転生チート吹雪さん   作:煮琶瓜

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世界の外に出ようとしてみたwwwww

 魂の中であるらしい水中を駆ける私達。いや、なんかぜかまざらしの奴ほっといたらどんどん速度が上がって行って、走らないと追いつけないくらいになってしまったのだ。

 大人の体格をしたゴトランドさんやベイさん、足の速い私や猫吊るしはいいのだけれど、問題なのはほっぽちゃんと丹陽さんである。二人とも運動が不得意という事は無さそうだけど、そもそも歩幅が短いために全力で走っても追いつけなかったのだ。なので丹陽さんは私が背負い、ほっぽちゃんは自分のチート能力で短距離ワープを繰り返してなんとか付いて行く事になった。ここでもちゃんとチート能力は使えるらしい。どういう原理なのかは全く分からん。

 たまにほっぽちゃんがぜかまざらしを追い抜いてしまい、振り返ってこちらを待つ時があった。すると白いそいつはおうっと鳴いて、更に泳ぎの速度を増す。何かしらプライドのようなものが刺激されるらしい。うーん頭先頭民族。

 

 そのまま普通の人の全力疾走に近いような速さで進んでいると、ある時、先頭を泳いでいたぜかまざらしがおうっと一声鳴いて動きを止め、私達の方へと振り返った。横にすこし避けると短い手で奥の方を指で示……いや指ねえなコイツ。でもなんとなく分かる。案内はここまでという事だろう。

 ぜかまざらしはもう一度おうっと鳴きながら手を振って、それからすごい勢いで去って行った。それこそ世界新で金メダルを狙うような高速で。

 それを見送り目的地の方へと視線を戻す。周囲は未だ地平の先まで白い床で埋め尽くされているのだが、その中に、ぽつんと一つだけ灰色の扉が鎮座ましましている。つまり、アレが目的地だろう。実を言えば少し前から気配を感じていたのだ。『なんか』大きな、『つよい』気配を。

 少し緊張した様子でゴトランドさんが扉に向かって歩いて行く。私達も追従し、何の模様もない石造りのように見える扉、それの前に六人が立った。次の瞬間には、もう私達の真後ろにそれはいた。

 

 ――よぉ。

 

 燐光を放つ人型。輪郭だけで、それに顔などは付いていない。片膝を立て地面に座り込んでいる。私達が振り返るとそいつはその状態でそこに居て、一言喋ったきり黙りこくってしまった。

 沈黙。そいつは私達の反応を待っているのか、じっとこちらの様子を伺っている。目は無いが視線を感じて仕方がない。

 いや、うーん。まあ、なんだな。正体不明の扉、シルエットだけの人型、それに他に何もないだだっ広い空間。シチュエーション的には何がしたいのかだいたい分かるんだが…………え、これ私が言った方がいい奴?

「だ、誰……?」

 あ、ベイさんが言った。

 

 ――おお! よくぞ訊いてくれました!

 

 そいつは両手を挙げて喜んだ。訊かれなかったらずっと黙ってるつもりだったんだろうか。ちょっと試してみたかった感はある。

 

 

 

 ――オレはおまえ達が〝チート能力〟と呼ぶ存在。

 

 ――あるいは〝転生特典〟

 

 ――あるいは〝祝福〟

 

 ――あるいは〝真理〟

 

 ――あるいは〝全〟

 

 ――あるいは〝一〟

 

 ――そして

 

 

 

 お前途中から改変面倒になっただろ。半分元ネタから例えが変わってないじゃねーか。

 なんて感想を知ってか知らずかそいつは一度言葉を切り、おもむろに手を伸ばすと私の事を指差した。

 

 

 ――オレは〝おまえ〟だ。

 

 

 でしょうね。

 むしろ他のモノだったらヤバかっただろう。異物混入になっちゃうもん。今絶賛五名ほど混入してるけどそれはこっちから許可出してるから問題ないし。

 その少し光った人型、チート能力『なんか』『つよい』さんはこちらに向かって指先を向けたまま動きを止めた。元ネタ通りにやるならこの後無理矢理扉の中に引きずり込まれるはずだが、どうもそのつもりではないらしい。なんでだか特に表情のないその顔からやり切った達成感を覚えているような雰囲気を感じる。やりたかっただけだコイツ……

「えっと、はい。顔を合わせては初めまして……? 今日はよろしくお願いします」

 最初に返答したベイさんはそのまま会話を続ける事を選択した。っていうか待って。今のもしかして翻訳チート噛ますと普通に挨拶になるのか?

「なんて言ってました?」

「あっ、伊吹 雪の魂に宿ったチート能力です、そちらに居る本体ともどもどうぞよろしくお願いします。だそうです」

 思ったより礼儀正しかった……いや現在進行形で片膝立てて地面に座り込んでる時点で礼儀も糞も無いんだが、想像してたよりは百万倍ちゃんと挨拶してた。頼むから普通に喋ってくれ。

 挨拶されてただけだと理解して、残りの皆もよろしくと挨拶して行った。一応私もしておいたけど、必要だったかは正直分からん。チート能力さんが私を本体って認識している以上、別人ですらなさそうだし。

「早速で悪いのだけど、『なんか』『つよい』ちゃん。例のあの子の所に連れて行って貰えるかしら……行き方分かるんだよね?」

 

 ――あーそれめっちゃわーかーるー。

 

「正しいやり方なのかは分かりませんが、可能です。外でのやりとりは聞いていて、来ると言っていたので先に準備だけはしておきました。でも行きだけで、帰りの保証はできません。短時間しか繋がりがもたないので、同じ道では戻れないと思われます。本当に開いて大丈夫ですか? だそうです」

「そうはならんやろ」

「そんな詰め込めるほど長くなかったよね!?」

「圧縮言語か何か?」

 挨拶もそこそこに用事を切り出したゴトランドさんへのコンパクトに纏めすぎな返答を、ベイさんは顔色一つ変えずに解凍せしめた。これベイさん居なかったら会話が成立してなかった気がする。私のチート能力さんてばお茶目。いや分かってくれる人居なかったらお茶目で済んでない可能性があるんだけども。

 ゴトランドさんもそうなんだ……ってちょっと引き攣った顔をしていたけれど、ちゃんと言われた事を理解すると、真面目な表情に戻ってチート能力さんの方へと一歩を踏み出す。その目には覚悟と焦りの両方が見て取れた。

「道が無くなるのは覚悟の上よ。大丈夫、一応戻る方法は考えてあるし……私の能力なら本体が他所に居ても問題なく行使できるから」

 そういや分身してるっぽいですもんねゴトランドさん。もし自由な場所に出せるなら本体が隔離されてても関係ないのか。いやでも、世界の外ってイメージのある魔法使いらしいあの子が居た空間から現世に影響を及ぼせるんだろうか。うーん、私じゃよく分からん。ゴトランドさん的には何か掴んでる事があるのかな? 間違いなく私よりは詳しいんだと思うけれど。

 

 ――せっかくだから、俺はこの赤の扉を選ぶぜ。

 

「赤くないけど……」

「一つしかないですしね!」

「原作再現してるな」

 そんなとこ再現されても。

 私達の後ろにある扉は灰色、というか大きな石をそのまま扉に加工したような色合いで、他に床と周囲を満たす水くらいしかない空間に寂しげにぽつんと浮かび上がっている。ここが魂の底であるなら、この扉が自称魔法使いの居る何処かへの道になっているのだろうと思われる。

 チート能力さんは言い終わるやふわりと浮き上がり、そのまま形を変えて球状になった。どうやらパロディをするためだけにあの形に変体していたらしい。私の一部を自称する以上私がやってる事になるんだよなこれ。いやまあ、やれる機会があった場合にやるかやらないかと聞かれたらやらないと断言はできないけどさぁ。

「分かりました、道を開きます。ちょっと通りますよ。だそうです」

 何をどう翻訳したらそうなるのかちょっと分かんない。ベイさんの能力、やっぱ要所要所で役立つ奴だよこれ。居なかったら訳わかんなかったよ……相手は私のチート能力なのに。

 まんまるな発光体になったチート能力さんはそのまま上下に揺れながら扉に向かって飛んでいく。ベイさんの翻訳のおかげで何をする気か分かった為、円滑に道を譲る私達。そのままゴトランドさんとほっぽちゃん、丹陽さんを残して私と猫吊るしとベイさんは扉の前から少し離れた。

 ここから外に出るのは用事のあるゴトランドさんと、帰還の補助になる――かもしれない二人だけという話だった。私や猫吊るしだって付いて行きたい気持ちはあるのだけれど、戻れるか分からない、戻れたとして時間がどれくらいかかるかもよく分からないでは付き合うに付き合えないのだ。私がもし朝までに戻らなかったら大淀さんは困るだろうし、鎮守府……下手したら大本営や自衛隊まで巻き込んで艦娘運営組織全体が大騒ぎになるかもしれないのだから、そこは仕方がないのである。

 ちなみにベイさんはあの子は日本語が通じるんだから自分が付いて行く意味が全く無い。という理由で同行しないとの事だった。そもそもベイさんに付与できる以上自分も同じ事が可能だろうしね。

 

 ただこれは、彼女達が艦の上で言っていた事でしかない。

 

 だから、今目の前でほっぽちゃんと丹陽さんを両脇に一人ずつ抱えてこちらに運んで来たゴトランドさんが、最初からまったくそのつもりではなかった、というのは特に不思議な話ではないのであった。

「みんなここまで付いてきてくれて本当にありがとう、でも、ごめんね。ここからは私一人で行くよ」

 正直に言ってしまえば、別段意外な話でもない。初めからゴトランドさんはそう言っていたし、私も含めてみんな勝手にここまで付いて来たようなものなのだから。今までそれを許容していたのはたぶん、そもそもここまで簡単に来れるかが分からなかったからなのだろう。

「ほっぽちゃんも丹陽も、もし戻れなかったら計画に支障が出ちゃうでしょう? それに、ベイが一人だと帰れないよ」

 そういやそうだわ。ほっぽちゃん行っちゃったらベイさん家に帰れないじゃん。私が送ってくって手もなくはないけど、見つかるリスクは結構あるしあんまり取りたい手段じゃない。潜伏させとく訳にも行かないし、すぐ目覚めなかったらゴトランドさんの体も保護しなきゃだからほっぽちゃん戻さない訳には行かないわな。

「それにあの子は……私が聞いた通りなら、きっと大勢で頼み込まれるのは好きじゃない。話をするの自体一人での方が良いと思うんだ」

 魔法使いを自称してたあの子に関してゴトランドさんはある程度の情報を持っていたっぽい。っていうか、以前に誰かしら似たような事をした……のかな? それがどんな内容だったのかは分からないけれど、言い方的にあんまり上手く行かなかったんじゃないだろうか。機嫌を損ねてしまったのかもしれない。造物主か何かの。ヤバくね? いやなんも起きてないから最悪の事態にはなってないんだろうし、ゴトランドさんが敢行しようとしてるって事はその人自身はたぶん無事なのだろうけど。

「でも、大丈夫? 一人じゃいざって時……」

「大丈夫なのが私の能力、でしょ? それにごめん。ちょっと急ぎたくて……話し合ってられないんだ」

 ゴトランドさんは二人を降ろすと、向けられた心配そうな視線を背にして扉の方へと向かって行く。そういえばさっきから多少ではあるが先を急いでいる気配を醸し出していた。時間的な問題か、それとも別の何かか。思えば一層目で合流した時からその傾向はあった気がする。今外は何時くらいなんだろう、もしやもう夜が明けてたりとかする? いやでも体感何時間も経ってないしなぁ。こっちの方が時間はゆっくりって話だったし、まだ真っ暗なはずだけど。

「『なんか』『つよい』ちゃんお願――――ッ!?」

 出発しようと声掛けしたゴトランドさんの言葉が、驚愕で詰まる。

 さもありなん。唐突に、なんの兆候も無く、気が付けば自分の顔面に拳が突き付けられていて、あまつさえ、その腕を私が横から掴んで止めていたのだから。

 正直急すぎて私もびっくりした。なんか知らんが超速いのが真横からぶっ飛んで来たから咄嗟に飛び出て止めてしまったんだが。え、何この状況。誰この人。

 

 ゴトランドさんを狙って突っ込んできたのは女の人だった。金色の髪の所々に白いメッシュの入ったミディアムショート、根元が黒い事からそれが染められたものだと分かる。フード付きのパーカーを羽織り、やたら丈の短いショートパンツからすらりと長い脚を露出させている。私を通り越してゴトランドさんを睨むその目は鋭く、口元は怒りに歪んでいた。

 明らかに私が前世も今世も付き合いのないタイプの女性である。いや、マジで誰。掴まれた腕をふり解こうと力を入れているが、出していた速度に対してその抵抗はかなり弱い。私の指は微動だにしなかった。

「ゴトランドッ!! てめェ、自分が何やってンのか分かってンのか!?」

 私の魂に居た存在、ではないだろう。ゴトランドさんの知り合い……っていうか、外見には全く覚えがなかったけれど、声にはちょっと覚えがあった。あの時と違ってくぐもる様な違和感は全く無いけれど。

「レ級……!」

 当然私より交流があるであろうゴトランドさんもその正体を看破した。名を呼ばれた女性は私に取られた腕をふり解くのは無理と判断したのか、そこを支点に今度は足を繰り出した。

 速い。普通であれば目で追う事すら不可能であろう神速の蹴り。それは身体能力を強化する能力を持ってないっぽいゴトランドさんには決して避けられないはずのものだった。当然、命中したら危ないので私はその脚を自分の脚で止め、続く連撃も同じようにして打ち落とす。

「糞ッ……! ゴトランド! 誰も望んでねェ事のために死人増やす気か!!」

「ごめんレ級、私はもう人の命に優先順位を付けた。ううん、最初からそのつもりで助けていたんだ。だから、一番大事な人たちの事は譲れない……!」

「情が深ェなァ! だがその本人が、望んでねーッつッてンだよッ!!」

「望んでるのは私よ! 少しでも楽にさせたい、傍に居てそう思っちゃったんだから、止まれないよ!」

 なんかくっそシリアスっぽい話してるけど挟まれてる私が内容理解できてない件について。

 ベイさん達も内容は分かっていそうだけれど急にバトル展開始めたから付いていけてない。っていうか、ほっぽちゃんと猫吊るし以外何が始まったのかちゃんと見えてないっぽい。

 レ級はガンガン蹴りと空いてる方の手での打撃を放ってくる。あ、指輪してる。ただ、なんだな、その攻撃ははっきり言って酷く拙い物だった。腰は入っているけれど、それ以外は完全に速度任せの連打であり、まともな技になっていない。たぶん格闘経験が全く無いのだ。きっと最初に川内さんが私を見た時も同じように思ったんだろうなあ。

 連打されるただの暴力を全弾打ち落としていると、なんとなくだけど相手の事が分かって来る。これが拳を交わらせれば分かるとかデュエルで分かり合うとかそういう類なのだろうか。ともかく、レ級の拳に殺意はない。怒ってはいるだろうけど、それだけだし、むしろ……

「レ級」

 私は警告のために名前を呼び、こちらに怒れる視線を向けたのを確認して、掴んでいた腕から指を離した。一瞬訝しがるレ級。私はそこに、全力で腕を振るった。

 高速で振りぬかれる私の腕。ただ殴るのではない、教えて貰った武術の一撃。人どころか深海棲艦の鋼鉄のごとき頸部を軽く切断せしめる手刀。それは水流を巻き起こし、私達の髪を靡かせた。

「ッ……ぶねェ……」

 果たして、レ級は当てるつもりで繰り出したそれを完璧な形で避け切っていた。掠りもしない、どころか、おそらく追撃したとしても全て見切られていただろう。うん。やっぱりそうだ。

「吹雪、てめェも」

「レ級、本気でやってないよね」

 あ、なんか言おうとしてたのに被った。レ級はあァ!? とこっちを睨むような目つきになったが、話し掛けた私の出方を窺うように一旦言葉を止めた。だが、私の方も被っちゃった気まずさで言葉を詰まらせてしまったため、そのままちょっと見つめ合いになった。

 私が言葉を選んでいると、それ程止まってはいなかったと思うのだけど、しびれを切らしたのかレ級は再び口を開いた。その声には私に対する苛立ちと警戒心が見え隠れしている。だが少なくとも言葉を交わす気はあるようで、基本誠実なんだろうなと思わされた。

「こっちは本気で止めに来てンだよッ……! でなきゃこんなところに入るか!!」

 

 

 

 ――ええー? ほんとにござるかぁ?

 

 

 

 なんで煽ったの???

 扉の前でこちらの様子を伺いながらふわふわ浮いてたチート能力さんが、唐突に声を上げていた。集まる視線。なんだアレって顔になるレ級。ゴトランドさんも困惑気味で、ベイさん達もびっくりしている。唯一猫吊るしだけはちょっと笑いそうになっていた。

 そのままチート能力さんは黙りこくった。煽りだけして、全く喋らなくなった。ベイさんが通訳しない辺り言ってる内容も本当にそのまんまだったのだろう。いや私も同じ気持ちではあるんだけどさぁ……え、これ私が解説しないといけない感じ? そうだよね。私のチート能力さんだもんね。私が言ったも同然だもんね。

「あー……えっと、レ級。無意識なのか意識的なのかは分からないけど、レ級は本気で能力使ってないよ」

 話しだした私に向き直り、レ級は不愉快そうに眉間の皺を深める。ただ、感情的に言い返したりはせず次の私の言葉を待つ姿勢を見せてくれた。チート能力さんの事は見なかった事にしてくれたっぽい。

「レ級が本気なら、私なんてスルーしてゴトランドさんに攻撃できるはず」

 私から見れば、攻撃してくる時と避ける時で動きが違い過ぎるのだ。一動作の手刀を割と簡単に避けられて、飛び出して腕を伸ばして捉えるなんて二動作以上かかる掴みを避けられないなんて事、普通に考えてないだろう。

 だから私視点、レ級はゴトランドさんを暴力的な方法で止めるのは本意ではないようにしか見えない。今もそうだけど、話し合いで済むなら済ませたいのだろうし、もっと言うなら本当は止めたくもないんじゃないだろうか。

「私を抜こうと思えば、本当はいくらでも方法があるんじゃない?」

 例えば一回下がってフェイントを交えながら突撃されるだけで、おそらく私は対処できない。いや私狙いであれば話は別だけど、ゴトランドさんを狙われたら無理だろうと思われる。回避の時の速度が全力なら、たぶん私はレ級が本気でも攻撃を紙一重で避けられるけど、他の人を庇ったりするのは不可能だ。殺し合いにでもなったら千日手だろう。きっとお互い当たらない。

「っていうか、そもそも止めたきゃ現実で起こせばいいだけだからな。わざわざこっち入ってきた時点で……」

 猫吊るしからも援護射撃が飛んだ。そういやそうだ、叩き起こそうとかされたら抵抗できないもんね。

「それはゲザの野郎が魂まで行った連中無理に引き戻すとどうなるか分んねーッつッたからだ!」

 レ級は猫吊るしをぎろりと睨むと大声でそれを否定した。

「先にゲザの方起こしたの……?」

 ほっぽちゃんが首を傾げる。

「起こしていいのか分からなかったのかも……」

 ベイさんがすかさずフォローを入れた。

「きっとゲザさんなら起こして大丈夫って思ったんですね! そういう能力ですから!」

 それに丹陽さんが同意する。

「意外と冷静?」

「案外怒ってないかも……」

「叱られずに済むかもしれませんね!」

 その会話を聞かれた時点で駄目だと思う。レ級の方はと言えば、うわこいつら殴りてぇって視線を一瞬送り、すぐにゴトランドさんとその前に居る私に戻した。

「オレが本気じゃねェだ? そうだろうな。ゴトランドの目的は叶って誰も損しねェ。実行のリスクも正直大した事ねェんだろうよ。じゃなきゃ口でどう言おうがてめェがやるはずねーからな」

 滅茶苦茶鋭い視線で睨んでるが、レ級とゴトランドさんの間には結構強い信頼感があるっぽい。お互いその善性を疑ってもいないのだ。だから、どっちかが無理矢理我を通したとしても、後を引いたりはしないんだろうなとなんとなく思えた。

「それでもオレは止めるぞ、あいつのやりたいようにさせると決めたンでな!」

「自分が一番辛い癖にっ……!」

「ざけんな、本人が一番辛いに決まッてンだろ!!」

 

 

 ――はやくしろっ!!!! 間にあわなくなってもしらんぞーーーーっ!!!!

 

 

 また急にチート能力さんが叫び出した。もしかして君、シリアスさん苦手だったりとかする?

「あっ……繋がりが途切れかけてるから急がないと扉が消えちゃう、って言ってる……!」

「っ、開いて! すぐに!!」

 ベイさんの通訳で私達はようやく事態を理解した。短時間しか繋がりがもたないって、繋いでから少ししかもたないんじゃなくて、繋げるの自体もうすぐ不可能になるって事だったのか。翻訳されても分かり辛いのは止めろォ!

 言うが早いかゴトランドさんは駆け出した。扉が遠くにある訳でもなく、本来すぐに辿り着く。だが、その扉とゴトランドさんの間に、ベイさんの言葉に一番最初に反応していたレ級が立ちはだかった。

「てめェを止めたきゃここを通さなきゃいいんだな?」

 そう言ってレ級は腕を構えた。その後ろで、ゆっくりと扉が開いて行く。チート能力さんは無言だったが、問題なくちゃんとゴトランドさんのお願いを聞いてくれたようだ。レ級という門番が生えてしまったけれど、私がどうにか攪乱して、その間に横を抜けてもらえば問題ないだろう。そのレ級すらゴトランドさんの目的自体に反対する様子はないし、きっと願いが叶ったとしても問題はないはずだ。叶わなかったとしてもゴトランドさんがちゃんと戻って来れれば現状維持。だから問題はない。向こうからでも能力使えるかもしれないし戻れる算段も付いてるらしいから、どこにも問題はなかった。

 

 問題があったとしたら、ここが息こそできるものの水のようなもので満たされた空間で――――扉の先は特に何もない空間だった、って事だろう。

 

 じわりじわりと開いて行く扉。その隙間から、黒ですらない、色の無い空間が覗いた。瞬間、私の体が少しだけ重くなる。何が、と疑問に思う間もなく、私達の髪が、服が、そして周りを満たす水が、その門の先へと流れだした。

 レ級が危険を察知してその場から離脱しようと試みる。だが、どういう訳か、彼女の体は普通に地面を蹴った程度にしか前に進まなかった。驚愕と疑問の入り混じった声を上げるレ級。次の瞬間には、角度を増して行く扉の引力と、それに吸い込まれる辺りの水に体を捉えられていた。

「ほっぽちゃん! 皆を連れて逃げて!!」

 レ級の体が扉へと引き込まれて行く異常事態。それを見たゴトランドさんが咄嗟に叫んだ。その間にも扉の吸引力はどんどん強くなって行く。抵抗を続けていたレ級の影は最早完全に見えなくなり、私とゴトランドさんの体にも強い力が押し寄せて来る。

「駄目だ……使えない!? なんで急に! さっきまでいつも通りだったのに!!」

 ほっぽちゃんが絶望的な声色で叫ぶ。ワープができないらしい。道中では可能でぜかまざらしと戯れていたくらいだったのに、急に使えなくなったようだ。

 逃げるぞ、と猫吊るしが号令を出し、後ろの四人が走り出す。私もそれを追うように後ろに下がり、ゴトランドさんは逆にその力に乗って扉へと飛び込んで行った。

 レ級に続きゴトランドさんが何も無い空間へと消える。だがそれで水の吸引――いや流出が止まるかと言えばそうではない。むしろそれはどんどん強さを増して行き、ついには逃げる猫吊るし達に追いついた。

 チート能力さんはなんか困ったように球状の体を扉にぶつけている。おいもしかして閉じられなくなったのか。え、なんか私の魂他所に流れ出てるけど大丈夫? 分泌物とかならいいけど本体じゃないよね?

 体が軽いせいだろうか、最初に水流に飲まれたのはほっぽちゃんだった。足が地面から離れ、付くことなくそのままふわりと浮き上がる。ベイさんが咄嗟に足を止めその手を掴み引き戻すが、そうなれば次の犠牲者になるのは彼女だった。

 比較的大きいベイさんが浮くくらいであるので、当然ながら丹陽さんも抵抗する事は不可能だ。唯一猫吊るしだけは上手い事流れに逆らっていたが、どういう訳か普段ほどの精彩はなく、あっと短い声を上げて激しさを増してゆくうねりの中へと飲み込まれる。

 そしてその流れる先に居るのが私である。まずほっぽちゃんを庇うように抱きしめているベイさんを掴み腕の中に固定する。次にこちらに手を伸ばしてきた丹陽さんと手を繋ぎ、小脇に抱えて安定させる。最後に飛ばされて来た猫吊るしを肩にドッキングして五体合体完成である。流されると思ったか? 私だよ!

 すごい力で扉に向かって引かれるが、私の体は揺るがない。いや実の所、私も地に足は付いていないのだけどね。つるつるしてて踏ん張りが全く利かないもんだから普通に浮き上がってしまっている。でもそれと流されるかは別問題だ。足先を小刻みにはためかせる事で推進力を確保して流れに逆らうくらいは、チート能力さんのおかげで可能なのだから。

 激流はどんどん強さを増してゆく。その中を私はゆっくり遡上する。ほっぽちゃんから何か凄い物を見ているというような感心と驚愕の入り混じった視線を感じたが、身体能力ごり押しだから褒められるべきはチート能力さんだと思う。でもまあその辺りは後でいいや。ともかく今は扉から離れるべき一時だろう。

 少しずつではあるが私は水面に向けて昇って行く。下ってきた長さより水平に走ってた距離の方が長かったからそっちの方が外に近いんじゃないだろうかと思ったのだ。その判断は間違っていなかったようで、浮力が多少はあるっぽいのも手伝い案外短い時間で水面が見えてきた。

 

 

 

 

 

『ああそういえば、ただ能力だけ封じても無意味でしたわね』

 

 

 

 

 

 げ、と思った。私は転生の特典というかなんというかなアレで前世の事は明確に思い出す事ができる。そしてその前世の範疇には、転生の直前の事も含まれている。だから、その声にもはっきりと聞き覚えがあったのだ。同じように猫吊るしもうわぁといううめき声を出し、丹陽さんは逆に楽しそうに鳴いた。

 

『よろしければこちらへいらっしゃいな。朝までには現世に帰すとお約束いたしますわよ』

 

 いつか聞いた少女の声。可愛らしいのだが、どことなく胡散臭い。っていうか今更だけどなんでお嬢様言葉なんだろう。

 一応みんなと相談するが、わざわざ嘘は吐かないだろうという事で意見は一致を見た。実際ゴトランドさんとレ級の事も気になるし、私達はその招待を受ける事に決めたのだ。そもそも拒否したら無理やり連れ込まれそうな気しかしないしね。素直に誘いに乗った方が得策だろう。

 足の動きを止めて流れに体を預ければ、あっという間に私達は扉の向こうへと引き込まれる。その寸前、チート能力さんが申し訳なさそうな雰囲気で浮いているのが見えた。しょんぼりしてる。いやチート能力さんが悪い訳じゃないから気に病まなくてもいいと思うよ。気にはした方が良いかもしれないけれども。

 

 

 

 

 

 扉の反対側から私達は排出された。水流に乗って来たのだから下はびしょ濡れだったりするかと思えばそんな事はなく、そこは記憶の通り、地面も天井も何もない空間だった。

 出現位置は空中だったらしく浮遊感が私を襲うが落下速度はかなり緩い。一応他の四人を確認するが全員無事にこちらに出て来られたようだ。見た目にはさっきまでと変わりない。猫吊るしは春雨さんっぽいし、私の髪は長かった。

 存在しない地面に着陸すれば、後ろで扉が消滅する。後戻りさせる気はないという事か、それとも単に時間切れか。よく分からないがとりあえず四人を降ろし、少し先にあるそれを私は見つめた。

 それは真っ白なテーブルだった。円形の大きなそれには真っ白なクロスが掛けられ、真っ白なティーカップとポットが置かれている。下に覗く脚も白く、置かれたどこぞのお貴族の邸宅にでもありそうな派手ではないが凝った装飾がなされた椅子もまた白い。周囲に他に何も無いためそれらはまるで浮き上がるようにして空間のど真ん中に鎮座していた。

 置かれた座席は45度に一つずつの全部で八つ。その内三つは既に埋まっている。一番手前、私達に背を向けるようにして座っているのは後ろ姿のゴトランドさんだ。そこから一つ飛ばした右隣ではレ級であるという女性が明らかに不機嫌な表情をしている。そして私達の正面、ゴトランドさんの向かいでは、一度だけしか会った事のない、でも全く忘れた事のない少女が半眼に近いような顔で笑っていた。

「どうぞ、お掛けになって。今お茶を淹れますわ」

 ローブのようなゆったりとした服を着た、魔法使いを自称する女の子。のように見える何か。今の私には以前会った時よりはその実像がほんのちょっとだけよく分かる。人間じゃない。いや分かり切ってたような気がするけどさ、力ですらない法則に属さないよく分からないものの大きさが私達とは隔絶している。うーん造物主。でも神様感無いし畏敬の念とかは湧いて来ない。わざとそうしてるのか単にそういう存在でしかないのかはよく分からないが、おそらくそういう扱いで良いんだと思う。敬われるのとか求めてないだろうし。

 見た目は一言で言えば、ジト目の超長髪なエルフの少女である。年の頃は一桁か十代に入ったばかりくらいに見えるが、まあそんな事はないだろう。半分ほど瞼に覆われた瞳でこちらを見つめ、長すぎて椅子の後ろ脚に絡まっている亜麻色の髪を軽く揺らしている。顔の横から飛び出した耳は所謂和製ファンタジーによくある異様な長さがあるが、集音機として意味があるのかはかなり疑問だった。

 少女は私達を手招くと指をパチンと鳴らした。すると虚空からカップに注がれる琥珀色の液体。ポットさんはどうやら居るだけで役割は無いらしい。ちょっと哀れ。

 丹陽さんが一番にお邪魔しまーすと駆けて行き、レ級と少女の間の席を確保する。後に続いたほっぽちゃんがおっかなびっくりゴトランドさんとレ級の間に挟まり、ベイさんが怯えながら空いている方のゴトランドさんの隣に入る。猫吊るしは流れでそのベイさんの隣に着き、自然、最後に空いた少女の隣には私が座る事になった。

 全員が席に着けば、少女はニッコリ笑ってテーブルを指で軽く叩いた。ぽんっとファンシーな音を立てて卓上に現れる銀盆。そのドーム状の蓋が開かれれば、中身は色とりどりのケーキである。ちなみに蓋は勝手に開いたし、上空に飛んで行って戻って来なかった。落ちて来ないだろうな……

「さ、どうぞお召し上がりくださいな」

「いただきまーす!」

 笑顔で勧めて来る少女に対して、元気に返事したのは丹陽さんである。さっと目の前のカップを皿ごと持ち上げると、音を立てずに口に流し込む。四半分程を含み舌で転がすと目を輝かせ、笑顔でごくりと飲み下した。

「美味しい……!」

「それは良かったですわ。皆さまもどうぞ、味わってくださいまし。せっかく丹陽さんが毒見までしてくださったのですから」

 ね。と少女は全員に笑顔を向けた。やべ、今の毒見か。全然気づかなかった。普通にお腹空いてたのかと思った。言われてみれば中身転生者だし普通に大人だもんね。今の見た目はともかく本来私より年上っぽいし。

「いただきます」

 私も含め、レ級以外の全員が目の前の紅茶らしきものに手を付ける。香りはとても良い、なんというか、良い香りという情報が直接脳に送られてる感じだが、たぶん健康に害は無いだろう。美味しいお茶って概念であってお茶ではないのかもしれないが飲めるみたいだし。なお口にしたら本当においしかった。違和感が凄い。

 それぞれにおいしいこうちゃをゆっくり味わうと、全員がカップから唇を離したタイミングで、一人一切口を付けていなかったレ級が少女を睨みながら口を開いた。

「なんで吹雪達まで呼びやがッた」

「あら、わざわざ会いに来てくれたのだから顔くらい見せるのは礼儀ではなくて?」

「え……ボク達別に来るつもりじゃ……」

「こまけぇこたぁいいんですわよ」

 突然ゲーミングみたいになるの止めてくれない? お茶噴きかけたじゃん。転生先が艦これめいてる時点で分かり切ってたけど、この子オタクじゃん。私達の同類じゃん。敬う気持ちが最初から欠片も無いのにさらに失せて行くのを感じる。

「ま、ゴトランド……貴方達に合わせてこう呼びますけれど、その子以外を呼んだのはただのその場のノリですわ。意味なんて特にありませんの。深読みするだけ無駄ですわよ」

 残念でしたーと言外でレ級を嘲笑い、少女は自分の紅茶に口を付けた。音もなくそれを飲み干すと、真面目な顔でまっすぐに自分を見つめていたゴトランドさんに目を向ける。そして話しかける……前に、こちらもどうぞと私達にケーキを勧めてきた。あ、頂きます。

「さてゴトランド、今日は何かご用かしら?」

「……分かってるくせに、意地悪を言うのね。見ていたんでしょ? そのために転生させたらしいじゃない」

「あ、俺久々にシュークリーム食いたい」

「まあ確かに、私は貴方達全員をいつも見ていますわ。でも心の中を覗いたりはしておりませんのよ。何を考えてるかまで分かってしまったら、面白くないでしょう? そういうのは後で見返す時に副音声として流すのが個人的にオススメですわ」

「丹陽ガトーショコラが頂きたいです!」

「趣味悪ィな……いや丹陽のことじゃねェよ」

「それにしたって、レ級とはその件について話し合ったんだからある程度分かっているでしょうに」

「じゃあ私ショートケーキ貰うね」

「ええ勿論。でも、こういうのはちゃんと自分の口から言ってもらいませんと。当然ちゃんと、正確に、ですわよ」

「あ。ほっぽちゃん食べたいのある……?」

「それは……この状況で、私に名前を言えって意味、よね」

「そのフルーツタルト、見た事ないのが乗ってて気になる」

「てめェ……いやタルト食いたかった訳じゃねーよ」

 ややこしいから黙って食ってくれねぇかとレ級は額を押さえて呻いた。なんかごめん。

 

 久々のクリームたっぷりのケーキは非常に美味しく感じた。乳製品が高級品と化したから、それっぽいナニカであろうという気はしてもお口が嬉しい。間宮さんや伊良湖さん達もお菓子を出してくれる事はあるんだけど和菓子が多いんだよね。あとアイスクリームも出るけどやっぱり別物だしね。あれはあれですごくおいしいのだけど。

 猫吊るしはそもそも人間大の食事を摂るのが久々で、シューの蓋部分で下のクリームを掬い上げて口に放り込んだらとたんに笑顔が漏れ出した。たぶん美少女なのでこの状態で人前に出たら青少年の性癖ぶっ壊せると思う。仕草は完全に男の子だからギャップが凄い。

 正直自分でも緩すぎるとは思うのだけど、私達は今の状況をあんまり深刻に受け止めていなかった。いや、一歩間違うとヤバいってのは分かってるつもりなのだけど、自称魔法使いのこの子は私達を帰してくれると言っていたので大丈夫だろうと確信してしまっているのである。そもそも悪意があったら警戒してようが防ぎようが無いし、ケーキがあったら食べさせてもらった方がお得だからね仕方ないね。

「確認だけど、転生前に言ってた事は有効よね?」

「ええ、勿論。私、貴方達への対応について嘘は吐かないという縛りを設けておりますの。その方が面白いですからね」

 でも、と少女は一度言葉を切って、少し意地悪そうに微笑んだ。

「私は、『自力で私の所へ辿り着けたら望みを叶えてあげる』と言いましたわね。ええ、証拠動画もここにありますわよ」

 見る? と私達に聞いてきたが、テンポが悪くなるため遠慮した。っていうかそんな話したのかゴトランドさん。私の時ふざけ合ってたらすぐ終わったからなぁ……

「今回の方法は正直、貴方の力とは言い辛いですわ。そもそも接続方法がバグ利用みたいなものなんですもの。ネットゲームなら一発BANですわよ。私の不手際ではありますけれど……」

 少女は言葉を濁しながら私の方をチラ見した。もしかしなくてもチート能力さん関連は想定外だったのか。不具合修正で詫びチケ送ってくるくらいだもんね。ある意味凄いな私。創造主の目をもってしても読めなかったとかどんだけポンなんだよ。

「ですので、とりあえず、望みを言ってみてくださいな。叶えるかは内容次第という事で」

 ほらほらハリーハリーと少女はゴトランドさんを急かした。とたんにゴトランドさんとレ級の顔が苦虫を噛み潰したようになる。そして何故か、二人も私と猫吊るしの方を軽く盗み見した。

「……耳、塞いでた方がいい感じですか?」

 考えてみれば、ちゃんと正確に口に出して願いを言うという事は対象者――大将さんの名前を言わなければいけない、という事なのだろう。そして私がその名前を知るとその人はストレスで死ぬ。らしい。ゴトランドさんがさっさと話を進めなかったのはそのせいか。

 たださ、私って耳が良すぎるから塞いだくらいじゃ普通に聞こえちゃうんだよね。だから聞きたくなければ席を立って離れなきゃいけなくなる。そしてこの状況でそれを隣の少女が許してくれるかと言うと。

「あら、いいじゃありませんの。せっかくですから一緒に聞きましょう?」

 うーんこのクソゴッドムーブ。願いを聞く代わりに秘密を私にバラせと脅してやがる。なんなら腕を掴んできたし。隣に座ったのが裏目に出てる。いやどこ座っても自由自在なんだろうけどさぁ。

 ゴトランドさんは迷った。具体的には私が空いた方の手だけでケーキを完食していつの間にか増えてた盆の上のケーキをおかわりするくらいまで悩み抜いた。その間ずっとレ級は黙ってゴトランドさんの決断を待っていた。この期に及んで何かを言う気はないらしい。まあレ級自身は知っても死なないだろって思ってるっぽいからなぁ。

 猫吊るしが三つ目に手を付けようとした頃に、ゴトランドさんは覚悟を決めた目で立ち上がった。そして身を乗り出し、また増えていた苺のショートケーキを鷲掴み、一息に飲み下す。手に付いたクリームまでしっかり完食すると、落ち着いた様子でおもむろに口を開いた。

 

「多聞丸の能力を制御可能にして頂戴」

 

 ああ、やっぱり。正体に関してそれ以外の感想は湧かなかった。まあなんていうか、特に意外性は無いし、順当というか、他に居ないよねって感じ。ただ、願いそのものに関してはかなり疑問がある。え、楠木提督って能力制御できてないの?

「多聞丸は十分苦しんだわ。もう楽にしてあげて」

「あら、人聞きの悪い。まるで私が嫌がらせであの力を渡したみたいな言い方ですわね? 善意で差し上げてる能力ですのに、酷いですわー」

 悲しそうな声を、笑顔で少女は言い放った。あ、これ絶対碌な理由じゃないわ。思ってた以上に糞幼女だわこの子。

「力そのものは、だろーが。糞が」

「あらあら、私本当に苦しめるために貴女達を強化している訳ではありませんのよ? あの子の場合、思った以上に苦しめてしまったのは確かですけれど……」

「知ってるよ。どうして多聞丸が余計に苦しむ事になったのかも。その上で、どうか許してあげて欲しいの」

 その言葉に今度は少女の方が思案顔になった。私にはよく分からないけれど、もしや楠木提督もゴトランドさんみたいに何かしらの話をした結果色々起きたんだろうか。猫吊るしも余計な選択をさせられたらしいし、もしかして無駄にお喋りしなかったのって正解……?

「そもそもの話なのですけれど、あの子が能力を制御できるようになった程度で苦しむ事を止めるとは思えないですわ。あれは内罰的というか、自虐的というか……色々とお硬すぎるんですわよね。もうちょっと楽に生きて良いと思うのですけれど」

「てめェが言うか……!!」

 レ級の怒りがテーブルを揺らした。戦慄く拳、跳ねるケーキ。ひぇっと鳴くベイさん。ほっぽちゃんも目を丸くしている。丹陽さんは笑顔のままだ。

「私だから、言うのですけれどね。あいあむのっとあごっど。でも貴女達を創ったのは私ですわ。だからあの子が悩む必要性はどこにもないと言って差し上げるのです。まあ、言ったところで本人が納得しませんでしたけれど」

「なら、叶えてもらっても問題ないよね?」

 レ級さんと対照的にゴトランドさんは冷静だった。もしかしたらレ級が怒るとこまで織り込み済みだったのかもしれない。おお、怖い怖い。

「私は別に、多聞丸自身の意思を尊重して願っている訳ではないの。完全にこれは自分のエゴだよ。本人はまったく願ってない。だから叶った上で多聞丸が自分から苦しむのなら、もうそれは仕方ないと思ってる」

 口調的に、絶対に自分からやると確信しているのだろう。それでも放っておけなかったからここに来たと、そういう訳であるらしい。

 たぶんだけど、楠木提督の能力は情報収集系……それも予知とか読心とかそっち方面じゃないかと思われる。そして楠木提督はそれの行使を自分からして延々悩み苦しみ続けるようなお人って事だろう。知ったら見捨てられない性質なんだろうか。それが現状では暴走して延々情報を送り付けて来る? 休みなく? 成程、さては生き地獄だな?

「うーん……でもねえ。あの能力を完全に制御可能にするのは他との公平性を大いに欠くんですわよね。その代わりに強大な効果を齎してくれる性質のモノですから。かといって効果を弱体化すれば、多くの死者が出てしまう。それは貴方も望まないでしょう?」

 公平性とか考えてたのか……って事は私の能力とベイさんの能力、この子的には等価なんだな。やっぱ強いんじゃなかろうかあれ。

 ゴトランドさんはため息を吐くとゆっくりと席に腰を落とす。そして一度伸びをすると、あっとわざとらしい声を出し、今思い付きましたと言わんばかりの様子で人差し指を立て、じゃあと少女に向けて提案した。

「寝てる間の暴走だけ抑えるっていうのはどう?」

「ま、落とし所としてはそんな物かしら」

 打ち合わせでもしてたのかってくらいすんなりとOKが出た。分かった、さっきまでの全部茶番だコレ。レ級だけおめめぱちくりしてて付いていけてないのがありありと分かる。ほっぽちゃんもいいんだ!? とどっちに対してもびっくりしていた。

「あー……ああ? それは……いや能力の精度自体はそのままなら害はねェのか……?」

「うん。たぶんね。それと、夢の中での暴走が止まればゲザのカウンセリングが受けられるから……」

 楠木提督はその能力の性質上、寝ている間も情報収集が止まらないのだという。結果としてそれら全てが心に溜まり、夢はまともな状態を保てない。そのため心の淀みや穢れは猫土下座すら匙を投げる惨状になってしまっているのだそうだ。それをなんとかしたかった、というのが今回の件の真相らしい。

 ゴトランドさん的には起きてる時はどうせ一生懸命能力を使うのだからそっちの暴走は最悪止めてもらえなくても同じ事だったのだろう。最初から、楠木提督の安眠のためだけにこんなところにまで来ていたのだ。

「一応、寝ている間の予知が無くなる分だけ情報は減りますけれどね。元々まともに精査できないような物、無くしてしまっても何の問題もありませんわ」

 むしろ快眠できて思考に余裕ができるならプラスじゃないかと少女は言う。分かってて悪い方で実装したの君だよね? それともそこまで酷い事になるとは本当に思ってなかったんだろうか……うーん、分からん。なんかこう、楽しむために結果がどうなるかまでは読んでないって可能性があるっぽいからなあ。糞みたいな神様だけれど悪い子って印象でもないんだけど……いやでもかなりのファッキンゴッドだからなぁ。

 っていうか、数十年そんな事続けてたの楠木提督。何度か会ってるけど全然気づかなかった。っていうかあれか、猫土下座もしかして上手く行ったら除去作業に追われるから今のうちにゆっくりしたかったとかなのか。レ級に起こされちゃったのちょっと可哀そうかもしれない。

 

「とりあえずそのラインなら叶えて差し上げる事も吝かではありませんわ」

 だけど、と少女がじっとりした目をさらに細める。口元には薄い笑み。付き合いは浅いが誰の目にも変な事を考えているのは明白だった。

「みんな同じようにここに来たのに、ゴトランドだけ願いが叶うのって不公平に思いません?」

「いや別に」

「ボク達お招きされただけだし……」

「なんなら丹陽も同じお願いでいいですよ!」

「あー私も」

「じゃあ俺も」

「オレは計画に支障なきゃ構わねェ」

 わーさっぱりしてる連中、と少女は満足気に頷いた。別に仲間割れ狙いとかではないらしい。まあそれは置いといてと自分からした質問を放り投げる始末だった。

「こういうのって、何かしらの試練を乗り越えてというのが定番だと思いますのよ」

「ここに来るのが試練なんじゃないの?」

「本来はそうですわよ。でもほら」

 少女は私に目線を送って来た。外見年齢不相応の色気のようなものを感じる。うーん人外。

「バックドアで侵入されたような状態で試練達成にしていいのかという疑問がありますのよねー」

 そこ蒸し返すのか……でもさっき承諾してたし叶える気そのものがない訳じゃあないんだろう。要はもっと楽しませてほしいとそういう事だろうか。

「だから、今から課しましょう。試練」

 ぽんと手を叩いて少女は破顔した。レ級が鋭い眼光の笑顔で指を鳴らし始める。明らかにイラッと来てる。

「なんだァ? てめェをぶん殴ればいいのか?」

「まあその方向性でも良いですけれど……今の貴女達ではねぇ。最低限世界の法則から離脱してからでないと」

 そういえば、私達のチート能力って滅茶苦茶強い力なだけで元々この世界にあるものって猫吊るしが言ってたっけ。少なくともそれに頼ってるうちは駄目って事か。

「っていうか、超えられるものなんだ?」

「そうですわね、人にもよりますけれど一万回くらい自己同一性を引き継いで転生すると頓悟したりしますわよ」

「ええ……転生自体が修行になってるだけじゃないのそれ……?」

 それ以前にやった奴居るのか、一万回転生。合計したら百万年くらいは生きてそう。それでもぜんぜん追っつかない辺り地球って凄いよな、四十六億年だもん。そう考えると案外大したことない数字なのかもしれない。

「戦うんじゃないなら何するんだ? 朝までに帰れる内容じゃないと困るんだが」

「ああ、時間は進めてないから大丈夫ですわよ。ていくいっといーじー。お茶のおかわりはいかが?」

 虚空から注がれるでもなくカップのお茶が復活する。ポットさんは泣いていい。

「それで、私は何をしたらいいの?」

 ゴトランドさんは特に動揺した様子もなく話の軌道を修正する。何かやらされる事も予想済みだったのかな。頭の中どうなってるんだろ、ちょっとかしこさ分けて欲しい。

「そう急かさなくても……分かりましたわよ、もう」

 レ級の眼力がどんどん強くなって行くのに少女は折れた。こういうとこ悪い子じゃなさそうなんだけど、色々擁護できない事やってそうで困るんだよなぁ。

 

 じゃあはい、と少女は何も無い空間に向けて指を差した。存在しないスポットライトがその空間を照らし出す。そこには角ばった机のような物があった。数は二つ、一つは黒っぽくてもう一つは全体的にピンク色をしている。そこかしこに電飾が取り付けられ、前面には四角いモニタのような物が取り付けられている。卓上には板のようなものとペンのようなものがそれぞれ置かれ、さらにこちら向きに名札が置かれていた。『吹雪』『春雨』そう書かれた名札が。

「猫吊るし春雨扱いなんだ……」

「えっそこ?」

 いや、気になっちゃって。やっぱり春雨適性なのかなぁって。

 閑話休題、そこにあったのは明らかに当てると光るタイプのクイズの回答席であった。それも何故か、私とたぶん猫吊るしの名前が書かれた。

「……どういう事? 私に試練を受けさせるんじゃ」

「あら、だってさっき言ったじゃありませんの。同じ願いで良いって」

 そういや言ったね。丹陽さんに追随する形だったけど。人数増やしたら有利な気がしたからだったけど……成程、そう来るか。

「ここに来る方法を立案したのはゴトランド。だから、貴方の分の試練はそれでお終い。次は他の子ですわ」

 ゴトランドさんは狼狽した。まさか自分が関われない事態に発展するというのは想像していなかったらしい。嘘でしょ……と眩暈のしたような面相をしていた。

「丹陽の席がないですよ?」

 なんでですか? と私達より率先して同調していた丹陽さんが首を傾げた。他三人はそもそもそこに続いてはいなかったからだろうけど、確かに丹陽さんの名前は並んでいても良さそうなものである。

「うーん。実は貴方達は知ってる事を出題するつもりなんですわよね。それに貴方、適当に書いても正解しそうですし」

 物凄く運が良くなる能力であるとは聞いたけど、問題見ないで答えても大丈夫なレベルなのか……そりゃあ参加させ辛いわな。いや能力封じれば? え、強化してるだけで素で運いいの? 何それ凄い。

「あ、じゃあ正解できなかった問題一問につき腹筋十回で、それが達成できたら多聞丸の安らかな眠りが保障されるという事で」

 回答者は宮里艦隊の転生者さん達でーすと少女は宣言した。うん……? それ問題数によっては無回答でも達成されない? いや丹陽さん今は子供ボディでぜんぜん鍛えられてるようには見えないけどさ。さては本気でその場のノリだけで決めてるな?

 丹陽さんは分かりましたと元気よく手を上げ、私達に頑張ってくださいねと笑いかけてくる。えー私頭脳労働自信無いんだけど……いや頑張るけどさ。

「あ、出題中の相談は無しですわよ」

 ちぃっとゴトランドさんが舌打ち風の声を出した。レ級は一連のやり取りになんとも名状し難い表情をしている。そりゃあ、突然クイズ大会しますって言われたらそんな表情にもなろう。レ級はずっと真面目に話をしていたし、余計。

 

 

 

「はいそれじゃあルール説明しまーす」

 私と猫吊るしが回答席に置かれたちっちゃな背もたれ付きの丸椅子に座ると、少女が司会席を生成しながら宣言した。気が付けば茶会のテーブルは観覧席に変わり、五人の転生者は並んで私と猫吊るしを見つめている。自由自在だなあ。

「私が問題を出しますので、回答者の皆さんは答えを時間内にお手元のフリップボードに書いてくださいまし。答えが出揃ったら答え合わせをして、その結果、誰か一人でも正解していれば、その問題はクリアと致しますわ!」

 よし猫吊るしに任せて良さそうだな。いや私もできるだけはやるけども、たとえば数学の早解きしろって言われたら無理だしさ……

 その猫吊るしはどうしてこうなったって呟いてたけど、お前に変な二択突き付けて来るような子だしこうもなろうよ。たぶん本気で不味い事態になっても何らかの力でごり押ししてどうにかなっちゃうからノリと勢いだけで動いてるんだろう、仕方ないね。

「それで問題の方向性ですけれど……そうですわね、テストも兼ねて例題を出してみましょうか」

 司会席の裏に置かれた足場の上に立った少女がそれじゃあ行きますわよーと宣言した瞬間、周囲にパッと光が灯り、少女と私と猫吊るしを照らし出した。演出好きね君。

 

第0問

宮里艦隊に配属されているチート持ち転生者の数は何人でしょう?

 

 あ、そういうのなんだ。現世の状況とか……もしかしたら舞台設定とかも出て来る感じかな? 成程、これ楠木提督から色々聞いてるっぽいレ級やゴトランドさんは絶対分かるから回答者にできないのか。

 それと、思ったよりは簡単そうで良かった。同じような方向性でも各鎮守府の資材の収支状況とか問われたら死ぬところだった。まあこれについては例題だからかもしれんけど。

「なあこれ……」

「おっと、出題後の相談は無し、ですわよ。答え以外のご質問は受け付けますけれど」

 むっと猫吊るしが眉を顰めた。でもそのまま一瞬だけ悩んで、じゃあ、と再び口を開く。

「この問題、例題なら間違っても誤答に数えないよな? あと、俺か吹雪のどっちかが合ってればいいんだな?」

「どっちもYesですわ! やりたければ有り得ない数字を書いて頂いても後には影響させませんし、吹雪が間違っても貴方が正答すれば一問クリアとなりますわよ」

 逆も然りと少女は言う。それはあんま無さそうな気がするがこっちに有利なルールだからそこは有難いね。

 もう聞くことは無いのか猫吊るしはさっと回答を記入した。回答席には仕切があって、猫吊るし自身は見えるけど手元は見えないためなんて書いたのかは分からない。聴覚でも分からなかったので何らかの対策がされているっぽい。まあそりゃそうか。終わった猫吊るしがこっちを見つめて来たので私も急いで答えを書き込んだ。

 

「出揃いましたわね、では、回答を見て行きましょう!」

 そういうのやるんだ。少女が宣言した瞬間、私達の後方斜め上に大きめのモニタが出現する。どん! と少女が口で言うと、そこに私の回答が表示される。書かれた数字は当然、2である。

「というわけで吹雪の回答はー、2人ですわね! 流石! 捻りも工夫もなんにもない! 真っ当! 普通!」

 なんでディスられてんの私。いや真っ当はちょっと褒められてる気がしなくもないけど。

「どうしてこの回答に?」

「え、いやなんでって、私と猫吊るしで2人じゃ……」

 あれ。違うの? 観覧席を見るとゴトランドさんとレ級だけちょっと困った顔をしていた。あれれーおかしいぞー?

「はい、吹雪さんの回答でしたー。次行ってみましょう、どん!」

 モニタの表示が移り変わる。私の回答は私の席の前面に表示され、猫吊るしの回答がでかでかと発表された。そこに書かれた数字は、1。

「いやな、実は俺、勝手に移動してきただけだから、たぶん正式に配属されてないんだ……」

「えっ、あっ……そういう問題なのこれ!?」

「分からん。けど、どっちかが合ってればいいってこういう事だろ? 吹雪ならそのまんま書くと思ったからな、俺はずらしただけだ」

 あー……成程、これ回答者が複数居るなら被らないように答えた方がいい奴なのか。そりゃそうだわな、どっちか合ってりゃいいんだから。

「まあ、そういう事ですわね。他の子も分かってると思ったら自分はちょっと変えておくのも手ですわよ」

 うーんそうなるのか。難しい。っていうか、難し過ぎるしそれかなり博打感ない?

「相手も変えるかもしれないって思ったらそのまま答えた方が正答率高そうなんだけど……」

「そこに気付くとは……」

 少女は心底意外そうな口調だった。さては私滅茶苦茶舐められてるな? 間違った評価って気はしないけど。

「経験則ではやらない方が正答率高いですわね。まあこの場合のように相手の回答が分かり切ってる時は使えますけれどね」

 まあ貴方は使わない方が良いと思いますわよ、と少女が告げ、猫吊るしの回答もモニタから消え去った。観覧席は一部へぇーって顔をしているが、一部はあー……って顔になっていた。なんか反応が変だな。

 

「はいでは、解説に入らせて貰いますわね。この問題の肝はそう、猫吊るしの言った通り、配属されているかどうか、ですわ!」

 解説に曰く、猫吊るしは結局のところ、扱いとしては勝手にやって来て妖精さん達の音頭とって改装に改造に滅茶苦茶役立ってる不審者、という事になるらしい。

「ひどくね?」

「そもそも妖精さんって正式配属とかないから正確に言えば全員勝手に手伝ってるだけなんだけどな」

 観覧席からも驚きの声が上がる。確かに一人一人に辞令出してる印象は無いけどさぁ。ゆるゆるとはいえ軍組織みたいなもんなのに大丈夫なんだろうか。

「そういう訳ですので、配属されている人数に猫吊るしは入りませんの。それと、今回は関係ありませんけれど輪廻転生のある世界ですので、単純に転生者の数を聞いていた場合は一人二人どころの騒ぎでは無くなりますわね」

 そこまで行くと正解させないようにしようと思えばいくらでもできそうな気がする。引っかけ問題ってやっぱ糞だわ(108敗)っていうかさらっと言われたけど普通に転生あるのね。まあ集合無意識とかあるし今更だけども。

 

「それでは正解発表ー!」

 少女が腕を振ると照明が一度消え、私達の席に付いた電飾が煌めきだす。この演出いる? いや君が楽しいならいいんだろうけども。

 どこかからドラムロールが聞こえて来る。暫くするとそれが止まり、同時に回答席の光も消える。次の瞬間、ドラムが一度大きく鳴らされると、()()()()()()()()()()()

「え?」

「は?」

 私と猫吊るしの声が重なる。ほっぽちゃんとベイさんもえって顔をしている。ゴトランドさんとレ級は苦笑いである。丹陽さんはずっと笑顔だ。

「正解は2人!」

 ちょっと待って。

「一人目はご存知この子! チート能力『なんか』『つよい』! 転生回数一回! 吹雪こと、伊吹 雪ちゃん!!」

 そうだね知ってる。

「二人目はこの子!」

 私の索敵範囲内に一人の影が出現する。

「チート能力『こえが』『(・∀・)イイ!! 』」

 上空に現れたその子は何も無い空間に落下して尻もちをついた。

「転生回数三回!」

 それは茶色い髪をポニーテールに纏めた見覚えのあり過ぎる女の子だった。

「文月こと、(かざり) (らいと)ちゃんです!!」

 何が起きているのか把握できなかったのだろう。えっえっえっ、とすっっっっっごく可愛らしい声を上げながら、その子――宮里艦隊に所属している文月は驚きと困惑に包まれていた。

「クイズ、転生先の世界と他転生者について事情を知らない転生者に回答させてみた! 回答者はこの三人でお送りいたしまーす!」

 猫吊るしの横に茶色の回答席が生えて来る。髪の色だったのか。いやっていうか何その糞動画みたいなタイトルふざけてるの。いや最初からふざけてたわ。もしかして誰かに見せる予定とかあるんですかね。やめてよ。

 

 

 




最初からその設定で出してたんですが一回も突っ込まれなかったのは展開予想に配慮してくれたのか純粋に描写不足だったのかが分からなくて悩んでたという困った子でした。
何もかも酷い展開なのは継続中です。
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