魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
アーケード時点で既知ではあったが、色んな意味でスゴイお方だ。
それを演じきった丹下さんは神か? いや神だったわ。今更である。
だが、中々新規鯖が来ない。とてもつらい
向かった先、面会案内所の入り口にて手続きをしようとした時……そこには先客がいて手続きをしようとしていた。
その男女の後姿は―――ちょー見覚えがあった……。
「シュウ!!」
「摩利、どうしてここに?」
「もしかして響子さんですか?」
「えっ!? 真由美さん―――と、一高の生徒さん達ね。こんなところにどうしてまた?」
女の方はどうやら特に知り合いではない体で2人ほどは行くらしくその腹芸に付き合うのだが……。
「浮気か!? そこの女軍人のツバメにでもなる気なのかシュウは!?」
「落ち着いてくれ摩利、藤林士官は君の所で出た―――」
もう一組の方は退っ引きならない事態になっていくも、徐々に沈静化していく。
どうやら渡辺摩利にとっては愛しき恋人の言葉は何よりも信じられるものらしい―――。
(まぁ武蔵ちゃんよりも響子さんは『アレ』だもんね。疑念もすぐに晴れるか)
(宮本武蔵(♀)に比べれば響子さんに女としての危機感は抱きにくいんだろうな)
一年2人がかなり失礼なことを無言で申しているのを察して青筋を立てる響子だったりしたが、一応は『初対面』で通してくれる2人に義理立てて、適当な挨拶をしてから連れ立って鑑別所に入ることになる。
「それじゃ関本君は産学スパイだけでなく『他国』の策謀の手先になっていたんですか?」
すでにアーシュラ及び衛宮家から伝えられていたとはいえ、初耳の形で対応する真由美に対して色々と響子は口を開く。
ちょっとした『SPY×FAMILY』な気分でその会話に混ざらずに聞き耳を立てたりしていた
それを理解してか響子も話をこちらに振らないでいてくれるのは分かるが―――。
((何一つ話を振らないせいで余計な疑惑を招いている))
そんなこんなありつつも、収容者の様子が見える隠し部屋。いわゆる刑事の
そこから関本勲の姿は丸見えであった。そして、そこに入り込んだ渡辺摩利も同じくである。
明らかに追い詰められたネズミのように怯える関本に対して摩利は余裕なのだが……。
「千葉さんはいかなくていいんですか?」
何気ない質問をアーシュラは一応は顔見知りの剣士に言う。鑑別所内だが拘束されたとまではいえない男と2人っきりの状況に対して何気なく言ったのだが、疑念は意味がないとばかりに頭を振る千葉修次。
「摩利が一人でいいって言うからね。多分、使うのは匂いを使った魔法だから僕が居ないほうが関本君も自白しやすいと思ったんじゃないかな?」
「そうですか」
何気ない会話であったので、それっきりであり、そうこうしている内に摩利の香料を用いた術が使用されて、関本は徐々に自白していく。
最初は、論文コンペ絡みのことに関して、そこいらは状況から分かっていたことだが……。
次のワードは色々と眼を見開かざるを得なかった。
『月より舞い降りる時を待つ、あ、あ、『アカイツキ』が地上の『後継者候補』たちにあ、与えし『ゲンリケッカイ』! かつて く、クローバーが祖の『消滅』に立ち会った際に疑似継承を果たしたもの! ソレを回収して―――』
その言葉……途中までを吐いた後にはなにかに打たれたかのように昏倒して、ベッドにうつ伏せになる関本。
勢いよくベッドに上半身だけ倒れた様子に誰もが、何も言えなくなる中……一人だけアーシュラは『可能性』から、いつでも『黒鍵』を打ち込めるように用意しておきながら解析をする。
(グールじゃない、か……恐らくどっかの魔術組織が、大亜の間諜に仕立てられた関本さんにさらなる上書きをしたというところ)
そんな風に解析を終えて関本の言葉の意味が分からないワードに真由美が戸惑い気味に疑問を口にしようとした時、最大級の警報。八王子特殊鑑別所内に非常警報が鳴り響いた。
警報を聞いたうちの
すぐさま廊下に飛び出したのは修次と達也、次いで部屋に鍵を掛けた摩利と真由美、そして響子……。
一番に出てきそうな女が遅れたことに気づいたのも、すぐさま忘却する……。
「何が起こったかなんて
「ええ……」
マルチスコープやエレメンタル・サイトで調べる間もなく、下手人が目の前にやってきたのだった。
大柄な男だ。筋肉が隆々と盛り上がっているその姿は、人というよりも野生の獣を思わせる。
一歩ごとに廊下が揺れているような錯覚を覚えるほどに歩が重苦しい。
「人食い虎―――呂剛虎……」
「まさか下手人を始末しようとして、これほどまでに多くの障害が出来上がるとはな。我道行多障……」
修次の呟きに、そのように捨て鉢に言う呂という男……。しかし、殺気が満ちていることはもはや疑う余地もない。
「階下では、どうやら陽動を掛けられているわ。応戦しているけど、退いては攻めてを繰り返している」
この男がここに攻め込むまでの時間稼ぎに徹しての行動を起こしているようだが……。
(ここに来るまでに誰にも接敵しなかったのか? 手傷一つ付いている様子がない)
まるで『素通り』してきたような様子に達也は怪訝を覚えていたのだが……。
「シュウ、得物は入り口で取り上げられたんだろ? 私が前に出るから―――」
「いや、摩利―――」
最前線で戦う面子……カップルが武器の不足やCADの有無からお互いを気遣っている。その様子に対して律儀に待っている呂だったが―――構えを取ろうとした瞬間。
「ケンカはそこまで、CADこそ無いですが、これあれば十分でしょ」
その間に鞘込めの刀……立派な拵えのそれを差し出したのはアーシュラであった。棒きれでも渡すように気楽な感じで千葉OBはあっけに取られつつも、それを受け取る。
「……ああ、ありがとうってアーシュラちゃん。どこからこんなものを?」
「エミヤの乙女の7つの秘密の一つなので追求はご勘弁を」
残りの6つは何だろうかと思いつつも、その業物……その中に収まりきらないだろう刀を引き抜く千葉修次 氏は即時に構えを取る。
だが、虎の視線は千葉でも渡辺でもなく、アーシュラに向けられていた。
エミヤという姓を出した瞬間―――目の色が変わる。
「……戦場にて災厄を撒き散らし、2つのキョウカイに嫌悪されるも、何をトチ狂ったのか突如アルビオンの果て……妖精郷に向かい果てたと聞く剣製のエミヤ=メイガスマーダー お前達が捨てたつもりでいても、悪夢として忘れようもない名だ……」
「別に捨てたつもりもないし、そもそも今でも名乗ってるつーの」
悪態をつくように虎の言葉にそう答えたアーシュラだが、その視線は虎に背を向けている。
言うなれば……呂という男のやってきた廊下の方向ではなく逆側を見ているのだ。
(なんだ? どういうことだ?)
まるで見えぬものを見るかのように―――いや睨みつけている様子のアーシュラ。ミステリアスで全てを言わずに誰もが見いだせていない真実に対して眼を背けない彼女の視線が……何もない廊下を見ている。
「―――覇ッ!!!!」
そんなアーシュラに気を悪くしたわけではないだろうが、呂は駆け出す。その身体の割には速くて、2人の剣士は当然、これ以上詰められまいと応戦する。
(硬い鎧のような膜が存在しているのか?)
現代魔法で言うところの空気甲冑や反応装甲よりも直接的なサイオンの鎧が呂を覆い、修次の剣戟、摩利の鞭剣による打擲。
それらを無為に返す。当たり前だが、呂とて棒立ちではない。全てを体術でいなしているので、致命傷を食らっていないのだ。
(だとしてもアーシュラが寄越した『剣2振り』が、宝具級の魔力を携えた業物である以上、消耗するのは呂のはずだが、そこに消耗は見えない)
ましてや摩利はセイバーアストルフォという存在を擬似定着させているのだ。その剣は英雄の武器のはず。
2人の剣士を援護すべく、真由美は氷の弾丸を打ち出す。しかしその弾丸が呂を穿つことはない。
それどころか……。
(青い炎……!?)
どこからか出てきた鬼火のようなそれが、真由美の魔法を封じた。それは呂を守るかのように揺蕩いながら彼の周囲に滞空する。
「アーシュラさん! 私一人では呂剛虎を穿てない!!手伝って!!!」
「達也、アナタが手伝ってあげて」
焦るような声を上げた真由美に無情な返答。だが、アーシュラの視線の先に達也も何かを見た後には、言われるまでもなく援護に入る。
術式解体で呂の鎧を砕こうとするも、それを察したのか、こちらの『魔法式』を青い鬼火は砕いてきた。
(
厄介な限りだ。しかし、その行動が変化を生んだ。
アーシュラが視線を向けていた廊下の先に確かな気配が生まれた。
「ガンフー様をお助けしたい私の邪魔を―――あなたはなさるの?」
「するわよ。というかこれで四騎目……! 掘り出されたロストベルトの残滓はどれだけ強力だったのよ……! 『アウター』まで呼び出すだなんて!!」
アーシュラの心底焦った言葉……後ろに感じる気配の巨大さは、前を向いている連中全員も感じている。
「あなたは戦士なのね。けれど私が愛したいのは勇ましき男の戦士―――だから……ここで果ててもらいます」
言葉と同時に達也では詳細には分からない弦楽器が震える。玄妙な音だけが響く中、変化は一挙であった。
「摩利! 修次さん!!」
鬼火がヒトガタを取りて、2人の周囲で舞踊を刻む。それは中心にいる2人を焼殺せんとする熱量を発生させて、その熱を何とか『分解』する。
だが熱そのものを無くしたとしても、炎そのものは舞い上がり再び熱を発さんとする。
(普通の炎じゃないのか!?)
しかし、その舞踊がなくなる。炎のヒトガタは、呂の防備に回ったと同時に後ろでも戦いが始まった。どうやら、アーシュラとの戦いによって操作ができなくなったようだ。
「アーシュラちゃん!!!」
これは響子の言葉、同時に甲高い音が幾度も響き、そこに玄妙な音が混ざる。
堪らず後ろを振り向くと、フォーマルなチャイナギャルの装い……かなり際どいものを着ている。そうとしか言えない少女がチャイナシニヨンから伸びる髪を振り回しながらアーシュラと戦っていた。
「陰陽の夫婦剣! 干将莫耶!!!なかなかにやるぅ!!!
「傾城美姫!! その首落とさせてもらう!!!」
「させないね!!!」
対する美姫の方はその夫婦剣に対して、驚くべきことに長笛で応じていたのだ。
青と赤の長笛……恐らく木製だろうそれが、金属製の武器と打ち合う。
「
そして打ち込みの速度と動きは繚乱にして華美!
「
そして長笛から大琵琶でアーシュラを真上から叩こうとする。双剣の重ねで受け止めたアーシュラだが、凹むアーシュラの踏みしめた床とこちらにも届くほどのインパルスが、威力を教える。
だが―――。
「
「!!!!!」
受け止めると同時に、アーシュラの近くにいくつもの宝剣・宝槍・宝器の類が現れる。突如の出現ではあるが、それらは何回かは見てきたアーシュラ、士郎先生の特殊技能である。
少女の言葉に従いあらゆる武器は、自分に与えられたその運命を
意思持つかのように一斉に翔んでいく武器を前にして、サーヴァントは逃げの一手だ。
「
「
応じるサーヴァントも笛の音で
「
「よろしくないカミサマと交信しちゃっても効くもんなのね」
サーヴァントを穿つ武器がダメージを与えていく。
だがそれ以上に、ダメージを受けるのはこの八王子鑑別所という建物なのだが……格子が嵌められた窓は高い位置にあるとは言え、すでに病葉の如く吹き飛び圧し曲がり、床は重量物がありったけ落ちたようにあちこちに凹みが出来ている。
分厚い壁の向こうに強烈な圧を感じて関本以外の収容者たちが騒ぎ立てる音が聞こえてくるようだ。
というか混乱をしている様子だ。
「――――やむを得まいな。撤退だフォーリナー・楊氏!」
その騒ぎの規模を前にして二人の剣士、二人の銃士と戦っていた呂剛虎は撤退を指示。
「逃がすと思うのか!? 中華の道士!」
「だから逃してもらうのだよ」
瞬間、勢い込む修次に対して手の甲を翳す呂剛虎。何かのアザにしか見えないそれが光り輝き……。何かは分からないが、それでも攻撃を決行しようとした時ーーー。
「―――渡辺先輩、千葉さん下がって!!!」
フォーリナーというクラス名なのだろうサーヴァントと戦っていたアーシュラの声。
瞬間、呂剛虎を守るようにフォーリナーのサーヴァントが現れたのだ。
「燃え果てろ!!!」
運悪くフォーリナーの正面にいた摩利を襲う蒼炎の波。
「摩利っ!!」
その熱量から自分の女を守るべく、傍にいた千葉修次が抱きしめて背を向け身を丸くした。
「ギャラハッド!!」
だが、そんなものでクトゥグアという炎の神性の攻撃を防ぎきれるわけがない。それどころか2人まとめて死ぬだけだと分かっていたアーシュラの防御が差し込まれる。
「
「
円環と十字を象る光の盾が2人と蒼炎を分かち、炎をシャットアウトする。
蒼炎の全てが八王子鑑別所の壁も天井もなめ尽くしていく勢いであったのだが、それらは無く、それでも一部分……せいぜい関本の収容部屋付近のみが真っ黒焦げになる程度で済んだ。
「……逃げたの?」
「まぁそうでしょうね」
闘争を途中で終えて鮮やかすぎる逃走。
消え去った呂という魔法師とその従者である何とも可愛らしくも……妖しい魅力を携えた少女の姿。
「まぁあれだけ痛めつけとけば、暫くは手出しできないでしょうよ……」
「そうかしら?」
アーシュラの『一件落着』と言わんばかりの言葉だが、サーヴァントはともかく、呂の方にクリーンヒットを2人の剣士が与えられていたとは思えないのだが……。
「大丈夫ですよ。千葉さんに与えた―――この『剣』は、ワタシの祖父に当たる『魔術師殺し』と名高い魔術使いが用いた『起源弾』と同種のものですからね」
途中で千葉修次がその辺に落としていた剣を回収して、それを説明したあとに『消し去る』アーシュラ。
「今頃、ルゥガンフーでしたか? 彼の総身は痛みで苛まれていますよ」
平素な表情でそんなことを言うアーシュラ。もう少し詳しい説明が欲しかったが、その前に階下の敵を何とかしたのか、そちらも消えたのかは分からないが警備の増員がやってきて、とりあえず中断するのであった。
もっともその後にお定まりの事情聴取が無かったのは、七草及び藤林……また千葉の三名のネームバリューが、あれこれの面倒なことをすっ飛ばしたのだったりする。
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「むぅ……」
「術行使の為の器官に重篤なダメージを食らっている。気功の
「ああ……なんと言えばいいのか、気が乱れるというか……内出血などで排泄に影響が出るように気功の循環に淀みを覚えるな……」
大亜の軍医の見立てに自分の感想を加えて伝えるも、どうやら彼にもまだ所見を立てられないようだ。だがそれは自分の中での推論を組み立てている時間のようだった……。
「全ての攻撃を遮断していたとしても、攻撃をその身で『防御』していた……ということは接触型の呪詛……推論ですが相手は呂校尉の呪法……硬気功を変質・反転するようなことをしていたのでしょうな」
「……そんなことが可能なのか?」
魔道と軍事の両面に関わり続けた呂ですら知らなかった技法である。こちらが固くなれば硬くなるほどに相手から与えられるダメージが大きくなるなど信じられない。
「感染呪術的な術回路・気穴が出来ていたのかもしれませんね……実を言えば古い資料ですが、ロンドンは時計塔の始末屋の中にはそういう手合い『魔術師殺し』と呼ばれた相手が似たような―――」
「
白衣を着た軍医の言葉を遮り、苦虫を噛み潰した呂は『治療方法』はあるのかを問いかける。
「……とりあえず今は、処方箋を渡しますので正常な調息・
その言葉に軍医とてタイムスケジュールぐらいは分かっている……しかし、傷病兵を前線に出すわけに行かず、呂の戦線離脱は免れないのであった……。