魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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第118話『変換する戦場』

 

 

 

 

アーシュラたち()銃士が駆けつけた場所では多くの敵が上陸を果たして横浜の街を蹂躙せんと活動をしようとしていた。

 

「全ての敵を倒そうとしないで、ある程度は『後方』に任せて私達は大物を狩るよ」

 

「そうは言うけど、その『一番の大物』が空中にいるんですけどアスラウグ」

 

「そうね。ただあちらもエネミーを吐き出し続けていれば息切れを起こす。戦いはそこからよ」

 

翔んでいく最後の戦乙女の言葉に、まぁそれしかないかと思っておく。

 

港が見えてくると同時に自分たちにしか見えていないものの巨大さに気合を込めてから挑みかかる。

 

ソーサルエネミーだけかと思えば人間の兵隊たちもいるわけで―――。

 

「あまり殺さないでね」

 

「とはいえ、手加減しても向かってくるでしょうしね」

 

「やりづらい」

 

アーシュラの指示にブリトマートとルーシャナの言葉。

 

(出来るだけサーヴァントを倒したいところね)

 

だが、そういう風にだけはいくまい……。

 

一番先に目についた『多多益善号』のコピーらしき車両を叩き潰しておく。無人車両の類を積極的に狙っていったのだが、有人の方がトランスフォームしてちょっとした巨人になったりするのだが……。

 

『させるものかっ!』

 

『鹵獲機!?』

 

白い虎人が敵方の虎人を驚いた言葉と同時に投げ飛ばすことで、無力化を果たす。ホワイトタイガーとでもいうべきものを操るのは……。

 

「アーシュラ姫の邪魔はさせない!!」

 

白き聖騎士ながら『茄子色』の鎧を着込んだ騎士である。ちなみにコクピットシートは無人(から)であり、父親のように超絶起動でJSDFのパイロット(養成費用1千万ちかく)を失わせるようなことは無さそうだ。

 

「ギャラハッドだけに任せてはいられない。戦いとは常にエレガントに進めなければいけないのだからな―――このホワイトタイガーとブラックタイガーの親子鷹ならぬ親子虎が、ここは預かりましょう!!!」

 

そして父親もまた己の魔力で黒く塗りたくった虎型戦車―――息子同様に頭に乗ることで操っているようだ。

 

だが、勢いあるそんな名乗りにツッコミを入れるのは……。

 

「ブラックタイガーとは……父上はエビ男ということですかな?」

 

その皮肉げな言葉に雷に打たれたかのようになる親子虎の片方であるので……。

 

「―――いや、違うぞ。ギャラハッド―――ブラックタイガーは言い間違いだ。それでは夢魔の貴族(ナイトメア・ブラッド)になってトトカンタ魔術士同盟の魔王になってしまうからな―――砂漠の虎! そう!デザートタイガーこそが私の真名だ!」

 

なんだか妙な現代知識にかぶれているランスロット卿ではあるが、なかなかオレンジ色にならない己の騎虎なので……。

 

「どなたかオレンジ色のオイルで駆動している機体はおりませんかぁあああ!?」

 

などと他の機体を叩き潰して『(オイル)まみれ』になろうと結構、怖いことを実践しようと画策するのであった……。

 

戦況が少しだけ好転しつつも、空中に座する『とんでも』に変化はない。

 

地上を侵攻する連中は普通の人間とエネミーの混合であり、何ともやり辛い。まぁいざ遭遇となれば濃密な魔力を体外放出。

魔術回路を持たない一般人、サイオン扱いの魔法師であっても感じられるレベルで集束し、脳を直接揺さぶる。

 

事実、雀蜂で武装してきた兵隊たちはアーシュラの『円』に入り込んだことで、泡吹いて倒れ込むのだ。

それを見ていた『一人の少女』は感嘆する。

アーシュラの周囲に渦巻く魔力の奔流。凄まじい量の魔力を纏っているのは感じられるのだが、真に恐ろしいのは、それが彼女を中心とした半径10メートル程度で留まっており、半球状に魔力のドームを形成していたことだ。

 

更に言うならば、そのドームの外には魔力が一切漏れ出しておらず、アーシュラを核とした一つのプラネタリウムであるかのようにとてつもないエネルギーが循環しているのが解ったのだ。

 

だからこそ……。

 

「アーシュラちゃん。助けに来たよ!!」

 

「サヤカさん!!」

 

これ以上は傍観者ではいられなかった。

 

雷剣―――魔力放出(雷)を用いての戦いで彼女たちの盾代わり、弾除けであってもいいから戦いたかったのだ。

 

ここ(横浜港)から私達は南極へと旅立った……不安が無かったわけではない。けれど、辿り着いた場所、そこに行くまでの道のりには何も無駄なことは無かった)

 

かつて唐の時代の名僧にして西遊記の主役、玄奘三蔵法師は、国外出国を禁じられている時代においても、本当の釈迦の教えを記した経典を求めて天竺への羅針盤を辿ったのだ。

 

その苦難の道程……それとは比較にならないかも知れないが南極への航路と、訪れた天竺のごとき場所―――人によっては『悪の組織』などと呼ばれていたそうだが……。

 

それでもそこで見聞きするもの、覚えるもの全てが新鮮で、一高で誰からも教われず、必死な思いで汲々と魔法実技に取り組んでいた日々は何だったのだと思ってしまった。

 

だからこそ……その力を大きなことに使いたくなったのだ。

 

「助かりますよ!! けれど無茶しないでくださいね!!」

 

「無茶せずに勝てる敵ならばね!!」

 

そんな短いやり取りの後には南極帰りと称される魔法科高校の生徒たちは戦いに参加するのだった。

 

その様子を見ていた他の一高生たちは、彼らと歩調を合わせて―――は無理だとしても少しでも助力せんと動こうとしたのだが―――。

 

「―――来ます!! サーヴァントの他に何か凶悪な虎のようなものがっ!!」

 

「柴田!?」

 

刹那、何かを感じ取った柴田美月の警告。

 

あまりにも端的な言葉だが、それでも横浜港に強烈なプレッシャー……イデアを圧迫して情報改ざんの余裕を失わせるほどに『重い存在』が現れる。

 

小休止というわけではないが、アーシュラたちの周囲も一通りの相手を片付けて静かな状態になっていた所に―――。

 

彼らは現れたのだ……。

 

大中華英霊軍団……そう称されるきらびやかな魔力を表している連中の中からずいっと前に出てきたのは……明らかに肥満体な……英雄というには随分と不摂生極まっていそうな『男』であった。

 

「―――全くもってこんな戦が出来るならば、現世に蘇ったのもわるかねぇんだがな。随分と俺の戦略をことごとく戦術レベルで覆してくれちゃってぇ……」

 

どうやらこの肥満の男が、横浜をここまでの混乱に陥れた元凶のようだ……恨み言を零すようなセリフだったのだが…

 

「―――思わず勃起してイッちゃったぜ」

 

晴れやかな笑顔で言う完全な変態であり、味方からも軽蔑するような視線を受けているが、言われた主相手であるアーシュラは特に何も感じていないようだ。

 

「歴史に名を残す国士無双の大将軍を昇天させるだなんてワタシも騎士としてはなかなからしいわね」

 

「女としての価値だと勘違いしなかったのは、流石だな。だからよ……此処に来るまで雑兵用いてようやくテメーらをハメる為の戦略編み出せたわけよ―――今度は俺の手番(ターン)だぜ!!」

 

国士無双と言われて否定もしなかった肥満体の男こそが……垓下の戦いで覇王 項羽を下し漢王朝建国の立役者たる 韓信大将軍か―――と、ちょっと納得するまでに時間がかかったのだが、それでも韓信の指揮のもと増援として湧き出たエネミーたちは一個の生物のように動き出して、こちらを圧迫してくる。

 

「私達は私達で動かなきゃ―――」

「けれど……」

 

港に戻ってきた一高勢力だが、いざ戦おうとすると……どうしたらいいのか分からない。

 

アーシュラは、円卓の騎士などを指揮してサーヴァント相手に圧している。ただ自分たちがあそこに飛び込むのは流石に難しい……というかぶっちゃけ怖い。

 

そんなわけで……現実的な魔法師の『軍人』である藤林響子ですらどうしたらいいのか考えてしまう。

 

「藤林少尉、自分たちは正々堂々戦いたいのですが……」

 

自分たち、というのがどこまでを含めるのかは分からないが千葉修次候補生の言葉に女剣士2人と西城という男子が強く頷く。

 

「自分も士郎先生から対抗策……魔術師で言う概念礼装を譲られました……ここで戦わないという選択肢は少々……」

 

十文字の言葉が重ねられる。こういう時に厄介な限り、ちなみに言えば北欧らぶらぶ夫婦とやらは既に『銀髪の弓兵』……あの子こそが恐らく彼らの娘『アスラウグ』という子であろう。

 

(抑えきれない……わね)

 

そもそも横浜港に戻ってきたのだって、戦うためだったのだ。

 

だが、どこに侵入したほうがいいのか……古式魔法師であり衛宮家とそれなりに付き合いもあるとはいえ―――そんな風に逡巡していたところに……念話にも思えるようなアーシュラの声が響く。

 

『いつまでもそんな所に居られると邪魔ですけど』

 

何の触媒もなく、そんなことをやってきたハイスペックガールに驚くも、こちらの状況は分かっていたらしく、提案が成される。

 

『―――正面からいったって簡単に迎撃されちゃうんですから正々堂々(・・・・)、後ろから殴りつけてやるつもりで動いてくださいよ―――』

 

それは正々堂々という言葉の意味を確実に違えているものなのだったが……。

 

そんな中、土煙を上げながら一人の騎士がやってきた。

 

「円卓の一席にありし狼の騎士ガレス!! ここに推参しました!! お久しぶりですねー! 美月ちゃんにレオ君! エリカちゃんとミキくんも!!」

 

全身鎧を着ている少女騎士。何となく狼というよりも『犬』っぽいところを見せるサーヴァントだ。

 

「ガレス卿、僕の名前はーーー『おう! モヤシのミキヒコも随分と逞しくなったじゃねーの!!』」

 

名前の訂正をしようとした矢先に、赤い騎士が幹比古の言葉を遮りながら強烈な圧を持った存在がやってきた。ガレス卿よりもチカラは上に感じる。

 

「マウントフジのホテル以来だが、叛逆の騎士モードレッド 。ここに来たぜ!!」

 

アーシュラからの支援要員だと気付けたのだが、そこまで俺たちは情けないのかと思っていたのだが……。

 

「来るぜぇっ! シャドウサーヴァントと吸血鬼に改造された虎がよっ!!」

 

到着するやいなや2人の騎士は臨戦態勢へと移る。

 

やって来たのは……影のような魔力でヒトガタを(かたど)っている一団と八王子鑑別所で襲ってきたサーヴァント……アーシュラいわく『楊貴妃』と……。

 

呂 剛虎(ルゥ・ガンフー)!!!!」

 

「エミヤの系譜を我が眼前に引きずり出すためにも貴様らから血祭りに上げてくれる!!!!!」

 

気付いた誰かに対する返事はとんでもない鏖殺を予告する言葉。

 

だが、舐めるなっ!という心が勝ったのか千葉修次が前に出る。明らかに鑑別所で戦ったときとは違う装備。

 

方天戟という巨大な得物を持っている以上、油断はできない。そして古式ゆかしい中華の兵隊が着るような鎧……いわゆる現代的なボディアーマーとは違った古臭すぎるそれを着ながらも突撃の速度は衰えない。

 

真正面から迎撃することを意図する修次。こちらの得物も八王子の時とは違い、愛用の刀である。

 

アーシュラが寄越した刀とは違い、何かの効果付与がなされているわけではないが、これならばアドバンス千葉流の技が全て使える。

 

そんな修次の思惑……こちらの刀身延伸での迎撃をあざ笑うように呂の速度が上がる。

 

(更に上があったのか!?)

 

その事実に驚くも想定の範囲内だ。幻影の刀身……斥力の力場を作り出して相手の突進に対してカウンターを入れるという考えだったのだが。

 

「ーーーーがはぁっ!!!!」

 

その行動を刀身での防御で回した結果。受け止めた方天戟の圧で後方へと吹き飛ばされながら身体全ての酸素を吐き出したかのように息を喘がざるを得ない。

 

(なんだ。この膂力は!?)

 

その圧は正しくサーヴァント級。アーシュラとの戦いで覚えたものと遜色ないものだった。

 

コンクリートに全身を叩かれながら回っていた修次はようやくのことで痛苦から起き上がり、構えたのだがーーー。

 

「―――くそっ、がっ……!」

 

愛用の得物は既に砕かれてしまい、刀としての機能を有していなかった。それどころか骨がいくつかイッていることが分かったのだが、やってきた人食い虎のチカラは普通ではない。

 

すぐさまガレスとモードレッドという2大サーヴァントが対応しようとしたが、そこにフォーリナーというクラスに据えられた楊貴妃が2人と相対する。

 

必然的に、人食い虎と戦うのは一高の生徒たちが主となる。その中でも一番に戦うのは……。

 

「摩利っ!!!」

 

修次にとっての恋人こそが最前に出てくるのは当たり前だった。

 

バニー姿の剣士という一見すれば巫山戯ているとしか思えない衣装で呂の方天戟を縛り上げて自由に使わせないからこそ悲劇的なことになっていないのだ。

 

戦わなければ―――そういう思いで前に出ようとするも得物がなくて歯噛みしている修次に対するプレゼントのようにいきなり刀が空から降ってきた。

 

(罠―――なわけないよな。メイガスマーダーの噂は僕も知っている……借りますよ衛宮士郎さん!!)

 

内心でのみの言葉を言いながら千葉修次は刀を持ち駆け出すのだった……。

 

 

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