魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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第116話『それぞれの場面』

Interlude……。

 

 

地下道をシェルターへ避難する第一高校生徒・職員(プラス若干名の部外者)の集団と、地下道に入り込んだ武装ゲリラの遭遇戦は終息を迎えようとしていた。 避難する彼らは、総勢六十名に達する。会場が襲撃を受けたのが一高の発表の直後だった為、応援の生徒数がピークを迎えていた。

 

だが、そのゲリラとの『遭遇戦』というイベントは殆どにおいて意味を成していなかった。

 

「アルトリア様。先道の安全を確保しておきました」

 

「ギャレオンとひとっ走りしてあらかたの兵士たちには眠っていただきました」

 

そうアーシュラが召喚(?)したイケメン守護騎士(爆)がアルトリアに報告しているとおりに、自分たちが通過する途上において、芋虫のように布で包まれて藻掻いている人らしきものがあったりするのであった。

 

 

「御苦労様です。皆、歩けなくなったものはいますか? あるいは疲労したものは正直に手を上げなさい」

 

「情けない話ですが……小生はかなり腰に来ていますね……」

 

「では廿楽教官はこちらに」

 

などと言って2頭立ての古めかしい馬車を用意して、そこに中年の男を乗せるアルトリア。

 

言いながらもアルトリアは四方八方に目をやりながら、状況を確認している。

 

「―――」

 

そのとき、一瞬だが目が鋭くなるのを中条あずさは目ざとく見た。何か良くないことが起きたのだろうが、それでもアルトリアは逃げる自分たちを守護するために奔走するのだろう。

 

例え、娘に何かあっても……。

 

彼女は騎士としての役目を全うする。

 

 

Interlude out……。

 

車輪の音がする。何かが向かってくる音がする。

 

何だ。これは何だ。

 

考えるまでもない。敵か、そうでないか、だけだ。

 

 

だがやってきたものの奇態さに驚いたのだ。

 

「な、なんなのよアレは………?」

 

「……戦車なんでしょうか?」

 

あんな奇態な兵器見たことがない。有り体に言えば、確かに軍事に詳しくない美月が戸惑うように言ったとおり戦車なのかもしれないが……。

 

四輪駆動ならぬ十輪駆動の長く広い車体フレーム。

 

その車体のフロント部分には操縦室とほとんどちょくで『虎の頭』が据えられていた。

 

それを戦車と思うならば、それが主砲であり砲塔と考えるのが筋だが、その広長の車体の後部に砲身が小さいものが取り付けられていた。

 

キャタピラ(履帯)ではなくタイヤで動き、更に『雷紋』のようなマークを車体に貼り付けたそれを戦車と読んでいいのか悩んでいると……距離にして800mというところまで進出してきた時点で虎の頭が吠え、盛大な火炎放射を前方に放ってきた。

 

フレイムスローワー(火炎放射器)の勢いではない純粋火力。当然、その前に真由美も深雪も魔法を放ったのだが、それが通じない。

 

「なっ!?」

「―――」

 

寸前で横っ飛びに飛んだはいいが、相手の火炎放射の勢いは凄まじい。

 

アスファルトの地面を溶かす様子を見て。

 

「地下を燻そうとしている!?」

 

「させっかよっ!!」

 

千代田の言葉に反応した桐原が剣を手に向かうが、虎戦車はその巨体に似つかわしくない機動性を発揮して桐原の機動力をあざ笑う。

 

あまりに常識外の機動性。しかし、桐原が遂に相手の側面に躍り出て、斬鉄を行おうとした際に―――。

 

弾丸の連射。コンペティションステージで襲ってきた『雀蜂』なる連中の射撃が行われた。

 

当たり前の話だが、戦車には随伴歩兵というものがあってサイドアタックに対する備えが必要なのだ。

 

かなり昔ならば歩兵の携行装備で戦車を黙らせることは不可能であったのだが、それでも現代の戦場はそうではない。

 

だから―――。

 

「ぬんっ!!!」

 

思わぬ勢いの射撃の前に、気合を込めなければ障壁が崩れ去りそうな圧を感じる十文字克人は、桐原の身を守りながらも、戦車を始末することを願うが―――。

 

バキンッ!!! 振るった剣が砕け散った。側面を輪切りにするべく振るった剣は、あまりにも呆気ない結果を残した。

 

次いで千葉の剣士2人……エリカと修次が向かうも、桐原をその巨体で押しつぶそうとする戦車の常識外の機動。横走というあり得ざることをやる。

 

「桐原っ!!」

 

五十里の悲鳴。同時にどうにか虎戦車をどうにかするべく攻撃術を放つも―――。

全て無効化されているのだ。

 

(装甲が特殊な材質なのか、動力機関が特殊なのかは分からないが……硬すぎる!!)

 

真由美のドライアイスの弾丸も司波深雪の凍結も通らないほどに、虎戦車は現代魔法を無効にして火力を吐き出してくる。

 

副砲たる砲身が更に火を噴きこちらの足元を揺らす。その上……。

 

桐原を押しつぶそうと押し相撲(一方的)をやっていた虎戦車が『変形』を果たした。

 

現代でも知られている直立戦車よりも『人型』に近い―――俗にアメリカで有名になった日本の玩具たるトランスフォーマーを思わせる変形で、人型となった虎戦車は『虎人』として全方位に火力と打撃力を発揮できるようになったのだ。

 

機動力は未知数だが、短い砲身が伸長展開をして両手持ちの打棒となり赤熱。胸にあった虎頭からは―――。

 

「なんて火力よ!!!!」

「出た瞬間にこれとはな!!!」

 

当たり前のごとく火炎放射。しかも人型(じんけい)を取ったがゆえの照射範囲の自由度の広さが、この上なく厄介だ。

 

火炎放射で燻すように出てきたところに、歩兵の射撃が繰り出される。

 

未だに死人が出ていないことが、奇跡にも思えていたが―――。

 

「くそっ!!!!」

 

どうしようもない。打開策が何も見つからない。

 

逃げ出すことも出来ない状況に……。

 

―――無数の剣が降り注ぐ。

 

その攻撃は幻想的であり、その上で暴力的すぎた。

 

「ひぃっ!!!」

「剣製のえみ―――」

 

自分たちがあれだけ苦慮した雀蜂という歩兵たちが、呆気なく倒されていく。

 

放たれた剣は全て彼らを無力化するほどの何かを持っている。そして、それは明確ではないが自分たちにも分かる。

 

最期には虎戦車も巨大な槍。巨人族というものが存在しているならば振るっていたのではないかというもので真上からざっくり貫かれて停止を果たす。

 

避ける暇もないほどに高速で飛来したそれが、誰の仕業なのか……。

 

「―――士郎さん!?」

 

誰の仕業であるのかを理解した響子が空を振り仰ぐようにして言った。同時に、降り落ちる剣の内の一つ。自分たちの近くに落ちたものから声が響く。

 

『どうやら敵軍は沿岸部から侵攻を果たそうとしている。内陸に進出した連中は、沿岸部からやって来ようとしている機動戦力を当てにしているようだ』

 

剣は一種の通信装置の役割もあるらしく明朗に士郎先生の声が響く。そしてその申告が真実であるならば、自分たちは挟み撃ちになる可能性がある。

 

『本物の敵だ。喧嘩じゃ済まない。魔道の殺し屋たちだ―――大亜の軍人は彼らと同じ特殊装備を持っている』

 

その言葉。重みを伴ったものに光井や柴田が顔を青褪める。

それに対して覚悟が足りないなどとは誰も言えない。

先程まで機動兵器一体と10名にも満たない歩兵で十師族や数字持ちの魔法師が完全に塩漬けにされていたのだから……。

 

「ですが、だからと言ってこの場で何もしないなど──」

「私も響子さんと同じ意見です! 士郎先生は──」

反論してくる響子と真由美に、士郎は少しだけ言葉を荒げて告げた。

 

『いいから、お前たちは父親にでも風間にでも、こう言ってこい!! 『国士無双』の率いる兵が入り込んできているって! 『皇帝軍』は上空(そら)海中(うみ)から来る!」

 

「「えっ……」」

 

その言葉を裏付けるように海中から虎戦車が続々と十の車輪を器用に使い、横浜の岸壁に乗り上げて、地上を蹂躙していく。

 

片や『青空』(そら)からは、どこからか現れたのか傀儡兵の群れや奇態すぎる『生物兵器』に乗って兵隊たちが現れる。

 

不幸なことに『マルチスコープ』という遠見の魔眼を持っていた真由美は、その空と陸を埋め尽くす烏の群れか蝗の群れのような敵の姿を見てしまったがゆえに恐怖に慄き、失禁をする寸前であった。

 

 

第三高校の代表団と応援団は、来る時に使ったバスで避難することに方針を決めていた。

 

駐車場にたどり着き、彼らの大型バスを視界に納めた直後。──バスは、下手人の襲撃を受けた。

 

下手人は驚いたことにあのイエローフェイス……白髪の騎士が雀蜂と呼んでいた存在であった。

 

不幸は続くわけで、運転手は容赦なく車外からの銃撃で死亡した。

車体は耐熱耐衝撃の、軍事車両の装甲板と同じ材質を使った特注品であったがそんなものを病葉も同然にあのサブマシンガンは破ったのだ。

フロントガラスも窓ガラスもダメになっていた。

 

唯一の幸運はタイヤが無事であるということか。

 

「―――!」

 

吉祥寺の隣で、将輝が沸騰した。 このような場面を見せられて彼が激怒しないわけもなく、吉祥寺も同じ気持ちだったので止める気にもならなかったが。

 

「FULL FIRE!!!」

 

当然、雀蜂も応戦してくる。

 

将輝が放ったのは爆裂であり、本来ならば雀蜂なるジャケット着込みの連中を四散させるはずだったのだが……。

 

「ッ!!!」

 

人体に対する改変が効かないことを悟った将輝は一転して偏移解放で攻撃を放つ。

 

「怯むな!!! 撃って撃って撃ちまくれ!!!」

 

独りが盛大に海側に吹っ飛ばされるもすぐさま立ち上がり銃撃を食らわせてくる。

 

「むむっ!!! 水神防壁!!!!」

 

四十九院沓子の水を使った防壁が、銃弾に対する防御柵へとなる。

それらを受け止める彼女はすこしばかり苦しい表情になる辺り、どうやら受けただけでもダメージを食らわせる類の銃弾か銃の特性らしい。

 

他の人間たちも防御担当と組になって反撃を行う。

 

この異常事態の限りを前に立ち向かわない魔法師などいないのだが、それにしてもこいつらは凶悪だ。

 

完全に魔法師に対するカウンターとして、存在している。十師族である将輝の魔法力が通らなかった時点で、直接の改変が不可能であると理解した。

 

故に―――。

 

「転身! サーヴァント・ブラダマンテ!!!」

 

―――それを上回るチカラが必要になるのだ。

 

九校戦で得た霊衣を展開して光の盾と短槍を手に駆け出す一色愛梨が、雀蜂を熨していく。

 

盾で銃撃を防ぎながら接近して短槍で相手を突き、時には『回転する光盾』が相手を叩く。

 

そうして相手のジャケットが破れ、フェイスメットが砕けた時に―――。

 

銃口を向けた将輝の爆裂が通って、相手の体が爆裂四散する。

 

「ちょっと一条くん!!!」

「衛宮さんから送られた立派な『おべべ』だと理解しているが、今はそういうことに構っていられるかよ!!」

 

至近距離で人間が四散する様子を見たからか、それとも『血肉』が衣服に掛かることを嫌がったのかは分からないが、ともあれそれらを盾で防いだ一色愛梨は、少しだけ離れた所での乱痴気騒ぎに少しだけ気付いた。

 

(アーシュラさんと同列かソレ以上の力持ちたちが戦っている……!)

 

九校戦での2度の直接対決。少しだけ追いつけたつもりでいたのに、ソレ以上のチカラを見せつけた巨大怪獣との戦い。

 

(私とて姫騎士であろうと願う騎士です! アナタの後塵を拝してばかりはいられません!!!)

 

 

そんな三高の現状など知らないアーシュラは、マルミアドワーズを振るい続けて、寄ってくるエネミーを駆逐していく。

 

あらかた片付けた後には、父親から通信が届く。

 

どうやら不幸なことに克人たち脱出組は、上陸部隊とかち合ってしまったようだ。

 

『上空からやってくる相手は、我とゲンジヴォルヴァでしばし相手しよう。地上(りく)の敵はお任せしたぞ』

 

聞こえてきた通信。鎮西八郎の言葉で、それならばと思いつつ―――。

 

「来なさいルーシャナ!!」

「うん!」

 

同じく巨大剣を振るっていたシーザーの娘を呼び寄せて、黒馬(ラムレイ)に跨る。

 

(弱いくせになんですぐに逃げないのよ!!!)

 

仕方ない側面もあるのかもしれないが、アーシュラからすれば『命を大事にしない』人間というのは、嫌いな種類だった。

 

そして……自分が特別だと思って盛大に勘違いした愚か者は最大級に嫌いなのであった……。

 

 

 

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