魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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短いですが、投稿します。


第108話『聖杯問答Ⅰ』

 

 

「さて、どこから話したものやら……」

 

迷うような言い方をする士郎先生。だが何かを決意したのか全員に向かって口を開く。

 

「以前は立華がかなり強引な説明をしたようだが、それだけじゃ不足だろうな。ならば質問に答える形でいこうか」

 

案内されたというよりも、案内した場所は部活連の会議室。多くの人間を収容するに足る場所に30名ほどの人間が詰めていた。

 

その全員が様々な聞きたいことがあって、ここにいたのだが……口火を切ったのは、既に会長職を引退したとはいえ、十師族の一人として、この学校で色々とある女子、七草真由美からであった。

 

「……以前、立華さんから見せられた映像から英霊の召喚は、容易ならざるものであると思っていました。それも、カルデアのような大規模施設やそういった霊地を所有してこそ可能なものであると」

 

一拍区切ってから真由美は再び口を開く。

 

「ですが、前回のブランシュ事件と今回の襲撃……その容易ならざるものが容易く行われ、それを使役するものたちが出てきて……ハッキリ言えば、あなた方の狂言なんじゃないかと思うほどなんですよっ!」

 

その言葉に沈黙が降り立つ。確かに状況だけ考えれば、カルデアが裏で糸を引く。一から十まで三味線を弾いていると考えられなくもないが、それにしては随分とやって来ている連中は全員、凶悪だ。

 

「悪意的な見方は悪くないな。だが、ハッキリ言ってしまえば、ソレはない。ただ……俺の地元(お国)のことが発端だからな。少々長くなるが説明に付き合ってもらおうか」

 

衛宮士郎という先生は、あまりあれこれ口出さないヒトに思えていた。必要最低限で済ますというか、あまり……過干渉をしない。起こった事態には率先して当たるも、基本は生徒の手に余る事態のみに動く。

 

そういう人だ。ゆえに……少しだけ不思議な気分ではあった。

 

そんな人から……裏ごとの事情を聞くことになるなんて―――。

 

「凡そ今から3世紀以上前の話……いわゆる文明開化以前、まだ江戸徳川幕府が存在していた頃にまで時は遡る……場所は九州、現在は『冬木市』と呼ばれる場所にて起こったことだ」

 

この頃には、鎖国体制が確立され外国人の来日すら覚束ない頃……ある『奇跡』の再現を望んで2つの魔術の大家、西洋に端を発するものたちが、九州の一地方……強大な魔力集積地であり、魔術協会の目も遠い処に集まり、その土地の魔術師との合議を行った。

 

「錬金術の大家アインツベルン、支配と収奪を得手とするマキリ、そして土地の魔術師、潜伏キリシタンのまとめ役でもあった遠坂……。この3つの家が協力し、そして魔法使いキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグというクソジジィの仲介のもと、『奇跡』の再現の為に行われたものが、『聖杯戦争』という魔術師と英霊の分身たるサーヴァントたちによる戦いなんだ」

 

魔法使いの名前が出た瞬間、幹比古とエイミィが『驚きすぎて盛大な咳』を発したことから、士郎先生曰くの忌々しげなクソジジィは恐ろしいほどの大人物である。いや、大人物という括りすら烏滸がましいということを後に知ることになるのだが、今は割愛する。

 

「ある奇跡……というと?」

 

「コレに関しては三家で目的は違った。アインツベルンは自分たちの祖が『発掘』した『第三魔法』というもの。マキリに関しては伝聞ではあるが、『この世全ての悪』の廃絶―――ご当主は後年にはアレ(・・)になっていたが……それはともかく、遠坂の方は根源の渦、『 』に到達することで『魔法』を手にすることにあったわけだ」

 

魔法……今まで自分たち魔法師は何気ない言葉として使っていたが、魔術師側における『魔法』とは、恐らく遥かに尊いものではないかと思えていた。

 

それは言霊のように鳴り響いていく。

 

「魔術師の究極的な目的は、次元論の頂点、世界の『外側』へと至り、新たな魔法を宿すことにあるからな。この儀式は三家にとって非常に旨みのあるものだった―――それぞれの家があらゆる秘術を提供しあい、そして完成となったものこそ『大聖杯』と呼ばれる大魔術降霊盤とも呼べるものだった」

 

「それを介して英霊を呼び出し、そして戦い果てた英霊の魂が『座』へと帰る際に穿たれる『孔』より『 』にいたろうとする試みこそが、この聖杯戦争の肝だったわけです」

 

夫の言葉を引き継ぎ、妻が口を開いた。

 

「ですが、当然ながらこういったものは続ければ続けるほど誰かの耳目を集めるものです。当初は極東という魔術の後進国での妙な儀式という触れ込みだったのですが、都合四回目にて魔術協会が本腰を入れて介入してきたのですが―――まぁそれは余談です。問題は、この秘密儀式が「世界の裏側」の多くの関係者に漏れ出してきたという点です」

 

「では、その大聖杯を用いた儀式魔術が……粗製乱造されたと?」

 

その表現は大雑把な表現ではあるが、状況説明としては、それで良しとした。

 

「大まかに言えばそういうことです。もっとも、その目的は色々と『粗悪』なものでしたが……」

 

嘆くように言うアルトリア先生と苦笑する士郎先生、そして娘は『惣菜パン』をかっ喰らっている。

 

「その中でも極めて『大聖杯』と同じくらいの機能を有したものこそが、フィニス・カルデアの英霊召喚システム『FATE』。立華にとっては高祖父に当たる魔術師マリスビリー・アニムスフィアによって構築されたものが有名ですね」

 

そこまで聞かされて、ようやく分かったことは……。

魔術師の闘争において、そういう高位の存在を使役することは『ありえない』ことではないということだった。改めて恐ろしく感じる。

 

「ですが……お二方及び女子2人は、この事態を予想していたかのようだった……亜流の聖杯戦争とでもいうべきものが起こっているのですか?」

 

「大まかに言えばそういうことです……と言っても詳細を掴めたのはつい最近のことですけどね」

 

これは立華の言葉である。十文字が自分の推測に恐れていたのをあっさり認めたのだった。

 

「――――――話してくれるのか?」

 

「言わなきゃならないでしょうよ……ですが、これを聞いたならば、出来ることならば論文コンペは、リモート方式での発表に切り替えてほしいですね」

 

「………とりあえず話してくれ」

 

まずはそれからだ。と無言で付け加えた克人に対して立華は説明をする。

 

「先程、アルトリア先生の説明にあった通り、極東というのは神秘の分野では後進国であるというのが定番であり、同時に相容れない思想魔術、要するに西洋式ともまた違うものがあり、なるたけ不干渉でいきたい面があったりします」

 

「退魔・混血もそうなんだよね。何となく読めたよ藤丸さん―――中華大陸にて亜種聖杯戦争の兆しが出てきたんだね?」

 

幹比古の言葉に頷く立華、しかしどうして分かったのかを問うと。

 

「流石に君たち天文科ほどじゃないが、僕ら古式も陰陽寮の頃から培ってきた星詠みぐらいは出来る。大陸側にて巨星が『湧き出た』。と分かったからね」

 

「おまけに!観測球ルクスカルタからとんでもない振れがあったってロンドンのお祖母様が言っていたわ!! 巨大地震の地震計のように針が振り切ったって!」

 

二人ほどの証言。分からない単語があったが、それでも世界を見れることの出来る人間からすれば、それは当たり前に理解していることのようだった。

 

「吉田君とエイミィの言う通り亜種聖杯とでもいうべきものが出現したのは中華大陸。それらを用いてサーヴァント召喚―――大中華(ダイチュンファ)亜種聖杯戦争が開始されたのは間違いありません」

 

ざわつく一同。しかし、そこには疑問が存在した。

 

「ちょっと待て、確かにそんな大儀式が行われたのだとして、なんで大亜だけで完結していないで、わざわざ日本海を渡ってまで、ここでサーヴァント達が暴れまわっているんだ?」

 

士郎先生がホワイトボードに示した……

 

『七人の魔術師(マスター)が使役する七騎の英霊(サーヴァント)による最後の一組になるまでの殺人すら容認するバトルロイヤル』

 

という物騒すぎる説明を見ながら顔を青ざめながら渡辺摩利は疑問を呈した。

ある意味、無情すぎる話だが、そんなものはヨソで勝手にやってくれと言いたくなる。

 

なぜ、魔法科高校を襲ってきた。そして、そのマスターの一人が年端も行かぬ少女であることが色んな意味でぐるぐる巡っているのだ。

 

「渡辺先輩の言いたいことはもっともですね……ですが、現実に亜種聖杯の『器』は、この極東は『横浜』に顕現すると『預言』が下りましたのでね」

 

「どういうことだ?」

 

「先程、大聖杯が召喚のキモだというのは士郎先生の説明にあった通り。ですが、それは召喚のシステムであり、敗れた英霊の魂を集める違う『器』、小聖杯というべきものが必要なんですよ」

 

英霊の魂は座に還るべきもの―――、しかし聖杯戦争における英霊の魂は世界の外側という門扉をこじ開けるための『鍵』であり『ピッキングツール』とも言える。

 

となれば、一つ一つが各個で戻られては困るのだ。それを捕らえておくための檻であり網は必要である……。

 

「それが横浜に現れる……はた迷惑な話だな……」

 

「大亜の魔術組織、はたまた大亜の魔法機関だかは分かりませんが、聖杯戦争の参加者たちにこうも言ったのでしょう。

『横浜において小日本(リーベン)の魔法師共、その学生が大挙する一大演技が開催される。軍と歩調を合わせよ』とでもね」

 

「!……大亜の軍が横浜論文コンペを襲撃するというのか!?」

 

「かなり高い確率で」

 

正直、そちら……雑兵共(ARMY)に関してはどうでもいいと思っている立華であるのだが、もしもこれが『蠱毒の法』の如きものを狙っているならば、かなりマズイと思うのだが……。

 

「だが、何故このタイミングで戦争が勃発したんだ? あまりにも示し合わせすぎじゃないか?」

 

「まぁ誰か黒幕がいるのか、はたまた偶然なのかは分かりませんが、まさかロストベルト(異聞帯)の層を発掘してそんなことをやるだなんて誰が考えられるって話なんですよ。夢の島でゴミ漁りをしていたらば偶然にも世紀の発明を大発見、はたまた工場内で見つけてしまった未来のサイボーグのCPUチップで億万長者―――なんて確率の話ですよ。あり得ない」

 

「? どういうことだ?」

 

多弁になにか度し難い不運にあったかのように現状に対して嘆く藤丸立華は、再度説明を始める。

 

「つまり、大中華亜種聖杯戦争の発端たるものは『沈んだはず』の『世界』を利用したものなんですよ」

 

それは『先』が無い『負けた世界』のカタチ。しかし、それは確実にこの惑星上の中国大陸において再現されたものだったのだ。

 

遡ること半世紀以上前の出来事……。

 

「濾過異聞史現象によって発生した「IF」の世界……人智統合真国シン―――時の彼方に埋もれて眠っていてた世界の残滓が、彼の地に聖杯をもたらしたのです」

 

藤丸立華の言葉はこの上なく不気味なものを加えながら全員の耳に残る……それは紛れもなく、人理を、汎人類史を脅かすものであったからだ……。

 

 

 

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