど読んだ事ないから読みたかったらしい。じゃあ送るかと通販で探したら、最近は印刷会社があれこれあって高騰してるらしく、既刊を揃えたら結構な出費になった。まぁほぼ新品の良品だから……と思ったけど転売だよなこれちょっと微妙な気持ちになる。でも新品売ってないんだもん、ヒロアカ。
「まぁ、積もる話はありますが……金剛さん絶対提督の話するでしょ? 私は奴の恥部になる風説をこの鎮守府に流布したくないです。一応友達なので」
私達は昨日、生放送をした場所から今居る鎮守府にお引越しした。そしたらこの鎮守府、寮の壁がめっちゃ薄かったのだ。なので金剛さんがテンション高めに喋り散らしたらあっという間に宮里艦隊の全艦娘にハーレム提督の実態が知れ渡る事になる。本人と話したら迅鯨さんとか大淀さんとかがハーレムインしたっぽかったし。奴に自覚はなさそうだったが。
「向こうだと、私が提督に会いに執務室に行ったら大体もう誰か居たりして、あまり進展してないんデース! 迅鯨は露骨ですケド、最近は朝雲なんかも怪しいんですヨー!!」
私の発言を無視して話し始めやがったわこの人。そして壁の向こうからガタッと誰かが勢いよく立ち上がる音が聞こえた。落ち着け山雲。
私達がここへ引っ越して来た日、つまり昨日だが、今度の鎮守府は四人部屋になると聞かされ部屋割りに悩みつつ、戦闘後に直接こちらに入港した私達を出迎えたのは、金剛さんと初雪、大淀さんと思われる艦娘、それに提提督だった。
お久しぶりネーと走って飛びついてくる金剛さんをいなして、なんでお前らここに居んの? と提提督に聞いてみた所、援軍というかなんというか、今攻めている面倒な海域攻略のために金剛さんを貸し出す事になったからだというのである。初雪は金剛さんの護衛でやっぱり援軍として加わり、提督は付き添いで来ただけだから大淀さんと宮里提督との打ち合わせが終わったら大淀さんと一緒に帰るとの事だった。
そしてそのまま暫く提督と雑談していたら、いつの間にか私と島風、初雪、金剛さんで四人一部屋にされていた。私の意見は尊重されないらしい。いや別に嫌じゃないからいいんだけど。
その後、みんなで暫く交流してる間に宮里提督と大淀さんは会談を終え、提提督は大淀さんに連れられて自分の鎮守府へと帰って行った。金剛さんは大淀さんを恨めし気な目で見送り、当の大淀さんは私を見てこの子もか~って表情をしていた。残念外れだ。
そして翌日の今朝、長門さんを旗艦とする部隊と金剛さんを旗艦とする部隊と私&島風の三部隊に分かれ、連携してこちらを狙い続ける三か所の敵拠点を同時に襲撃し、これを撃滅した。
金剛さんに随伴して護衛をしてた初雪によると、金剛さんの三式弾の斉射で敵の基地が半壊、次弾装填している間に他の面子による追撃で敵の姫級を討ち取ったらしい。
宮里艦隊の面々から見て金剛さんの火力は驚くべきものだったらしく、聞いた話じゃ金剛さんは長門さんや山城さんと比べても圧倒的な火力を有してるという話だった。
逆に金剛さんや初雪からは、宮里艦隊は舌を巻くほどの高練度に見えたらしい。金剛さんが強すぎる提艦隊では、姫級や鬼級を倒すに当たってはほぼ金剛さんをどう有効に使うかという作戦になるらしく、戦艦無しでも鬼級くらいなら仕留められる宮里艦隊はやはり精鋭に映るのだとか。気迫が違うとは金剛さんの談である。
まぁ、私と島風抜きでも他の鎮守府より戦果上だからなここ。というか、その状態で金剛さん抜きになった提艦隊は大丈夫なんだろうか。いや大丈夫じゃなきゃ援軍とかよこさないだろうけどちょっと心配。
そんな話をしながら久々な初雪のマッサージを終え――初雪の足はもう常人と同じくらいには筋肉が付いていたから要らなかった気もするが――私が軽いネット巡回をしていたら金剛さんに話しかけられたという次第である。
「それでー、金剛さんー? もっとお話聞かせて欲しいな~?」
そして会話の開始三十秒で隣の部屋から駆けつけて来たのがこちらの山雲さんになります。さしもの金剛さんも笑顔から発される強い圧力にたじろいでいた。
「ごめんなさい金剛さん。山雲さんは朝雲さんと仲が良かったから、向こうでどうしてるか気になっていたみたいで……」
「私も他の鎮守府の事は知りたいな~、生放送のも見たけどねぇ。向こうの提督そんな凄いの?」
「わらわも何人か近況が気になる友が居ってのう、後で良いから聞かせて貰えぬか」
気が付けば隣の部屋の住人が全員こっちへやって来ていた。狭くは無いから問題ないけど、突然人が増えた事に初雪は動揺していた。
結局、騒がしくなった私達の部屋が気になったらしく深雪や叢雲、大井さんや天龍さんまで話に参加して来る事になった。みんな他所の事は知りたかったらしい。そのため談話室へと場所を移して開催された金剛さんの提艦隊語りは、引き摺られて参加させられた初雪の補足という別視点からのアプローチもあり大層な盛り上がりを見せる事になった。金剛さんの高いトーク力が光る。
最終的に戦闘部隊のほとんどが参加し、ジュースやお菓子も持ち出されたため二人の歓迎会みたいになって、何故か提督たちの訓練所で講師をしていた宮里提督に提提督の訓練所での様子を話させるまで行った。付き合いいいですね宮里提督。
明日も出撃ですよーという宮里提督の一声で、もういい時間だったのもあり解散となった。ちゃんと歯を磨きましょうねという夕雲さんの声もあり、寝る前の支度をみんなして整えていると、私を見つめる瞳が二つ。それはあまり話した事の無い加賀さんの物だった。
加賀さんは騒ぎを聞きつけた瑞鶴さんに連れられて会に参加していたが、話には殆ど加わらず、黙々とお菓子を口に収めていた。その状態でも聞いてはいたみたいだけども。そんな加賀さんが今、歯を磨きながら私の事をじっと見つめている。
何か用だろうかととりあえず加賀さんを待ってみると、こちらへと歩み寄ってきて、目線を外さずに口を開いた。
「率直に言って、あなたは私達の事を歯牙にもかけていないのだと思っていたわ」
違ったのね。と加賀さんは表情も変えずに口にする。私は唐突な話だったので面食らい、こっちも率直な感想が出てしまった。
「加賀さんにそれを言われるとは思いませんでした」
失礼すぎる。言っちゃってからそう思ったが、言われた加賀さんは怒ったり気分を害したりと言った様子は見せなかった。むしろ少し面白かったようで、ちょっと口元に笑みが浮かんだように見えた。
「放送でもそうだったけれど、あなたは当惑すると思っている事がそのまま出るのね……口にする前に考える癖をつけた方が良いと思うわ」
ぐぅの音も出ねぇや。私は焦ったり混乱したり緊張したり羞恥心が天元突破したりすると、思考がぐるぐる回り出して精査出来ずに明後日の方向へぶっ飛んでいく事がたまにある。その結果がオールマイトだったりクジラの解体ショーだったりするわけだ。直したいのはやまやまだが、実は前世からなので直らんような気がする。
「生放送は見させて貰いました。頑張っていたと思うわ、アダルトゲームはどうかと思うけれど」
「あれは忘れてください」
他の人らも周りに居るのにそこを弄るのは止めろォ! R18なシリーズって意識が無かったんだもんよしょうがないじゃん!
「忘れるのは難しい……いえ、そこは置いておきましょう。肝要なのは、極端な強さを持つあなたは、私達の事を軽視しているものだと私が思い込んでいたという事よ」
「空母を軽視するのはかなりアレだと思うんですが……」
そうね、と加賀さんは同意した。ええ、私そこまで阿呆に見えてたの? 実際頭の良さは微妙なんだけどさぁ。
「でも間違っていた。あなたは他の艦種どころか、兵站の重要性まで理解しているようだし」
「まぁ、そうですね、理解し切れているかは怪しいですが……訓練所でもある程度習いましたし」
そうよねと加賀さんは頷きながら、歯を磨きながらこっちを気にしている瑞鶴さんに目をやった。理解してなかったんだろうか。
「私達はお互い、自分から他人に話しかけるような積極性を持っていなかった。きっとそれだけの話だったのね。あなたも私に無視されているように感じていたんでしょう?」
目線をこちらへ戻し、加賀さんは問いかけた。まぁ、無視かはともかくそんな感じではあった。用事が無ければそんなもんかなとも思ってたけれど。
まぁ多少は、と曖昧に頷いた私を見て、加賀さんはため息のように深く息を吐きだした。一度目を瞑り、またこちらをしっかりと見据えると、スッと右手を差し出した。
「すれ違うのは止めにしましょう。私は加賀美 沙希。今後ともよろしく」
「あっ、はい。伊吹 雪です。よろしくお願いします!」
その手を取り、しっかりと握手しながら、失礼な事に、半分くらい全然関係ない事を私は思った。
加賀岬かよ!!!!
台湾から中国へ渡り、通訳の仕事で残る事になった護衛棲水姫を置いて、北方棲姫はレ級に背負われ大地を往く。超高速で疾走するレ級の背で、周囲を見渡しながら出来る限りの位置を記録していくが、どこをどう進んでいるのかは全く理解できていなかった。
能力の恩恵なのか、地形の記憶は完璧である。なので通ったその場所にまた行きたいと思えばまた戻れるのだろうが、そもそもその位置が地球上のどこなのかはさっぱり分からなくなってしまった北方棲姫であった。
時折日本に帰って休憩などを挟みつつ、各国の首都をマーキングしていく。各国の様子は北方棲姫が思っていたほどは悪くなく、多聞丸に確認してもやはり島国の方が酷い事になっていると返答された。もっとも、このまま行けば状況は悪化するばかりらしいけれども。
そうして暫くは行く先々のマーキングに勤しんでいた北方棲姫であるが、ヨーロッパを抜けたある時にレ級の都合がつかず、だからといって休むのもどうかと思われたものだから、少しでも進んでおこうと最寄りの変色海域を陸地沿いに行ってみる事にした。
レ級は心配ではあったが、多聞丸も止めなかったし大丈夫だろうと北方棲姫を送り出した。一人はどうかと思ったので群体なPT小鬼のうち一体だけは持たせたが。
護衛棲水姫と台湾で仲間にした艦娘――丹陽は艤装普及の仕事でしっかり成果を挙げているようだ、と自分以上に小さな深海棲艦と駄弁りながら北方棲姫は赤い海沿いを進んでいく。道中で見つけた姫級なんかをスルーしつつ、姫級が海岸線に居るってかなりヤバいのでは? なんて思いながらちょっと休憩と陸地に上がり、近くの建物を見てみれば、それは見事に粉砕されていて、やっぱり海の傍は酷いなぁと再確認させられてしまったのだった。
無惨な状態の建物群を暫く進み何か休める椅子でも残っていないか、いつの間にか増えていたPT小鬼と三人で周囲を見渡していると、不意に、何かが動く気配。驚いてそちらを振り向けば、茶色い毛色の筋肉質な男性が割と呑気してた三人に向かって銃を構えていた。
銃を向けられたのは初めてだったため、ちょっと慌てて両手を上げた北方棲姫だったが、よくよく考えると別に効きはしないなぁと思いなおしてある程度余裕を取り戻し、その後暫く困り果てた。銃を持った男性は何かを大声で言っているのだが、それがどういう意味なのかさっぱり分からなかったのだ。
日本語と英語をちょっとくらいしか分からない北方棲姫は、手を上げたままの姿勢でPT小鬼に分かるか聞いてみたが、どちらもさっぱりであるらしかった。男の方はそれを見咎め、さらに大きな声で何かを叫んだ。
「ドウシヨウ、全然分カンナイケド、動クナッテ言ワレテルノカナ?」
「ドウシヨウネー」「ビックリシテ」「体ガ増エチャッタ!」
そんな理由で増えないで欲しい。北方棲姫は三体になったPT小鬼をジト目で見つめた。そうしている間にも男は北方棲姫に向けて銃、おそらくアサルトライフルであろうそれをしっかりと構えている。ただ緊張しているのか、よく見れば細かく震えているし、呼吸は少し荒かった。能力も使えば制圧は容易だろう。ただ、それをしたところでどうなるものでもない。転移して逃げてしまおうか、そう思っていると、男の背後から不意にブロンドの髪をした女性が顔を覗かせた。
女が男に声をかけると、男は不意を衝かれたらしく目を剥いて視線だけをそちらに向け、女の顔を見てさらに驚いたようだった。しかしその動揺からすぐに立ち直ると目線を北方棲姫たちの方へと戻し、小さめの声で何かを話し始める。北方棲姫達にも普通に聞こえる程度ではあったのだが、やはり何を言っているのかは分からなかった。
状況には場違いな親し気な声をかける女性の言葉に、驚いたり詰問したりするような口調で返答していた男性は、やがて何かを考え始め、暫くすると銃を降ろして女性に何かを告げた。ブロンドの女性はそれに一言だけ返すと、北方棲姫たちに向かって微笑みかけ、そのままゆっくりと歩き出す。男性とは全く違った態度に不信感と違和感を覚えつつ目の前まで進んでくるのを待つと、女性は手の届きそうな距離で立ち止まり口を開いた。
「こんにちは、ようこそスウェーデンへ!」
おもっくそ日本語だったので、北方棲姫は度肝を抜かれた。PT小鬼は五体まで増えた。
「私はイェータ・月島。あなた達と同じ転生者です」
「アッハイ」
「仲間ダー」「アレ?」「ヨク分カッタネ!」「我々ガ転生者ッテ」「見テ分カル?」
群と化したPT小鬼の言葉にふふふと笑うと、見た目じゃ分からないなーとその質問を否定した。
「ほっぽちゃん、多聞丸を呼んで来てもらえる? 彼、きっと待ってると思うから」
なんだかすごい親しげだぞこの人。とりあえず信用出来るか多聞丸に聞いてからにしよう、そう思いながら北方棲姫は一度日本へと転移した。
数分後、舞い戻った北方棲姫と同行した多聞丸の見た物は、高く山積みになったPT小鬼群と、それに押しつぶされた女性と男性の二人だった。
「はあ、助かった……本当に死ぬかと……本体だから普通に死んじゃうところだった……」
「ゴメンネー」「銃持ッテル方ガ」「走ッテ来タカラ」「ツイ」「我々弱ソウニ見エルカラネ」「仕方ナイネ」「実際弱イシ」「デモ」「普通ノ人ニ負ケルホド」「デハナイ」
銃を持った男は気絶してしまっていた。多聞丸の見立てでは命に別状はないらしく、転生者の女性もそれには一安心。後で介抱して、全部夢だったとでも思って貰う事にした。
「ソモソモ、私達ト会ウツモリダッタノナラ連レテ来ナイ方ガヨカッタンジャ……」
「あー、ええとね、私、さっきまで彼とは見知らぬ他人だったから」
今はもう心の友だけど。男性を膝枕しながらそんな事をのたまったものだから、北方棲姫は言ってる意味が捉えきれなかった。
「そういう能力だと思っておいて。彼の過去には私が『たしかに』『いた』し、実際に私は彼の娘を助けて来た。その縁で今回は信用してもらったの。誰も損してない、凄くフェアな関係なんです」
「気絶サセタノニ?」「誰ガソンナ酷イ事ヲ」「私ガヤリマシタ」「ナンテ野郎ダ」
それはそれって事で。そう言ってブロンドの女性は男性の頭を撫でた。
「さて……うーん、まぁ大丈夫かな? 君の艤装の話なんだが……」
「ア、艦娘ナンダコノ人」
増えてしまったPT小鬼を日本近海へと還しつつ、北方棲姫は話を聞いていた。高速でその場と海を行ったり来たりの転移を繰り返しながらの荒業である。
「ああ、転生者で人間の女性になった子達は全員何かしらの適性がある……でだ、軽く視たが、とりあえず艦娘として活動してもらって問題なさそうだね。君の事だ、そうおかしな事はしないだろうし」
「それはもちろん。計画の邪魔になるような事はしない、艤装があれば助けられる人が格段に増えるから絶対に欲しいけどね」
何でも出来る万能の能力ではまったくないのだ。自分に出来る範囲を増やしておきたいというのが彼女の偽らざる本音だった。
「まぁ、それ以前にどうやら君の能力は転生者には不完全な効果しか発揮しないみたいだけれどね」
「え、なにそれ聞いてない」
魔法使いを自称する少女から貰った能力が妙に複雑だったため、事前にしっかりと説明を受けてこの世界に送り出されているのだが、そんな話は全く聞いていない。いや、それを言うならそもそも自分以外の転生者の存在自体聞いてはいなかったのだが。
「説明が難しいが……君自身がそうであるように、俯瞰的に……というか、時間軸の外からこの世界を認識する能力は転生者共通で与えられているようでね。普段認識は出来ないようだが使われれば記憶が二重になる。君との接触が短時間だったレ級君は気付いていないようだったが」
「……まぁ、むしろ都合はいいかな?」
「うむ」
なんか二人で納得してるけど、北方棲姫はさっぱり意味が分からなかった。
「待テ多聞丸!」「何ノ事ダ!」「マルデ意味ガ分カランゾ!」
折角一体まで減らしたPT小鬼が再度増殖して文句を言う。何故わざわざ増えるのか。北方棲姫はため息を吐いた。
イェータはGötaと書くそうです。
名字だけ名乗らせるのはどうかと思った結果そっちで悩む羽目になるとは思いませんでした。