魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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第113話『横浜開戦』

好敵手との戦い。デカ盛りメニューの全てを食覇したアーシュラは…食後のデザートたる『パフェ』を頬張りながら、対面に座る同い年ぐらいの少女。

 

その相手の健闘をたたえつつも―――。

 

「……何処かであったかしら?」

 

「いいえ、初対面です」

 

赤毛に金色が混ざるざんばらな髪をした少女―――野暮ったいぐるぐる眼鏡を掛けた子は……やはりどこかで見たような気がするが、それでも―――。

 

「良きフードファイトでした。今度出会うことがあれば日之出食堂の『赤かつ丼』で勝負しましょう」

 

―――相手の素性をみだりに問いたださないのはフードファイターの節度ある態度である。

 

パフェを食い切り、口元をハンカチで拭いた名も知らぬ好敵手に。

 

「ええ、その時を待つわ」

「――――それでは」

 

果たされるかどうか分からぬ再戦の約束を取り付けるのであった。

 

そうして赤金のメガネっ娘とは違いお茶を一服してから、『そろそろ』かと思ったアーシュラは……。

 

「お勘定!!」

「ま、またの来客をお待ちしていまーす」

 

電子決済で済ませるとはいえ、支払いを済ませたことを告げて確認させる手順は必要なわけで、店員さんの声を後ろにしながらアーシュラは、店を後にして高まりつつある戦いの予感を前に身震いをさせるのであった。

 

 

午後のプレゼンテーションは恙無くとまでは言わないが、大きな混乱もなく終わっていく。

 

その様子を特に見もせず論文コンペ会場の『屋上』へと陣取ろうとしたのだが、その前に一番厄介なのに捕まってしまった。

 

「よう。今日は随分と遅いんだな」

 

「朝も早くからここに入っていたのよ。昼食ぐらい市街(ソト)で取っていてもいいじゃない」

 

「そうか……」

 

「最後のツメあるんじゃない? 行ってきなさいよ」

 

今日のプログラムから察するに、そろそろ一高の出番だと思っているアーシュラは、ここに一人でいた達也を変だと思うのだ。

 

あの金魚のうんちのようにくっついていることが是の司波深雪はどこにいるのか―――。

 

「振り切ってきたんだよ」

 

「ワタシに会うために。とか言われても嬉しくないから♪」

 

「機先を制された」

 

笑顔で言いながらも、心は無情。されど……。

 

「まぁとにかく、しっかりお勤めを果たしてきなさいよ。雑事と言うかアナタ達の手を煩わせないようにしたいところだけど」

 

「無理なんだろ……響子さんが言っていたけど、出来ることならば、軍と協力してほしいんだとさ」

 

「それこそ無理よ。市民の避難にだけ専念してほしいもの」

 

軍人たちの節度を守ってほしいのだが、魔法師なんて鼻っ柱の強いだけの自慢しいどものことだ。無理に前に出ようとして被害を拡大させること請け合いである。

 

ゆえに……結果として、屍が増えるのだ。

 

「内部はギャラハッドに任せているわ。一高制服というレアな衣装に変えさせているから、問題ないでしょ」

 

「問題アリだ。あの少年騎士はイケメンすぎて、全魔法科高校女子の視線を集めすぎて、積極的な女子は『写メ』を一緒に撮ったりしているぐらいだぞ」

 

「ちなみにワタシも撮っといたわ。ギャラハッドのレアな衣装だもの、写っておかなきゃ♪」

 

「消せ」

 

「ふざけんな」

 

壁に佇んで護衛としての立場でいる身元不詳の少年騎士を思い出す達也。

最初は千代田委員長及び服部会頭などの意見で適当な人間に変装・変身してもらおうとしたのだが……。

 

『いざという時、私は皆さんをお守りする立場にならなければならない。その際にそのような虚偽を行っていた相手を信用できますか?』

 

『なにより『チカラの消費』は抑えておきたいのです』

 

何かが起こると仮定して、そういう態度であった彼―――魔法師とは違い、日常が常在戦場であった時代の英傑の言葉はそれだけで一種の魔法のように、魔法師に確信という威圧を与えるのであった。

 

だが、そんなことはどうでもよく、アーシュラの端末を奪おうと迫りくる達也を避けつつ、ぎゃーぎゃー言い合っている内に。

 

「お兄様!! アーシュラとイチャコラしない!!!

この後、もみくちゃになりそうで押し倒すという古典ラブコメなことが容易に想像できますよ!!」

 

とんでもねーロマンキャンセル女がやってきたのであった。

ともあれ副会長様の引き剥がしで達也は、アーシュラから離れざるをえないことに。

 

「……アーシュラは何処に行くんですか?」

 

「屋上よ。発表会で礼賛の拍手でもしたらば、アナタ、不機嫌になるでしょ?」

 

「別にそこまで私は……」

 

言葉を掛けてからアーシュラは屋上への階段を上がる。

 

その後姿に幻視をする。

 

孤高の王……彼女だけが王道の階段を駆け上がり、そして誰も彼女を追えない。

 

追いつくことすら出来ない。

隣に立ちともに戦うなんてことも出来ない。

 

けれど……高みに立つことだけを目指してきた魔法師に対するアンチテーゼになっているから、深雪ですら何も言えないのだ。

 

(それを変えたいんだ)

 

市原、五十里―――そして外部協力者である平河の協力で出来た今回のシステムは、それなのだから。

 

ただその一方で、アーシュラの隣に並び立つことが出来ない寂しさを達也は覚えるのだった。

 

 

「では手筈通りに」

 

「劉道士の孫は動くのだな?」

 

「ええ、今は諍いを一度抑えてでも、聖杯の確保が優先ですからね。あなた方、大亜軍人たちの奮闘に期待しますよ」

 

美麗の料理店オーナー……現在は豪奢な道士服に身を包んだ男の言はいまいち信用しきれない。

 

だが、本国から『艦艇が来ない』ということが確実になった以上、撤退という指示が出ていないのならば、そうするしかないのだ。

 

陳は、改造された『部下』に不憫さを覚えながらも、それでも……戦うことを選んだ彼の意思を尊重しなければならなかった。

 

―――私に汚辱を雪ぐ機会を下さい―――

 

「ではお願いしますぞ。周道士」

「ええ、お互いにね」

 

悪鬼を倒すために別の悪鬼と契約した気分である陳祥山は、周を見送ってからため息をつく。

 

ため息の原因はこの作戦ではない。

 

……更に別の『悪鬼』から『ケラケラ笑いながら』渡された『注射器』のケースを見ながらこれを使う時が来るのかと恐れおののくのであった。

 

そう。自分に定められた決戦の日を認識せざるを得ないのであった。

 

 

 

「でも、僕たちも負けないよ。いや、今度こそ君に勝つ」

 

その背中に投げつけられた声。 稚気と評するべきだろうが、悪い気はしない。 何か気の利いたセリフでも返してやろうか、と達也が足を止め振り返ったその時。

 

拍手喝采が鳴り止まぬコンペティション会場にいる全員が怖気を覚えるほどの魔力の波が襲った。

 

「な、なんだ今の!?」

 

挑戦的であった吉祥寺ですらその数秒程度の寄せては返す波のようなチカラに驚きは隠せなかった。

 

次の瞬間、更に大きなチカラが直上に感じる。

 

「アーシュラ!! 何が起きているんだ!?」

 

この横浜国際会議場の直上に陣取っている女子ならば何かを知っているはず。だが、当然ながら声をあげれども返事はない。

 

だが、それでも変化は起きる。この混乱に乗じたのか、それとも元々潜入を果たしていたのか、はたまた何かのインチキでやってきたのか……闖入者がコンペティションステージにやってきた。

 

ドアを蹴破り、行儀悪く侵入を果たした闖入者は面妖であった。

 

持っている得物―――サブマシンガンを天井に向けて発砲する威嚇をして騒ぎが大きくなる。

 

だが得物以上に着目すべきなのは、その風体である。衣服はいわゆる典型的な軍人のもの。

 

問題は、その頭にあるヘルメットだかヘッドギアだかである。

黄色の球形されど側頭部の辺りから出ているケーブルが、背中の方に伸びてなにかに接続されている様子。

 

そのヘッドギアには『目』と『口』が存在していた。

 

いや機能が『目』なのか『口』なのかすらわからないのだが、目は目の位置から少しだけ筒が伸びているように存在、口は人間の歯並びを全て再現して口の辺りに描かれている。

 

ちなみに言えば真っ黄々(まっきっき)で、いい歯ではなさそうだ

 

アゴ部分は左右と下に鋭角的に棘が伸びている……。見るものによって表情がどうとでも取れそうだが、達也はその『面』に邪悪な笑みを感じた。

 

(連邦に反省を促したいのか?)

 

そう問いただしたくなるぐらいには奇態なマスクをした連中は……総勢10名。

 

「おとなしくしろ!!」

「デバイスを床に置いて、手を頭の後ろで組んでいろ!!」

 

完全にこちらを無力化しようとする言葉に吉祥寺が、その前にデバイスで相手を無力化しようとしたが―――。

 

「言うことを聞かんかっ!!」

 

10名いれば客席側だけでなく、壇上の方にも注意が向くか。吉祥寺真紅郎に盛大なフルオートでの発砲。

 

だが、この時の吉祥寺には勝算があった。軍事に詳しいというほどではないが、彼の高校が尚武を旨とする三高で、かつ彼は一度……魔法師に相対する軍人のフォーマルな武器というものを『見て』『知って』それを諳んじれていたのだ。

 

その中でも歩兵が携帯できる重量ではハイパワーライフルというものであると分かっていたので、やってきた闖入者の得物がそれではないと気付くと。

 

(障壁で凌いだ後に、あるいは僕に火力が集中していれば―――)

 

如何に障壁・防御魔法を『十』の数字持ちほど得手としているわけではないとはいえ、サブマシンガン程度の武器を防御出来ないわけがない。

 

10名全ての火力が向けば流石にマズイだろうが、それでも1〜6名程度ならば!!

 

そういう打算ありきで展開した障壁がガラスのように砕け散る。音速で放たれる弾丸が驚愕で固まった吉祥寺を穿とうとした瞬間……。

 

その弾丸が横合いから『飛んできたもの』で全て撃ち落とされた。

 

「「なっ!?」」

 

被害者と加害者の驚愕の声が重なる。それぐらい常軌を逸した現象であり、常識外の現象であると気付けたからだ

 

雀蜂(ホーネット)装備とはまた懐かしいものを出してくる……」

 

「貴様ッ!!!」

 

手頃な石を弄びながら呟くように言う男子生徒。いつの間にか、自分たちの横―――自分たちが蹴破った扉付近にいたのに気付くと全ての銃口が、その男子生徒に向けられる。

 

「ギャラハッドくん!!」

「逃げてギャラハッド君!」

 

女子の心配するような声が重なるのを達也は聞き届ける。

 

だが、そんなことに構わず聖杯の騎士は瞬発した。数多の銃弾の全てが彼を穿とうと殺到するが、それを最小限の回避と投石だけで何とかする。

 

そして一番右端にいた男(?)の目前までいたると。

 

「これ貰いますよ」

 

などと軽い調子で男の手にあるマシンガンに触れると、何かの手品のようにマシンガンは彼の手に収まるのだった。

 

そしてそのマシンガンを発砲するわけでなく……。

 

「せいっ!!! ふっ!!!」

 

「あばっ!」「おぷばっ!」

 

それを殴打武器として使用するのであった。

 

昔の英雄だから発砲装置のことを知らないのだろうか?などと場違いな感想を達也が思った時には10名の特殊部隊員らしき連中は無力化されていた。

 

拘束・聖骸布(シール・アリマタヤ)

 

気絶しているとはいえ起き上がることもあるとして裸にした上で簀巻きのように白い布で彼らは拘束されるのであった。

 

「助かりましたが……一体どういうことで?」

「少年魔術師、君の障壁が効かなかった原因は単純な話―――この短機関銃の銃弾には魔力が込められていたんだよ」

 

壇上から降りてきた吉祥寺に対して、慣れた様子で機関銃の弾倉から銃弾を一発取り出す様子から、どうやら古代の英霊だから扱いを知らないというわけではないようだ。

 

「銃の機構ではなく銃弾に改良を施した魔法師殺しの兵器……!?」

「それとこのヘッドギアも『魔弾』の威力向上に一役買っているんでしょうね。ともあれ―――ここは大丈夫ですね」

 

一仕事終えた体で語るギャラハッド卿だが……。

 

「ギャラハッド……我が息子よ。貴卿が、このように力なき民を守る騎士としての立派な姿を見れて私の胸は歓喜に震えるっ!!!!」

 

感涙に耽っている美麗の騎士が現れた際に……。

 

「ただの不審者ですね。撃っときましょう」

 

「どわああああ!!!」

 

父親であるランスロット卿の言葉に対して完全に敵意を示すギャラハッド卿。

だがランスロット卿も、そのマシンガンによる攻撃に難なく対処する辺り、似たもの親子なのだろう。

 

「あなたはマスター立華の示したラインを守る役目があったでしょうが、何故此処に?」

 

「色々とあってな。お前を迎えにきた。敵の攻撃は現在は『強襲』だけだが――――『奇襲』もありえるからな」

 

「―――成程、ならば―――途中の敵を掃討しながら外に行きますか」

 

短いやり取り。それだけで百戦錬磨の古強者2人は悟ったものがあるらしく回収した短機関銃2丁をランスロット卿に投げて寄越すギャラハッド卿は、その後には特に言葉もなく蹴破られた上に銃弾で病葉も同然となった扉から父親と共に外へと駆け出すことになるのであった……。

 

そしてそれを呆然と見送ることになった会場内にいる魔法科高校生たち―――その中でもいちはやく覚醒を果たした七草真由美が現一高会長である中条あずさに頼み、混乱と恐怖でどよめきそうな会場を―――『弓』で鎮めさせることにするのだった。

 

そして、中条会長と同じく『弓』を使って事態の対処に当たっているのが、アーシュラであったのは、ちょっとしたシンクロニシティであったりする……。

 

 

―――雀蜂襲撃の3分前……。

 

屋上にてひなたぼっこをしつつも、来たるべき時を待っていた……。

 

中華異聞帯は秦帝国が『世界制覇』を果たした世界であった……そして、その残滓を利用したというのならば、横浜で戦いを繰り広げる英霊たちには大なり小なり『驪山』の『凍結英雄』たちの性質がある……。

 

そして世界制覇を果たした異聞帯の王……始皇帝は、仙人に至りて全世界に『眼』を行き渡らせ、すべての民を管理していた……。

 

「つまり―――軌道爆撃・軌道降下も出来るということね」

「始皇帝陛下の『長城』を模したエネミー落とし……やれやれ。中華世界は魔境ですな」

「だが、我らがやらなければいけないのだ。此処には守るものが多すぎる」

 

アーシュラの呟きに対して、答える影2つ。

 

片方は赤毛をロングに伸ばして、目を閉じたスマートな騎士。

片方はフェイスの爽やかさとは裏腹にその下にある強壮・豪壮な肉体を鋼以上の硬さの鎧で包んだ騎士。

 

「さぁて! あんときは荊軻(ケーカ)とスパルタクスにいいとこ取りされちまったが、叛逆三銃士の1人……あの戦いで生き残っちまった一人として、叛逆させてもらおうかい!!」

 

「モードレッドが歯を見せて眼を輝かせている……! この状態のことを巷では『モーちゃん。歯鋭っ!』と言っていたりする……!!」

 

モルガン(伯母)の子2人も元気いっぱいなようで何よりだ。その手にある武器も『遠距離使用』になっている……などと思っていたら―――ついに始まる。

 

遠く―――というほどではないが……。

 

『本牧市民公園』

『根岸森林公園』

『旧ハマスタ(横浜スタジアム)

 

その三箇所から強烈な勢いで『光の柱』が天高く伸び上がる。

 

伸び切ったところが何百メートル上なのかは分からない。しかし頂点に達したそれが一対の翼のように分かたれて鎮座する。

 

その翼から堕ちる羽の一枚一枚は幻想的だが、途中から軌道を変えて変則的な動きを見せていく。

 

向かう先は国際会議場。

その羽根の一枚一枚は、『爆撃』であり『砲撃』となって横浜海浜地区及び会議場を狙って襲いかかる。

 

迎撃(いんたーせぷと)――――!!!」

 

アーシュラに言われる前から得物を構えていた円卓の騎士たちは魔術師が見たならば仰天するほどに盛大すぎて豪華すぎる迎撃行動に出ていく―――……。

 

 

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