魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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そうか。つまり魔獣嚇は『邪悪龍』だったんだ! 別にドラゴンボールのマイナスエネルギーを受け取ったわけじゃねーけど、そうとしか思えないな

そしてアルズベリ天動説……同時に眼鏡大好き作家が実装を待ち望んで同人誌まで描いちゃったあの人の実装が現実味を帯びてきた。

やはり裸マントが最終か!? などなど思いつつも新話お送りします。


第114話『英雄乱武琉(ヒーローランブル)

正面出入口の前は、ライフルと魔法の撃ち合いの真っ直中だった。

 

『本来』ならば……。

 

協会に雇われた警備会社の魔法師たちは、現れた『敵』であろう存在の卦体さに最初は驚くも、すぐさまそれが油断など出来ない強敵であることに気付かされる。

 

対魔法師用のハイパワーライフルではなくサブマシンガンであることが色んな意味で油断を誘ったが、その『イエローフェイス』と『ブラックフェイス』とが放つ銃弾が、こちらの障壁などをものともしていないのだ。

 

「くそっ!!! 援軍はまだなのかっ!?」

「援軍だと!? そんなものがどこにいるというのだ!?」

 

血と汗に塗れながら、もはや罵り合うしかなくなるぐらいに追い詰められている森崎家の雇われ警備員たち。

 

障壁ではなく柱を、最大級の情報強化をしてでも防御柵として利用しなければならないぐらいなのだ。

 

仮称・ゲリラ兵はコンペティションステージを襲った連中と同じ風体であった。サブマシンガンの火力でなぜこちらを害することができるのか? その理屈に全く見当が及ばない人間たちだが……。

 

(あちらの火力を上回るほどのものがあればよいのだ!!)

 

こういう事態を想定していたわけではないが、それでも持ち込んだ火器(CAD)の中には、これを何とかできるものがあった。

 

「待たせたな!!!」

「援護を頼む!!!」

 

ゴルフバッグを2つ重ねたような大型のホウキ。ある魔法を発動させるためだけに作られたそれは『ゲイ・ボルグ』と称される『レールキャノン』である。

 

もっともそのための不足電力を補うバッテリーが、大型化した原因なのだが……。

 

ともあれ、対戦車用の歩兵兵器などオーバーキルなのだが、今はこれが希望の星であった。

 

チャージと起動式の読み込みまで数秒の時間を要するレールキャノンのガンナーの発射を支援するように、警備員たちの火勢が上昇する。

 

「やつらデカブツを出して強気になってやがるな」

「ではどうします?」

「死霊爆弾と指弾を使うぞ」

「了解」

 

柱を遮蔽物にして『雀蜂』たちの隊長格である『黒』は、全員に『戦場のネクロマンサー』が開発したネクロアームを用意するように言う。

 

『投げろ!!!』

 

言葉で投げ込まれたのは、やや萎びて赤黒い色をした――魔術師の心臓である。 雀蜂たちはそれを協会の雇われ警備員たちの密集地帯へ投擲した。ガン!!と音を立てて、彼らの傍に心臓が落ちる。

 

本来のものよりも『兵器』としての性能を突き詰めて、手投げ爆弾型に加工したものであるが……

 

次の瞬間、それは勢いよく膨らんで破裂。中に詰まっていた魔術師の歯や爪が魔法師の体や張っていた障壁や魔法の鎧に食い込むと、彼らは毒を飲まされた如く苦悶して、のたうち回る。

 

胸を掻きむしり、喉を何度も掻きむしる様子。

苦悶は同時に唾を呑み込むことすら許さず、あらゆるものを口から吐き出す。

 

そして頼みの綱であったレールキャノンのガンナーは即死であった。

 

他の人間たちと違いレールキャノンにだけ魔法を集中させていたがゆえの不運―――と片付けられるだろうか……。

 

「殺せ。心臓は次の爆弾(ボム)に使うから切り取れ」

 

などという言葉が聞こえてきたのだが、もはや意識も混濁している……そうして若き警備員一人の命が終わろうとした時に、黒と白の輝きがやってきた―――。

 

 

 

事態の全てを見届けるべく、騎士の親子を追うように先頭を走っていた達也は、出入口の扉の陰で足を止めた。彼の背中に続いていた深雪も兄に従い立ち止まったが……。

 

「お兄様……」

「戦闘は終わっているようだな」

 

そんな出入り口の戦いの様子は、分かりやすかった。

森崎家の警備員たちはある程度の回復を見せて何とか状況の確認をしている―――1人は死んでいるようだが……そして敵側であっただろう『マスクアーミー』たちは、全員が無力化されて拘束されていた。

拘束していたのは赤布……俗に聖骸布である。

 

「出る幕が無さそうだな」

「あのマスクアーミー達は、あのサブマシンガン以外の武器も使ったんだろうな」

「うん……多分だけど『怨霊』『悪霊』……左道の術だ」

 

左道……仏教で言うところの死者を操るすべのことだろう。幹比古の読み取った事実を推測するに、ネクロマンシーの術を使ったというところだろうか。

 

ともあれ、ここが激戦区であり建物内に危険を見いだせない以上、『野外』(そと)こそが脅威なのだと気付けた。

 

先程から強烈なエーテルの発露が身を揺らしている。アーシュラがなにかに対して戦いを挑んでいるのだ。

 

そうして弾痕と血反吐が撒かれた出入り口から外に出ると――――

 

『夕空』(そら)を覆い尽くす白い羽根。そしてそれは何かの敵性らしく、地面や建物に落着を果たす前に、屋上に陣取った連中がそれらを破壊していく。

 

「あの羽根の一枚一枚が、戦術級魔法と同レベルのエイドスを有している」

 

「それだけじゃ無さそうです。あの羽根は何かを内包している」

 

「―――柴田の言う通りだ」

 

達也の指摘に付け加えた美月の言葉。それに同意するのは、いつの間にか外にいた十文字克人であった。

 

「どういうことですか?」

 

「言葉通りだ。どうやらあの羽根は、着弾すると同時に司波の言うように破壊を招いた後に、そこを『苗床』にしてアーシュラの言う『ソーサルエネミー』を、『召喚』なのか『精製』なのかは分からないが発生させている」

 

その証拠なのか、サーヴァントアーチャーズともガンナーズとも言える連中でも出してしまう打ち漏らしが海面に着弾。

 

吹き上がる水柱は高い。同時に発生する盛大な破壊の圧がこちらを戦かせるも、そこでの『魔法式』の展開は終わらない。

 

十文字の言う通りそこに魔法陣が発生する。強烈なものだ。幾重にも発生するそこから一高を襲ったエネミーの類が生み出される。

 

その数およそ60体ほど……。

 

海面で発生したにも関わらず、その機械兵は構わずに進撃を開始する。

 

「十文字先輩!!!」

 

迎撃しなければという焦燥の想いが深雪から出たが。

 

「撃て」

 

厳然たる言葉。大声ではない。だが、はっきりと通り硬質の声の指示の元、どこからか現れた全身鎧の騎士たちの集団。

古めかしすぎて、銃火が飛び交う現代の戦場において場違いがすぎるその装備をした騎士たちの内、長弓を構えたものたちが、上陸しようとする機械兵たちを穿ち撃ち―――そして消滅させた。

 

ガシャガシャという金属が擦れ合う音が、この上なく異質だが………それでも、この場において誰よりも頼りになる。

 

そして、その騎士集団のリーダーであろう黒騎士。随分と今まで知ってきた円卓の騎士よりも『厳つい顔』をしている……神経質なのかもしれない。

 

「円卓の騎士 アグラヴェイン。ここは私たちが請け負う。君たちは早く逃げなさい」

 

簡潔な自己紹介。同時に指示されたことだが、それに素直に頷けない。

 

「俺達は―――」

 

「やめておけ。只人(ただびと)の軍であれば君たちでも戦えるだろうが、此処は既にそういう常識が通用しないのだよ」

 

言おうとした言葉を砕く硬質の言葉(しんじつ)。同時に反論を許さないほどに『正論』(げんじつ)を叩きつけられて、全員が呻く。

 

「分かりました。サー・アグラヴェイン。ですが、会場内でやるべきことが我々にはありますので、すぐさま逃げることは許されないのです」

 

「そのための時間稼ぎは私達と姫君たちが行おう。か弱き者たちを守るために剣を振るうことこそが、騎士の勤めゆえにな」

 

十文字の言葉に返したアグラヴェイン卿の指揮は確かなものだ。任せていいのかもしれないが……。

 

「行くぞ。実験筐体をどうにかしなければ、撤退することも出来ん。サーヴァントはともかくとして、動いているかもしれない大亜軍はこっちが狙いかもしれんからな」

 

言いながら会場内部に入り込んだ克人に全員が続く、出たと思ったらば入ったり忙しない限りだが……。

 

(アーシュラ……)

 

アッドの弓形態だろう武器の弓弦を引く姿と眼差しに、いつぞやの弓道場での姿を思い出す。

 

振り返って見えた姿に、彼女の手助けをしたいというのに、どうしても『力不足』である自分。非力さを覚えつつも、それでも……。

 

「俺はお前を助けたいんだ……」

 

自分の気持ちが口の端から紡がれることは防げないのであった。

 

 

「そうよ!! 北欧ファミリーズを大至急!! それと『源氏アーチャー』を!! ええ、あちらは物量作戦に転じている!! こっちは防戦だけなんですよ!! 内地側から攻撃を仕掛けられている以上――――『聖杯』の降臨を狙っている地は一つです……はい。はい―――――では、お願いします」

 

一通りの通信を終えて、ことの始まりから陣取っていたVIP用の会議室で戦況を見るに状況は悪すぎる。円卓の騎士たち全てで防衛線を貼らなければいけないほどに、やられた思いだ。

 

(大亜の船舶が無いのは僥倖だけど、どこからか侵入してくる。有り得るのは海底からの侵入―――『戦車』で来るわね)

 

モニターに映し出される全ての映像を見ながら、藤丸立華は歯噛みする。

 

「……手を組んだわけね。中華の軍と魔術組織が」

 

混沌とした戦場ではあるが、ようやく見えてきた絵図……狙っているものは多い。だが―――。

 

「とにかく砲撃を止めなければいけないわ。三箇所に向かわせる戦力を抽出するためにも―――」

 

不意にその言葉が止まる。

 

何者かの気配を感じる。

それは恐怖を覚えるほどの圧……。

 

「カルデアのマスターだね?」

 

「……どちら様だったかしら?」

 

後ろから聞こえる声。入口付近から聞こえる言葉に緊張は増す。令呪を用いてアーシュラを呼び寄せる……そうすれば、この横浜会場が崩れるだろう。

 

多くの考えが混在する中、その声はとてつもない圧を覚えるのだ。

紛れもなくサーヴァント。それも王か皇帝を思わせる覇気を感じる。

 

「いま思念で屋上(うえ)にいるアルトリウスの娘でも呼べば、悲惨なことになるだろうね。安心しな。別に取って食おうなんて話じゃないんだ」

 

振り向かずに会話をすることに意味があるかは分からない。それでも振り向くことは容易ではない。

 

「―――要件を伺う前に名前を聞いておくわ」

 

だが、それでも意を決して振り向くと、そこには……。

 

「!!!!!!」

 

ワタシ()のマスターは、この騒動をいたく嫌っている。不愉快なんだよ―――よって『同盟』を結ぼうじゃないカルデア」

 

―――『シーザー』がいたのであった……。

 

 

そんな邂逅と同時に戦場に変化が現れる。

 

「……圧が減った?」

 

「ですね。この国の兵士たちが砲兵陣地に無謀な攻撃を繰り返したのが、功を奏したのでしょうか?」

 

それはあり得ないだろう。三箇所の砲撃陣地には強力な結界が張られていたのだ。それを破って、その上であそこを守るエリア・ガーディアンと呼ぶべきものを全て打倒して『翼砲台』を停止させることは―――。

 

「姫! 翼柱が落ちていきます!!」

「小休止出来そうかな?」

 

ガレスの言葉通りに旧ハマスタ跡地からの砲撃が落ち着くと、次いで本牧市民公園も沈黙する……。

 

(誰かが動いているのかしら?)

 

明らかに襲撃を受けているらしき様子で火の手すら上がっているのだ。誰かを確認させにいきたいのだが……あるいは本物の鷹の目持ちの弓兵であれば、どういう相手であるかが……。

 

「お父さんならば見えたかな?」

 

そして根岸森林公園の翼柱が沈黙をしたところを見るに、やはり誰か……サーヴァント級の存在が動いたと見るべきだ。

 

「まだまだ戦いは続くだろうけどよ。今のうちに補給しておけよアーシュラ。お前がアタシたちの現界の大本なんだからよ」

 

「為朝殿が全速力で向かっているそうですからね。いざ砲撃再開されたとしても、何とかなりましょう」

 

モードレッド、ガウェイン……両名からそんなことを言われたアーシュラは、そういうことならばと思って……。

 

「ご飯を食べたならばすぐに戻ってくるわ」

 

そう言ってから、会議場内部に戻るのだった―――。

 

 

 

「成程、それでお前はメシを食っているのか……」

 

一連の流れを食いながら集まっている全員に説明をしたアーシュラ。

 

納得しづらいものもあるのかもしれないが、まぁ納得しろやということである。

 

「地下通路を使って避難させたのは、この展開を読んでいたからか?」

 

「そうなんでしょうね」

 

現在、一高の教師にしてアーシュラの両親は多くの生徒達を地下通路から誘導して避難させようとしている。

 

「けど遭遇戦とかにならないかしら?」

 

エリカの質問はもっともであった。実際、達也としても大亜軍程度ならば問題ないとしても、サーヴァントやソーサルエネミーが出てきたならば、流石にマズイのではないかと思うのだが……。

 

「心配ないわ。通路で遭遇戦になるのは『先行偵察』と『長距離通信』が出来ないからであって、その手のことに長けた3騎を就けているから」

 

「そちらにもラウンズを就けていたのか!?」

 

「ええ、ユーウェインとベディヴィエールにブリトマートを」

 

克人の言葉に、こともなげに答えるアーシュラ。

 

大概は魔法師である自分たちではサーヴァントの負担の強烈さは測れないのだが、それでもアレだけの戦闘をこなしている、尋常の理に囚われない存在であるサーヴァントたちに魔力を供給するラインは、アーシュラ一人だけなのだ。

 

どう考えても、『あり得ない』と思うのだが……。

 

「幹比古……魔術師一人で高位精霊を10人以上も使役するなんてことは、可能なのか?」

 

「無理だよ……魔法師の魔法と違って魔術師の術は、全て『等価交換』で成し遂げられるものなんだ。英雄が昇華した高位精霊なんてものと契約した上で彼らに戦闘を担わせるならば、当たり前だけど、その戦闘に使われる魔力は自前の貯蔵分があったとしても、最後には契約者から賄われるんだよ………!! アーシュラさん、やはりキミの身体は神代回帰している……」

 

驚愕している幹比古。その視点とか想いを全て共有出来ているわけではないが、アーシュラがかなりメチャクチャなことをやっていることぐらいは分かる。

 

大丼のラーメンを食い切ったアーシュラは。

 

「まぁウチのお母さんならば、地下にいても天空へとビームを放って地上への()を作れるからね。問題ないでしょ」

 

サーヴァント関連のことをスルーして、そんなことを言うのだった。

 

「それでも心配ならば行ってきたらいいんじゃないですか?」

 

「沢木、服部―――行ってきてくれるか?」

 

「「はいっ!!!」」

 

体育会系のノリなのかもしれないが、ともあれ勢いよく駆け出した2人を見送ったあとには、何となく聞くことに。

 

「で、皆さんはいつになったら避難するんですか?」

 

「そうしたいところなんだが……これならば俺たちも地下道を通った方が良かったかな?」

 

「これがただの軍事的策動ならば、あちこちは制圧されていたんでしょうけど、今ならば特に問題なく地上から都内に帰れるでしょう」

 

アーシュラの言うことはもっともだ。現在の横浜に『大亜人民軍』の兵隊たちは一兵たりとも展開していない。

 

港湾に『船舶』は『一隻』も無い。

そして……『砲撃』も止んでいる。

 

だが、それが嵐の前の静けさにしか思えないぐらいに、何かが恐ろしいのだ。

 

「とにかく立華から話を聞かないと――――――」

 

どうやら……アーシュラの方でも混乱をしているようだが、ともあれデモ機の類からデータは移されているし、現物は既に消却済み。

 

避難するばかりなのは当然なのだが……早々に動けない。

 

この状況でメシばっかり食っていたアーシュラと、それを様々な想いで見ていたメンツではあるが、そんな所に2人の男女、野戦服姿の軍人がやってきたことで少しだけ事態は動き、そして―――。

 

藤丸立華が連れてきた存在で、怒涛の如く事態は動くのであった……。

 

 

 

 

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