魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
どうやら一高組がかち合った相手……八王子でやりあった人食い虎は予想外に強化されているようだ。
だが、アーシュラも手一杯ではある。
「サークル:ヨロシク梁山泊の
どんな意気込みなんだか分からないが、双鞭の力は衰えるどころかましている。
クレストアーツも併用して相手を圧倒するも、相手もさるモノ……。
「御命頂戴!!!」
真正面から呼延灼と戦っていたアーシュラに襲いかかる脅威。偃月青竜刀を振るって横合いから狙ってくるは関羽雲長である。
剣と槍を分離して、そちらにも対応する。
だが、それ以上に問題なのはチャイナシニヨンを二つ作った美貌の白杵将軍である。
他2人が怒涛の攻撃で仕掛ける中、その間隙を埋める形で彼女の槍は冴え渡る。
「3対1の多勢に無勢で悪いが、アナタは飛将軍・呂布、覇王・項羽にも及びかねない相手だ!!!」
「取らせてもらう!!!」
「投影開始、剣弾一斉展開・掃射!!!」
その賞賛・警戒の言葉に特に応えずにアーシュラは投影された魔剣・邪剣・聖剣・霊剣の類を円状に展開して障壁として、鎧として身体の動きに連動させる。
3対1なんて戦いを展開されているのだ。これぐらいは当然の戦法だ。もっとも……これが韓信大将軍の策であるというのならば、あまりに甘いと思うのだが……。
だが、効果は出ていたのである。
「強兵に対して強兵を当てるっつーのは、確かに凡策だが……要はよ。相手を倒すことよりも『盤上』での機能を停止させりゃいいのよ!!!」
傀儡兵や本物の大亜軍に指示を出しながら、韓信は戦場を支配していく。
後ろにある『要塞』も利用して韓信の盤上戦略は、鬼の如き才を発する。
「項羽を殺せる兵がいなくても項羽の周囲を湿らせていけばいいだけだ」
そして……最初に崩されたのは、論文コンペ会場たる国際会議場であった。戦車をこの周辺に集中させた上でありったけの火力を与えた結果。高層建築の爆破解体の如く崩れていく会場を前に、誰もが絶望の表情を浮かべる。
あそこにまだ人がいた可能性は殆どないとはいえ、もしかしたらば警備会社やけが人はいた可能性もあるわけで―――。
その国際会議場の崩れた建材・鉄筋から巻き上がる粉塵にいたるまでが、崩れた十数秒の後には消え去る。
「お兄様……!!」
術者が誰であるかは深雪の陶然とした発言で分かったわけだが、上空に居る仮面の術者の集団の中にいる連中の誰かだ……多分、銃型CADを向けている人間なのだろうが……問題はそこからだった。
「
当然、出来上がった蟻の一穴から横浜市内へと侵攻を試みる。大量の虎戦車と共に歩兵が侵入する。
デカイ建物が一つ失われたことによる道の出来上がりは拙過ぎた。
当然、止めようとする国防軍なのだが……。
「建物内で治療していたのか……」
魔法師主体の綜合警備保障会社の人間たちが、瓦礫で出来た怪我なのか、雀蜂によるものなのか分からぬが、かなり凄惨なものであった。
瓦礫による圧死から逃げられたと思えば、すぐさま迫りくる大軍勢を
『俺が全員をとりあえず動けるまでにする!! 護衛を回してくれ!!!』
達也から耳元で空気振動を操作する魔法を発動されたアーシュラ。
本来ならば、こんなものを遮断するほどの対魔力があるのだが、なにかの通信魔法だと理解したからサポートする形で気流を操作したりした。
「ルーシャナ!!! あそこの重傷者たちはアナタが九校戦で怪我させた男子の関係者たちよ!! 守りなさい!!!」
サーヴァント3騎と切り結びながらも、そう叫ぶだけの余裕のあるアーシュラは、指示を出した。
「分かった!!」
本当に分かっているんだろうか? と疑問を呈しそうになるほどに快活に駆け出すルーシャナ。九校戦で戦ったときよりも、幼い印象を持つ彼女が穴を防ぐべく防戦を展開する。
「大軍勢を上陸させて一挙に内陸まで浸透しようとする……背水の陣ってわけでもないだろうに」
「サーヴァント相手には飽和攻撃で以て制する! そしてここ主戦場にいる円卓の騎士たちの召喚元エネルギーは、お前の『炉心』だ!!!」
言われながらも、アーシュラは『第二の炉』を開放して魔力を充足させる。
(退きすぎた!!)
サーヴァント3騎による波状攻撃であり
そして、国際会議場の穴ではなく、あちこちから侵入した大亜の軍勢が横浜市街にて破壊活動を行っていく。
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「無茶苦茶だな……」
明らかに現代の軍隊の行動としては不合理すぎる破壊活動の限りで以て動き横浜を蹂躙していく連中。
あちこちで建物から人間……魔法師であるなしに関わらず襲いかかろうとする様子を見て服部は慄く。
それを見た一高避難組は、防衛行動を取りつつも――――――その前にどこからともなく『剣』『槍』『斧』併せて30以上もの武器が飛んできて、ワイバーンやキメラ……そしてどう形容していいのか分からぬ魔獣や傀儡兵たちを叩きのめしていく。
ただの武器では無い。目もくらむほどの魔力を蓄えた武器が矢玉も同然に放たれて、爆発発破のおまけ付きで、敵を抹殺していく様子。
「士郎先生……」
呆然としながら、それをやった人間の名前を呟く。
今年度より2科生の講師として一高に招聘された教師の1人。特別侮っていたわけではないが、それでも2科生の担当ということで少し下に見ていたのも事実。
だが、考えてみるに……彼の功績は多すぎる。
初期の1年2科への教導。そしてブランシュ事変での戦いぶり。
夏に至ってはハーメルンの笛吹き男ではないが、全学年の2科生たちを南極にいざない、特別な修練を施すことで1科生を超えた魔法能力を身につけさせる。
それをやる一方で、実の娘を利用しての『簡易術式構築』……CADの歯がゆさを解消したモノを開発。自分の生徒も巻き込んでそれを行った。
魔法科高校が2科普通科という予備学科を創設して以来、解決を誰もがしてこなかった問題に、真正面から向き合わなかったことに向き合った人であることを、いまさら認識する。
結果として服部が尊敬以上の思いを抱いている七草真由美の考えはズタボロに切り裂かれてしまった。
(せめて元・会長に一言あっても良かったじゃないですか……!)
筋違いな恨み言を飛び来たる鋭すぎる剣たちに無言で思っていた服部は―――。
「―――服部会頭!」
「――ああ、そちらは危険です! こちらに来てください!!」
中条に言われる前から気付いていたことだが、路地裏から出てきた銀髪の女性。面貌はうかがい知れない長髪。
そして服装に関しては、冬が近づきつつある11月には少し不釣り合いな格好をした人だ。
魔法師かどうかはともかくとして、一人っきりはマズいというか心細いと思ったのだが―――女性は服部の言葉を無視して、港へと向かおうとした。
なんで!?
避難組たちが驚くほどに、その行動は奇異にしか映らなかった。
確かに自分達は魔法科高校、世俗では魔法大学付属という名前が一般的な高校の制服を纏っている。
昔からあまり人々の好感度が高くない高等学校生徒の制服であり、現在では更に不人気で、その反応は分からなくもないのだが、だからといってそれを見過ごすほど無情でも無慈悲でもないわけで。
「危険です! 賊は、港よりやってきているんです!! 逃げるならば奥の方に、海側には近づかないでください!!」
向かおうとしていた女性に追いつき、服部はその細腕を掴んだ。乱暴かもしれないが、それでもむざむざと危険地帯に行かせるわけにはいかないのだ。
「分かっています。ですが、私は、それでも行かなければならないのです」
言葉と同時に服部の方に振り向いた女性の面相が知れた。単語のぶつ切りのような日本語の羅列。
女性は、当たり前だが日本人ではなくて、そしてその面相は美しすぎた。そして――――――その眼の紅に目線が集中してしまう。
司波深雪を外国人にしたらば、こんな風ではないだろうかという人物は――――――服部の拘束を振りほどき、去って行った。
「服部君! 何をしているんですか!?」
「あっ……いや、す、すまない中条!! と、とにかくお待ちを!!」
力を緩めたつもりは無いのだが、それでも中条の言葉で呆然としたような心地から回復すると、去って行こうとする女性の背中を追おうとしたのだが。
その女性の行く手を遮るように剣の群れが落ちてきた。
「士郎先生!?」
まるで敵ないし危険人物への対応のような剣呑さだったが、それを行った人物は今まで見えぬ高所からの狙撃を終えて、地上にやってきたのだ。
速すぎるその登場に、未知の魔道による転移術を連想するが、その疑問を覚えつつも、回答は無く、2人の会話が始まる。
「……君が、今回の聖杯の器だな?」
「はい。マスターエミヤ。ファリア・アインツベルンと申します」
「分かっていると思うが、君が向かおうとしている先は、修羅巷だ。いや、それこそが君たちにとっての望むべきものだろうけど」
「行かなければならないのです。お願いします」
訳知りだけが分かってしまう会話。
そして、アインツベルンという単語に聞き覚えがあるも、この混乱した状況では思い出せぬ会頭と会長だった。
それよりも美女と会話をする男性教師という図に、妻で同僚教師のアルトリア先生に知られれば、おっかないなどと場違いにも考えていた一高の面々であったが……。
「服部、中条―――俺はこのヒトを港まで連れて行かなければならない。ここは任せたぞ」
その言葉に、ちょっとばかり不安を覚えてしまう。今でもあちこちで破壊活動を行っているエネミーたちは、こちらにターゲットを定めるのか分からないのだ。けれど、だからと泣き言を言えるわけではない。
そんな中、円卓の騎士たち……避難通路でも助けてくれた人たちがやって来た。1人多いが、それはとんでもない筋肉質の体躯でありながらも美丈夫としてのフェイスを持った騎士だ。
「行ってくださいムラマサ殿。ここは不肖パーシヴァルも護衛に着きますゆえ」
「コウイチ殿が来るまでは持ちましょう!」
「この
三騎の戦士から言われた士郎先生は―――。
「頼む」
「「「ご武運を!」」」
銀髪の美女を姫抱きで時速50kmを優に超えた速度で港へ向かう。
その様子に、本当にアルトリア先生は怒らないのだろうかと一高生一同は思ったりするのだった。
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襲いかかる対人殺傷に優れたと言われている中華の魔法師の実力は―――あまりにも強すぎた。
(なんなんだ……この膂力は!?)
戟で砕かれた壁の魔法から感じる圧を感じた克人。
その一撃は明らかに魔法師の限界を超えたスペックに克人としては驚くほかないのだ。
魔術世界では、そういうことも可能なのかもしれない……というか、出来ている人間はいるわけで……。
だが、それとは異質なものを覚えながらも、既に愚連隊の半数以上は色んな意味で動けずにいた。
千代田、五十里、桐原……直接戦闘には役に立たない光井、柴田などを含めればそういうことなのだが……。
「どうなっているのよ…こんなのサーヴァント級は言い過ぎだとしてもⅤ階梯の死徒じゃないの……!」
頭から血を流して、折れた腕を押さえている藤林響子の嘆きは当然だ。
疑問の言葉を受けて、呂 剛虎は口を開く。
「我が身はあの八王子での戦いで著しく傷ついた。魔術師殺し 衛宮切嗣の魔弾を模した魔剣で切られたことで、私の道術行使は困難になったのだが、それを解決したのが『イデアカスタム』……かつてイデアモザイクと呼ばれたものの粗悪品だ!!」
「精巧なる品物のデッドコピー、海賊版は、中華のお家芸か。流石……!」
「英霊霊衣を着た娘娘に言われたくないものだな!!」
メインフォースとして主に呂の剛力、膂力に対抗しているのは渡辺なのだが……。肝心の渡辺摩利は……。
(こんなことならばバーゲストさんの肉襦袢も貰っておくべきだった……!!!)
可愛さ、可憐さばかりではなくちゃんと実用性あり、相性がいい英霊さまのお力を借りるべきだった。
こんな時に自分の妙な拘りを、恨めしく思っていた摩利だったが、彼女の嘆きを他所に状況は段々と推移していく……。