転生チート吹雪さん   作:煮琶瓜

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武装練習

 巻雲には納得できない事がある。

 それは自分が艦娘として招集され訓練所に送られた事ではない。親は泣いたが誰かがやらなければいけない事だ。

 巻雲には納得できない事がある。

 それは自分達が名前でなく船の名前で呼ばれる事でも、食事の製造過程が怪しい事でもない。名前は特にこだわりはないし被ってる娘も名字が同じと思えば不便しない。食事はとても美味しいから問題ない。

 巻雲には納得できない事がある。

 それは知らない他人と暮らさせられる事でも、寮という名のアパートから訓練以外で外出出来ない事でも、訓練生がみんな元気で騒がしい事でもない。同室の夕雲さんはとても優しくて包容力もあって憧れるくらいだし、外に出る用事は特にないし、元気があるのは良い事だ。

 巻雲には納得できない事がある。

 それは自分の使う事になる兵器がオカルト染みている事でも、謎の小人が世界に蔓延っていた事でも、霊や魂が実在しているらしい事でも、適性値なる数字で強弱が決まる理不尽な仕様がある事でもない。ちゃんと使えるなら科学的である必要なんて感じないし、妖精さんがそこらに居ると考えるとちょっと恥ずかしいあれこれはあるけど見えないならそこまで気にならないし、幽霊が本当に居たってちょっと夜中にトイレに行くのが怖くなるだけだし、適性値が低くて戦えないと分かるのはむしろいい事だろうと思う。

 巻雲には納得できない事がある。

 それは先日始まった砲撃訓練で的にさっぱり弾を当てられない事でも、漣のように片手撃ちでもガンガン当てていく訓練生が居る事でも、明らかにやる気の無かった初雪が動体への射撃でトップクラスの成績を出している事でも、島風が連射しすぎて弾薬を枯渇させ砲身も破損させた事でも、その島風にちゃんと狙うように注意する吹雪が全く的を見ないで命中させている事でもない。自分が当てられないのはなんかもう適性低いんだろうなと薄々理解出来たし、逆に漣は高いんだろうなと分かるし、初雪はFPSで鍛えたと自己申告してたし、島風の連射速度は装填速度がおかしな事になってるだけだし、吹雪は水上訓練の時点でちょっとあれだったのでなんかもうそういうものなんだろうと夕雲型の中で意見の一致を見ている。

 巻雲には納得できない事がある。

 それは今お茶を淹れてくれている十代にしか見えない夕雲さんが既婚者でありなんなら子供も居るらしいという事ではない。旦那さんがうらやましいだけである。

「巻雲さん、そんなに悩んでも仕方ないわよ。本物の巻雲さんもそうだったんでしょう?」

「そうですけどぉ……どうしても納得がいかないんです!」

 巻雲には納得できない事がある。

 召集前、自分の詳細な身体データは自衛隊に送られているはずである。わざわざ他人に測ってもらったのだから正確な数値が届いたはずだ。だというのに。だというのに。

「どうして巻雲の制服はこんなに袖が余っているのですか……!?」

 オーダーメイドで作られているはずなのに、どうしてこうなった。可愛いじゃないと慰めてくれる夕雲さんには悪いがそういう問題ではないのである。捲ってもいつの間にか元に戻っている不思議な袖をぺしぺしとテーブルに叩きつけてやるが、悲しいかなそいつが縮んでくれたりはしないのだった。

 

 

 

 

 

 試射の翌日から砲撃訓練が始まった。今までよりも分かりやすい凶器を扱うという事でやはり皆最初は尻込みしていたが、順番に撃たされているうちにだんだん楽しくなってくる者も出たようで、最終的に彼女たちは当てた外した端だ中央だと競い合うようになっていた。漣や夕立も参加し好成績を収め、島風は手数で補おうとして砲塔が消耗し妖精さんから怒られた。

 そんな流れに触発されたのが初雪である。どうも最初はやる気が見られなかったのだが、ゲームの様相を呈して来ると様子が変わり、楽しそうに狙い撃つようになった。特筆すべきはそのAIM力で、動いている的への命中率は漣や夕立を超えて二位だった。一位はうん。威力も調整できるようになったからうん。

 

 砲撃訓練三日目、私達は居残りでまたテストに駆り出された。メンバーも変わらず漣、夕立、島風、私である。適性値の高い訓練生が装備を使っても大丈夫なのかを試しているのだろう、というのはもう四人とも気付いていたので、誰も拒否はしなかった。

 その日試したのは魚雷と爆雷だった。遠くに大きな的が用意され、そこに魚雷を撃ち込まされる。比べた感じだと漣が一番狙いが正確で、夕立が一番威力が強く、島風が一番弾速が早かった。

 私の番になり、前回同様若干緊張した様子の暁教官長の合図で魚雷を撃つ。結果として的が消滅した。効果範囲が異様に広いとか、凄まじい爆風が起きるとか、魚雷なのに貫通していくとかそういう事はなく、普通に命中したところに普通に爆発してチリ一つ残さずに的を消滅させた。とりあえず味方を巻き込んだりはしなさそうなのでいいんじゃないだろうか。

 続いて爆雷もテストしたが、水中なのでどうなったのかはよく分からなかった。投射機で投げたらめっちゃ飛んでったりはしたけど。

 結論としては、私の砲雷撃は人に向けるのは心配だけど訓練自体は他の訓練生と同じでいいだろう、という事だった。ただ演習の際は全力で撃たないようにとは言われてしまった。威力の調整出来なかったら演習出禁だったのかもしかして。

 

 

 

 夕食を終え部屋に戻り、風呂も済ませた就寝前の自由時間。島風と一緒に初雪のマッサージを行う。初雪の足は初日に比べると少し筋肉が付いてきたようで、伊良湖さんの食事は実際に回復効果があるんだと納得できる。これはアスリート大歓喜なのでは。今後のスポーツ界では艤装で作った食事がマストになるかもしれない。そんなとこに注力出来るようになるの何年先だよって話だけど。

 馬乗りになった島風に指圧され気持ちよさそうに声を上げる初雪を見ながら某火星の水先案内人アニメのOPに耳を傾けていると、チャイムが鳴りごめんくださいと声が聞こえてきた。ノブを回してみればドアの先に居たのは曙で、なにやら真面目な表情でこちらを見つめていた。

「ちょっと聞きたい事があるんだけど、今いい?」

「いいよー」

 別段やる事がある訳でもないしと部屋に招き入れると、島風が初雪にキャメルクラッチをキメていた。

「お茶入れてくるから適当に座ってて」

「え、スルーでいいのあれ、島風なんでここに……っていうかテレビ? アニメやってるしどこから突っ込めばいいのよこの部屋!?」

 私の私物ですと苦しそうに自慢げな声を出すという高等技術を初雪が行う。本気で技をかけられている訳ではないらしい。冷蔵庫から四人分のお茶――これも伊良湖さん製である――をコップに注ぎ茶菓子とともにテーブルに出せば、ぱっと島風が飛んできて菓子の包みを開け始めた。なお茶菓子は五月雨の私物である。持ってきたは良いけど賞味期限がもうすぐそこだったと皆に配っていたのだ。

「それで聞きたい事って?」

「ああ、うん、聞きたいのは砲撃の事よ。あんたと初雪は上手く当てるじゃない? 何かコツとかあるなら教えて欲しい」

 曙の砲撃訓練時の成績は普通ちょっと下くらいである。飛び抜けて下手という訳ではないが上手とは言えないだろう精度であり、やる気勢の彼女が満足できる結果は出ていないだろう。しかし、コツと言われてもだ。

「的と自分との距離をなんとなく理解して弾が到達する頃に的が立ってるであろう位置に撃ってるんだけど……」

「そのなんとなくを知りたいんだけど」

 チート能力です。とは流石に言えない訳で。

 私の感知能力はなんかつよいため目を瞑っていても周囲の状況くらいは分かるのだが、その感覚を他人に説明したところで理解出来るとは思えないし、分かっても真似は出来ないだろう。そうなるともうなんとなくですとしか言いようがない。チート能力さんにはお世話になっていて感謝しているがこうも正面から力の出どころを聞かれると困ってしまう。私がアドバイスなんてしても何の糧にもならないだろう。

「的をよく見て次の位置を予測するって事しかしてないからそう言われると自分でもよく分かんないなぁ」

「あんた的見ないで当ててるじゃない……」

 いわれてみればそうである。私は的を目視せずに撃つ時がある――いや見てない訳ではないのだ。なんというか見るの定義が違う。私の場合聴覚とか肌の触覚で位置関係を把握できる、素でソナーを装着しているような状態なのである。だから他を注視しながら逆方向の標的を打ち抜くなんて事が普通に出来てしまう。傍から見たら何がどうなってるのかさっぱりだろう。

「……とにかく、何か特別な事を心がけてるとかって事は無いのね」

「アッ、ソウデスネ」

 答えに窮する私を半眼で見つめながら曙がまとめる。呆れてるというか、諦めてる感じの声色で。何の理論もない事やってるから説明できないんだ済まぬ。

「じゃあ初雪はどう? あんたはどうやって当ててるの」

「ん……私? 私は……FPSで鍛えただけだし……」

 茶菓子をむしゃむしゃしながら初雪が返答する。その答えに曙は眉を寄せた。

「ここに来る前から訓練してたって事? えふぴーえす、って何?」

「……なんだっけ。ふぁーすと……?」

「ファーストパーソンシューティングね、一人称視点で銃撃ったりするゲームの事」

「ゲーム!?」

 そんなので訓練になる訳ないじゃない、と曙がため息をつく。その反応に初雪はむっとして言葉を返した。

「やってないのに分かる訳ないし……実際私上手いし……」

「う、まぁそうね、確かにやってみないと……」

「ゲームするの? レースしよレース」

「いやそもそもゲーム機無いからね」

 流石の初雪もテレビとDVD/ブルーレイ再生機器と円盤だけで荷物が一杯になり持って来れなかったらしく、この部屋にゲーム機は携帯機しか無い。じゃあできないね、と諦めムードになった私たちの背後の扉が突然開き、玄関から何かが飛び込んできた。

「話は聞かせてもらったぞ! 人類は滅亡する!」

『な、なんだってー!?』

 入室するなり大声を上げた漣に、私と初雪がテンプレで返す。漣は満足げに頷くと握手を求めてきた。シェイクハンドシェイクハンド。

「……いや何してるのよ漣」

「はっ。ぼのたんが入って行くのが見えたのでつい聞き耳を立てていました!」

 何故か敬礼で返答する漣に曙は呆れ顔である。ぼのたんは止めろと言う声を背に、とりあえずお茶を一杯追加しておく。

「あざーっす……はぁ、お茶ウマー……」

「何しに出て来たのよあんたは」

「おおそうだ、さっきの話の続きをしよう」

「FPSの事? ゲーム機本体もPCも無いからうちじゃ出来ないかなー」

 携帯機じゃ参考にもならないだろうしという私の言葉ににやりとすると、漣は叫んだ。

「ノートPCは、ありまぁす!」

「マジでか」

 反応したのは初雪である。彼女はデスクトップ派だったらしく、ノートPCは所有していなかったために訓練所には持って来られなかったのだ。なおこんなご時世であるのでPCなんかは新品どころか中古でも阿呆みたいな値段がしたりする。

「ちゃんとゲーミングですぜ旦那」

「有能かよ……」

 持ってくるからちょっと待っててと言い残して漣は部屋を出た。後に残るのはwktkした初雪と何が起きてるのかちょっと理解できてない曙である。今のうちに概要を説明しておこう。

 

 漣が持ってきたノートPCを起動し、ゲームを起動する。知らないタイトルだったがFPSなのだろう。そのまま曙に席を譲り、自身は後ろから解説と実況を始めた。

 曙はFPSこそ知らなかったもののゲームをした経験自体はあるらしく、キーボードとマウスの複合操作に戸惑っていはいたが何をするゲームなのかはすぐに察せたようだった。

「ゾンビホラーじゃないのこれ!」

「セヤナー」

「どっからそんな声出たの?」

 ちゃんと銃はいっぱい撃てるから、と先へ進めるよう促す漣を疑いながらも素直に進めていく曙。主人公たちの立てこもるショッピングモールにゾンビが雪崩れ込んできて本編開始である。チュートリアル的に拳銃を渡されそれで応戦する事になったのだが、マウスでのAIMに気を取られて足が止まっていたりと曙の操作はやはり拙い物であった。数分格闘するがゾンビに接近され、あえなくゲームオーバーと相成った。

 悔しかったのか声まで出してえいやせいやと奮闘すると、一時間も経つ頃には進めるようになり、気が付けばその場のゾンビを殲滅できるようになっていた。

「どうですかなぼのたん、砲撃上手くなりそう?」

「なる訳ないでしょ」

 明日試してみるけどと曙は続けたが、ちょっと待って欲しい。

「たぶん明日から雷撃の訓練なんだよね……」

「えっ」

「テストやったからね、仕方ないね」

「えっ」

「魚雷の速さは島風が一番だよ!」

「うん」

 どの道連装砲も実戦で使うのだから無駄になったりはしないだろうが、ゲームをする意味があったのか確認するのは無理だろう。

「先に言いなさいよ!!」

 近所への迷惑を考えて声をある程度控えていた曙も、さすがに堪え切れなかったらしい。声にびっくりして隅で寝ていた妖精さんがびくりと飛び起きた。

 

 そろそろ寝ないと明日に響くから、と曙と漣は各々の部屋へと帰って行った。ご馳走様でしたと言って行く辺り育ちの良さが伺える。初雪は最後までゲームしたがり妖怪PCおいてけと化していたが、絶対徹夜するから持って帰ってもらった。ぶーたれてないでさっさと歯磨いて寝なさい。

 部屋に戻るといつの間にか島風が私のベッドで寝ていたので叩き起こして部屋へ帰らせた。ちゃんと歯を磨くのよー。

 

 

 

 

 

 翌日からの訓練はやはり雷撃訓練だった。爆発物を扱うという事で今まで以上の緊張感が漂っている。艤装を起動している限り誤射してもダメージは入らないはずだが、もしも起動を切らした時にぶつけたら……と思うと皆怖いのだ。陸から撃っていたのが海に浮かびながらになるというのも、難易度の上昇ポイントだ。

 訓練生が海に立ち、魚雷を発射する。思ったところに飛ばすという点では砲撃より楽なのか、固定物への攻撃はかなりの命中率だったのだが、動く目標へと的を変えたとたん皆当たらなくなってしまった。同じ速度で動いているとはいえ、砲弾に比べたら遅い魚雷で偏差撃ちするのは難しいという事だろうか。例外なのが島風と夕立で、島風は単純に魚雷の速度がやたら早く、夕立は速度とか関係なしに当てまくっていた。

 それでも二日三日と練習するうちにマシにはなってくる。初春などはわざわざもう一回集合体の中の人と話してコツを習ってきたらしい。そんな事出来るのか、と思い試してみたが私は接続できなかった。着信拒否されてない?

 

 魚雷の次は爆雷だろうと思っていたら、艤装にソナーが取り付けられていた。投射機もセットで付いていたため一緒に訓練するのだろう。海に出て起動すると、海底の様子がよく分かる。っていうか、下に潜水艦娘居るんですけど。私以外にも何か居ると気付いた訓練生は複数いて、教官に報告するとそれはこの辺りの巡回を行っている自衛隊の戦闘部隊ではない艦娘であるらしかった。

 今日は海中で訓練を手伝ってくれるらしい自衛官さんが海面に上がってくる。ぷはぁと息を吐き海面に立ち上がった彼女は伊19と名乗った。しかし、彼女の服装はウェットスーツである。どうもスクール水着の上にさらに着込んでいるらしい、有りなのかそれ。スパッツ穿いてる私が言えた事ではないかもしれないけど。

 イクさんが再び潜り、訓練生がソナーで彼女を見つける。そして爆雷を放り込む。ただし爆発しないように調整されたものを。妖精さんはその辺りの調整が出来るらしく、爆破の訓練はイクさんが撤収してから行われた。

 ソナーの運用は落ち着いていて集中力のある訓練生たちが得意で、夕立や漣はむしろ苦戦する側だった。意外だったのが島風で、集中力が高いのかかなり遠くに居るイクさんも発見していた。初雪は集中し過ぎて眠りかけていた。

 ちなみにこのソナー、精度が落ちるものの妖精さんに任せきりでも運用できるらしい。不得意なら妖精さんに任せて他の事を頑張った方が良いのかもしれない。

 次の日には電探――レーダーの訓練も行われ、そちらはイクさんの同僚の飛鷹さんが協力してくれた。レーダーそのものの仕様よりも式神召喚な艦載機の方が気になって仕方なかったんだけど本当にどうなってるんですかねあれ。手光ってるし。ちょっと真似してみたら私の手も光ったし。駆逐艦が光らせても艦載できねーよ。

 

 

 

 訓練は進み、特殊な装備を扱う訓練が始まった。と言っても、本当に特殊な装備があるのなんてほんの一部――というか、叢雲と島風くらいで、他は探照灯や照明弾の練習である。

 叢雲の特殊装備というのは、何故か吹雪型で唯一形の違う彼女の艤装に最初から付いている、槍のように見えるあれである。ちゃんと武装として機能するらしく、起動したら鉄板を軽く貫通していた。私も欲しい、頼んだら配備してもらえないだろうか。

 そんな事を考えながら探照灯を極限まで細めてレーザー撃てないかとかそんな馬鹿みたいな事をやっていたら、島風が後ろから突撃してきた。ぼふんと私の背に飛びつき、島風が艤装の上に乗る。それに続いて連続した三つの衝撃が私に襲い掛かってきた。頭上でオウッという鳴き声とミューキューキャーと三つの鳴き声がする。

「連装砲ちゃんおもーい!」

「人に乗っかっといて言うセリフかねそれは」

 四角い頭部に角のような砲身を持ち、ドラム缶のような胴体から短い手足が生えた三体のゆるキャラ。一匹は何故かぜかましと書かれた浮き輪をしているが、他はしていないから必要ないんじゃないのかと突っ込みたくなる。12.7cm連装砲D型、連装砲ちゃんと呼ばれるそれらが島風の特殊装備だった。

 私から飛び降りた連装砲ちゃん達は島風の後をカルガモの子供のようにくっついていく。見た目も相まって非常にかわいらしい光景である。写真かなにかであれば。この連装砲ちゃん、見た目に反して島風の速度に普通に付いていける航行速度をもっている。しかもその状態で頭から砲弾をぶっ放すのである。命中率はそこそこだが三体も一人に付けられるなら十分すぎる。なんだこの自立型移動砲台、ガチ兵器かよ。こいつ量産して皆に配備した方がいいんじゃないだろうか。

 実際可愛いし強いので欲しがる訓練生は多かったのだが、自立型の装備は扱うのに特殊な適性が必要らしく、訓練生の中では島風だけが使えるらしかった。第一期訓練生に天津風は居ないので連装砲くんは配備されていないのだ。

 ちなみに連装砲ちゃん達は訓練の後普通に島風の部屋に居付いた。撃ったりしないのなら燃料とか要らないらしい。どうやって動いてるんだお前ら。

 

 

 

 一通り装備の訓練が終わり複合的な扱い方や動きながら撃つ訓練も終え、訓練所で過ごす期間も半分を切った午後、響教官から告知があった。

 明日から実戦に向けた訓練の一環として艦娘対艦娘の演習を行う。

 いつかはやると分かっていた事だが、実際に行われると言われた訓練生たちはかなり動揺していた。提督の力を得ていない艤装で艦娘を攻撃しても効果はないと聞いてはいても、仲間を撃つのはそりゃあ抵抗がある。顔を青ざめさせ眩暈を起こす訓練生まで出て来る始末である。撃ちあえるのかこれ。

 必要なら私で試してみるかい、と響教官はそう言ったが流石に誰もやろうとしない。それなら私がやってやろうか、と思った時、曙が前に進み出た。

 教官に確認を取り、構え、撃つ。駆逐艦の砲撃とはいえ掠っただけでも人間程度粉砕する威力を持つそれは、見事に頭部を捉え爆発した。一瞬の静寂の後、教官は何事もなかったかのように動き出し、砕け散った砲弾の欠片を服からはたき落とした。

 ざわざわと揺れる訓練生たちに、曙が叫ぶ。

「あたしはあのクソ深海棲艦共をぶっ潰したい! あたしはあいつらには殺されたくない! 生き残って戦うためになんだってやるわ! そのためにここに来た!! あんたたちはどうなの、大丈夫だって分かってる相手を撃てないって言ってあたしの邪魔をするの!? 撃ちなさいよ!! 全部避けてやるわよ、あんたたちの弾なんて!」

 大言壮語である。曙の練習の様子を知っている者なら分かる話なのだが、彼女は訓練生の中でもおそらく最低クラスの適性値だ。初雪や漣の砲撃を、島風や夕立の雷撃を避けきるのは不可能だろう。

「ぼのたん私の弾全部避けれるのぉ~?」

「やってやるわよ!」

「砲撃も雷撃も本気で撃って大丈夫っぽい?」

「やってみなさいよ!」

「あんまり遅いと至近距離から撃つからね!」

「やらせやしないわよ!」

 曙の練習の様子を知っている者なら分かる話なのだが、彼女は訓練生の中では普通くらいの実力の持ち主だ。知っている者は知っている、彼女はどう見たって適性値が低めのグループに入るのに、この訓練所で一番努力して、真っ当に力を付けてきているのだ。

「全力でやって、心折れたりしない?」

「やれるもんならやってみなさいよ!!」

 いい返事である。そこまで言われちゃ仕方ない、威力に関しては禁止されてるので抑えるが、それ以外は全力でお相手しよう。

 

 解散となり、各々艤装の保管へと向かう。明日の演習に想いを馳せながら歩くその道中、私は暁教官長に呼び止められた。

「吹雪、悪いんだけど貴女は明日別の訓練をするから、朝食が済んだら食堂に残っててちょうだい」

 出禁食らった……だと……?

 

 

 




この時期は暑さと眠さが同時に襲い掛かってきますね。
座ってるだけで朝になるの止めていただきたい。
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