魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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ティアマトママ爆死!!

もうちょっと課金すべきか、それともと悩んでしまう引きの悪さーーーなんかねぇ。こうーーー手心とかね。

などと思いつつ新話お送りします。


第110話『虎との戦いの前の序幕』

 

 

 

雨が降り止まぬ放課後……いつもならば論文コンペの為に野外で色々とやっている面子も今日ばかりは、屋内での作業や訓練に変更しなければならない。

 

その時、一高にてとある他国の策動が行われた。

 

それは論文コンペメンバーの一人の作業結果と、その身に宿す『原液』を回収するためだった。

 

他国の策動の下手人となった男は、順序よく『作業』を開始した……。

 

催眠ガスが充満を果たし、それでも室内にいるガイノイドのホームヘルパーによって、それらが取り除かれた後に、丁々発止の体で入った男子生徒が一人。

 

昏倒しているのか昏睡しているのか……どちらでも良いが机に突っ伏している下級生。どうやらガスは存分に吸い上げたらしい。

 

しかし、その手は端末の操作機に乗せられている。

 

2科生の地位にありながら、今回の論文コンペで主要メンバーに選ばれた男、妬み嫉みを持ちながらも入り込んだ男子生徒は、下級生が本当に眠り込んでいるのか……それを確認する。

 

「―――寝ているか……」

 

自発呼吸の音が聞こえる。だが本人の瞼は閉じられている。

 

これだけで確認を終えるのは危険かもしれないが、室内に送られた催眠ガスは、一呼吸するだけでも巨象を昏睡させるものだ……。

 

今のうちにデータを取ろうと、端末の接続部にハッキングツールを差し込もうとするのだが……。

 

「な、ど、どういうことだ? なんだよこれ……!?」

 

何故か、それが行われない。それどころか―――

端末が光り輝いているように見えるのだ。何かのチカラを発しているとしか考えられない。

 

「―――無駄だ魔術師。我が手にある限りこの現代の文官御用達器は、聖櫃も同然となる」

 

「!!!!!????」

 

ぐるん!という勢いで突っ伏していた首を、関本に向けてきたことで驚天動地の心地にもなる。

 

見えてきた顔は確かに『司波達也』のはずなのに……司波達也には見えない気がしていたところに更に『言の()』が突きつけられる。

 

「ここまでの映像はそこにいるメイド型のドールによって記録されている―――そして……」

 

「……関本さん。一連の行動は全て記録済みです。大人しくしていただければ手荒なことはしません」

 

「千代田っ!!」

 

部屋の入口に立っていたのは2年生だが、自分と司波の上司(うえ)に当たる千代田花音である。

そんな千代田は、ドラマの刑事よろしく様々な物証を以て、こちらの不実を明らかにしていく。

 

言い訳は無駄なようだが、それでも―――。

 

「―――こいつは司波達也ではないだろう!? 部外者がここにいるのはどうなんだよ!?」

 

「……はて? そこにいるのが司波君ではないとどうやって証明するんですか? 私の眼にもあなたの眼にもあの生意気な自慢屋にして妹マイ・ラブから金髪ハーフに心変わりした後輩にしか見えませんが?」

 

すっとぼける千代田も半分は関本と同じ気持ちなのだが、とりあえずこの場では腹芸を実行する。

 

「がっ、あ……あ―――」

 

証明役を完全にこちらに丸投げした千代田をにらみ、再び『司波達也』を見るも、変化はない。

 

ここまで高度に『別人』になりきることは『現代魔法』では不可能だ。九島家の秘術だか古式の術だかでも、『自分がイメージした別の姿』を映し出すことしか出来ない。

 

特に被術者の背丈が150cmしかないのに、そいつを190cmもの人間に変えようとすることは実質不可能だ。

完全に何処かの誰かの姿に成り代わることは、背格好が似ている程度ならば、ともかく完全にはとてもではないが不可能……。

 

その理屈を知っているだけに、証明は難しく、やはり何かあるらしく少しだけ暗い顔をしている千代田も後ろめたさはあるようで、関本はそれでも証明責任は自分にあり、それを証明したところで自分の犯行を無に出来るわけもなく―――。

 

「ならばお前だぁあああっああああああああああっあああ!!!!」

 

腕輪型のCADを使っての魔法使用。『司波達也』に対して向けた魔法だが、それがすぐさま大絶叫へと変わったのを千代田は聞き届け、見届けた。

 

『敵意』を向けられた時点で、『司波達也』の行動は早かった。彼にはCADこそ無いが、手元にあった筆記用のペンを『指』のスナップだけで、打ち出したのだ。

 

その速度は一瞬にして亜音速に達し五指を開いて魔法を向けていた関本の腕の手首部分……腕輪型CADを擦過する形で脇の下を通過。

 

それだけでCADは微塵に砕けて飛んでいくペンは、頑丈な壁に深々と突き刺さり亀甲のひび割れが幾重にも走る……。

 

当然、通過した軌道上にあった関本の腕―――制服部分は、CADと同じく極小の塵になりちぎれ消える、そんなものを受けた関本の腕は『ありえざる三回転』を強要されてその痛みで悶絶をした後には、意識を手放さざるを得なかったのだ。

 

「あがっああがっ……」

 

ヨダレを零しながら白目を向いた関本 勲が床に突っ伏す前に、『司波達也』は彼を抱きとめた。

 

「すまないな。このような行いは騎士にあるまじきものだが、君のこれ以上の行いも許せず、僕たちのチカラを示すためにも仕方なかったんだ」

 

いつもの司波達也ならばしない優しげな言葉と誇りを持った言葉の後には、恐らく折れていたであろう関本の腕に手を当てて癒やしているようだ。

 

この癒やしの秘蹟一つとっても、現代魔法師が到達出来るものとは違いすぎる。

 

「……もうその『変装』だか『変身』解いてもらっていいですか? なんていうか司波君の顔でそんな人格者みたいな言動されると調子が狂いますので」

 

「よっぽどですね彼は……では、解かせてもらいましょうか」

 

千代田の言葉にそう言ってから、変化は起こる。

水の煌めきのような魔力の輝きを解くと、そこには司波達也はおらず。

九校戦の際に何度か見た顔。あの懇親会にて九島烈にしてやった(・・・・・)少年騎士。

 

円卓の聖騎士サー・ギャラハッドがいたのだ。

 

 

―――Interlude start……。

 

「ふむ。つまり風紀委員会としてはワタシの『ラウンズ』の総力を見たい、確認しておきたいというんですか?」

 

「……うん。ダメかな?」

 

「ヒトの魔法を探らないというのは、マナーのはずだけど北山さん?」

 

その言葉に、集まった風紀委員たちが呻く……。正面から聞く役を押し付けられた雫もそういう正論を言われてしまうと弱い。

 

「春のブランシュ事件と九校戦でのことで都合2回ほど見たよ。そのチカラは圧倒的だ……けれど論文コンペでは、どうしてもその関係上……連携が必要なんじゃないかとか思うんだけど……」

 

マーシャルアーツ部の一人として、色々と接近戦自慢な沢木が言うが……。

 

連携(コンビネーション)なんていらないと思います。それぞれで『相応の相手』を倒せばいいでしょ」

 

更に接近戦を得意としている『超級の戦闘者』の言葉には反論が出来ない。

 

「……そんな無情な……」

 

「どうせならば中条会長が直属にした『戦術騎士団』と連携をした方がいいと思いますけどね」

 

「もうやってるよ。そっちに関しては……」

 

ならばいいじゃないかと想うのだが……。

 

「ハッキリ言うわ……生徒の中ではアナタが最大の戦力だわ。おまけに私達には未知の術式ばかりで、私達の努力なんて嘲笑っていく……そんなアナタの動きやチカラを少しは理解しておかないと、どうなるか分かったもんじゃないのよ」

 

最後には今まで黙っていた千代田が口を開く。

だが、その言葉にアーシュラとしては少々、言いたいこともある。

 

「……正直、ワタシにはわからないですね…… 共に戦うということは、すなわち、互いの力を利用すること。ならば、その能力に応じた役割を与えられるのが必然。

純粋神秘存在(ミスティック)などを傷つける能力を持たぬ存在は、その数をもって盾となるのが適当というもの。

まぁ死徒なんかの血袋にされたりサーヴァントの食糧(魔力)になられても洒落にならないから適当な所で逃げてほしいけど……」

 

その薄目で明後日の方を向きながらの残酷な言葉に、何人かは憤激しそうになる。同時に敏い人間たちは、告げられた考えの裏にあるものを見て心臓に冷たいものを入れられた気分だ。

まさか、この少女がここまで冷めた考えをしていたとは……。

2学期初頭ぐらいまでは、同じところ(風紀委員会)にいた少女の本質を完全に見誤っていた。

 

「うぐぐっ……なんで摩利さんにはそれなりに従って、私には何も懐かないのよ……」

 

苦悩するように頭を抱える千代田に対して茶を啜りながらアーシュラは考える。

 

(豊臣秀長と豊臣秀吉ぐらい違いますからね)

 

己の生き様を何となく七度主君を変えた藤堂高虎みたいなもんだと思っているアーシュラとしては、前任委員長はまだ、自分のやり方を良しとしてくれる器のそれなりにある人間であった。

 

だが千代田は五十里との関わりもあってなのかもしれないが、どうにも神経質すぎる……口汚く言えば『ヒス女』でアーシュラは生理的に合わない限りであったのだ。

 

しかし、そうは言ってもここで強弁ばかり張っていても意味はないかと少し譲歩する形を取り―――。

 

「―――僭越ながら姫、私がアチラのレディガードの懸念を払拭しましょう」

 

自動的に、アーシュラの『中』から出てきた美麗の騎士。黄金の粒子が寄り集まり灰銀の髪をした少年は、何度か見てきた人間はいる。

 

「アナタは……?」

 

美形の少年騎士の登場に、流石に女であるだけに雫も興味を覚えてしまう……それ故の問いであった。

 

「名乗るほどのものではありません。ですが、アーシュラ姫の従者の一人として、我が力お見せしましょう」

 

問うた雫も明確に覚えているわけではない。だがいまさら思い出すに、九校戦にて老師のイタズラに更にイタズラを仕掛けた『サー・ギャラハッド』という騎士であった。

 

ここにB組の明智エイミィがいれば。

 

『サイン! 握手!! そして伝説の聖杯探索に関してプリーズクエストミー(?)!!!』

 

などと言ったかもしれないが、残念ながら此処にいるのは、そういうのに憧れを抱かない人間ばかりなのだった……。いや幸運と言えたかもしれないが。

 

「それじゃ頼むわギャラハッド。達也、アナタ確かこの後、ロボ研の方でデータ取りの作業だったわね?」

 

「ああ……何かあるのか?」

 

「克人さんに言われて調べていたんだけど丘の演習場に呼延灼を誘導した人間を特定したのよ。あそこら辺の結界はワタシと立華で敷設したはずなのに、あんな簡単に破られるなんて変だなーって思ってね」

 

「その御仁を見つけたのか?」

 

「そうね。まぁ多分だけど、今日あたりアナタと実験データが狙われるだろうから代わりにギャラハッドを向かわせるわ。アナタは少しココに居て事態の推移を見守りなさい」

 

あたり前田のクラッカーよろしく『策謀が働くから、おとり捜査する』というアーシュラの言動に誰もが驚く。

 

そんな策謀が、陰謀が走っているなど理解していなかったというのに……というか、何で自分たちにそれが伝わっていないのだ? という疑念が走るのだが……。

 

「犯人は、その風紀委員の一員だからですよ」

「それではお姿お借りします」

 

言葉の後には司波達也の姿になった『ギャラハッド』は、その姿のままに学内を歩き―――。

 

―――あの生意気な1年『司波達也』が人格者になっていた。

 

などと言われて、千代田花音とともに思い悩むことになるのだった。

 

Interlude out……

 

 

「いやーあの達也君は傑作だったからなー。もう一度ぐらいギャラハッド卿に『変身』してもらえないかな?」

 

「ワタシは受け付けないのでご勘弁です」

 

人格者な受け答えと行動をする司波達也など司波達也に非ずと思うアーシュラは、口元を抑えながら怖気をなんとかしようとしていた。

 

「2人して言いたい放題ですね……」

 

あの一件で、のちに一高を混乱に陥れたことで達也はアレな気分だったのだ……。先導するように前を歩いていく渡辺摩利と衛宮アーシュラに色々と言いたい気分になるのだ。

 

「まぁまぁ抑えて抑えて、お陰で催眠ガスなんて吸わなくて良かったんだから、九校戦でも思ったんだけどサーヴァントに変身なんて技能はあるの?」

 

「いいえ、一応言ってくとそれなりに『工程』を踏んでいけば、完全に別人にしか見えない『変身魔術』というのは、魔術世界では珍しくないです。精度はそれぞれの術者でまちまちですけどね」

 

「そうなんだ……」

 

真由美の質問に答えつつ、もう少し踏み込んだ解説をすることに。

 

「九島家のパレードなんてその上澄みだけを掠めたものです。まぁ即興の『偽装』程度ならば、現代ではそちらの方が便利でしょうよ」

 

現代社会で完全な『他人』に成りすますことは、この爛熟しきった情報社会では色々と不都合なことになりかねないのだ。

 

違う場所に『同時』に『同一の容姿』をした人間がいるという事実は……スゴく疑念を齎すのだから。

 

「サーヴァントの中には生前の逸話から変身技能をスキルとして持っている存在もいるんです。あるいは存在の不確かさから『固定の姿』を持たない存在もいたりします」

 

その説明だけで真由美が何となく思いつく人物は……。

 

「水滸伝の浪子燕青とか櫛名田姫を装った素戔嗚命とか?」

 

「ええ、前者は特級。後者はそれなり。その他にもジャック・ザ・リッパーこと切り裂きジャック。

英雄ベオウルフの敵役として有名な水棲の怪異グレンデルなどもそうですね―――ギャラハッドに変身技能があるのは、彼の『父親』は騎士決闘の代理として請け負った相手の姿に変身した上で戦ったからです」

 

少しだけげんなりしながらそれを説明したアーシュラ。特に『父親』の辺りを言った瞬間に何か言いしれぬものを覚えた様子だ。

 

「大丈夫か?」

 

「問題ないわ。これから渡辺先輩が関本さんを拷問するシーンばかり見るんだから、この程度ではね」

 

「お前は私をなんだと思っているんだ……」

 

達也の気遣いに返したアーシュラの言葉に摩利は噛み付く。要諦としては間違ってはいないのだが、まるでスプラッターなものばかり見ると思っている様子には流石に物申したいのだ……。

 

 

そんなこんなで鑑別所に送られた関本勲に面会するべく女子3人と男子1人は足を向けている真っ最中なのであった―――。

 

その鑑別所にて、此処に送り出す前にイガイガ言ってきた千代田の小言のごとき事態が起こることなどいざ知らずに……彼らは八王子鑑別所に向かう……。

 

 

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