魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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水星の魔女第2シーズン始まったが、まぁいつものO河内脚本に関しては、賛否両論だな。
ただ、陰々滅々としたものを表でも裏でも出しておくよりは、いいかと。

やっぱりウテナ、ギアス然り……その辺りのことは塩梅だな。

などと考えながら久々の更新をお送りします。


第106話『竜星の魔女』

 

 

 

九校戦という魔法科高校の行事とは違い、論文コンペというよーわからん行事に関与することになったアーシュラと立華ではあるが、やることは殆ど変わらない。

 

ただ一点……違うところは個人的な防護が必要になるということだ。

 

よって―――。

 

「克人さんからのコンペ会場防衛隊の練習相手になってくれという誘いは断らざるを得ないアーシュラちゃんなのでした。ちゃんちゃん」

『フォフォフォフォ』

 

そもそも達也は、日常生活において危機に陥るような手合いではないのだ。しかし、『観測器』であるシバのレンズに『よろしくないもの』が現れたのは立華からも聞いている。

もしもあり得るならば、『中華大陸』における策動である。

 

「まぁ中華料理は大好きなんだけど、こういうことは困るのよねー」

 

『フォーウ!』

 

「で、アーシュラ何を蒸しているんだ?」

 

そんなアーシュラと飼い猫の会話ーーーキキとジジの会話(偽)に入り込む男子が一人。

トンボのような人間とは言い切れないのだが……。ともあれ答えることに。

 

「大根饅頭。っていうか、実験に影響出るかもしれないから離れてやっていろって言われたんだから、こっち来んな」

 

「来るまでに大根饅頭が冷えたらばどうするんだよ。そもそもお前は俺の護衛だろ」

 

半眼で睨むように言うが、全くもって通じない男である。

だが、後半の言葉には反論をする。護衛の役割はちゃんと果たしてはいるのだ。

 

「安心しなさい。ワタシはアーチャー……弓兵のクラス適性も持っている。鷹の目でアナタの周辺を張っているのよ」

 

言いながら眦の辺りに人差し指を持っていくアーシュラ。

 

先程からチクチクと見られている感覚を覚えていたのはそれでかと、達也は納得しつつ、蒸し終えた大根饅頭のアツアツをいただく。

 

「んで進捗は如何ほどなのかしら」

「いい、いや良すぎるぐらいだ」

 

特に実験の進捗に何の陰りも出ていない。むしろ、想定の範囲内に収まっている。

 

だが……。

 

「お前が関本さんにケツバット食らわせてから、全てが変わったからな」

「そりゃ見学に来たもの達を『無知な聴衆』扱いしていればねぇ。千秋ちゃんの指摘も聞こうともしていない風だったからってだけよ」

 

現在、公開実験が順調なのは、関本という三年の風紀委員でもあった人物がワケの分からんアジテーションを行っていたところに―――。

 

この娘がケツバットをくれてやった後に一年G組の平河千秋の指摘……実験におけるある種の見落としを見つけたあとには、少しだけ実験は加速するのであった。

 

のちに『関本アウトー事件』などと、少しの挿話として一高で語り継がれることとなる。

 

「そりゃ千秋ちゃんは、獅子面の大統王閣下と奪雷魔人どのに鍛えられたもの、エレナおばぁちゃんにも『よろしくねー』って言われたし」

 

「そんな理由か」

 

結局のところ、彼女の積極的な動機の中に達也はいないのだと、少しだけ寂しく思いながら大根饅頭を頬張るのであった。

 

それをしてから、とっとと他の面子にも持って行けとケツを叩かれるのであった。

 

 

学校に隣接する丘を改造して作られた野外演習場。魔法科高校は軍や警察の予備校ではないが、その方面へ進む者も多い為、このような施設が屋内屋外、多種多様に充実している。

 

その人工森林の中で、部活連前会頭・十文字克人は人知れずため息を突いた。 今回の論文コンペで克人は、九校が共同で組織する会場警備隊の総隊長を務めることになっている。

 

他校の代表と会合を持つ傍ら、こうして自ら訓練の先頭に立つことで、警備部隊員に抜擢された生徒たちの士気を高めているのだった。

 

が―――。果たしてこの訓練に意味はあるのだろうか? そんな自問が渦巻くのだ。

 

現在、十文字が相対する生徒たち。同輩・後輩合わせて50人―――その中の大半は、1科生が大半なのだ。

 

そして大半の連中は、既に怪我をした。ギブアップなどの理由で下山をして、現在でも生き残っているのは、10人にも満たない。

 

実を言うと、この演習以前…2学期が始まってからなのだが、2科生たちの実力は格段に上昇(レベルアップ)していた。

道場破り、もとい野試合よろしく2科生たちは多くの1科生たちに挑みかかり、その大半を倒してきた。例え倒されなかった人間でも、それは辛勝・薄氷の勝利とか言う言葉がいいところだ。

 

だが……その2科生たちの大半は、この警備部隊の面子に参加しなかった。

 

隔意があるとかそういうことではなく……。

 

『魔法師相手ならばそっちでいいだろうさ。問題は現れるかもしれない魔術師や死徒、ついでに言えばサーヴァントを相手にする場合だ』

 

本学期から赴任したゼムルプス講師の、達者すぎる日本語での『お前らにウチの生徒は貸さん』という態度は多くの反感を買ったが……『獣狩り』の魔術特性を持つ彼の前では、十文字ですら何も出来なかったのだ。

 

無論、講師もまた行きたいならば行けと2科生たちに言っていたが、多くの生徒は行かなかった、来なかったのだ。

 

(分かっていた。分かっていたことだが……)

 

こうなることを避けたくて、アーシュラを生徒会会長にしたかったのだ。こうなることが分かっていて、それを避けたかったのに。

思惑通りに行かないことの連続に、克人は何処に向ければいいか分からぬ恨み言を溜め込むことになる。

 

そんな中でも、相手をすることになった数少ない2科生のうちの一人である吉田幹比古は、十文字の相手をしながらも変な空気を感じていた。

 

(なんだ……この気配は?)

 

どうにも妙な空気を感じるとでも言えばいいのか、重みを感じるとでも言えるのか、そんな感じである。

 

俗に言えば……隠したいのに隠しきれない存在感を発揮していると言えるのだろうか。相手がどういう人間性であるかが分かってしまうのだ。

 

(サーヴァントなんだろうか?)

 

一番あり得る可能性を感じてどこかに警告を放とうとした瞬間、この野外演習場全てを圧するほどの存在感が現れる。そして膨れ上がる魔力は控えめに言ってもサーヴァント級だ。

 

「なんだこれは!?」

「十文字先輩!!」

 

流石に気付いたらしき十文字克人であるが、その時にはもはや時既に遅しである。

 

ハンニバルの山越えか、源義仲の牛追いのごとく―――演習場の反対側(・・・)の山から、横一列で騎馬の群れが轟然としながらも整然とした乱れぬ行進をしてきた。

 

緑色と紫色のオーラを纏った突進で落葉積もる大地を踏みしめながら、千切り飛ばしながらやってきたのだ。

 

その数は数えるのも馬鹿らしくなるほどに多すぎて―――蹂躙される大地が自分たちの末路とリンクした時には―――。

 

「逃げるぞっ!!! 全員、全力で丘を駆け落ちろ!!!」

 

下りろではなく、落ちろという辺り十文字も混乱しているのかもしれない―――。

 

などと、冷静に返しながらもそれぞれ自己加速魔法を発動させたり、幹比古は『筋斗雲』と『韋駄天』の二重魔法を発動させてから駆け下りる。

 

 

そんな異常事態を遠くからでも察したアーシュラは―――。

 

「美月ちゃん! エイミィ! この大根饅頭は任せた!!!!」

 

「えっ!? アーシュラちゃん!!!」

 

「えっみー!?」

 

手伝いをしてくれていた2人に大根饅頭の処理を任せて、走りながらアッドを手に持ち叫ぶ。

 

「アスラウグちゃん直伝!! 高速移動フォーム(ミノフスキーフライト)!!」

 

『その名称はどうかと思うぜー!!!』

 

とはいえ、言葉の通りにアッドは巨大な外付けの緑色の翼と黄金(きん)の翼を展開して、アーシュラの背中に回る。

それは、エハングウェンという船の光の帆に少しだけ似ている代物であり、巨大な推進機構とも言えるものだった。

 

一瞬にして、音速の機動に転じたアーシュラは、音を置き去りにしたもので野外演習場の方へと飛んでいく。

全員が唖然とした後には、ここからでも聞こえてくる地響きの前に『何か』を予感する。

 

そして騒ぎの中心に駆けつけたアーシュラは、眼下に広がる光景を前にして、一も二もなく射撃を敢行する。いきなりな光の矢の連射を前に、殿を勤めていた克人は驚くも、誰がやってきたかなど考えるまでもない。

 

矢で打ち倒されるカタフラクトの騎馬。援護であることは間違いなかった。

 

「衛宮さん!!!」

「アーシュラ……」

 

上空(うえ)を見ると馬の踏み足で聞こえなかったが、ソニックブームを発生させる魔道具で自在に飛び回るアーシュラの姿が。

 

「随分と時代を遡った演習しているんですねぇ」

 

「「「「んなわけあるかー!!!」」」」

 

騎馬武者に追いかけられる恐怖を前に、三方ヶ原の戦いで脱糞した神君を体験したかったとか言われても、なんか納得しかねないのが彼女である。

 

どうする家康ならぬどうする克人な状況であることは確かであり、先程からアーシュラが矢を放っているのだが騎馬の勢いは殆ど衰えない。

 

このままでは追いつかれる―――。かと思った時に、七草の魔弾……氷の魔弾が放たれる。

 

この事態を前にいち早く覗き見の眼で理解した彼女の援護だ。

 

しかし、たいして意味はない。当たる前に霧散しているのを見ると、馬も魔獣とまではいかずとも幻想の存在なのだろう。

当たることもないとはいえ―――礫のような氷の群れの前に、視界を奪う意味ぐらいはあったようで……。

 

少しだけ馬の行進に遅滞が生まれた。

 

そこを狙って、アーシュラは地上へと向かう。当然、推進機構ごとである。

 

「遅い! 乗って!!」

 

「お前はモロの君の子供か!?」

 

「いやワタシはアルトリアの子供ですが」

 

軽口を返しながらも、急いで全員を乗せるべく動く。

一番疲労困憊していたらしき五十嵐を乱暴な扱いだが、それでも早く、物理法則が許す限りの速度でアーシュラが開放した背中のスペースに乗せていく克人であるが、今にも迫る騎馬を前にして恐怖しそうになる。

 

「十文字先輩!!!」

 

「スペースがない!! こんな時に己の肉体が恨めしい!!」

 

「―――掴んでください。振り落とされないように努力しますが、しっかり掴んで!!!」

 

アーシュラが背中の収納スペースを閉じた後に、リトル・エハングウェンの背部に持ち手と思しき白い棒のようなものが落ちてきて、乗せるべき足場がせり出してきた。

 

シートベルトも命綱もない。まさしく綱渡りのフライト。

だが、カッコの悪いところを下級生の女子、想いを寄せている少女に見せられない十文字克人は―――。

 

「出していいぞ!!!」

「アイアイサー!!」

 

―――勇気を張ることにするのだった。

 

瞬間、克人の全身にまとわり付く草蔦のようなものが、完全に身体を固定して勇気を減じたのだが、それでも―――。

 

飛び立つリトル・エハングウェン。そして克人は感じた。ここは特等席なのだと―――。

 

少しだけ遠いが、アーシュラの真剣な横顔が見えることに少しだけ感謝するのだった。

 

そして瞬間、天空から騎馬の列を迎撃するものが放たれた。

 

「剣!?」

 

飛び来る光弾は一瞬ではあるが刃物の類であることを理解できて、克人は驚くが、それ以上に剣が巨大な魔力を携えていたこと……。

 

(もしや士郎先生か?)

 

「……速く帰ってこいってところか。飛ばしますよ!」

 

後ろで響く爆音の中、風圧を受ける中でも聞こえたアーシュラの言葉通り速度が上がる。

凡そ時速280kmというところか―――それにしても、圧を受けると言ってもそこまで何もかも食いしばらなくてもいい辺り、何かをしているのだろう。

 

風流操作という点では彼女は特級なのだ。

 

(この空のドライブも終わりか)

 

緊急事態だというのに不謹慎かもしれないが、そんなことを考えてしまうぐらいに、この時間が名残惜しく感じられるのだった。

 

ついでに言えば赤い毒々しい閃光が斜面を焼き尽くしたことは、忘却するのだった。

 

 

「食らえ――!!! 地球国家元首ビィイイイム!!!!」

 

言葉で赤い閃光が演習場の斜面を焼き払うのを見ながら、士郎は生徒であり友人の娘に言う。

 

「ただの惑星轟の応用だろう。そんな叫ぶ必要あるのか?」

「おばあちゃんが言っていた。必殺技は己の魂を込めて放つべきだと!」

「まぁ見せるまで、時間はかかったからな」

「で、先生―――『敵』の姿は?」

「後方にいると想って燻り出そうとしたが、無理だな。あの騎馬の中にいるぞ」

 

一高の屋上にて『援護射撃』にしては盛大なものを放っていた2人は、放ったものの効果が然程ではなかったことを確認した。

 

同時に―――アーシュラの帰還がなった。

 

「アーシュラ!!!」

 

屋上から重力制御で下にいるアーシュラ目掛けて飛び降りた教師と生徒だが―――。

 

「着地任せた!!」

「ほい来た!!!」

 

生徒の方は、アーシュラにキャッチを願い出るのだった。同時にアーシュラもそれをイエスと答える。

 

推進機構からはいでた後に、すぐさま抱きとめられた立華は要点を伝える。

 

「あの騎馬軍団の中にサーヴァント及びマスターがいるわ! 防御が硬すぎるのは令呪によるブーストもあるのだろうけど、何かのトリックがあると思っておいて」

 

「分かったわ。対策は?」

 

姫抱きで止めたマスターからそれを聞く。

 

サーヴァントとマスターの関係は複雑だ。単純な戦闘力という点で言えば多くのマスターはサーヴァントに及ばない。

そして戦闘知識においても当然だ。

 

だが、それだけではないのだ。

有り体に言えば彼らの関係は野球のバッテリーと同じ。投手は基本的にはバッターに打たれない球を投げ込む。

だが、その打たれない球が何であるか?というのを案外、絞りきれないことがある。

 

そこで捕手は様々なことを考えながら、投手に『助言』をするのだ。投手が余計なことを考えずに自分のミットを目掛けて投げ込めるように。

投手一人に責任を負わせないように、投手が気付いていないこと……グラウンド条件や相手バッターの苦手、ランナーのリード、相手ベンチの動き…etcに気づく義務があるのだ。

 

ある種、当事者意識はあれども『傍目八目』というのを原則に入れておかなければ捕手は務まらないのである。

 

それは2人の関係にも似ていた。

 

「相手は108の宿星の一つ『天威星』。他にもいる可能性もあるから用心して、纏うの(ドレス)は『メドゥーサオルタナティブ』。イケるわね?」

 

「いいけど……正直、お母さんここに居なくてよかったぁー……」

 

蛇と竜とでは根本的に何か合わないのもあるのかもしれないが、どうにも第五次聖杯戦争におけるライダー=メドゥーサとは隔意を持つのが、母親なのだ。

 

ついでに言えばアーシュラは特にメドゥーサには思うところはない。

『シロウの娘ならば、協力しないわけにはいきませんね』

 

などと言ってくれたほどであるし、よって―――。

 

「安心しろ。どうせもうじき此処に来る」

 

―――もはや逃げ道(いいわけ)は無理なのだと、涙をほろりと流してから決意する。

 

「んじゃ行ってくるよ! リッカ、お父さん!!

逃げたら1つ! 進めば2つ!!とはどっかで聞いた先人の言葉だけど―――ワタシは、威風堂々と進んで全てを手に入れるんだから!!」

 

―――それこそがキミの王道なんだね。アーシュラ……―――

 

どこからか幻聴が聞こえた。その言葉を聞こえる前から、流星のごとき竜星は飛び出していた。

 

―――その姿が魔女の如きものに変わっていく。

 

黒いフードを目深に被り、その衣装も黒いが随分と媚態を強調したものへと変わり、その金色の髪に紫が混ざっていく変化。

 

そして飛び出した竜星と遂に騎馬が接敵しようとした時に、何かが騎馬の群から飛び出してきた。

 

「私より目立たないでくださいぃいいいい!!!」

「アサシン! あとで可愛い衣装着て自撮りして、サバスタにアップしよう!!!」

「マスターの御心に応えてみせますぅ!!!」

 

身を低くしながら接近していく竜星の魔女と天威星の将軍がブチカマシを演じたのは、その直後だった……。

 

 

 

 

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