「あっ居た……釣れてる?」
「ん、まだ一匹」
振り返ると、すごい格好をした風香がそこに立っていた。赤と白の縞模様のソックスに妙に丈の短いスカート、そこから見えるようにというか見せているパンツの紐、出された腹と腋、長手袋にうさ耳のようなリボン。それは明らかに島風の制服だった。
「久しぶりに見たわその服」
風香は私の言葉に反応して素早く自分の衣装を確認すると、オウッと驚いたような鳴き声を発した。無意識だったか。
「どうりで動きやすいと思った!」
「関係あるかなぁ」
まあ、動き易さ重点の服飾ではあるのだろうけれど……まともな羞恥心あったらむしろ動き辛いと思うんだよねそれ。風香にそんなもんがあった覚えは無いけれど。
あるよ! と反論しつつ、町中を歩いたら通報されないか心配な格好をしたそいつは軽く辺りを見渡した。一回後ろも振り返って後方まで確認すると、訝しげな表情になって私の事を見つめてくる。
「雪はどうしてこんなところで釣りしてるの?」
「魚食いたいっつったのお前だが?」
だからこうして枝の先に糸を括り付けたものを水面に垂らしているというのに。ちなみにだが浸透勁の応用で近くを通った魚に糸を巻きつけて捕まえているため正確には釣りではないと思う。糸も引き伸ばしただけのその辺に落ちてた金属片だし。
「そうじゃなくて! どうして自分で釣ってるの?」
「手ぶらで出たから仕方なく?」
しばふ芋畑の手入れしてそのまま出たら見事に財布とか端末類とか何も持ってなくて決済できなかったんだよね。取りに戻ろうかと思ったんだけど海の方が近くて、ならもう自力で捕まえるか……ってなった結果が今なのである。つまり緩みまくった末なのでもうちょっとちゃんとした方がいいとは自分でも思う。今は平和で敵とか居ないから、私の心はゆるゆるだ。
その辺りの経緯を説明したら、風香は若干眠たげな眼を更に細め、ジトっとした目で私の事を見つめながらごくごく軽くため息を吐いた。
「雪、詐欺とかには気を付けてね」
「そういうのは分かるから……」
騙そうとしてるのとかはすぐ看破できる。その辺りの観察力はつよいからね、分かったからって逆に嵌めたりするような知能は無いけれども。
「まあ、雪だし、そういうのには引っ掛からないか」
「うん。心配しなくて大丈夫だよ」
そもそも私から取れる物とかあんまり無いしね。敵対された時の不利益を考えたら手出ししてくる奴なんてそうそう居ないのだ。
「そうだよね」
まだちょっと疑いの眼差しだったけれど、まあ大丈夫だろうと判断してくれたのか、風香は私から一歩離れた。
「じゃあ、連装砲ちゃん達が待ってるから」
「あいよー」
いってらっしゃいと軽く手を振ると、いってきまーすと風香も軽く返してきた。
風香の気配が完全に消えてから、ツボを突いて仮死状態にしていた魚を取り上げて、私は家路につくことにした。魚は一匹でよくなってしまったし、今日はやる事がいっぱいできてしまったからだ。
とはいえ、そう焦ってやらないといけないわけでもない。まだ昼にすら遠いのだ、ゆっくり歩いて帰ろう。いつでも軽い体でそう長くない道のりを私は進み始めた。
本当にもうちょっとだけ続きます。
艦これ要素がいよいよお亡くなりになりますが。