魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
うる星やつらリメイク放送開始
水星の魔女がトレンド入り
そろそろ……極光のアスラウグにも何かニュースが来て欲しいと思いつつ、新話お送りします。
弓を引き絞る。その所作のために払うべき礼節など全てを終えたあとに放たれる一矢は―――紛うこと無く的の中心部に突き刺さった。
そうしてから射のあとの『礼』をしてから後ろへと戻る。
「―――といった風にこんな塩梅です。引き絞るべきは身体であり『腕』だけではないようにする。そうすると自然と矢は的に正対するものなのですよ」
後は集中力1つ。雑念を払う―――そのためにどれだけ『我』を削ぎ落とせるかの動作なのだから……。
「「「「ありがとうございます衛宮副部長!!」」」」
デモンストレーションとして行ったあとに一礼とともに返される一斉の言葉。それを受けてアーシュラとしては、ちょっと気恥ずかしいものもある。
「何というか先輩もいるのに、ちょっと恥ずかしいものがありますね」
「では各自、手本を思い出しながら射に入るように―――衛宮さん。ちょっと」
その後には男子の部長たる俵に少しだけ離れた所に引き出された。
「なんでしょうか?」
「うん、まぁ何というか……今日も、ね―――来ているんだよ彼女……」
それだけで誰のことであるかはアーシュラには分かった。少しだけ赤くなった顔をする俵先輩に、なんでだろうと思いつつも―――。
「―――分かりました。ちょっと話を着けてきましょう」
「頼むね」
「ちなみに聞きますけど、私がいなくなったらマズイでしょうか?」
「別に『役員』になったからと、こっちを蔑ろにするとも限らないけど……俺としてはいてほしい」
正直言えばアーシュラは、弓道部の『アイドル』なのだ。引退した矢場部長が一年でありながら彼女を副部長に推薦したのは、その見目を惹きながらも弓道に打ち込む姿が後進にいい影響を与えると理解できていたからだ。
何より弓道部は、その性質上1科生が『いない』ことでも知られている。射撃という観点にだけ立った場合、魔法競技部活には幾つもの『シュートスポーツ』が存在している。
だからこそ1科生たちは、『精神修養』と『集中力』を高めるだけの『初歩的な射撃』しかしていない弓道を軽んじているのだ。
そして、現在の一高の生徒会長は魔法であっても『弓』を使うということで知られている。
その
そこにいた短躯の……小学生にも見間違いかねない相手と何度目になるか分からない対話となるのだった。
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新学期が始まり、色々な意味で新体制に刷新を果たした魔法大学付属第一高等学校。略して『1高』であるが、新体制に移行をしたものの、どうしても欠けたピースが存在している。
それを埋めるまでは動くに動けないという話なのだった。
正確な話ではないが、それでも……それを埋めることで完成させなければならないパズルが存在しているのだから。
「以前にも言いましたが、ワタシは弓道部の副部長なので生徒会に入れません」
「意志は変わらないんですね……」
「何度来ても同じです」
集められた生徒会の面子。それらを見ながらも、道着と袴姿のアーシュラの姿は新鮮さを催すらしい。
よって、何故か生徒会の面子以外にも風紀委員や前会長や部活連会頭などが生徒会室に来ているのであった。
「ではこれにて失礼を」
「ソレ以外でお願いがあるんです! こればかりは聞いてくれませんか!?」
「どういった案件で?」
立ち去ろうとした瞬間を狙って、必死な言葉と形相をする中条にびっくりしつつも、問い返す。
「魔法科高校の学生論文コンペティション―――面倒な名称を除けば論文コンペというものが、近々行われるんです……」
「そうらしいですね」
何気なく担任である母の口から出てきた単語だなと思い出すのであった。
「実を言えば先日、司波達也くんがその論文コンペのメンバーに選ばれました」
「オメデトー」
「ありがとうと言いたいが、全くもって気のない祝福だな」
この場にいた当の本人に拍手と同時に言ったが不評の限りであった。どうでもいいけど。
そうして中条の語る所、論文コンペの作業員及び論文執筆者にはいろんな所から策謀が行われるらしい。
一番無害そうなのは魔法産業関連の企業。最悪なのは他国のスパイが動き出すことらしい。
「産業スパイねぇ……」
「そんなわけで司波君の安全確保の為にも護衛を付けたいんですよ」
「大丈夫でしょ。腕っぷしが強いからこその風紀委員なんですから」
もはやオチが見えてしまったことでアーシュラは、機先を制するように言っておくのだが……。
「俺としては不安なんだ。あのディープ・マンジュリカ……君たち魔術側で言うところの『死徒二十七祖』の関係者に狙われてしまえば、どうなるか分からないからな」
「九校戦以外では夏は何もなかったと聞いているけどね」
「そりゃそうだがな……」
四六時中狙われるわけではないと分かっていても、論文コンペにかこつけてどんなことになるか分からないのだ。
それは杞憂だ。と言ってやりたいが、実際は今月は確実に星の廻りが悪いということは既に知っている。
よって―――。
「カルデアから護衛に特化したサーヴァントを付ければいい?」
「俺はお前に護衛してもらいたいんだ。何でも士郎先生もアルトリア先生に護衛してもらっていた時期があるそうじゃないか」
それを引き合いに出されてどうしようというのだ。
「現代魔法及び産業スパイに関わる事案で魔術サイドからのちょっかいなんてありませんよ。死徒だって別にそちらに関してはノータッチですから」
あえて口にしなかったが、キャッスルゴーレム創造に長けた死徒はビジネスマンであることを思い出すも、彼は『現代魔法』というものを好いていないのだ。
「アーシュラはお兄様が吸血鬼に食べられてもいいの!? 毎回毎回! そういった風なドライな態度で斜に構えた言動ばかり……!」
そんな態度は、当然のごとく噛みつかれるのだった。
「アンタたちの底の浅い理解や考えよりもワタシと立華の見識の方が深く広いもの」
その言葉に怒りが沸き立つも、 それでも明確な反論は出てこない。
だが、アーシュラとしても少し考えるに、こいつの原理を奪われれば、死徒たちの儀式でモスクワを消滅させた『モスクワ事変』の二の舞にしかなりえない。
2,022年のウクライナ侵攻の際に野蛮なロシア人に逆襲を果たしたウクライナの英霊たちを死霊として、新ソ連の首都モスクワに大挙させたことの再現にもなりかねないのだから……。
「分かったわ。そもそもアナタの
結局、情理を考えるに、『その方がいいだろう』とするのだった。
「ああ、ありがとう」
「けれどワタシが『そうする』ということは、『そうなる』ということよ。それだけは覚えておきなさい」
やはり……横浜論文コンペでは何かが起きるということか。それを予測しているカルデアという組織に驚きを隠せない。
「副会長にはならないんだよな?」
「達也、アナタが後に就くって内定しているんだから、別に無理やりどっかにワタシを含めなくてもいいんじゃない?」
三人も副会長がいるとか、どんだけ中条会長はクソダメな存在だと思われかねないのだから。
「そりゃそうだがな……」
「下心がミエミエなんですけど」
「悪いかよ。俺だって……好いた女の子に傍に居てほしいって願いぐらいはある」
その言葉にざわつきが最大限に広がる。不貞腐れるような達也の表情のレア度と相まり、そして決定的な言葉に何名かの表情が固まる。
「司波、お前……女の口説き方が下手すぎるぞ」
「十文字先輩はご経験がお有りで?」
「―――失敗談で良ければいくらでも聞かせてやる」
面倒な会話を感じてアーシュラは退室したかったのだが……。
「十文字君の失恋体験も興味が無いわけではないんだけど、私としてはアーシュラさんの恋愛体験を知りたい―――具体的には元カレとかいうコウマさんとやらの事を知りたいわ。具体的にはそのビジュアルとかをね♪」
その言葉に我知らず緊張してしまう。言葉を発したのは、 七草真由美であり―――、だが……顔だけ見たところで『関係』など分かり得ないだろう。
だが……。
「そういうことならば、アーシュラの第一の親友にしてご両親から逐一、九島弘真との恋人関係を報告しろと言われていた私が教えましょう」
そんなことやっていたのか!? と思いながらどっから現れたのか立華がやったことは―――。
「では再生開始! CGギャラリー100%! 全てのED回収で出てくるトゥルールートのごとく!」
意味不明なことを言う親友に頭を痛めつつも―――生徒会室のキャビネットに表示されたものは。
満面の笑みで―――このときまでは恋人だったヒトの腕に組み付く
だが問題は2人の『格好』2人がいる『場所』である。
そう2人は―――『潮風薫る渚の砂浜』にて、『水着』でスキンシップしていたのだった。
「「「「「「「ふざけんなぁああああ!!!!!!」」」」」」
何かもう男女揃って色んな感情を混ぜ合わせて、そんな風な激高しか出てこなかったのであった。
だが、そんな中―――聡い数名が気づく。
「――――――」
「……お前というか、弘一殿に似ているか? それと……いや、その四の当主殿に似て―――いなくもない、か」
焦るように自分の感想を固まったままで見ている七草真由美に言うとようやく口を開くようだ。
「そう。十文字君もそう感じるのね……」
「いや、ヒトの人相に対する所感ってのは結構、曖昧だと想うけどな……それと、司波にも似ているか」
咄嗟に出た言葉……だが、それだけで理解できたことは多い。このコウマ・クドウ・シールズ……またの名を九島弘真は……十師族にとって最大の『厄ネタ』である可能性が高い。
(同時に司波達也、司波深雪もまた……そうなのだろう)
自分の腹違いの妹のことなど吹っ飛ぶ案件であり、なんで『こんなこと』にばかり衛宮家は関わるのだ。
もしかしていずれは十師族ないしニホンのナンバーズ制度を転覆させるために、スキャンダラスなことに手を出しているのではないかと邪推してしまう。
ならば―――。
「アーシュラ!!! 俺と結婚してくれ!!!」
「このタイミングで言うことかぁあああ!!!」
「グエルノプライド!!!」
横にいた真由美から一発いいのをもらうのだった。メイウェザーがフューチャー・アサクラに放ったものの如く。
その間にもアーシュラとコウマとの恋人どうしの場面は続く。
「……なんかお前がいつも以上にキレイなような気がするな……」
「写真写りがいいのよ」
「やっぱ恋は女の子をキレイにするのか?」
「だったらアナタに恋している光井さんはどうなのよ?」
「ほのかは……まぁ出会った時からかわいいよ」
気分が有頂天になるほのかを他所に、達也としてはまだ納得がいかない。
疑惑の眼を向けながらもスライドショーよろしく、九島コウマなる男とのツーショット、全てがリア充爆発しろなものであり―――。
観念したアーシュラが言う。
「白状するけど、お化粧ぐらいするわよ! 初めてのカレシなんだもん!! マタ・ハリお姉さんやフェイカー・ヘファイスティオンさん、世話焼かれるようにクイーン・メイヴにも教えてもらったわ!!」
そのぶっきらぼうながらも赤くなりながらの言葉に達也としては衝撃を覚えた。
それだけ……九島コウマはアーシュラにとって特別な存在なのだと。
などとショックを受けていた所に、助太刀一刀両断先生(愛称)がやってきた。
「まぁ更に白状すれば、アーシュラ自身は普段と同じように出かけようとしていたのを聞いて、私が一言言ったんですけどね」
「ゲェーッ!!」
「例え昔からの馴染みであったとしても、恋人関係になった以上、少しは着飾ろうとしなさい。メイクぐらい覚えろ。と」
その言葉に『ああ、いつものアーシュラだ』と安堵した―――。
「けれど、私でなくメイヴやタマモに聞きに行くあたり、やはり九島弘真は特別だったんですね」
―――のも束の間、少しだけ達也の心がクサクサするのを感じた。
「……もういいでしょうが、あーもう最悪だわ。友人からならともかく、母親から
やさぐれアーシュラになる様子に……何とも言えない。
「大体、なんでこんな話になったのよ。達也の護衛をワタシが引き受ける。それだけで収まった話なのに―――」
原因の大本は……。
「七草前会長……」
「わ、私が悪いの!? そもそも論として達也君がアーシュラさんに妙な感情を見せて、微妙な空気を出すから……ごめんなさい―――けどアナタの元カレのことを私は知りたかったの」
その言葉にアルトリアもアーシュラも少しだけ息を吐いてから……。
「「父親に聞いて
そういう言葉が双竜の母娘から出たことで真由美も観念するのであった。
そうして一件落着したと思った時に―――。
「アーシュラ、今度の休日に俺とデートしてくれないか?」
最大級の爆弾を投げつけるは司波達也であり、キャビネットに映し出されたアーシュラとコウマの姿は秋物の装いであったりして実に季節にあっていたのだった。