魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
放たれたのは巨大な電磁パルスの波。
横浜全ての電子機器を不全にするだけでなく、電力供給すら危ぶませる電圧と電流の嵐。
現代魔法における最大の利器であるCADですら、電子機器である以上、その影響から逃れる術はなく、いざ出陣と向かおうとしていた魔法協会横浜支部の人間たちはその装備を全て無力化されただけでなく、多大な痛手を被った。
横浜全土を襲った高温・高圧のプラズマの大波。
その光景は太陽系の大半がプラズマの海に沈んでしまったアニメを連想させるものだった。
はたまた電子戦兵装が不十分な機動兵器を黙らせるためのEMP兵器を発動されたかのようだ。
「―――独立魔装は無事か!?」
もはや通信機器は全てがオシャカになってしまった以上、声を張り上げて隊員の無事を確認するという手段を取るしかない。
魔法を簡便に使うためのCADも完全にやられたのだ。独立魔装の隊長である風間はそうしたのだが。
「とりあえず自分は無事です。柳もどうやらなんとか」
「達也はどうした?」
瓦礫と粉塵でフィクションで見るような世紀末世界と化した横浜。時間も既に日が沈みかかっている。
どうやらあの卵型要塞はこの横浜を昼に戻すことを止めて暗闇に沈ませるようにしたようだ。
黄昏という夕闇に近くなっていく中、絶対の破壊者の姿を探そうとする。卵型要塞―――後に『模造阿房宮』と判明し称されるものが動き出すのを止めるすべなく、見送るしか出来ないのかと絶望感に打ちひしがれそうになる中―――自分たちの頭上が更に暗くなる。
日が落ちたわけではない。その理由は見上げていた隊員全員が理解してしまう。
それは、全容と詳細こそ知れないが概要として知っていることは騎士王アーサーの玉座であった。
† † † † †
「べっ!!!」
口の中に血が溜まっているのを覚え、上半身だけ起き上がらせて唾と共に地面に吐き出したアーシュラ。
同時に完全に立ち上がると粉塵まみれの自分を感じ見て風を利用してそれらを地面に落とす。
衣服はボロボロでかなりあられもない姿だが、あれだけの規模の破壊力の術を抑え込むには、こちらもそれなりに犠牲を覚悟せねばならなかったのだから。
「しっかし、十三使徒にして死徒二十七祖のうち十位の弟子を引っ張ってくるとは……」
「予想外だったか?」
「まぁそれなりにはね。アスラウグとは―――うん。
念話のようなもので相棒の安否を確認。だが戦線復帰は少し難しそうだ。そうしつつ―――。
「それでワタシを視姦するのは後で金をもらうとして、これからどうするの?」
何故かここにいる司波達也に対して言いながら衣服を
「CADは全てオシャカになった。どれだけ電気に対するガードを高めようと、それらの影響を受けないようにしても『電子機器』である限り対策は限界があるよな」
達也が考案した次世代型の軍用のスーツも同じくなってしまった。パワーアシスト機能たる電気信号で動く人工筋肉は停止。腰のベルトにある飛行魔法のデバイス機能は完全に沈黙している。
既にヘルメットを脱いだ達也とは対象的にアーシュラは新たな衣服を纏う。
文様か蜘蛛の巣のような刻印がなされたボディスーツに紅の外套を羽織る。
下履きは……黒のミニスカートと絶対領域が眩しい黒のニーソックス。
(なんだか士郎先生の戦闘衣装に似ているな)
達也は知らないが、それは赤原礼装、または赤原猟兵と呼ばれる錬鉄の英雄の系譜のみが着ることを許された概念礼装である。
ちなみにアレンジは個々で行われたりする。
宝石の魔術師が着る干将莫耶を逆手で持つ痴女のようなスタイルもあれば、 ロリロリハーフホムンクルスが着る痴女のようなスタイルは2種類もある……。
アーシュラが考えるにそれらは『弓兵さんの趣味』なのだろうと結論づけつつ、
俗に
「ってかなんでここにいるの? ソルジャーワークスほっぽっていいの?」
「サーヴァント・ルーシャナを追う形でお前を探していたらば、その瞬間に『アレ』なわけだ」
どうやら飛翔していた連中は全て雷霆によって叩き落されたようだ。あれだけの魔術が炸裂したのだ。しばらくの間、現代魔法による改変を受け付ける余地がこの横浜にはない。
ある種の特異点持ちや原理所有がなければまともに術を行使することすら無理だろう。
「そうだ。ルーシャナは!?」
「だいじょぶ。霊基を小さくすることで何とかしたから」
「そう。ならば大丈夫ね」
傍目から見聞きしていれば、それがどういうことなのか分からないが、どこからか表れた赤子ほどのサイズになったルーシャナ・クラウディウスという存在に色々と頭を悩ます達也だが。
「言うなれば、特異な能力者は『べべベベベイビー』なことも出来るのよ」
「でちゅ♪」
肉体年齢と同時に精神年齢も下がっているようなルーシャナの相槌に頭を痛めつつも達也は、アーシュラの行き先に着いていくことにした。
「何処に行くんだ?」
「とりあえず一高愚連隊? らしきところに」
そこには深雪も居るはずだとしてアーシュラの後ろを着いていく形になる―――そして、その高速で動くアーシュラ。
あちこちに散乱する瓦礫や建材の塊などもろともせずに動くのを見ながらも……その翻りそうな短いスカートの奥に見えるものを見ようとして―――
(スパッツ―――)
完全防御されたそれに少しの失望感を覚えながらも辿り着いた先では―――。
「仮面ライダー京極……いや壬生、しっかりしろ!!」
『いや壬生って誰のことですか? 私は仮面ライダー京極。源氏の総大将にして坂田金時、渡辺綱など源氏四天王を組織して大江山の酒呑童子を討ち取った源頼光のリリィにして鎧姿―――つまり源頼光アサルトリリィ! ということです』
劉雲徳の雷を避雷針よろしく全て受けたように、巨大な剣を天に突き刺さんばかりに持ち上げている仮面ライダー京極(仮)。
その姿に渡辺綱の子孫だのと噂されるもあやふやな出自の少女が心配そうにしていた。
「お兄様! アーシュラ!!!!」
「なんでワタシにだけエクスクラメーションマーク沢山つけたような呼び方なんだろ?」
「未来の義理の姉に対して威嚇しているんだろ。市役所職員(キラーTheはやみん)の弟が精神科医の義兄(ぼっち・ざ・すぱい!)を嫌うかのように」
「偽装家族だとしてもアナタと夫婦ってのはカルく地獄ね」
酷い言われようだとしてもちょっとばかり嬉しいが、今は仮面ライダー京極なる鎧武者の救助が先だ。
アーシュラが何かをしたようだが詳細には分からない―――しかし、鎧が解かれてそこにいたのは……。
「み―――ぶじゃない!?」
「だから言ったでしょうが、私は源頼光のリリィ。在りし日の源氏総大将の少女時代の英霊なのです」
鎧を剥いで籠手部分と足具足(脛当て、甲懸)を残したあとに見えた少女のビジュアルは……栗色のポニーテール少女ではなく、濃い紫色の髪をリボンでまとめた見覚えが全く無い少女であった。
達也の纏うボディスーツよりも未来チックなボディスーツを着ている少女は、たしかに壬生紗耶香ではなかった。
「壬生紗耶香さんは確かに私が『かるであ』で鍛えた
「おりゃ!
「にゃ―――!!!」
何か厳かに言おうとした源頼光リリィの口上を遮る形で歪な短剣を振るったアーシュラ。結果的に自分たちが見えていた源氏総大将という
「感電した体を直すには、そのミラージュを外す必要があったんですよ。
剣を突き上げていた体制のままに動けずに居たのは、そういうことらしい。
だが……何故―――。
「壬生、お前は……私達を―――」
「助けたくなかった。どうせ何も出来ないのに戻ってきたあなた達が悪いんだもの」
その言葉に誰もが暗い表情をする。渡辺のあげようとした声と自分たちの意気を全て切り捨てるかのような壬生の言葉にどうしても痛みを覚えるのだ。
「ルーシャナ、竜を一匹だしてサヤカさんを後方に移送して」
「アーシュラちゃん! まだ私は!!」
「ダメです。童子切安綱という雷霆剣をアースにして落ち来る神雷を海へと逃したんでしょうけど、逆流した電流がアナタの体をかなり不全にしている。―――アナタの『決戦の日』は
言葉だけでここいらにいる一高などの面子全てを守るために壬生紗耶香はかなりの
戦略級魔法『霹靂塔』
伝え聞くところによるものよりもとんでもない威力だ。今でも達也は肌を刺すような電気を感じる。
アレが放たれた時、普通のエイドス改変的なもののように円筒形の『塔』が作られたと思った時に、それをすり替えるように、巨大な『三ツ首の竜』が見えたのだ。
それも普通の竜……人が想像出来たり似たような近似の生物のような長い体をトグロを巻くようなものだったり四足歩行のコモドオオトカゲだったり獣脚類のような前傾しての二足歩行ではなく……。
人間のようなほぼ直立二足歩行の巨大竜。有り体に言えば『ゴジラ』のような存在が見えたのだ。
「彷徨海の魔術師は神代魔術の実践者。それこそ古式魔法の現代解釈とかダウングレードとかそういう領域じゃない。モノホンの
「オレの心を読むなよ……まぁ疑問は解消されたけどな。その事を、いつから知っていたんだ?」
「ついさっき。彷徨海バルトアンデルスは、本当に『時計塔』や『アトラス院』よりも閉鎖的な協会の部門だから、情報が降りてくるのがくそおっそいんだよ」
達也の疑問に答えた後には、ルーシャナの竜(?)という乗り物がやって来て動けない人間たちを背中に乗せていく。
「ならばせめてこれを持っていって、頼光ママンから借り受けていたものだけど……いまはアナタが持っていたほうがいいと思うから」
童子切安綱という銘の刀を受け取るアーシュラ。そして―――帰るものと戦うものとが別れた。
「で―――状況はどうなっているんだ?」
「既に大亜のゲリラ兵士どもの大半は沈黙。呂剛虎は捕縛済み。陳とかいう虎の上官は阿房宮の上にいる―――十三使徒『劉 雲徳』とともにね」
「あの巨大な要塞を止めなければならないということか」
アレだけの質量のものが浮遊をしながら、徐々に都心に近づいている事実に残った連中の誰もが頭を痛める。
「もはや何がなんだか分からないわよ……。最初は大亜の軍隊がサーヴァントのマスターと協力して横浜で目的を到達しようとして、あの移動要塞で大兵力を直接転送してきたからと迎撃して……大半のサーヴァントをアーシュラさんが倒して終わりが見えてきたと思ったらば、あの移動要塞が動き出してそこには大亜の戦略級魔法師がいて、戦略級魔法が放たれて盤面がひっくり返って―――」
「長ったらしい説明ありがとうございます。と言いたいですが何も盤面はひっくり返ってません。ワタシの認識程度ですけどね」
「むっ、そうなのか?」
七草真由美の言葉に返した言葉は十文字克人にとっても予想外だったようだ。
「あの空中要塞、模造阿房宮は
空中要塞こそがこの戦いの本丸。
しかし、そこにすら自分たちは辿り着けていなかったのだ。
「これからアーシュラはどうするんだ?」
「戦うわよ。あのまま都心の地脈にまで向かわせたらばどうなるか分からないもの」
あの要塞の目的が魔術的な『陣地取り』であることは分かったが、どうやって―――。
「―――第二撃来ます!!!!」
メガネを外して何か……術の兆候を見たらしき美月の警告が響く。その言葉のあとには先程のような巨大な『式』が横浜全土を覆っていく。
いざ発動しようとしたその時―――。
『主砲発射―――其の名は、
遠くの方から黄金の極光が飛んできて、空中要塞を襲う。
急遽、術の行使者であろう劉 雲徳は攻撃の為に展開しようとしていた霹靂塔の術式を変化させて阿房宮という神殿を守るためのものにした。
だが、その作られた防壁すら完全に威力を殺しきれるものではなく、急場しのぎだったこともあり、阿房宮という卵が少々欠けた姿になる。
「エハングウェン、だったか……? あんな強力な主砲が存在していたとは」
「如何にテロリストの潜伏先とはいえ廃工場相手に使うものじゃないでしょ。だから使わなかったんです」
入学時点でのことを思い出した十文字克人に答えるアーシュラ。
阿房宮に対峙するように現れる巨大な白い空中船。飛行船という名称は少々違うので、空中船と称したが―――ともあれ、そのエハングウェンの
それは一高の美人教師。かなりのファンがいたりして、さらに言えば公明正大な裁きをすることでも知られて―――
一時間前には実娘の口から
『古代ブリテン島伝説の騎士王』と証言がなされた御仁であったのだが……。
そんな
((((なんでバニーガール姿なんだ…?))))
男女問わずとことん思い悩まざるを得ない衣装で舳先に立っていたのだった……。