魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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いさぎよくかっこよく脱ぎ捨てる――――――。

たとえ離れ離れになっても私は――――――。

というわけで始まった少女革命ウテナガンダム!(マテ)

奈須さんは劇場版派、CHOCOさんはテレビ版派……そんなことを考えて、同人の頃の式を演じたのは故 川上とも子さんなんだよなぁとか思い出しつつ、久々の新話お送りします。

今回の話は難産でありすぎた。選挙編ってそういうことだったんだなとか今更ながら理解しましたよ。


第99話『会長選挙Ⅱ』

 

 

放たれた一言の意味は斟酌しきれない。だが、全員に分かったことが、1つある。

 

それは衛宮アーシュラは、生徒会長になんてなりたくないということだ。

 

この一言で、どれだけの離反者が生まれるかは未知数。しかし、それでも……何かは起こる。

 

だが、思惑が外れたのは否めない。このままではアーシュラの生徒会長就任が遠のく。

 

あらゆる意味で、はぐれものなアーシュラの思惑が動くのであった。

 

 

1−B 衛宮アーシュラ 53.1%

 

2−A 中条あずさ 30.1%

 

1−A 司波深雪 4.1%

 

1−E 司波達也 2.1%

 

 

第三回目の投票結果は、かなり割れたのであった。

 

「もう票読みが出来ない……! これだったのね! 衛宮先生たちが言っていたことは!!」

 

真由美もこんがらがっているようで、疲れた様子ではある。

 

「サイレントマジョリティーというものですね。ただ、此処に来てアーシュラの本意というものが曝け出されたことで、動きましたから」

 

どうなるか分からない。だが―――。

 

「……こうなってくると中条会長への賛成票が集まるんじゃないでしょうか?」

 

「それが狙いなんだろうな……」

 

深雪の推測も今は遠い。

 

(だが、どうすればいいんだ? いや、アーシュラはどうしたいんだ?)

 

……アーシュラは、何故…会長職をやりたくないのか? メンドクサイからやりたくない。

 

今更だが本当に、それだけなのだろうか?

 

ひょっとして……そこには何か深い思惑が隠されているのではないだろうか……。

 

そんなアーシュラを遠目に見ていると、菓子を食っている所に壬生紗耶香など2科の上級生たちが、話しかけてきた。

 

その人達とは普通に歓談するんだな。と思いつつ、何かを言っている様子。嫌な予感がする。

 

嫌な予感だけが胸を貫く。そうして―――。

 

再びの選挙演説へと向かう。

 

『中条候補に質問です。アナタが掲げた規約を読む限りでは、4月にて前会長が仰っていた公約、即ち2科生を生徒会役員に入れるというものですが―――これをやる意味は何なんですか?』

 

ざわつきがここぞとばかりに生まれる質問が壬生から出された。あの時は差別解消だの何だのと、お題目は付けられた。

 

だが、次々と明らかになる事実と、教育実態のスキャンダルを前にして、虚ろなものが起こるのは当然であった。

 

そして……壬生の口撃は、あずさを揺さぶる。

 

「私は―――七草会長の路線を引き継ぐ形です。今まで、学校運営の段で一科生偏重で二科生を蔑ろにしてきた生徒自治を改めることで、本当の意味で一体となった学校運営をしていきたいと思っているんです」

 

一拍置いてあずさは続ける。

 

「―――今まで教育機会を与えずに放置していた一高教師陣のこともあって、信用出来ないのも分かります。カルデアで人類史の英雄たちから学んできたことで皆さんが、私達を嫌悪する気持ちも理解できます……今まで指針を、羅針盤を与えずに大海に放り出していた全てを―――どうかお願いです!!!

きっと、いま残っている候補たちは大なり小なり……二科生たち『ブレイブ』を何とか学校運営に関わらせたいと思っています!! 関わってほしいと思っています。それだけは信用してください!!!」

 

司波兄妹は違うような気がするが、と考えた人間はそれなりにいたが、……ともあれ、ここぞとばかりに中条あずさは、気持ちを吐き出していく。

 

「そもそもですね!! 私は寧ろ皆さんが羨ましいぐらいですよ!! 時計塔のロード・エルメロイII世。マハトマの探求者。ルーン魔術の大家にして影の国の女王。源氏四天王の首魁……挙げていけばキリがありませんが……そんな特級の英雄たちに教えを受けていたなんて」

 

『一科生で教育機会に恵まれてる中条さんが、そんなことを言いますか?』

 

「……正直言えば、いくら一科生といえ、数字持ちで実家がありったけの金持ちで、英才教育を幼少の頃から受けてきた人間に比べれば、味噌っかすですから。そして―――アーシュラさんみたいな常在戦場で生きてきた存在とも違います……」

 

紗耶香の嘲った声に対して、中条あずさも自分の心情を吐露する。

 

その言葉の後には―――壬生紗耶香も『分かりました』とだけ言ってから下がる様子だ。

 

その際に、アーシュラが薄く笑ったようにも感じる。見ると、扉の方で立華が何かを書いてアーシュラに伝えている様子だ。

 

何だ? 候補者席にいた達也は偶然にも見てしまったが、何かの符丁が放たれたようだ。

 

そうして―――――――。

 

 

第4回目の投票が行われ、そして結果は―――。

 

2ーA 中条あずさ 83.1%

 

1ーB 衛宮アーシュラ 9%

 

1ーA 司波深雪 5%

 

1ーE 司波達也 2%

 

 

今までの投票は何だったのかと思う程に呆気なく投票条件はクリアーされて、一高会長は決まるのであった……。

何かのペテンに掛けられたかのように、全ては決まってしまう。

 

戸惑いは多くも、それでも新会長が決まったことで、誰もが祝福を掛けていくのであった。

 

深雪の戸惑いを理解しながらも、達也も何も言えなかった。

 

 

 

「結局、今日の選挙って何だったんだろうな?」

 

「ホントにね……何かアレだけならば、壬生先輩の質問に見事に答えた中条先輩が……とも感じるけど」

 

アイネブリーゼにいつもの面子を集めて、士郎先生が作ってくれたお菓子よりはやっぱり劣ってしまうデザートをパクつきながら、考えることはそれだけだった。

 

「達也は何か知っているんじゃないか?」

 

「何故、そう想う幹比古」

 

「ただのカンだよ」

 

言われて、全員の視線がこちらに向いたので、仕方なく達也は説明する。

 

「まぁ分かっていたことなんだ。アーシュラが実質的な会長選挙の『勝者』なんだからな」

 

その言葉にざわつき出る。どういうことなのかを問われる前に……達也は答えていく。

 

「一応の前提として語っておくことだが、ここにいる俺たちE組の面子以外の2科生―――1-3学年全ての2科生たちは『アーシュラへの組織票』だということは押さえておいてくれ。第二にアーシュラの両親……衛宮先生2人は、2科生側にも分け隔てなく、魔法教育であれ何でもやっているということ―――」

 

その2つの大前提に加えて、達也はもう1つを教えることにした。

 

「そして、アーシュラこそが一高で最強の魔術戦士であるということだ。―――ああ、不満というか反論はあるだろうが、まずは黙って聞け。特に深雪」

 

「―――蒙昧な妹に教えていただいているのですから、何もありませんよ。お兄様」

 

嘘を吐け。内心でのみ悪罵を言いつつ、説明する。

 

「まず組織票という意味では、およそ280票近くの票田がアーシュラにはあった。これは凡そ全校生徒の半数の票といえるだろうな。この時点でアーシュラは勝ち確なわけだ」

 

別に会長職に就きたいわけでもないとはいえ、そうなる。

 

「けれどよ。俺たち以外の2科生を全て掌握して―――」

 

「いるよ。間違いなく。これは別に、アーシュラというよりも『衛宮家』への票と言えるだろうな」

 

「つまりアルトリア先生や士郎先生への信任票でもあると?」

 

「世の選挙というのは、立候補者個人だけでなく『後援者』『秘書』『その親類縁者』からの『信用』票というのもあるからな」

 

確かにそういった話は多くある。というか、魔法科高校前の小中学校での選挙でもままある話であった。

 

そいつの人格や能力云々ではなく、そいつと友誼を結んでいるから、そいつに投票する。

 

または外面良くてもろくでもない内面を持ち、隠れて悪さをしているような人間には票も集まらない。

 

並べて選挙というのは摩訶不思議なものなのだ……。

 

「アーシュラ個人の人格は色々と知れ渡っているし、性格もそれなりに知られている。それをどう受け取るかは人それぞれだ」

 

「そうですよね……」

 

色々と複雑な思いを抱くほのかの言葉が遠い。

 

「だが、 アーシュラ個人の能力は大変とんでもないものだからな。そこに『信』を置くものもいるんだろう」

 

並べて、『投票者』たちの心が一致していなかったことが、今回の選挙の全てだ。

 

二科に甘い教師を両親に持っていても、彼女個人が一科生であれば……そういう甘い考えでいた一科生は多い。

 

「アーシュラが勝ち確なのは理解できた。そして、その投票をコントロールしたのは理解できる。問題は……どうしてここまで長引いたかよ」

 

そう。そこが問題なのだ。エリカの質問に対して、達也は少しだけ考えてから、先程、数時間前に両院を通過して法案成立をしたものを見せることにした。

 

それは正式名称は割愛するとして、法案の中身としては、現在の魔法師の海外渡航制度と、魔法技術の『交換』『交流事業』を促進及び『改定』するための法案であった。

 

「―――この為に、決を引き伸ばしていた!?」

 

「恐らく……別に明確な規定があるわけじゃないんだがな。しかし、閉鎖的な魔法師の海外渡航制度などを砕く一手」

 

「同時に、アーシュラや立華の知り合いのお爺ちゃん。九島健を呼び戻す施策ということか」

 

だが、別段これがどうこうだからといって、会長選挙を長引かせる理由にはならないのではないかと想うが……。

 

「意味はあったな。実際、この法案は色々と十師族などナンバーズの間で喧々囂々のものだったそうだ。俺たちが選挙でアレコレやっている中、魔法協会でも同様に、アレだったらしいな」

 

詳しいことは語らずとも何となく分かることはある。俗な話では有るが、有力な魔法家ほど政治家との繋がりを持っている。

 

要するに、繋がりを持つ議員に『審議』などを引延させるようになどと『働きかけ』を強めていたそうだ。

 

片や、むしろ『審議』を進めるように、早急に法案成立をさせるように、働きかけを強めていた。

 

達也の情報は『実家』から齎されたものだが、適当に『七草』『十文字』経由だと嘘ついておくことにしたのだ。

 

「同時にアーシュラも、この法案の『表裏』での決を決まるまで決着をさせるわけにはいかなかった」

 

もしかしたらば、5,6,7回などといつまでも決まらない牛歩戦術が展開されていたかもしれない。

 

「だが、あの演説―――『中条に票を上げてください』という演説時点で、何か永田町の方で『動き』が出たんだろうな……」

 

その動きの詳細に関してはまだ分からないが、余程のことが起こって一気に法案通過の方に流れが傾いた。

 

「そして、最後の決選投票の前に壬生先輩がアーシュラと話していたことを考え、そして壇上にて中条先輩に『肚を割らせた』以上―――これ以上はいいだろうということになったんだろうな」

 

不透明なことは多い。だが、全てはアーシュラの手の平の上で踊らされたということだけは理解できたのだ。

 

「けどもよ。達也や深雪さんに多数票が集まることもあり得たんじゃないか?」

 

「それは無いな。選挙活動をしなかったというのも1つあるが、やはり1年には荷が重いというよりも、2,3年からすれば、心情的に一年にも満たない付き合いの俺たちを選ぶことはないだろう」

 

だが、アーシュラは違う。付き合いの短さは殆どにあるが、その中でも付き合いが長い三年生がいたのだ。

 

十師族の長子であり、一高の大親分ともいえる十文字克人。

 

彼が信頼以上の情と好意を寄せて接している以上、十文字の『舎弟』『子分』を自称するような人間たちは、そこに妙な姐さん感覚を覚えていたのであろう。

 

「これで十文字先輩のビジュアルが、アトベ様みたいなスマートな美男子であれば、女子からの当たりも強かったのかもしれないがな」

 

「達也、分かりやすさにかこつけて、十文字先輩に対して結構失礼なことを言っているよ。本当に」

 

幹比古のツッコミを受けつつもまとめると……。

 

「アーシュラは、この法案が通るまで一高の会長になるわけにはいかなかった。それは、彼女の出自がハーフであることで法案に影響を及ぼすわけにはいかず、さりとて他の人間に……偏向が激しい人間を就かせるわけにもいかず、薄氷を踏むような綱渡りの『票』のコントロールをしてきたわけだ」

 

恐らくアーシュラが抑えていたのは、達也と深雪の『司波兄妹』なのだろう。自分たちには政権を渡すわけにもいかず、さりとて中条あずさに『票田』を託すまでに至る時間稼ぎ。

 

恐らくあずさは選挙戦に入る前から、壬生など2科の同級生や上級生に話をしていたのだろう。だが、それでも彼らが切り崩されることは無く、しかし……あの発言を受けて2科生たちは、あずさへ票を投じた。

 

別にそれは彼女を信任したからではなく、アーシュラの意思を汲んでの行動であり……中条あずさが考えた、一体となった一高なんて空手形を信用したわけでは無い。

 

前途多難すぎるものを押しつけられたものだ。

 

どこまでも迷宮じみた女の子だ。ルーツを知ったとしても、その全てが魔法師の理解を越えているのだから―――。

 

「しかし、利権や権力に凝り固まる魔法協会やナンバーズの動きを一挙に傾かせるなんて、なんなんだろうか……」

 

一介の高校生に理解出来ることではないだろうが、幹比古の疑問はもっともだった。

 

(アーシュラ曰く『第二の魔法使いの裁定を待つ』とのことだったな)

 

何かの符丁なのだろうが、全然分からぬことだが、それでも……幹比古に聞かせれば、最大級の混乱を齎すと思って、達也は、あえて口を噤みながら……この場にアーシュラがいない寂しさをオレンジジュースで紛らわすのであった。

 

季節は寒風を混ぜ合わせて、肌寒さを覚えさせる秋へと入ろうとしていた。

 

 

 

そして、世界は変化を果たしていく―――。

 

 

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