魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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何というか色々と複雑だ。

カーディス教団のような連中が流行っている時代だとは分かっていたが……。

まぁ、一度ぐらい俺も書いてみるか。などと考えている今日この頃

新話お送りします


第103話『デート・ア・ライブⅢ』

 

 

 

松山と麻野という達也の中学時代の同級生たち旧交を温めつつも、話は達也の魔法科高校での様相に話が転換して―――、その証人として達也の『カノジョ』である衛宮アーシュラが出廷するのであった。

 

「まぁワタシとカレはクラスが違うのですが、色々と伝え聞く所によると、まずまず色々とやっているらしいですね」

 

「なんとも抽象的な証言……司波くんが2科で衛宮さんが1科なんだね……」

 

「そうですね。一高のスキャンダラスな学科制度の区分けで言えばそうです」

 

流石に巷間に流布された実態は同窓生たちの耳にも入っていたようで、少しだけ悲しい顔をしている。

 

「僕らの学校ではスゴく目立っていた司波達也という存在(ヒーロー)も、魔法大学付属ではそんな扱いなんだ……」

 

「昔神童、今凡人とも言いますし、どこでもそんなものでしょうよ。地元じゃブイブイ言わせてピッチャーで四番バッターなんてのばかり集められた学校でも、その中から選りすぐりだけが上がれるんですから」

 

その言葉に松山も麻野も『分かりやすい例え』すぎて何も言えなくなる。お坊ちゃん、お嬢ちゃんばかりのセレブリティが集められたあの中学校を出た面子全てが、輝かしい道を歩んでいるわけではないのだから。

 

なんだか少しだけ居た堪れない気分の達也なのだが……。

 

「まぁそんな中でも達也は腐らずにやっている方ですよ。どうにかして、二科生やその他の魔法を達者に扱えない人たちのためにテクノロジストとして、必死に出来ることをやっているんですから、当の本人も魔法を上手く使いたいと思っているみたいですしね」

 

そんなヨイショでありフォロー……下げてから上げる。常道のホメをやられて、達也は少しだけ補足をする。

 

「補足をさせてもらうが、俺自身は別に劣等生のままでも良かったんだよ。いずれはオヤジの会社なり、どこかで魔法技師として働ければ実技はどうでもいいって感じで…ただアーシュラと関わっていく内に、CADという器具の不合理性を感じて、その後にアーシュラの親父さん、一高の先生にアドバイスを受けながら、そういった『扱いやすい器具を作ろう』って考えたんだよ」

 

「ようするに衛宮さんから発破をかけられたってこと? 夫婦の初めての共同作業ってこと?」

 

「―――あながち間違いではないな」

 

「いや否定しなさいよ」

 

麻野の冷やかし混じりの言葉にそう想いつつ、概要としては割りかしあっている事実を達也は認識する。

 

「半端な理解、門外漢からの意見で申し訳ないけど、何ていうか魔法師の使うCADっていう器具は、確かに魔法が使えない僕らからしても不合理だなぁとは思えていたからね」

 

「やっぱり松山でもそう思うのか……」

 

松山の意見は外部からのものではあるが、正鵠を射るものでもあった。

結局の所、世間でCADは『魔法使用の補助器具』という共通認識はある程度存在している。だが、その範囲、魔法師の魔法使用をフォローしてくれているという点が「どのぐらい」であるかで、ズレは生じている。

 

だが、魔法師ではないヒトからすれば、見えるだけならばテクノロジー……機械工学に依った補助器具なのに、最終的には人間の能力頼みという点は不合理に思えるのだろう。

しかし、その意見を『物知らないヤツ』などと断じてしまっては、魔法師は『ズレていく』ばかりだったはずだ。

 

「まぁ僕の事務所にも魔法高校に入学出来なかったヒトとかいるからね。そういったヒトたちが、もう少し簡便に魔法が出来るならばいいんじゃないかな?」

 

「それを目指していく所存だよ」

 

結局の所、アーシュラの考えが……この世界では普遍で求められていることなのだった。

 

そうして、松山と麻野は自分たちが頼んだ分のお会計を渡して(電子マネー送金)―――。

 

「それじゃどこかで、衛宮さん。がんばってね♪」

「司波くん、末永くお幸せに」

 

そんな言葉と笑顔で去っていくのであった。

 

「ただのレンタル彼女だったんだけどね」

「そんなオチだと思ったよ……」

 

分かっていたとはいえ、ショックを受ける達也。

 

「別にデート相手を悪し様に言ったりするほど、ワタシは無情じゃないわ」

「俺の株をあげてくれたことには感謝するが……休み明けの学校が怖いな」

 

九島コウマは、アーシュラとどんな風にデートしていたのだろうか? 興味を覚える。

だが、それが―――。

 

「この後はどうする?」

「買い物したいわけじゃないしね。適当に街ブラでもいいけど、何か買い物するなら荷物持ちするよ?」

 

普通逆だろうと想いつつも、そんなことはせずに―――。

 

「んじゃ少しコミューター使うが、『ハイパーズーラシア』にでも行くか?」

 

その言葉に『ビビッ!』という擬音が似合う反応を見せるアーシュラ。苦手なのか……ではない。

 

「仕方ないわね〜ガイアが寒冷化(ヒエヒエ)になったとしても、生き残ったアニマルたちを見に行ってやるか〜♪」

 

意外な趣味……ではない。そもそも犬猫のペットと馬も飼っている家なのだ。

喜色満面でウキウキしている様子から、映画ではなく上野動物園でも良かったかと思う。

 

食事を存分に堪能して、『おみや』も包んでもらった上でお会計―――。

 

そうしてふざけた名前だが、寒冷化という時代を乗り越えてでも、熱帯地域などの動物たちを飼育している動物園に向かうことになるのだった。

 

その際に自然と手を握ってしまう辺り、男にとってドキドキしなければならない……そして、その手が新しい血マメを潰しているのを察して、がんばっている女の子なんだと思って、その手を労るように指を絡めながら進むのだった。

 

 

そうしてもはや色々と打ち拉がれた女子二名は、これ以上は見たくない想いを抱きながらも、それでも見ていくことにする。

 

「それじゃ俺たちはこの辺で」

 

時刻は既に日も沈んでしまった午後六時……レオなどは帰らなければいけない時間であったりする。あるいは、もはや疲れたかである。

 

デートの最後に横浜の観覧車に乗る二人を見て、これ以上は野暮だろうという気分にもなる。

 

だが、光井ほのかと司波深雪だけは、最後まで見届けなければならない気分にもなる。

 

動物園ですごく『恋人らしい』様子。いや、恋人じゃないはずなのに、ああいった風なことをするアーシュラに対して、最大級にイラつく。

 

好き同士であるならば、それでいい……わけではないのが、深雪だが……ほのかとしては、その辺りの心が曖昧だからこそ、達也を弄んでいるようで好きになれないのだ。

 

そんな視線を後ろから受けながらも、観覧車が一周するまで密室の中で男女は話し合うのであった。

 

 

「そうよ。コウマ・クドウ・シールズこと九島弘真、または『四葉弘真』は、アナタの従兄に当たる存在なのよ」

 

「……それじゃ七草先輩の腹違いの弟なのか?」

 

「そうなるわね。だからかな。ワタシがあのヒトに対して当たりが強かったのは。氏より育ちとは良く言うけど……まぁ、それでも役者が違いすぎて、本当に同じ『種』の持ち主かとおもったもんだわ」

 

とばっちりも同然ではあるが、それでも元カレの姉貴である。色々と思う所はあったのだろう。

対面に座るアーシュラは外の夜景を見ながらつぶやく……。

 

「コウマは別にワタシのことを探ろうとはしなかったわ。ただ単に一人のニンゲンとして見てくれて、一緒にいても悪い気分がしない……そういう男子だったわ」

 

「……だから付き合ったのか?」

 

苛立ちが湧き上がるのを抑えて、達也は冷静に聞くことにする。

 

「まぁね。告白されたし、何より知らない男子じゃなかったから――――――けれど、別れたわ」

 

「……キライじゃなかったんだろ」

 

「そりゃまぁね。けれど……アナタが推測した通り、コウマはクドウ・シールズ家の養子なのよ。だから…… 『私』よりも先にコウマを見ていた子がいたの。分かっていなかったわけじゃないんだけど……それでも、その子―――アンジェリーナ・クドウ・シールズに比べれば……『私』はコウマに対して『本気』じゃなかったから」

 

身を引いた。そうとしか聞こえない発言。

そしてコウマとの付き合いに『本気』ではないアーシュラは、本気である女の子に『悪い』とおもったのだろう。

 

「―――私の家が色々と普通じゃないのは分かっているわ。だから……いい家族であるシールズ家を壊す可能性があるならば、それを……壊す可能性のある私は近づくわけにはいかないのよ」

 

「アーシュラ……」

 

「アナタの叔母さんには詳しいことは語らずとも、察せられている気がするけどね。ただ、そこを語っちゃうと、養子に出した先に妙なヘイトが行っちゃうからね」

 

じゃあキライになったから別れたわけじゃないということなのか。それは……達也を打ちひしがせる言葉だ。

 

「相手を想うからこそ身を引くのも一つでしょ。そしてコウマはアンジェリーナの想いに応えたんだから、私も未練を捨てなきゃいけないのよ」

 

「……けれど、まだ他の恋とかしようと思わないのか?」

 

「私も衛宮士郎の娘だからね。元恋人に未練を残しちゃうタイプなのよ」

 

まだそんな気分になれないと、寂しさを残しながら吐き出すアーシュラ。

 

「……最後に、何故―――俺と深雪の従兄は養子に出されたんだ?」

 

「そこは四葉との盟約にも掛かるところ。だけど、その出自から察すれば、簡単に息子だと言えないでしょうよ」

 

「だよな……」

 

「ただシールズ家……マイスター・九島健に預けたのは、我が家であることは断言しておくわ」

 

この日本でフリーランスに海外にも動き回れる魔法家とも言える、衛宮家が適任であることは間違いないはずだ。

だが、そんな事情などどうでも良かった。

 

今の達也にとって……必要なことは……。

 

「ごめん」

 

「何故、謝るの達也?」

 

「俺は無神経すぎた……いくら俺の家の事に関わることはいえ、アーシュラの過去に立ち入りすぎた。君の失恋話なんて辛い想い出を―――」

 

「かまやしないわよ。というか説明せずに通れる話じゃないもの」

 

「辛くはないのか?」

 

「少しは。けれどそれ以上に、いい想い出も一杯あるもの。コウマとFRIENDではなくSTEADYであったことは、掛け替えのないものよ」

 

晴れやかではないが、それでも笑顔で答えるアーシュラ。それに口ぶりから察するに、恋人としての関係は無くなっても友人であるという事実は変わらないのだから。

 

「まぁ……こんなところで大丈夫?」

 

「ああ。けれど……悔しいな。俺の従兄殿はお前にのろけさせるぐらいいい男なのに、俺は路傍の石も同然なんだからな」

 

「のろけていたかしら?」

 

「してた」

 

「だから泣いているの?」

 

……ナイテイル―――その言葉でようやく達也は、自分が涙を流していることに気付いた。

 

眼から止めどなく溢れ出る水は、自分には無いものだと思っていたものだ。

 

初恋の人が亡くなったとき、お袋が亡くなったとき、……妹が一度■んだときですら泣けなかった自分が……。

 

その事実が、どうしても受け入れられず―――そして観覧車が頂上から下がっていく時点で達也は、アーシュラに抱きついた。

 

どこまでも自分の思い通りにならない女。手に入りそうで入らないその事実が、どうしても達也を苛む。

 

どういう感情かは分からない、だがそうして抱きついた達也を押しのけようとせずに―――労るように背中に手を回すアーシュラ。

 

穏やかな時間なのか、お互いの呼吸音だけが狭い室内を乱す音……。

 

そのままに観覧車は周り続け……一周して地上に帰る。

 

涙を流す悲運の少年を癒やす祝福の御手を持つ少女は、そのままに少年を癒やしながら出てきて、そのままに帰途へと着く。

 

 

そうして―――カレとカノジョのデートは終わったのだが……。

 

 

2日明けて―――月曜日……。

 

 

「アーシュラ!!! 私と全てを賭けて決闘をして!! これは己を打ち込んだ決斗よ!!!!」

 

「意味不明なんですけど」

 

―――そんな意味不明なイベントが起こるのであった。

 

 


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