魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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hollowから数えて18年越しの驚愕のネタバレ

いや、彼女はマンションから出て行った大学生ではないんでしょうが、またどんでん返しがあるかもしれないが――――――。

いやぁ成田先生はスゴいなぁ。というかひむてんのことも考えると、きのこの偉い人の頭が――――――まぁうそつきのこな時もありますが(被害者・成田良悟)

そんなこんなで新話お送りします


第105話『着火までのカウントダウン』

 

自分のアホ毛……俗に竜の逆鱗とでもいうべきところを引っ張られたアーシュラは、自分の中身が反転する(うらがえる)のを認識していた。

 

本来的に英霊の黒化には、様々な要素が介在している。ぶっちゃけて言えば全ての英雄には反転する要素がある。

 

南米にいる神様はオルタ化の職人(!?)だったりするらしいのだが、結局の所……本質的には混血や退魔にまれにある『反転衝動』の『固定化』と変わらない。

 

特に混血に至っては『堕ちた魔』ということで、時に処分対象にもなる。

 

総じて言えば―――その容姿、その在り方、その根元……全てがその人物の『本質』に変わりはないのだ。

 

ゆえに―――。

 

「王の龍角に触れるとは、その不敬―――その身を以て償うがよいホムンクルス」

 

「ア、あーしゅらぁああああああっぶぁあああ!!!」

 

深雪がアーシュラのアホ毛に触れた次の瞬間には、アーシュラの姿……ジャージ姿であった彼女はいなくなっていた。

 

同時にその霊衣変更の余波なのか、それとも何かの力の発露なのか、深雪が10m以上もふっ飛ばされる。

 

「褒美だ。武装などせぬ。ここから動かぬ。私を動かしたならば、お前の勝ちだ」

 

明らかな挑発。ゴスロリドレスを着込んだアーシュラの嘲笑を浮かべながらの言葉に、深雪は完全にキレた。

 

起き上がりながら、CADの読み込み。もはや一切の容赦なくニブルヘイムを展開。最大冷気でアーシュラを包み込むことを意図。

 

しかしながら―――。

 

「貴様の冷気など霜の巨人にも劣る―――卑王灼岩吐息(ヘカトンケイレス)

 

瞬間、闇の炎……そんな風にしか称せれない、そういう風に形容することしか出来ないものがアーシュラの全身から吹き出る。

 

闇は徐々に赤熱を伴い、そして……。

 

深雪の魔法を食い破りながら、あちこちで灼熱を撒き散らす。吹き荒れていた冷気が全て灼熱に塗り替えられていく。季節外れの熱気どころか熱波が、周囲の人間から水分どころか『サイオン』すらも収奪していく。

 

そして……その灼熱の熱量を全て受ける深雪は、そのボディスーツをしこたま砕かれる。

 

「きゃあああああ!!!!!」

 

熱量と物理的な圧を同時に食らう深雪。それでも展開した障壁でガードをして致命傷を防いだ―――ように見えて、あちこちが叩かれた。

 

「ううっ…いたい……」

 

もはやギブアップを宣言してもいいぐらいに深雪はボロボロだ。正直言えば美少女がするような格好ではない

 

土と砂で汚れた顔や『だまだま』になった髪といい、本来ならばここで中止を宣告すべきなのだが。

 

「何故、止める必要が? 彼女が望んで立った戦場です。サレンダーを選ぶのならば己の口で、態度で示すべきですよ」

 

「そ、それはそうですけど……」

 

「重篤な怪我も即時に癒せる。それこそがアスクレピオスから続いてきた現代医学(メディカル)の利点だと思いますけど」

 

厳しい教師だ。普通の教師ならば、貴重な魔法師の才能を失わせることを恐れて、無理やりな介入を果たすだろうが……。

 

ヒトとしての道理を優先すれば、それは当然の話であった……。闇赤(あんせき)の魔弾や魔剣を何の起動式もなしに展開しているアーシュラの怒涛のラッシュの前に、深雪はもはや反撃の糸口を掴めないでいる。

 

「こ……これが――――」

 

「アーシュラ・E・ペンドラゴンの全力全開!!」

 

周りの驚愕の声を聞きながらも、ギャラリーである立華は嘆息しながら口を開く。

 

「なんだって触れなくてもいい所に触れちゃいますかね……アーシュラのアホ毛は、アルトリア先生と同じく竜の逆鱗! 忍空で言えば天空龍の『ちん○』みたいなもんですよ!!!」

 

ヒトの頭の特徴を『ち○こ』と呼ばれたのは流石に癇に障ったのか、スパン! と夫から渡されたハリセンで立華の頭を叩くアルトリア。

 

そんなことはともかくとして……。

 

もはやこれ以上は醜態を晒すだけだと気づいた司波深雪は、降参を口頭と態度で示したことで、アーシュラの攻撃は終わりを告げるのだった。

 

「チックショ―――!!! この女よりも強ければ、私は世界で2番めに弱くても良かったのに―――!!!」

 

降参をしたものの悔しさはあるわけで、深雪の嘆きの声が周囲に響く。

 

周囲の様子と同じくらいにボロボロになってしまった防御衣と、煤だらけの土埃まみれの身体となった司波深雪が、拳を地面に叩いて地団駄を踏んでいた。

 

そして深雪をズタボロにした張本人は……。

 

「残念ながら私こそが、この世界で一番美しく!強く! 強壮なる!! 自然の竜の姫(ナチュラルドラゴン)!!!……二重螺旋を弄りまくった雪造華(レプリカ)ごときが私に勝てるわけがないのだよ」

 

「――――」

 

普段のアーシュラならば絶対に言わない。

普段のアーシュラならば絶対に浮かべない。

 

そんな言葉と顔で言われて、深雪は悔しさばかりで泣きながら震える。

 

普段のアーシュラでは着ない。

普段のアーシュラでは染めない。

 

ゴシックロリータのドレス姿。露出度はかなり高いが、決して下品ではない。くすんだ色の金髪も似合っている。

 

闇竜の女王騎士、そんな称号が似合いそうな美少女がそこにいるのだ……。

 

「さて、賭けの景品は―――そうだな。タツヤ、貴様にしておくか。お前が発端だからな」

 

「―――いいだろう。もう煮るなり焼くなり好きにしろ!! ただし、深雪を回復させてくれ」

 

「構わぬ。今日の寝屋にて我が夫となるものの心残りは解消させてやる」

 

 

……その言葉の意味に、深雪は思考が纏まらない。

 

何を言っているんだ。この女は――――。

 

「貴様には今夜の私の伽の相手になってもらおう。長い夜になると覚悟せよ……」

 

艶めく唇を一文字に引きながら、そう笑みを浮かべながら言ったアーシュラに対して……。

 

「喜んで承ろう!!」

 

達也が喜色満面で言いながら、深雪を回復させたのだが。回復した深雪は……。

 

「「巫山戯るなぁああ!!!!」」

 

光井ほのかと共に雄叫びをあげる。叫び続けるのであった―――。

 

 

「ゴルン・ノヴァ」

 

―――しかし、その叫びを壊すようにアーシュラの理論・理屈を無視した理不尽極まりない破壊光線による圧力が、2人を襲うのであった。

 

しかしながら、それを防ぐものがいた。

 

「白旗を上げたのですから、これ以上は余分でしょう―――」

 

「よって、アーシュラ。これ以上はやめなさい」

 

教師2人。そしてアーシュラの親である2人が、立ちふさがるのであった。

 

「……ふん、興冷めだ」

 

その言葉の後には、白けたような顔をしたアーシュラはいなくなり、光が解けるような様子と共に黒アーシュラ(仮称)はいなくなったのだ。

 

死屍累々とまではいかなくとも、どこの戦場跡だと言わんばかりの惨状を前にして、呆れるような顔をしたアーシュラ(ジャージ姿)の第一声は。

 

「達也、護衛役(ガード)を辞退していい?」

 

疲れたような声でそう宣うも……。

 

「一度は引き受けた以上、使命は全うしなさい!」

 

スパンっ! と電光石火のハリセンの一撃で、アルトリアから頭を叩かれるのだった。

 

 

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

―――結局、その後はお開きになったりしたのだが、アーシュラのあの変化には全員が着目しつつも、それに対する詳細な説明はされないままであった。

 

二重人格と言う割には変化しすぎなそれは……。

 

「それは秘密です。ただ、別にどこぞのパッショーネのボスのようなものではないので悪しからず」

 

「私達は全然、あなた方……衛宮家のことに関して知れないんですね」

 

「他所の家庭の秘密を知ろうとするなど、それこそが下衆の勘繰りという言葉であり行動であることを、アナタは知るべきですね」

 

そのアルトリアの素気ない言葉に真由美はノックダウンしてしまう。真由美や克人の中で答えは少しだけ出ているのだが、その答え合わせを出来ないことが非常にもどかしいのだ。

 

「人の秘密を探って―――どうしようってんだ?」

 

その言葉―――少しだけ底冷えするような心地にさせるものは、士郎先生から放たれた。

 

「それは―――」

 

「アーシュラが何か悪いことをしたか? 俺たち家族が他所の家庭に迷惑をかけたか?」

 

「それは無いです……衛宮家の人々は、俺の異腹の妹を見守ってきてくれた。寧ろ……感謝しかありませんよ」

 

「………」

 

十文字克人が礼をしてくる一方で、真由美はまだ『不確定』なので、何も言えない。

 

だが、何故……自分たちが衛宮家を探ろうとしているかと言えば……明確なものは無い。

 

いや、違う。

 

……この人達を正当と認めてしまえば、自分たち……現代魔法師の名家と呼べる人間たちの存在意義があやふやになるのだ。

 

魔術師であるからとかそういうことではない。

全てが覆されそうだ。

 

だから……彼らを『インチキ屋』(チーター)だという証拠を突き止めたいのだろう。

 

自分たちの卑しい心を暴かれた気分だ。

 

「それで―――アーシュラは、し、司波と……や、やるんですか?」

 

恋する少年か!? などと言いたくなる克人の言葉に真由美は思う。

 

「やらせるかよ……ただなぁ『黒化』したアーシュラの本音がアレなのだとすると……」

 

「意外とコウマとの関係は、まだまだアレなのかもしれませんね」

 

夫婦揃っての思い悩みであり重い悩み……その意味は半端な理解であるが、アーシュラの方でも元カレに情を残しているということなのかもしれなかった。

 

その事実が、十師族の子供2人を色々と思い悩ませるのだが、教師2人は全く気が付かなかったのだ。

 

 

 

「敗者たる私が言えた義理ではないです。本当に何も言えないけど、分かっているけど―――お願いアーシュラ!! お兄様のDTを奪わないで!!!」

 

とんでもねーことを大声で宣いつつ頭を下げる深雪(机にデコをぶつけた)に対して、げんなりしつつもパフェを頬張るアーシュラは。

 

「あんなものただの冗談よ。真に受けないでほしいわ」

 

そんな言葉でお茶を濁すことにしたのだ。

 

「俺のオトコゴコロが弄ばれた気分だよ……」

 

「気にしないことよ。というか、こんなことで惑わされるアナタかしら?」

 

ジト目を達也に向けてのアーシュラの言動。

周囲の人間は『確かに』と思うぐらい納得してしまう。どうにも最近の司波達也は、アーシュラに関しては『ぽんこつ』とまではいかなくとも、調子を狂わせている。

 

あの夏の海で色々と達也の秘密とまではいかずとも、『自分はまともじゃない』と言われて告白を断られたほのかは、色んな意味でもやもやする。

 

アーシュラが魅力的な女の子であることは間違いない。

 

悔しいが、彼女はある意味では深雪以上に人気だったりする。

 

そこまで女の子女の子していないというか、男子が変なことを言えば、それに対してバシバシ相手をたたきながら笑いこけるタイプ。

 

要は深雪が『取っつきにくい女子』であるならば、アーシュラは『話しかけやすい女子』ということだ。

 

しかも深雪が明らかに、司波達也という実兄に異常な愛情というものを見せていることは周知なので、更にアーシュラに人気は集まる。

 

総じて言えば……。

 

強くて、格好良くて、キレイで、可愛い。

 

 

そこまで女の子していないという点も、男子や女子から好意的に見られているという点だ。

 

(まぁ定食10人前をペロリと食べる子だもんね……)

 

だが、その一方で嫌われる人からは嫌われる……特に現在の風紀委員長である千代田花音などは、九校戦での婚約者への態度と前・風紀委員長との絡みで、あまりいい感情は持てていないそうだ。

 

そういう風なことが分かる『情実人事』が風紀委員会で行われたことで、結局の所―――千代田は若干の陰口を叩かれることになった。

 

アーシュラ自身も

『藤堂高虎とて、ご主君である豊臣秀長が死んだあと、一時は出家していましたし』

 

などと宣う始末。

 

渡辺摩利(豊臣秀長)のためには働けど、千代田花音(豊臣秀吉)のためには働きたくない。

 

という態度だったのだが、その辺りを知られているのか知られていないのか、やむを得ず千代田は補充人員として、ほのかの親友である雫を風紀委員に入れたほどだ。

 

女子風紀委員を切ったことが原因では無いが、そういう情実だけでそうしたわけではないという『対外向き』の言い訳で、少しは落ち着く。

 

だが、それでもある種のヘイトを千代田は感じているようだ……。(情報源・北山雫)

 

「にしても論文コンペかぁ。今更ながら技術者一人の身柄で世界なんて変わりゃしないでしょうに。オッペンハイマーやアインシュタインみたいに核兵器を作れるわけでも無いだろうに、やるならば家族を人質に取るぐらいまでやらにゃ意味がなくないかしら」

 

「まぁ一理ある……ただ、本当に何も起こらないのか?」

 

「起こるんじゃない? 魔法師及び国家が求めるのは、純粋なまでの『力』―――だったらば、それは起こるんじゃない?」

 

その言葉に、全員が少しだけざわつく。

 

「チョット待ってよアーシュラ、論文コンペで何か起こるっていう確信はあるの?」

 

「分からないわよ。ただそういう『可能性』もあるってだけ」

 

「……要領を得ないことで、こっちを怖がらせないで」

 

喧嘩っ早いエリカにしては随分と弱気なことを言う。だが、アーシュラの眼はすでに何かを見ているのかもしれない。

 

そして……この場―――行きつけの喫茶店には、藤丸立華はいないのだ。

 

つまり―――何かが起こるのだと誰もが理解したのだが……。

 

「なぁアーシュラ、本当に夜伽の相手をしなくていいのか?」

 

「これ以上しつこく言うならば、『コレ』だぞ。覚えとけ」

 

―――アーシュラと達也が『仲良し』みたいなやり取りをしたことが、微妙に緊張感を無くすのだった。(2名ほどは憤怒を溜め込む)

 

 

 

そんな中……。

 

「それじゃ東京(トンキン)にある霍格華茲魔法巫術学院(ホグワーツ魔法魔術学校)を襲撃すればいいんですね?」

 

「ええ、その通りです お嬢様―――他の地域のホグワーツからも、学生たちはこの横浜(ハンピン)に集まりますが、一番に崩すべき本丸はここなので―――よろしくお願いしますね」

 

「まかせてください周道士!! それと大根饅頭追加でお願いします!!」

 

「私の方は小籠包をお願いします!!!」

 

その天真爛漫な少女の言葉と積み上がったセイロの数に目眩を覚えつつも、昔懐かしの手叩きだけで、美形の料理店オーナー周は、追加分の点心を持ってこさせるのだった。

 

(震天将軍の孫……まさかサーヴァントと契約した上で、ここまでやって来るとは……)

 

ぞくりと背筋を撫でる感覚に怖気を覚えつつも、周は計略を練る―――。

 

たとえ、それが小兵の蟷螂の斧にしかなりえないとしても、それしか出来ないのだから。

 

 

 

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