「あっ、一応勘違いされないように言っておきますけれど、この世界がゲームの中という訳ではありませんからね?」
せっかく丹精込めて作りましたのにしくしくーなどと口で言っていた少女が急に謎の補足を入れだした。ちゃんと現実の世界であり、真っ当に物理法則とかがお仕事してくれているらしい。いやそこは疑ってないから大丈夫だよ。本当に真っ当なのかは知らんけど。そのまま気を取り直したように――っていうかそもそも大して悲しんでる風でもなかったけど、ともかく少女が姿勢を正すと照明も元に戻っていく。特に光源が見当たらないのでどっから出てるのかは全く分からないが。
「さてさて、そういう訳で自作ゲームを即売会で頒布するという目的を失ってしまった私は、そのゲームを塩漬けに致しましたわ。ざっと三千那由他年ほど」
「塩ごと原子レベルで分解してそう」
そういやそんな前の話でしたね。実際にはなんか違う保管方法なんだとは思うけど、取り出した後はちゃんと動いたんだろうかそれ。
「まあ、私視点だと世界ごとに経過する時間とかあんまり意味がありませんので実際には一瞬とも言えまだ経過してない時間とも言えますが。それはともかく、ある時、転生者や契約者達と戯れてたらふと思い出したんですのよ。そんなのあったなあって」
転生者ってどれくらい居るんだろ。文月が三回目らしいし一万回やった人も居るらしいからいっぱい居るっぽいけど……それこそ三千那由他人くらい居てもおかしくなさそうなのが怖いわ。あと契約者って何。転生以外も何かしてるの君。してるんだろうなあ、いろいろ。
「なので自分で久々にプレイしてみたらやっぱり中々の出来栄えで、捨て置くのも勿体なくなって……人にも遊んでもらいたいなと思ってしまいましたのよね」
ほんのちょびっとだけ、少女は寂しそうだった。まあ、頒布できない故にお蔵入りになった作りこまれたゲームって確かに色々勿体ないよね。開発費とか。
「だからと言って禁止された物を身内とはいえ多数に配布する訳にも行かなかったので……ちゃちゃっとエミュった世界を作ってそこに転生者ぶち込む事にした訳ですわね」
「どうしてそうなった」
「ガイドラインで類似世界の創造と運用は禁止されてなかったからですわ!」
「想定外だっただけじゃないかなぁー」
少女は何故かドヤ顔だった。いや、そんな事書いてあるガイドラインあったら怖いだろ。運営が上位者か何かだよそれ。正体見たら正気度失われちゃうよ。とかいうそれ以前にさ。
「公序良俗は?」
「アーアーきこえなーい」
あっこいつ耳塞ぎやがった。反するような活動は禁止なのに。長耳エルフ娘だから手から飛び出てるし聞こえてるだろうけど。
「そんなわけで手を変え品を変え人を変え、そこそこ多くの方々に『楽しんで』もらっている訳ですわね。あ、毎回ちゃんと別に世界を作ってニューゲームしておりますのでそこはご安心くださいまし」
「そんなセーブデータ分けるみたいなノリで世界作られても」
耳に手を当てたまま語った所によると、どうやら自作ゲームを模した世界の素になる構成情報を保存してあるとかで、それを使えばいくらでも同じ状態の世界を生みだせるんだそうな。私達が暮らしている世界は数ある並行世界の一つ――例えればソフトのうちの一本でしかなく、似たような世界で頑張ってる人は結構たくさん居るのだと少女は言う。
「最初の人達はチート能力の付与無しで頑張ってもらってたんですわよね。通常プレイみたいにしてほしかったのと、あとバグるかなって思って」
「見事にバグってたものね。指輪」
「没アイテムのデータサルベージしてくるなんて想定してなかったんですわよねー」
「俺が悪いの?」
いや猫吊るし悪くないと思う。検証しないで能力ぶっ込む方に問題があるだけだよどう考えても。笑い話みたいに言ってるけどバグり方によっては か い め つ したりしてたんじゃなかろうか。危ないなあ。
「能力無しの人、生き残れたの? 吹雪さんみたいなすっごいの居なかったって事だよねえ。難易度高過ぎない? 四国の巨大基地とか倒せたのぉ?」
「ん? あー……ああ、そうですわね、貴方目線だとそう見えますわよねえ」
文月は私と比べても世界について知っている事が少ない。だから、私達転生者が居なかった場合どうなるかはあんまり想像が及ばないらしい。いや私だってよく分かってないんだけどさ。っていうか、他の召集された適性者の事については私より詳しいっぽいから総合的には私なんかよりよっぽど物をよく知ってるかもしれないんだけどね。
「猫吊るし、貴方解説できるんじゃありません?」
「あ? 俺? いやそりゃある程度はできるが」
じゃあよろしく、と少女はのたまった。いやお前がせんのかい。猫吊るしも不審げだったが、自分に目線が集まっている事に気が付くと、息を深く吐いてから話し出した。
「あー、まあ予想……っつーか、俺の知ってる情報から推測するに、本来ならこの世界の深海棲艦は、もっと弱いし数も少ないんだと思われるんだよな」
猫吊るしは情報を何も持たない文月のために、まずは深海棲艦の仕様から説明をし始めた。そもそも人間の悪意やなんかが元になった存在である事、そのため人間の数が多ければ多い程勢力を増す事。それと、この世界は転生者が各地で跳梁跋扈しているらしいって事と、そのおかげで生存者がかなり増えているっぽい事。
「まあつまり、本来なら地球の人口はもっと激減してて、一緒に深海棲艦の数も減ってるはずだったんだろうな。それこそ転生者なんて居なくても普通の艦娘と提督だけで生き抜けるくらいには」
少女は無邪気な笑みでせいかーいと手を叩いた。いや合っててほしい情報ではないんだけどねこれ。今更だけど嫌な世界だなあ。
「ええ、その通りですわ。ぶっちゃけあなた方自分達で難易度ぶち上げてますのよねー。本来ならボスエネミーやイベントエネミー、えーと候補の中からのランダム配役なんですけれど、この世界だと太平洋深海棲姫や地中海弩級水姫ですわね。あれも通常艦娘を鍛えれば普通に撃破可能ですわ。というか、地中海弩級水姫は長門が倒しましたし。まああの長門自身調整の結果ああなった訳ですけれども」
他にもねえ? と少女は流し目で観覧席の方を見た。悪い事でもした覚えがあるのか、ちょっと申し訳なさそうな人が多い。何やったし。
「ま、あの子達が鯨を巨大化させたり巨大基地建造させて吹雪に壊させたのは置いておくとして――」
置いといてない。え、あのでっかいモノのとか四国のあれとか転生者謹製なの? めっちゃ資材使いそうだからそういう謀略だったって事? あれか、四国の統治楽にするためか。敵あんま居なかったって聞いたし使い切らせるためか。 色々やってるんだなぁ。
「――ここでクエスチョンですわ!」
第2問
本来、艦娘が戦いを始めた時点で生き残っているはずの人間は何人くらいでしょう?
「んーそうですわね、完全一致は難しいですし、ミリオン単位の整数で上下30%幅以内の数値を正解という事に致しましょうか。M表記でお願いいたしますわ」
それはあれか、ネトゲとかでよく見た1000000=1000K=1M的な書き方をしろという事か。つーか、なに、私達に本来どんだけ人が死ぬはずだったか当てろと? 自分の凶行詳らかにして行くスタイルなの? 怖。
「ほぉー」
据わった目で少女を見たのは猫吊るしである。器用に回答用のマジックペン……のような物体を指先で回転させながら、逆の手でマジックボードのようなものをトントン叩いている。
「俺が居るのにそれ聞いちゃう? 結構やったぞ、集合無意識内でのシミュレーション」
「あら、では間違ってたら赤っ恥ですわねえ」
うふふと笑う少女とHAHAHAと笑う猫吊るし。今見た目が春雨だから結構違和感が大きい。頼もしいは頼もしいからいいけど。つーかそんな事できるんだ集合無意識内って。あれか、過去の偉人とか混ざってるから思考実験的なの得意な感じなのか。居そうだもんな相対性理論のあの人とか。
しかし猫吊るしが分かるって言うなら私は気楽に答えても良さそうだ。猫吊るしが外したら困るからちゃんと考えはするけどね。
まず、六十億を超えるって事はないと思うんだ、嫌な話になるけれど、転生者がほぼパーフェクトな対応してるであろう日本でかなり人が死んでるんだから、他の国は相当な数が亡くなってるはずだ。滅んでる国とかもあるだろうし、まあ……かなり甘めに見積もっても億単位で人口は減っているだろう。
ただこれ以上がどうかって言われるとなぁ。そもそも私世界の人口分布すらよく覚えてないから、被害の多そうな地域にどれくらいの人が暮らしてるかとかさっぱり分かんないんだよね。アメリカなら内陸は大丈夫そうだけど沿岸部はかなり辛そうだし、メキシコ辺りとか酷い事になってそうな気はするけど、どれくらい人が居るんだかは見当もつかない。
普通の艦娘で対応できる強さ程度になるってとこから推察する手もあるけど、私には普通の艦娘がどの程度なら対処できるもんなのかさっぱり分からんからこれも無理。私自身は参考にならんし、島風も普通よりは相当強いらしいし、宮里艦隊の皆も平均よりだいぶ上……っていうか、それこそ上の方って言われる賀藤艦隊と五十嵐艦隊凹れるガチエリート集団な訳でね。全然判断ができませぬ。
だからもう、30%の範囲が広く取れる多めの数値を書いといた方が当たりそうな気がする。えっと、世界人口どれくらいだったっけ。七十億超えたってのはいつか聞いた事あるから……あれ、八十億超えるのは令和だったっけ? うんそうだわ。記憶にある。元々前世でもちゃんと覚えてなかった事はまともに思い出せないのが辛い。
「はいそこまでー。全員回答書き終わりましたわねー」
私の自信の無い回答が書き込まれると同時にシンキングタイムは終了した。猫吊るしが書き込んでる気配が無かったんだけど……もしかしてペン回ししてた時点で書き終わってたのか。手元よく分かんないから視逃してたっぽいな。
「はいそれじゃあ、注目の猫吊るし……以外の回答を先に見てみましょうか。はいどん」
背後と手前のモニタに私と文月の回答が同時に映る。私の回答は3500M、三十五億。対する文月の回答は、700M。七億人か。
「ちなみにこれ、どういう考えで思い至った数字ですの? 半分くらいと十分の一くらいですけれど」
おうそれがほぼ答えだよ。分かってるなら聞くなよ。
「ゲームならさ、世界の人口は半分を切ったとかそういうモノローグ入りそうだなって」
「あたしも! 90%が死滅したとか書きそうだなって!」
だよねーと顔を見合わせる。しかしこの回答全然笑えねぇんだけど。どっちか合ってたとしても人死にまくってる事になるんだよなあ。
「成程、メタ読み回答でしたのね。てっきり思考停止で半分にしとけば割と範囲広いし入るんじゃないかとかそういうのかと……」
それもありますが何か? 仕方ないじゃんさっぱり分かんなかったんだから。
「ふむ、ある程度はちゃんと考えてくださって何より。それでは期待の猫吊るしの回答、行ってみましょうか。どーん」
文月と向かい合ったから見えたけど、さっきから無表情なんだよね猫吊るし。緊張してるって感じじゃなくて何というか、なんだろう。
私と文月の回答が画面から消える。替わりに出るのは猫吊るしの書いた文字。その数実に、1。
1M――即ち、百万人である。
「何が30%だよ。0に1.3掛けても2に0.7掛けても正解にならないだろこれ」
淡々とした口調である。うーん怒ってる……とは違う感じだ、諦観……とかそっちのが近いか。
「だいたい、戦いが始まった時点ってのが騙す気満々で胡散臭いんだよなあ。本来を変なとこに付けやがって」
「どういう意味?」
文月は首を傾げたし、私も意味がよく分からなかった。でも観覧席の人達は分かったようで、一部かなりの渋面を浮かべている。本当に色々詳しそうだなぁ、ゴトランドさん。
「本来、妖精さんが現世に出てきてから、どうにか信用してもらって、やっと艦娘が生まれるのが、今から見ても数年後だって事。つーか、悪けりゃそもそも生まれもしないだろうな」
それは……あー…………成程。そういう? 猫吊るしが最初の妖精さんって訳じゃないらしいけど、そもそも妖精さんが首尾よく数の少ない提督適性持ちに出会って、話をちゃんと聞いて貰って、艤装の開発まで行くのにどんだけ掛かるのかって話か。
確かに一朝一夕とは行きそうにないなぁ。提督って殆ど一般人のはずだし、仮に信用してもらえたとして実行まで行けるケースの方が稀だろう。霊地の情報とかネットが生きてればすぐ調べられるけど本来望み薄だろうし、行けたとして女性の適性者が運良く近くに居ないとどうしようもない。数少ないその二種類の人間が揃う頃には……
「日本ほぼ沈没してない?」
「ああ。たぶん、国としてまともに機能してないだろうな……他の国なんて大陸ごと沈んでるはずだからだいぶマシな部類なんだけどさ」
何それ。めっちゃ可愛い声で文月が困惑の声を上げる。変色海域が続くと陸地が浸食されて海に沈む、らしい、なんて話を知らないだろうからね仕方ないね。私もどういう原理なのかは知らないし。
「大陸の方が残ってそうなもんだけど」
「言ったろ? あいつら日本をまともに攻略する気はない……いや、無かったんだ。それに、人間の悪意からなる深海棲艦にとっちゃ島国で人口密度の高い、しかも外国頼りの部分がかなり多い日本は孤立させときゃ仲間の維持に役立つ場所なんだ。早々に潰す理由がない」
蠱毒化する日本なんかより、むしろ土地のおかげである程度の希望が持てる大陸部の方が侵攻も変色海域の浸食速度も早くするだろうと猫吊るしは言った。ちなみに日本以外にも同じようにほっとかれる場所はあるらしいが、日本ほど持たないのが大半なんだとか。
猫吊るしは以前、艤装を広めるために頑張ってこっちに出てきたと言っていた。成程、頑張らないといけなかったわけだ。猫吊るしなら文明の利器が生きてる状態ならそれらを使っていろんな部分での短縮が可能だろうから、艤装の登場自体を早める事も可能だっただろう。現実には楠木提督達の活躍で既に基盤が出来上がってたから開発に専念できてたみたいだけど……本当なら交渉やらなんやらもやる覚悟だったのかもなあ。猫吊るしの能力って、国みたいな集団の上層の連中を脅迫するのに凄く向いてるし。本人がやりたいかは別としてさ。
「っつー訳で、陸地面積が激減してるはずってとこも加味して、俺の答えは1M、百万人……………………なんだけど、自信満々に言っといてなんだがこれゲーム的な偶然が『主人公』に起きない前提の答えなんだよなぁ」
「ご都合主義発動されたら成り立たないって事ぉ?」
Yesと猫吊るしは頷いた。そりゃそうか、猫吊るし自身こっちに現れてすぐに提督適性と艦娘適性の両方を持つ宮里提督に出会えてる訳だしね。それはまあ、楠木提督の仕込みなのだろうけれど。
「ただ、あからさまな『人口を減らすための設定』があちこちに散見されてるんでこの答えにさせて貰った。あと、これくらいにならないと平均的な艦娘じゃ深海棲艦に太刀打ちできないってのもあるな」
まあこの数字だとそもそも適性者が残るかも怪しいらしいけど。百万……それも海外含めてなら日本に居るのはもっと少ない訳で、戦えるの見つかって数人じゃなかろうか。0人もあり得る。つまり、シミュレーション通りだと基本詰んでるのだそうで。思ってたよりもっともっとひでぇ世界だなここ?
「で、合ってるのかこれ?」
「合ってますわよー」
言ったとたんに軽く猫吊るしの回答席が光り出す。軽っ。今までの演出どこ行ったよ。少女は目を閉じ、口元だけの笑顔を見せて猫吊るしに拍手を贈り出した。
「ええ。ええ。その通り、考え方まで何もかも、大正解ですわ」
うわあ。私と文月、ほっぽちゃんとベイさんの声が重なった。観覧席の二人は生き残りが少ない事は知っていたっぽいけれど、具体的な数までは把握していなかったようだ。丹陽さんは笑顔だけど目が笑ってない。笑顔とは本来以下略。
「そう、日本の本州の一部に生き残った百万人。おおよそそれくらいが本来戦いを始めた時点、そしてこの世界におけるベストエンドでの生き残り人数ですわ」
バッドエンドだともっと減るのか……いや、そりゃそうか。全滅も有り得そうだもんな。
「え? 日本以外は?」
「なんか……設定しなかったら勝手に全滅してたんですわよねえ……」
言い草。言葉をつつしめよ。聞いた文月もジト目で少女を見つめている。
「実はこの世界、元にしたゲームの世界っぽくなるように逆算して天地開闢から始めているのですけれど、そうあれと設定しなかった部分は私が想像してなかった姿になっておりますのよね」
おもっくそファンタジーワールドで過去にドラゴンとか実在したのは意図してのものではないらしい。え、ドラゴン居たのこの世界。
「登場人物として設定した方々も一々私が手を加えて創った訳ではなく、生まれてくるべくして自然に生まれた安心安全遺伝子組み換え無しの天然物だったりしますわ。その子たちに設定してある部分に対応するために、そもそもの世界そのものがだいぶカオティックになってしまったみたいですけれど」
それはあれか、明らかに極端な――例えば『元新興宗教の巫女な天才霊能力者』って設定を入れたら、その子が居ても自然なように世界自体が『霊能力が実在してる世界』になったって事か。遺伝子弄ってないけど因果律弄ってるじゃん怖。
「日本舞台なので海外に関しては特に設定いたしませんでしたの。被害はあっても全滅まで行かないでしょうとか思ってたんですけれどねえ……蓋を開けたら大陸沈没してましたわ」
観覧席で浮かび続ける笑顔の圧力が怖い。台湾出身らしいので……はい。大陸生まれのゴトランドさんも渋い顔である。
「そんな訳で、本来この世界の深海棲艦はもっともっとよわっちいし、数も少ないんですわ。代わりに生きるの自体がちょっと大変なんですけれどね」
そりゃあ、インフラも何もかも破壊されてるだろうからなあ。やっぱり芋育てて暮らすんだろうか。治安とかも凄い酷そうだけど。
「ええっと、つまり、今はまだ原作開始前の時間軸だけどぉ、あっちの転生者のみんなのおかげでずっと早く対処できたから、戦いは大変になったけど生き残れる人達がぐっっっと増えたって事?」
「概ねその認識で良いですわ。原作開始前、というのは違いますけれどね」
あれ、違うの? 戦いが始まる所が開始地点じゃないのか。プロローグの話みたいなのとかある感じ? あれか、襲撃時点から描写は始まるからとかそういうの?
「ふむ……当然ですけれど、みんな知らなかったみたいですわね」
見れば、ほっぽちゃんどころかゴトランドさんまでちょっと疑問符の付いてそうな表情をしている。そうか、ゲームっぽいって事は知ってたかもしれないけど、ゲームの内容自体は知りようがないのか。楠木提督の能力、詳細は分からないけど元のゲームの攻略法まで理解できたりはしないだろうし。できないよね……?
「では、こんな問題はいかが?」
第3問
この世界の元となった『二次創作ゲーム』のゲームジャンルは何でしょう?
「これも大枠で合っているなら正解という事にしましょうか。あ、今度は引っかけとかないので普通に考えていいですわよ。君と響きあったり運命を解き放ったりとかせずにRPGならRPGとお書きになってくださいまし」
逆にそういう感じのジャンル名になってたら当てるどころじゃないと思うの。個人的には嫌いじゃないけど。っていうかさっきまでのは騙す気満々だったのか……
それはともかく、ジャンルかあ。戦いがあるゲーム、なんだから普通に考えたらアクションとかロールプレイング……あ、戦略シミュとかも有り得るのかな? 艦これだし、なんか本来の状況は私達の知るそれより遥かにヤバそうだから資材のやりくりはかなり重要そうな気がする。
逆に戦いはあっても正解じゃなさそうなのは……FPSかな。さっき主人公のキャラモデリング見続けるみたいな事言ってたから、一人称視点って事はないと思うんだ。
……それ以前の問題としてなんだけど、主人公って奴だよね? 見てて不快になる事とか無いし、可愛い系の顔だとネットでも囁かれていた。だから合ってると思うんだ。提督の適性も天才的なレベルで持ってるし、私の友人でもある提提督、彼が主人公ポジでいいんだよね?
そうなるとアクションとか、そういう感じじゃなさそうかな? 提督がアクションしてどうすんのって感じだし、身体能力逸般人じゃなかったし……いや戦闘中だけ操作キャラ代わるってのも有り得るんだろうけれども、主人公に拘ってたっぽい気がするから、ちゃんと特定の主人公が居て、そいつの操作パートがあると思うんだよなあ。
そうなるとアドベンチャー系……あれか、状況的にポストアポカリプスみたいなもんだし提督で食料とか資材とか調達するパートがあるとか? いやでも、給糧艦が居ればその辺り何とかなりそうだしなあ。実は宮里艦隊の間宮さんの片割れ、名前に間宮って入ってるんだよね。たぶん彼女はそういう事なのだろうし。
っていうか、そうか。そうだよね。名前に艦の名前が入ってる人達。あれは要するに、原型になったゲームのキャラor転生者って事だよね。道理で吹雪が三人居る訳だ。司波艦隊のあの子が世界の最初から生まれるようになってたっていう吹雪枠の子で、私は普通の転生者。転生者にも原作キャラにも艦名が付いてる仕様にしたから分かり辛くなってた訳か。んで、吹雪……雪吹艦隊の吹雪も転生者だし元々吹雪だから入ってると。ややこしいわ。そう考えると転生者文月以外に原型キャラの文月も居るのかな? え、声良さそう。ちょっと会ってみたいかも。
閑話休題。ともかく、金剛さんや榛名さん、北上さんやなんかもそのゲームに居たキャラ……というか、少女が生まれてくるように設定していた人たちで、おそらくは、生き残る百万人の内の一人なのだろう。それ以外は……そういう事だろうね。
あれ、川内さんってどうなんだろう。あの人あからさまにニンジャなのだけど別に名前に川内って入ってないんだよね。世界設定の影響で生まれた一般通過忍者だったか……もしくは活動名であって本名ではないとかだろうか。ありそうだなあ、どっちも。
しかしゲーム的な都合で美少女ばっかなのを現実化されるとああも異様だとは。青葉さんとか意味不明すぎて悩みまくってたし。でも理由、教えてあげたいけど流石に言えないぞ。現地生まれの人が知って得するような情報じゃないし、青葉さんは入ってない側だしさ。
それにしても、やっぱり奴が美少女に囲まれる系主人公なのだとしか思えない。最初はただのラブコメ世界なんじゃないかって思ってたもんなあ私も。つーかあいつら深海棲艦来た後も世間一般の状況とは無関係にそんな感じだったんだよね。主人公とヒロインズって考えると別におかしくもないんだろうけど。あれだよね、パーティですっころんでキスまで行ったとかイベントのスチルシーンかなんかだった可能性がある。
…………いや、うん? もしかしてそういう事なのかこれ。ノベルゲー……ならモデルじゃなくて立ち絵って言いそうだからそっちではなく、主人公操作してくタイプの? え、この人類全滅RTA大陸沈没ルートみたいな世界で?
これ、私以外だとその可能性自体に思い至らない……って事は無いにしても、わざわざ書かないんじゃなかろうか。世界の設定に詳しい猫吊るしと普通の艦娘視点を私よりは知っているっぽい文月なら、他のジャンルからそれっぽいのを見繕ってくれそうだし、私がこれを書いておく価値はある……気がしてきた。
よし、回答はこれにしよう。まともな答えは二人が出してくれると信じて。でもそうなると書き方……えっと、穿たない方がいいよなこの場合。そうすると……うん。こう書くのが一番幅広いかな? これならR-18でも入らなくはないだろうしね。
今回は私が一番に答えを書き終わったらしかった。猫吊るしも文月も結構長く考え込み、少女がそろそろ〆切りますわよーと宣言したところでようやく記入を始めていた。
「ふうむ、これは……じゃあ猫吊るしの答えから見て行きましょうか」
出揃った回答を見て少女は一瞬考え込んだ。そして宣言された通りに表示された猫吊るしの回答は、『SLG』である。これはまあ、順当だよね。
回答の理由を求められた猫吊るしが答えて曰く、襲い来る深海棲艦や内部で発生する問題との戦いをするゲーム、つまり拠点運営系のシミュレーションゲームではないかと考えたから。らしい。成程、艦娘の戦いはあくまで管理すべき数値の一つって割り切ったゲームかもしれないって訳か。まあそれが間違いだったとしても普通にSLGはありそうだしね。広義の意味じゃ原作の艦これも入るわけだし。
次に開示されたのは、文月の答えだった。こちらはカタカナでの記入になっている。
「『アクションゲーム』……ですわね。文月、貴方ゲームの主人公がこの世界では誰に当たるか見当はついていまして?」
「ついてるよぉ。候補は三人くらい居るんだけどねー」
なそにん。え、私の知らない情報そんなにあるの? 私一人しか心当たり無いんだけど。そんなに怪しい人いっぱい居た?
「ああ、それたぶん全部合ってますわ。一人チュートリアル用キャラですけれど」
「チュートリアルと本編別なタイプのゲームなんだ……」
「たまにありますよね! 経験値稼いでも無駄になるようなの!!」
「あるある。そのキャラがやられてから別視点になってキャラメイク始まる奴」
あるけどさ……それだとその人死ぬために設定されたみたいじゃん。可哀想じゃない? いや現実化してなけりゃ普通の事だけどもさ。もにょるよね。なんか。
っていうか、待って。一人チュートリアル用としても主人公二人居るの? それだと私の回答前提からして間違ってるんだけど。困る。いやそういうのも無くはないけどさ。
「あたしが答えをアクションにしたのは、同人誌の漫画から入ったならやっぱり海戦は艦娘目線で描写したいんじゃないかなぁって思ったからだよ。主人公の事は考えてなかったなぁ」
技術的に当時の最高峰の物にしたのなら、RPGやシミュレーションにするよりは自由に動かせるアクションゲームのようにするのではないか。文月はそう考えたらしい。またもメタ視点っぽいけど言わんとする事は分かるなあ。拘ったモデリング技術で可愛く動かせるなら確かにそれを見せたくなるかもしれない。
「成程。確かに当時、私もそう思いましたわね……さて、それじゃあ最後。吹雪の答えを見てまいりましょうか」
ふふっと若干笑いを漏らしつつ、少女はどーんとモニタに答えを映し出した。
私の回答は、『ギャルゲー』である。
「なんというか……外れない所ですわよね。艦これである限り広義では絶対に当てはまると言いますか。何せ敵からして美少女ですし。あ、これ余談なんですけれど、この世界の深海棲艦は正確には無性扱いになってますわ。お胸はあれど生殖機能はありませんし」
それはそこを主眼に置いてたら外れという事なのだろうか。いやそもそもそっちは考えても無かったんだけども。
「流石エロゲーマー……」
ぼそりと、つい出ちゃった感じの素っぽくもやっぱり可愛らしい声が横から漏れ聞こえて来た。その印象まったく払拭されてないのね。つーか今世ではやってねぇよ。前世の所業だよ。自己同一性完全継続だけれども。
まあ目を合わせたらひっ! と引き攣りつつも透き通るような美しい悲鳴を上げた文月は置いておいて、私の回答はそんなに悪い反応は受けなかった。猫吊るしとか吹雪ならそう書くと思ったみたいな顔してるし、観覧席からもあーなるほどーみたいな目線が飛んできている。少女のコメントからしても的外れって訳ではなさそうだ。
それはそれとして、ちなみにR-18ではありませんからご安心くださいましって補足は必要だったんですかねえ。エロゲって書かなくて良かった。
「では正解発表ですわー。正解者に拍手!」
ぱちぱちーと手を叩きつつ口でも言う少女に合わせて、私達全員の回答席が輝きだした。溜めるのは完全に止めたのだろうか。というのはともかく、つまりどういう事だってばよ? 複合ジャンルって事? それはまあ分かるし、ギャルゲと他のは混ぜられそうだけど……SLGとアクションも混ざってるの? 取っ散らかって集中できなさそうな印象を受けるんだけど。
「はい疑問そうな子が居るので解説いたしますわね。この二次創作ゲーム、実は一部と二部に分かれておりますのよ」
攻略対象の好感度を上げて二部の初期メンバーや戦力なんかを決定する深海棲艦襲来前から襲来直後くらいまでの第一部、恋愛ゲームパート。
日本が国としては滅ぼされて以降、主人公が艤装を作り出し仲間と共に戦い抜く第二部、シミュレーション、もしくはアクションゲームパート。
その二つに大きく分ける事ができるらしい。いや、一部はまだわかるけど二部が分かんないんだけど。もしくはってどういう事よ。ルート別? ルート別で変わったりするの?
「さて吹雪の疑問が増えましたところで、次行ってみましょうか」
くそ完全に読まれてやがる。っていうか、増えたの私だけなの?
あ、ほんとだ。文月はむしろ納得顔してる。どういう事だってばよ。
第4問
『この貴方たちの暮らしているゲームを元にした世界』で、
主人公枠として生まれてきたのは誰でしょう?
「フルネームでご回答くださいまし」
あ、これは簡単……文月は候補者が三人居るらしいけど私は一人しか心当たり無いから迷う事もないわ。これは提督一択ですわ。いや、待てよそういう引っかけの可能性も……一応考えてみるか。
……………………いや、他に心当たり無いわ。名前からして完璧に提督だもんあ奴。宮里提督辺りも提督と艦娘の両方の適性持ってるから怪しい気がしなくもないけど、自衛隊員の彼女が恋愛ゲームパートとやらをまともにできるとは思えない。自由な時間が多くないと駄目だろう。
なので私の答えはこれだ。これしかないと言っていい。中学入学してすぐの頃に疑ってたからか思考が固定化されてるって自覚はあるけれど、他って気がぜんぜんしないもん。
「はいせいかーい」
雑。すげぇ雑に全員の席が光らされた。一度に全員の回答を公開された上でこの対応である。まあ三人とも完全一致してたからだろうけど。
そういう訳で正解は提 督正である。ご両親くらいしか名前で呼ばないけど流石に私も覚えていた。『まさ』が正なのか政なのか一瞬迷ったのは内緒だ。
「文月くらいは間違えてくれるかと思ったんですけれどねえ。ちなみに決め手はどこでしたの?」
「ギャルゲ舞台であのモテ具合の人が主人公じゃないって事ある?」
割とある、と思う。けど合ってるから言うまい。つーか提督の恋愛事情スマホコミュで有名なんだろうか。金剛さんから直接聞いたってのもあるだろうけどさ。
「はい、という訳で正解は提艦隊でいろんな意味で大活躍してらっしゃる提 督正くんですわね。あの矢印の向けられっぷりですけれど、実はそういう能力とかは一切持ってないし補正なんかも掛かってないんですわよあれ。素でハーレム形成可能っていう魅力特化型主人公ですわ」
ただし、艦娘適性のある娘の方にああいう子を好きになりやすい傾向がある事は否定できないらしい。主人公はいろんな子に好かれる可能性がある、というゲーム的な都合を世界の設定として落とし込んだら勝手にそうなってたとか。つまり艦娘にとって提督はいい香りがする人って事か。遺伝子から相性良いのか? 全員から好かれてる訳じゃないから一部の人ではあるのだろうけども。
「督正くんが恋愛ゲームの主人公という事で分かると思いますけれど、その周囲に居た艦の名前が入った、転生者以外の娘達。彼女達はつまり、攻略対象、という事になりますわ」
剛田 金奈枝、剛田 比奈叡、三山 榛名、霧島 志乃、桑谷 扶美、赤坂 真城それに……………………島 風香。
まあ途中から分かっちゃいたが、世界レベルで設定されたヒロインだったという訳だね。あと一期生の名前の入ってる人達も同じ適性検査の範囲内=割と近所に居たって事だからそうなのだろう。
つまり山城さんや加賀さんや隼鷹さん、明石さんに間宮さん、秋津洲さん、イクさん、天龍さん、それに初春と夕雲さんも……夕雲さん? え、夕雲さん? 夕雲さん既婚……NT……あっ、いや、そうか。本来なら四国に居た旦那さんと娘さん…………うわぁ。
ま、まあこの世界では助かってるから、一旦置いといて。道理で極端な過去や性格な人が結構多い訳である。加賀さんとか割と意思疎通に問題抱えてるからな、人の事言っていいのか分からんけど。山城さんが扶桑さんに出会ってすぐ懐いたのもそれだけ相性が良いようになっていたのだろう。あと割と時雨ともすぐ仲良くなったみたいなんだよね。本名知らないけど入ってる側なのかな?
そう考えるとこの設定って別に強制力的な物はない程度の強さなんだろう。時雨ってこの間賀藤提督とケッコンしたし、本当に相性が良いって程度の話なだけなのだろうと思われる。そういう子達が生まれてくるようになっているとは言っても現実なのだから当たり前っちゃ当たり前だけども。
そう、当たり前なのだ。中学校時代に交流してた私は知っているが、彼女等は普通に生きてる普通の女の子達である。いや一部精神性がぶっ飛んでたり893の娘だったりポイズンクッキングだったりはしたが、ゲームのキャラって訳ではない。ゲームのキャラと同じ背景を持ってるだけのただの人間。そういう事で良いのだろう。
っていうかさ、別に名前に艦名入ってない、そういう子って設定されてた訳でもないはずなのにああな初雪が居る時点でもう参考になるかも怪しいんだわ。普通にあれが存在してる時点で他の娘が天地開闢から生まれる事が定められてましたとか言われてもそっかーにしかならんのよ。年下の姉に甘える外見高校生くらいの二十代中~後半ってお前。正直榛名さんとか比叡さんの方がよっぽどまともだからな! どっちがゲームキャラでしょうって言われたら絶対間違えるぞ私!!
「さて、本来のゲームですと、学生時代に好感度を上げた子は最初から二部で仲間として編成する事が可能になりますの。流石にルートまでは決まりませんし、中には二部から登場の子も居るのですけれど、やはりそこは頑張っただけ序盤が楽に進められるようにはなっておりまして」
そのために好感度が上がっただけ彼女達の戦闘力は上昇する。らしい。あー……成程。なんか納得行った。提督のケッコン事情で感じた疑問の答えがそれかぁ。
「もしかしてケッコンカッコカリしなくても適性値が上がったりする?」
「はい、その通りですわ。それが主人公の特性……特権と言っても良いですわね。これは普通の、攻略対象以外の適性者にも効果があるみたいですわよ。他の提督も上昇自体は可能みたいですけれど、値が低すぎるので短期間では誤差ですわね」
提艦隊に戦闘可能な自衛隊員が増えた理由がこれな訳だ。好感度上がって戦えるようになったからそのままケッコンも可能だったと。そういう事だったのね。提督側もあいつ人嫌いになるタイプじゃないし、好意を向けてくる相手なら好意で返しただろうから良循環してそう。つーか、提艦隊が全体的に強いって言われる理由もそれか。自衛隊員以外も上がってるんだろうねきっと。
って事はやっぱり楠木提督は相性でメンバーを選出したっぽいかな。提督ってばめっちゃお膳立てされてハーレム形成させられてるじゃん。本人たぶん喜んでないけど。あいつ滅茶苦茶健全だからなぁ。本人は。ところで文月はなんで微妙な顔してこっち見てんの? 少女もなんかさっきよりにやついてるし。
「話を戻しますが、提 督正くん……あ、これデフォルトネームで変更可能なのですけれど、彼が主人公の場合、ゲーム的にはシミュレーションというか原作の艦これ色が強くなりますわ」
当然の話なのだけれど、性別が男な彼は海に出て戦う事ができない。そのため、拠点から艦娘に指示を出したり作戦を立てたりするのがプレイヤーの主な仕事になるらしい。原作と違って拠点でもイベントが起きたりアクシデントが起きたりラッキースケベが起きたりはするそうだし、食料とかも管理しなきゃいけないからやる事は多いらしいけども。猫吊るし大体合ってたっぽいなこれ。
「それと彼独自の特色として、提督としての能力が著しく高いというのが挙げられますわ。具体的には艦娘の編成可能数が無制限であったり、ケッコンもいくらでも……好感度が足りて指輪を作る資源さえあれば可能です。これはこの世界でもやっておりますわね」
その他、味方のダメージも詳細に見えるし位置なんかも分かるし弾薬の残りとかも分かってしまうらしい。私達の完全上位互換じゃんすげぇなあいつ。むしろ胃に悪そうだけど。
「その言い方だと他にも主人公候補が居たのか……?」
「いい質問ですわね。丁度それを言おうと思っておりましたのよ」
そう言いつつ、二人ともちらりとこっちを見た。ついでに文月も見てるし観覧席からも視線が飛んでくる。おいどういう事だ。
「そう、実はこのゲーム、主人公が選択可能なのです。とは言っても、個性のある人間の中からどれかという話ではなく、選べるのは性別。つまり、二部で提督としてのみ働くか、艦娘としても働くかを選べるようになっておりますのよ!」
女性主人公を選択しても提督としての能力が無くなる訳ではないらしい。ただその性能は男主人公に比べると遥かに劣り、編成できる――即ち無効化貫通能力を付与できる人数は合計で24人。さらに位置や状態も詳しくは分からなくなり、ダメージを受けているのが分かるとか羅針盤で方向が分かるとかそんな程度になってしまうのだとか。なんかどっかで聞いたような……気がするな?
「女主人公を選択すると第二部はアクションゲームに寄りますわ。具体的には自分で操作して戦闘を行えるようになるのです。アーケード版よりむしろTPSに近い操作感に仕上がっておりまして、味方への指示を出したりしつつ自分でも撃ったり避けたりするシステムになりますのよ」
出撃人数が減って多面作戦などが取り辛くなる代わりに、自分操作で無双可能になる。らしい。成程、さては仲間のAIがあんまり役に立たないタイプのゲームだな?
「ちなみに主人公の使う艤装は戦艦、巡洋艦、空母、駆逐艦、潜水艦から選べますわ。デフォルトネームにちゃんと名前全部入れましたのよ。無理矢理」
そっかー。うん。それもなんか……覚えがあるような……?
「はい、そういう訳で次の問題でーす」
第5問
この世界の、主人公枠に抜擢されず魂の宿らなかった、
『女性主人公の体』はどこへ行ったでしょう?
「これは……そうですわね、現在地を書いてもいいですし、端的に状態を書いてもいいですし、名乗ってる名前を書いても正解という事にいたしましょうか」
ね。と満面の笑みで、少女は明確に私の事を見つめた。
お前……お前……マジか…………え、マジで? 本当にそうなの?? もう視線が何もかも物語ってるし性能が完全一致なんだけど??? 本気???? そんなことあるんだ?????
っていうかもうこれクイズでも何でもないだろ! お前設定開示したかっただけだろ!! 馬鹿なの? なんでそんな事したの?? 嫌がらせ? 嫌がらせなの?? え? つーか何? この? ……何?
誰が得するのこれ? 誰が得したの? 私? 私得した? してるか。してるわ。環境恵まれてたもんね? 第二部まで生存確定の地域に住めてたって事だもんね? 治安とか悪くなってない訳だよね? 最後まで残る場所だったんだもんね? 親戚関係カオスだったのもこれのせい? たまたま?
あっあっあっ回答ね、答え。分かるよ。すっごい分かるよー。書き慣れてるしね! 今すっごく書きたくないけど!! わざと間違えちゃ駄目? 意味無い? だよね!!! おうちかえっちゃだめ? だめ。はーまじはー。
「はよかけ」
はい。
「というわけで、正解発表ですわー! まず文月の回答をどん!」
モニタに映される文字列。そこには『転生者が使っている』と記されていた。
「続いてどどん!」
次に現れたのは猫吊るしの書いた一文字である。『隣』。魂の位置的にも肉体の位置的にも合ってるだろうけども。
「最後にどどどん!!」
そして表示される私の回答。内容は当然、『伊吹 雪』である。
にっこにこな顔の魔法使いを自称するこの世界の創造主であらせられるらしいクリエイター系オタクの少女が、本当に楽しそうな声を漏らした。たぶんお気に召してるのは私の反応なのだろうけど、お前これで間違ってるとか言うなよ。泣くぞ。
「はいっ!! というわけでー、正解は……」
少女は溜めた。ドラムロールも復活した。暗くするのは忘れてるけど。
ゴトランドさんからは強く生きろという謎のメッセージが込められた視線を、レ級からも憐憫色が強い同種のそれを感じる。丹陽さんの笑顔は柔らかくなっているし、ほっぽちゃんとベイさんからも純粋な応援の籠った表情が届く。なんだよぉお前ら全員知ってたのかよぉ。
ででん、と力強い太鼓の音が周囲に響く。直後、私達の回答席は今までよりも盛大に光り輝いた。
「宮里艦隊で転生者の伊吹 雪ちゃんが使ってる、でした!」
「なんでそんな事したの???」
いや、マジで分かんない。どうしてよりによってそんな訳の分からん事を。バグ加速したらどうすんだよ主人公二人とかフラグ滅茶苦茶じゃん。だって♂トレに対する♀トレ、グランに対するジータ、ぐだ男に対するぐだ子みたいな立場って事でしょ? 同時に存在しちゃいけない奴だよそれ。ボディだけだから大丈夫って事?
「だってせっかく気合入れて作ったモデルですから、使いたいなあって」
「理由浅いなあ」
そんな理由で主人公ボディにぶち込まれる方の身にもなって欲しいんだが? いや、別に恥ずかしい事じゃあないんだろうけどさ、お前の体ハーレムゲーの主人公のだぞ☆とか急に言われるとこう……なんか……えもいわれぬ感覚に陥るというか。魂が宿らなかったらしいから奪ったとかじゃないだけマシと思うしかないかなぁ。っつーか、世界の話聞いてたはずなのに自分の事ががっつり出て来ると思わないじゃん。転生者とは言えさぁ。
しかし、マジでかぁ。マジでそうなのかぁ。確かにこの体、明らかにクオリティは高いんだよね。超美人中学生雪ちゃんボディはネットでも大人気なんだよ。三次に興味のない私でも手足や胴体のバランスとかはふつくしいと思うレベルなんでそれはもうすごくすごいのだ。そこに私がインストールされる事で色々台無しになってる感は否めないけれども。
「あ、そうそう。そんな訳で主人公は男女二種類居るんですけれどね、どっちを選んだとしてもヒロインの設定って変わらないんですのよ」
いや、そりゃそうだろう。そこが可変式になるなら何か別のギミックが必要だと思う。実はよく似せた別々の時代が舞台だった、とかの。
「その状態で現実化いたしましたら、ヒロイン全員、恋愛対象の性別は不問になってしまいましたのよねぇ」
自覚無自覚の違いはありますけれどねーと少女は笑う。いや、うん。まぁ……時代が時代だし別にいいんじゃないのそれは。つーかその情報、要る? 正直知り合いの性的嗜好の話とか知りたくないんだけど。まあこの程度ならいいけどさ。
猫吊るしと文月が何かを納得したような顔でこっちを見て来るんだけど、何? 私は関係ないよ? だって私はそもそも二次専だもの。恋愛も何もあったもんじゃないからね。本当に。
徹頭徹尾金剛さんは本気でしたとさ。