魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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第115話『明かされた真実』

メシを食いつつ全員の様子や話し合いを見聞きしていたアーシュラだったが、どうやら全員が避難をするという形で一致したようだ。

 

余計なことを考えずに戦いに集中出来そうだと思うも……。

 

「アーシュラはどうするんだ?」

「此処に残るわよ。聖杯の確保もカルデアというより魔導に生きるものとしての務めだもの」

 

テリヤキバーガー(二刀流)を食いながらの言葉に、全員が何とも言えぬ表情をする。

 

「アーシュラ……俺たちは―――」

 

何かを達也が言おうとした瞬間、野戦服を着た男女が食堂に入ってきた。

 

「何処に居るかと思えば、こんなところにいたのか……」

「アーシュラちゃんが補給をするために食堂にいるだろうことは予想通りでしたけどね」

 

この食堂においては異質すぎる2人の男女は愚痴るように言ってから、自己紹介をした。

 

女の方―――若い女性は少し前に八王子の鑑別所でも会ったりした人だが、男の方は九校戦でしか会ったことがない人だった。

 

「あの時の少佐殿が風間殿でしたか……その節はお世話になりました」

 

感心したような口ぶりの克人の声を聞きながらもアーシュラは構わずにメシを食らう。

 

モノを食べるときは、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ。

 

独りで静かで豊かで……。

 

(まぁこの場では無理だろうけど)

 

急須を出して茶を濾して湯呑に注いでから熱々のそれを呑んでおくことにする。

 

(そろそろ立華を探しに行こうかな……)

 

未だにこちらからの念話に答えようとしないマスターにしびれを切らして、湯呑の茶を飲み干してから出ていこうとした瞬間。

 

「待ってアーシュラちゃん! 私達は今から敵対勢力へとカウンターを行いたいのよ! 協力してくれない?」

 

「そっちはそっちで勝手にどーぞ。ワタシの敵はワタシで見つけて狩り出すだけです」

 

「相変わらずの無頼漢ならぬ無頼乙女だな……だが、君たちの勝手がこれ以上許されるなどと思うなよ! カルデア!!」

 

「勝手だと? 随分と居丈高に言うが、我ら星見の系譜は、お前たち魔法師の『人理への腐食』の尻拭いをしているだけだ。自分たちの不始末すら片付けられない自儘なだけのデミエルフの成り損ないが、よくもまぁ吐かす」

 

響子への軽い対応とは違い、風間の言いようにはとことん噛み付くアーシュラ。その瞳はいつもとは違い冷たい輝きを灯している。

そしてその言いようはこの場にいる全ての魔法師たちを責め立てるような言い分であった。

 

「待って待って!! アーシュラちゃん!! 少佐の言いたいのはね。わたしたちは協力できないかってことなのよ! それは考慮してくれないの?」

 

「ワタシが言いたいのはみんなして安全に横浜から都内に帰って欲しいってことですよ。アナタならば分かるでしょう藤林響子さん? 京都・奈良でアレだけ『純粋神秘』にやられたアナタ(・・・)ならば」

 

響子がフォローするように2人の間に入り込んで言うも、それに対してもアーシュラは無情だった。

だが、その言葉で分かることは……この先の戦いに魔法師が通用する戦場は無いのだということだ。

 

「そこまで……私達は無力かしら?」

 

響子の声と言葉には苦悶と苦衷が混ざっていた。

それはアーシュラの言う京都・奈良での戦いを引きずっているからだろう。

 

「無力ですよ。只人の戦士を相手にするならばあなた方はそれを畏怖せしめるチカラはありましょう。だが、それは決して神理の域に手を伸ばすものたちを脅かす力じゃぁない」

 

「………」

 

その断言と『実例』の多くを目撃してきただけに、響子もソレ以上は言えなくなる。

 

(本当ならば頬桁を引っ叩きたいんだろうな……)

 

力強く握りこぶしを作って耐えている様子の響子を見た達也がそう思うも、構わずアーシュラは出ていこうとする。

 

そんな最中……。

 

「なかなかに剛毅じゃないかアルトリウスの娘。闘争の場に相応しくないもの、戦士として不適格なものは要らないとする態度は正しいよ」

 

などとアーシュラの無情な態度を称賛する存在が食堂のドアを蹴破って出てきた。

 

ドアは猛烈な勢いで飛んできて風間を直撃しそうになったところで片手でキャッチするはアーシュラであった。

 

まるで軽いもの……せいぜいペットボトルを投げられるも軽くキャッチをした風だが、くの字に拉げたドアの飛んできた勢いはそんなものではなかったはずなのだ。

 

風圧を受けてアーシュラの髪が後ろに流れたのだから、その速度は理解できる。

 

助けた風間には一瞥もせずに入り込んできた存在を睨みつけるアーシュラ。現れたのは……とんでもない美女であった。

 

「大シーザー……剣帝ルーシャス・ヒベリウスか!?」

 

アーシュラが評した名称に特に訂正一つも言わずに赤毛の美女。何かの紋様を貌に表わしている女性は構わずに言ってくる。

 

「取引だ。ブリテンの騎士王 円卓の主 アルトリア(アルトリウス)・ペンドラゴンの娘、この事態を解決するために私たちと組みな」

 

その提案の意図は分からないが、自信満々に、あるいは傲岸不遜に言う美女の後ろから『ぐるぐる眼鏡』を掛けた少女に付き添われながら、藤丸立華がやってきた。

 

「人質を使った交渉とは、卑怯なことをするものだ皇帝陛下(インペリウム)

 

殺意とも違うが『意』が食堂を満たしていく。いざとなれば、飛びかかる姿勢を見せるアーシュラを前に誰もが緊張をしていく。

 

「違うのよアーシュラ……私が受けたの。この同盟を」

 

「立華?」

 

「やってくる敵は強大……そしてもはやここは修羅巷よ。『誰』が『誰』の『敵』であるかが不透明な戦場……今はインペリアル・ローマとの共闘を了承して」

 

「……そう。アナタがそう判断したならば、それでいいわ」

 

あっさりと、その剣帝なる……サーヴァントだろう美女の提案を受け入れるアーシュラ、その目はぐるぐる眼鏡の少女に向けられている。

 

「私は『マスター』のところに一度戻る。『ルーシャナ』、アーシュラ姫を『姉』と思いよく指示を聞くように」

 

「―――はい。ルーシャスお母様」

 

その恭しい母の言葉に了承をしながら眼鏡を外した少女の面貌は、あの九校戦の時に死徒と共に会場を襲った剣士の少女だった。

 

(あの時とは様子が違うな)

 

もしくは戦闘時以外ではこんな調子だったのかもしれないが、ともあれ……あの時のメンバー(初期ガードメンバー)がいなくて良かったと思いつつも……。

 

「むぅ……アーシュラ、お前はそれでいいのか?」

 

ルーシャナという少女がやらかしたことを重大ごとと考える十文字克人にとっては少しばかり遺恨を覚えることがらであった。

 

「呉越同舟って言葉、克人さん知らないわけじゃないでしょ?」

 

「そりゃ分かるが……」

 

「ルーシャス皇帝を使役している存在は『私達』を試している。まぁ挑まれた戦いならば受けて立つしかないでしょう」

 

意味合いは分からない。克人も、そこはもはや尋ねない。だが、はっきりさせたいことがある。

 

この場でならば彼女は答えてくれるはず。ここには、もうひとりの王様がいるのだから

 

などと自分の中での結論を出してから佇まいを正してから問いかける。

 

「アーシュラ、お前の母親……一高の教師であり、俺の親父が迷惑を掛けたお前の御母堂アルトリア・ペンドラゴンは……かつてのブリテンの騎士王、世俗には『アーサー王』として知られる人物なんだな?」

 

「ええ、そうですよ」

 

その断言に全員が別々の意味で『ぎょっ』とする。ざわついたりどよめいたりという反応が無いのは、現代魔法師が夢見がちではない人種ゆえかもしれないが。

 

それはともかく珍しい反応としては響子と風間、そして達也とが『なんで言っちゃうんだ』という咎めるような目をしている。

 

「……今まで俺をダマしていたのか?」

 

「ダマすもなにも無いかと、そもそも克人さんはアルトリア先生(ワタシの母)が、そんな存在であるなどと考えていることすら言っていなかったじゃないですか?」

 

考えるに、確かに克人はそんなことを正面切ってアーシュラや立華に言った覚えはない。

先の少佐の言葉以前に司波達也が軍属であるなどという疑念は無く、四葉の魔法師であるとは確信していたが……正面切ってこれらのことを問いただしたことは無かった。

 

「言われてみればそうか……だが俺は宇津見くんに聞いたんだぞ。サーヴァントが人間と……交配することが出来るか、ジェラミー・ブラシエリ(スパイダークモノス)という存在があり得るのか、と」

 

アーシュラが全てを統べて、世界の運命を定める狭間の王様扱いはどうかと思うのだが……。

ともあれ……。

 

「コレ以上のことは、後々にでも教えますよ。エリセにセクハラしてまで聞いた事への対価ぐらいはね」

 

「やはり俺は宇津見くんからそう思われていたのか……」

 

嘆く少年(巨漢)のココロは少しだけ気遣うが……。

 

今にも何か大戦闘のような予兆を感じさせる圧が放たれているのだ。コレ以上の問答はベストではないはず。

 

「そもそも何故、克人さんはワタシの正体を知りたがったんですか? 十師族の権勢を維持するためですか? それともアリサを十文字家に入れるためですか?」

 

いくつもの可能性がアーシュラの中に浮かんでくるが、そのどれもこれもが有り得そうに無いことだった。

 

克人が少しだけ逡巡している間にも宙を舞う蒼銀の乙女が弓を持ちながら食堂に現れ、紫色の巨大甲冑を着込んだ大柄な『人間』が食堂の壁を突き破って現れ全員が驚くも―――。

 

「助けに来たよアーシュちゃん!!! 妖精騎士ブリトマート此処に颯爽登場☆」

 

その巨大甲冑が弾けて銀髪の美少女騎士(エルフ耳)がポーズを決めながら出てきた時には、全員が更に驚くことになってしまった。

 

「アーシュラいくよ」

 

宙に浮かぶ方の銀髪の乙女の言でアーシュラの姿が再び戦衣装に変わる。

平淡な言葉、平淡な表情だが、戦を待ち望むかのような声に何故か全員が背筋を立たせた。

 

まるで……死神である。そんなイメージをもたせる美少女だ。

 

「行くよルーシャナ」

「はい。アーシュラおねえちゃん!」

 

そうして戦いに赴く前の掛け声をするアーシュラの背中に……。

 

「―――君が好きだからだ!!」

 

十文字克人の必死な言葉が掛けられたのだが、それを聞いても、アーシュラは構わずに食堂の窓から飛び立つのであった。

 

 

超常の能力者たちが去ったあとに、食堂に残った全員は……。

 

「とにかくみんなは逃げたほうがいいわね。達也君は予定通りスーツを受け取りに、あとは私と千葉候補生が誘導するわ」

 

来ているとは思っていなかったのか摩利とエリカが驚いたようだが、こちらも問答をしている暇は無いのは理解しているわけで、全員が男女の誘導に従って駆け出す。

 

駆け出しながらもその一同に会話はない。当然だ。

 

こんな衝撃的な真実を、この修羅巷で聞くことになるなど思っていなかったのだから。

 

「にしても……アーシュラが本物のプリンセスだったなんて……」

 

エリカの汗を掻きながらの言葉はこの固まった空気を壊す一手になった。誰もが少しだけ予想をしていながら、あり得ないと想像を打ち消していたことだ。

 

「響子さんは知っていたんですか?」

 

「まぁね。というよりも魔法師の業界のエルダーメンバー……真由美さんのお父さんとかは知っていたわよ。知るヒトは知っているって感じかな」

 

「何故、それを公言して―――いや、公言出来るものじゃないのかもしれないですけど……」

 

真由美の質問に返した響子にさらなる質問を重ねた摩利だったが、考え直してそれが特級の機密であることはいくらなんでも理解できる。

 

「そうね。けれど……色々とあるのよ。あのヒトたちにも……結局、どこまで行っても衛宮士郎という『壊れた正義の味方』に着いていったのも、あの2人なのだから」

 

「……やっぱりあの一家は本物の戦場に居たんですね」

 

「比較的平和な日本にいると『そういうもの』は映像の中にしか無いものと思いがちだけど……そういうものだからね」

 

新ソ連の佐渡侵攻、大亜の沖縄騒乱。

 

どちらも他国からの策動ではあるが、それでも『局地戦』に収まったりした以上、本州の人間たちは少しだけ呑気な人間も居たりする。

 

それに危機意識の欠如だのなんだの口うるさいことを言うのはそういう立場にいる連中だけでいいはずだ。

 

「深雪さん大丈夫ですか?」

 

「ええ……大丈夫よ美月……少しだけ考えていただけだから……」

 

明らかに調子を悪くしている様子の深雪に美月が声を掛けるも、深雪はそれどころではない。

 

アーサー王伝説など詳しくはない。

神秘の凄さなど分からない。

 

けれど、本物の姫であると断言されてしまったことで、深雪は自分の卑しさを、汚らしいところを暴かれた気分であったのだ……。

 

(私は……)

 

アーシュラはただ只管に真っ直ぐに見据えるべきものを見据えていただけだ。

 

けれど、深雪のそれは全て……捻子曲がったものの見方でしかなかった。

 

兄を認めない世界を変えたくて磨いてきた魔法の力。

兄のことを馬鹿にする。蔑む人間たちを黙らせるために磨いてきた力。

兄を只人として容赦なく蹴りを入れる無礼な姫騎士を倒したかった。

兄のためだけに生きてきた自分を『蔑む』視線を向ける姫騎士を黙らせたかったのに……。

 

 

(私はどこまで……卑しい女なんですか……)

 

そんな泣きそうな程に悔しくなる深雪の内面での独白はともかくとして、会議場を出るとそこは―――。

 

「―――えっ?」

 

「な、う、嘘でしょ!? これも……何か魔法とは別種のチカラなの!?」

 

誰もが驚愕する現実が広がっていた。時刻は現在午後4時―――既に日は落ちつつある夕焼けに染まる空が見えていても当然の時刻に……。

 

それを塗りつぶすように、逆さまにするように青空広がる昼日中の光景が広がっていたのだ。

 

「考えてる暇も呆けている暇もないわ。兎に角、移動できる内に移動しましょう。まずは駅前広場まで」

 

響子の言葉に従い、全員が動き出す。その一方であちこちから破壊音が響き、怒号が聞こえつつある。

 

春先に兄とデートをした深雪にとって想い出の街で人知を超えた大破壊が伴う戦闘が……始まっていく。

 

 

 

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