魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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何だか場面転換が多すぎるので、少ないですが投稿。



第112話『開幕前のそれぞれ』

 

 

「改めて思うけど……アーシュラさんって本当に規格外よね」

 

乾いた笑いを浮かべるしか無い真由美の言葉が夕焼けに染まる世界では印象的である。

 

「そうですね。数多の武器を取り出してそれを使い捨ての矢弾も同然に打ち出すんだから……」

 

有質量物体瞬間移動(テレポート、アポーツ)という魔法師の不可能領域を当たり前のごとく踏み越える少女に感想が出るのは当然であった。

 

「私の魔弾を鼻で笑うのも理解できるわ」

 

「鼻で笑っていたわけではないと思いますけど」

 

だが、アーシュラにとって魔法師の戦いとは若干、浅いものなのだろう。結局、速さ勝負でしかない。その戦いにおいて、そもそも『魔法』が効かない相手がいる。

自分たちより上位の生命(いのち)が世界に居るということを想定出来ない魔法師はどうしてもそういう人間たちに優れないのだから……。

 

「そんなアーシュラは超速で帰っちゃいましたからね……」

 

結局の所、この事態においてもアーシュラは活躍して、そして何も教えず帰ってしまったのだから……。

 

「大亜の策動、達也くんの秘密、衛宮家及び魔術側の動き……そして死徒らしき影……もうぱんぱんすぎるわよ……」

 

「2つ目は除外してもよろしいと思います」

 

真由美の嘆くような言葉に、そう言っておくもやはり話題はこちらに向かってくるのだった。

 

「ゲンリケッカイ……達也君は知っていたのかい?」

 

「まぁ……あの九校戦でディープマンジュリカなる巨女にして吸血鬼の目的は俺の身でしたからね。何となく程度にはおしえてもらいましたよ」

 

摩利の何気ない質問。あの時はお座なりな説明であり、その後……叔母に聞くタイミングが無かったからか、今まで聞いてこなかったが。

 

(破()と再()の原理……そんなものが、自分の中に埋め込まれているなど……)

 

親族の大半は、この事を知っていたのだろうか?

吸血鬼の大本たる「死徒二十七祖」たちの力の源。それをある種の『魔術刻印』にすることは出来なくはないらしい。

 

故にそれが四葉―――その源流たる司馬家、東雲家の方から受け継がれてきたならば、それが宿るのは自然だったらしいが……。

 

(案外、俺は危険な存在すぎたってことか…)

 

まだ聞いていないことは多いが、刻印に己の人格を刻みつけることで後の世で「復活」を果たした魔術師もいるとの話。

 

(誰でもいいから俺のチカラの源を教えてほしいよ……)

 

死んだお袋から教えられていたならば……何も悩まなかったというのに―――。

 

接吻(キス)されてまで覚醒を果たしたチカラが何のために存在しているのかは分からない。ただ……孤独な戦いを続けるアーシュラの手助けをしたいのだ。

 

「全然何もお互いのことを知らないわね。私達って」

 

「そういうセリフは恋人になりたい男がいる前で言ってください」

 

達也としては、自分の正体の一部分が多分バレているのだろうと思いつつも、そう真由美を窘めておくことにする。

 

帰校の道筋を辿る高校生たちは、帰ってからどうしようかと少しだけ思い悩む。

なんせこの関本との面会を許可した現・風紀委員長たる千代田花音の頭痛の種を増やしたのは理解しており……同時に、同行者の一人がプッチしたのは彼女を悋気に走らせるだろう。

 

 

『結局、大亜のスパイたちは目下、活動中―――もっとも彼らの目的が学生や企業の研究成果であり、魔法師の身柄、もしくは……『聖杯』という最大の魔力集積容量体である……色々と考えられているけどわからないのが原因なのよね』

 

「一つだけでなく『総取り』ということも考えられるのでは?」

 

『……そんな大それたことを、この戦力の補充や後背地の確保すらままならない他国でやれると思っているのかしら?』

 

「可能性は除去すべきではないと思います。そしてそういう我々…魔法師の『常識的』な考えを砕いてくるのがサーヴァント及び死徒などであると思います」

 

あの鑑別所での一件から3日後のキャビネットでの通信。出た相手はあの事件でも当事者である藤林響子だった。

 

その通信内容は芳しくない。当然だ。何の手がかりも無いままに、手当たりしだいに家探しをしたんだろうから。その疲れも相応のものだが……。

 

「そもそも、如何に他国軍が潜伏しているとはいえ、こういう案件は最初は警察が対応するべきものでは?」

 

『その警察との合同捜査だったのよ。千葉寿和という捜査官のチームと合同で当たっていたんだけど、私達(独立魔装)にお鉢が回ってきたのは、その背後にとてつもなく『ろくでもない』連中の影が見え隠れしていたからよ……』

 

頭を抱えて響子が言う『ろくでもない連中』の中には極まった神秘の能力者たちが含まれているのだろう。

 

『どうやら中華のサーヴァントたち、そのマスターは所属とか一枚岩ではないことは分かってきたわ……夜な夜なとんでもない戦いが『横浜』付近で確認されているもの』

 

「しょっぴけないんですか?」

 

『……画面に映っているのは全部、霊体たるサーヴァント戦のみだからね。幽霊を逮捕するにはゴーストバスターズが必要よ』

 

破壊神ゴーザ、霊界の大魔王ヴィーゴ大公を倒してニューヨークを平和に導いた架空のトラブルシューターを必要とする響子の言葉。

 

言うなれば『Say hello to GHOST BUSTERS』(ゴーストバスターズによろしく)というところか……。

 

そんなゴーストバスターズになれそうな連中は、今の所は沈黙するばかりだ。

 

『せめて魔術師……カルデアという組織全体ではなく、衛宮家だけでも積極的に協力してほしいのに』

 

「あの人のいい士郎先生でも、動かないということはカタギに手を出さなきゃ何もしないということなんでしょうね」

 

『……衛宮士郎が『ヒトのいい』なんて評せるのは、アナタぐらいね達也君』

 

暗い表情をしている響子。どうやら自分の見ている士郎先生の姿と響子の知っている士郎先生は違うようだ。

 

他者との認識のズレなど、どんな世界でもありえることなのだから……。

自分とて血生臭い一面など友人たちには積極的に見せたくないのだ。

 

『当日は、物々しい空気になるのは間違いないけど……発表、がんばってね』

 

出来ることならば、軍人『大黒竜也』を出したくないのだろう響子の魔法科高校のOG(二高だが)としての言葉を後輩として受けて『ありがとうございます』とだけ返してからその日の通信は終わった。

 

論文コンペまで、あと二日……。

 

もはや猶予は無いのだが、その疲れからソファーで居眠りをこくことになるのであった―――その際に実妹と色々あったのだが、達也としてもビックリするほどに何の心の動きも無かったのだ。

 

(顔を真赤にする深雪を見て、勘弁してくれと思ってしまった……もう俺は深雪に対して『だけ』感情を向けられないのか)

 

その事実に、ガーディアンとしては失格だと理解していても、せめて妹として守護してあげたいと思う気持ちを持つことはまだあった。

 

しかし……この事実を知られたならば―――。

 

(お袋、母さん―――俺は、達也はもはや、アナタの想いを無碍にした親不孝者だ。不良息子だ……)

 

そのどうしようもない独白が導き出すものは―――……。

 

 

――――――全国魔法科高校生学術論文コンペティション開催日当日。

 

特に何の役職にも就いていないアーシュラは横浜海浜公園を眺めながら物思いに耽る。

精々、達也の護衛程度であったアーシュラだが、数日前の八王子鑑別所での一件から副会長である司波深雪から解任請求を受けて、何の抗弁もせずに解任を受け入れるのであった。

 

彼女としてはアーシュラと達也が一緒だからこそ『騒ぎが大きくなる』などと何の根拠もない、偶発的な事態すらも「こちらのせい」として言ってきたのだ。

 

(別に構わないけどね)

 

そして朝もはよから現地入りしたメンバーたちに同行する形で横浜までやってきたのだ。

 

デモ機に付随する様々な搬入を手伝い(100kg相当の重量物)、ヒマを覚えつつも次には立華の『確認』作業の随行を行うことになっている―――それが現在のアーシュラの立場だ。

 

「地脈は問題ないわ。彼らとしても悲願たる聖杯を手に入れなきゃ意味はないもの」

 

「小聖杯のホムンクルスないし器は分かったの?」

 

「目下調査中―――と言いたいところだけど、本当に亜種の聖杯戦争だから。そんなものがあるのか分からないのよ」

 

「そっか……もしかしたらば、ワタシが器の可能性もあるのね」

 

「――――――それはさせないわ。絶対に」

 

力強く言われながらも、アーシュラは己のマスターに『配置』を聞いておくことにする。

 

「まずはギャラハッドとランスロットに関しては―――」

 

 

……そんな内緒話の類は見られており、何も共有出来ないことに少しだけ寂寥感を覚える。

 

(戦いは起きる。その戦いがどのような展開であろうとも、彼らは彼らの戦いをするのだろう)

 

そこに魔法師云々は無いのだ。それが寂しさの原因。

 

『彼女の戦場に、余分はいらないよ―――』

 

サーヴァント・ボイジャーの言葉が十文字克人を苛む。

そして―――色んな不安を孕んだ論文コンペは始まろうとしていた。

 

 

「で―――アーシュラさんはどこにいるんですか?」

 

九校戦の時には、衛宮さん呼びだったよなと思い出すほどには印象的な少女。一色愛梨の言葉に達也も深雪も苦しくなる。

 

こうして三高の姫騎士に詰め寄られることになった原因は、先程まで深雪と話していた一条将輝と彼女が、今回の警備部隊の一員であり、今回のボスであるはずの克人の紹介に一高の姫騎士がいないことが、引っかかったからだ。

 

ロビーにて二人に捕まった司波兄妹としては苦慮しつつも……。

 

「当初は俺の護衛役を勤めてくれていたんだが、深雪が解任してしまってな」

 

「お、お兄様!?」

 

「偽証した所で、話すヤツがいれば簡単にバレる話だぞ。そしてお前は『悪いこと』をしたつもりはないんだろ?」

 

「そ、そりゃそうですけど……」

 

「じゃあいいじゃないか。この二人に話しても」

 

結局の所……深雪のやったことは浅慮だったのだ。

何が何でもアーシュラを学園守護の為の剣にするのならば、こういう形(達也の護衛)で関わらせることが最上のはずだった。

 

彼女が目の届かないところで何かをやるとそれに付随する事態に目が届かなくなってしまうのだから……それを防ぐためにも、強制的にでも形式を作る必要があったというのに……。

 

そんな裏向きの事情は知らないだろうが、後夜祭における深雪のやったことを知っているだけに一色愛梨は盛大なため息を突く。

 

「私にも兄がいますけど……アナタみたいなダブスタをしようとは思えませんから、そういう感情は共有出来ませんが……その判断がトップとして凶と出ないことを願いますよ」

 

「一色、失礼すぎるぞ……それじゃまた」

 

捨て台詞のように『ダブスタ●妹』と言った一色の言葉は中々に深雪を傷つかせたが……この件に関しては、達也も同意見なので、慰めの言葉は言わないことにした。

 

「お、お兄様が慰めてくれない!」

 

「そりゃまぁ、俺もこの件に関してはミオリネ(?)と同意見だしな」

 

「ミオリネって誰だ!? トロフィーか!? 赤いタヌキの(キツネ)か!?」

 

分かってるじゃないか。などと怒る深雪に思いつつも、アーシュラはどこにいるのやら……などと思いつつも五十里が端末に出してきたヘルプに対応することになる。

 

そして当のアーシュラはと言えば……。

 

 

『『次の大盛りメニューお願いします!!!』』

「お、おまたせしましたぁ!!!」

 

急いで店員が持ってきたデカ盛りメニューの二皿目を完食せんと、ぶっちゃけ完食してしまうだろう二人のJK程度の年の子たちは色々と目立ってしまうのである

 

論文コンペ会場からほど近い場所。大食い挑戦メニューを出している店にて、『一人の少女』との戦いに興じているのであった……。

 

 

 

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