魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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もうダメだ。SEEDFREEDOMをみたい気持ちが高くなる!! 

フルメタファミリーは出るわ。色々と罪深き時代だぜ……。


第129話『雷竜の死』

 

 

 

テュフォン・エフェメロスのチカラを肉体活性に使う劉道士。しかし―――。

 

一撃一撃に特大の魔力を叩き込み剣を振るうアーシュラに押され気味になる劉雲徳。

戦略級魔法師といえども『戦闘魔法師』としては、そこまで強くない―――わけはない。

 

しかし……。アーシュラという特級のルーンソルジャーを相手にするにはどうしても劣る。

 

「このような老骨を相手にしていていいのかね? 君にふさわしい相手はいくらでもいると思うが」

 

「さぁね。ただ一つ分かることがある。劉 雲徳―――あなたから眼を離し他をと思えばあなたは戦略級魔法(霹靂塔)―――『テュフォンの雷霆』をいくらでも放つ。それはこの場において最悪の結果を産むわ―――だから、『私』はあなたから眼を離さない!!」

 

「…… 中々の慧眼。そして君のような若く美しい姫騎士から熱い視線で見られて老体に熱が入るかのようだ…」

 

自分が50歳ほど若ければ、この場の少年たちと同じく彼女を見ていたかもしれない。だが、どちらかといえばいまは孫を見るような感じだ。リーレイと同じく……。

 

そしてただ1人の孫娘であるリーレイの為にも劉は―――。

 

命を捨てる決意をしているのであった。

 

だが、それは命を燃やし尽くすほどの戦いの中でしか成し得ないもの。

 

(そのためにも、この戦いはあるのだよ! 竜の娘よ!!!)

 

しかし、それよりも前に……ただ1人の戦士として巨大な闘争に挑みたかったのだ。

 

かつての時代……神秘が終焉を迎えようとしていた20世紀最後期から21世紀初期の時代には、その最後を飾る記念のように多くの魔導の闘争があったと記録されている。

 

しかし、そこから100年を飾ろうとしている22世紀をもはや迎えようとしている時代にも『神秘は生き残ってしまった』。それはどういうことなのか未だに分からない。

 

だが、編まれたものが(ほど)けるはずの世界において再び『何か』が編まれた。それが神秘を存続させる根源。

それは遺伝子操作という二重螺旋の構造を弄った存在をセカイに生み出したがゆえに作られた免疫機構か、それとも早々と与えられた『運命』なのか。

 

プチ・ケラウノス(汝、空を裂く雷霆)!」

 

答えが出ない問いに懊悩することもない劉は死力を尽くす。

3つもの巨大な式が空間に投射されて、巨大な雷鳴が、落雷、電圧がアーシュラを焼き尽くさんと全てのエネルギーを吐き出す。

 

離れているとはいえ、達也たちにもその強烈な圧は感じられる。

 

しかし、彼女はそれを無為に帰した上で劉雲徳を袈裟に切り裂いた。

 

分厚い中華鎧。恐らく大亜軍ないしその前身である中共人民解放軍で導入されていたタクティカルスーツごと切り裂いていたのだ。

 

「アーシュラは劉道士を倒す。それならば俺がやるべきなのは!」

 

「倭国の大将軍殿を纏っているな」

 

回復に徹していた弘真が前線にやってきたことで美周郎の警戒が少しだけ上がる。

 

黒鉄で出来た巨大な軍配を手にした男を前にして孫呉の大提督も応じる姿勢。ここまでの戦いでアーチャーを相手に理解した事実。

この相手には弾除けぐらいしか出来そうにない。

 

明らかに手抜きされた上で応戦されたのだから…。

 

そんなコウマ・クドウ・シールズの眼前に大刀が突き立っていた。いつの間にかアーシュラの方から放られたそれを手にして、心底嬉しそうな様子でコウマは周瑜=アーチャーに挑みかかる。

 

接近戦では分が悪いのか、それでもサーヴァントの超抜能力ゆえかどこからともなくアーチャーは中華刀を取り出して撃ち合う。

 

しかしメインが弓なだけに頼る武器が弓だ。数合も撃ち合うと距離を取るアーチャー……地上ではなく空中を行く。見えぬ足場を使ってコウマを弓で襲う。

 

しかし、コウマもまたその鎧の機構か魔法を用いて相手を追いすがる。

 

「強いッ!!!」

「俺が追ってきた相手は! 隣を歩きたかった姫騎士は!!俺と歩幅を合わせてくれる優しさを持っていたが―――」

 

風と炎を合わせて斬撃を飛ばすコウマの飛翔斬撃は、絶え間ない運動能力の限りを持ってアーチャーを襲う。

 

「―――俺は彼女について行ける脚力(チカラ)が欲しかったんだよ!!! 対等であり、そして頼られたいがために!!」

 

そして、その大刀が黒色ながらも星々のきらめき……銀河の輝きのようなものを宿したままに振り抜く。

 

夜色の飛翔斬撃。銀色の輝きを含んだそれがアーチャーの矢を吹きちらしながら届いていく。

 

その攻撃はアーチャーに全力の対応を余儀なくさせる。

 

「ちっ! 厄介だな!!」

「宝具を出せ。孫呉の大将軍……遊びは終わりだ」

「申し訳ないが、ここでは出せそうにないな。そして―――キミはまだまだ若輩の将だ。珠玉の将を侮り過ぎだよ」

 

言うが速く周瑜は虚空から巨大な鎖……現代では見ない昔の船を停めるアンカー()を下ろすためのサイズのものが出てきたのだ。

 

幾条にも出てきた鎖はその巨大な質量と長さを蛇のような紐状生物よろしくうねらせてきた。

 

その不規則な動きに―――

 

(惑わされるかよっ!!)

 

動体を眼だけで捉えていてはいずれ捕まる。見ることに長けた『エミヤ』に師事して、それだけの訓練をしてきたのだ。

 

何より……。

 

(惚れた女の前で強敵に挑める!!カッコつけてぇ!! カッコいいところを見せたいんだよ!!)

 

その心こそがクドウ・コウマをこの死闘に挑ませていた。そして―――。

 

「ぬっ!!」

「シバタツヤ!?」

「アンタならば『足場』を失わせても飛べるだろう! 周瑜を自由にはさせない!!」

「小賢しい真似を」

 

言いながらも周瑜を害することが出来る宝具持ちが―――『2人』では、そうするしかないのだ。

 

「ぬんっ!!!」

「太史慈か甘寧のような男だ。斧と鉄球か!」

 

その言葉通りクドウ・コウマと同じく前に出た十文字克人は、太極図を刻んだ陰陽の得物を以て周瑜との戦いを演じる。

 

克人の魔法……守護を主としたものとは違っているが身を守りながらその得物で叩き伏せることを狙ったものだ。

 

同時にフィジカルエンチャントというものが、ここまで重要になるとは思っていなかった。

 

「うおおおおお!!!!」

 

乱雑な技も何もないただの暴虐を敢行する克人を大陸式の長槍で迎撃する周瑜。暴虐の間隙を突こうとする前に、クドウ・コウマが隙間を埋めるように戦う。

 

連携というほど鮮やかなものではないが、それは周瑜を唸らせた。遊ばれているのは変わらないが、それでもその見事な連携の間にも……状況は動く。

 

アーシュラが遂に劉道士の腕を切り飛ばしたのだ。

 

 

「私のサーヴァントインフルエンサーとしてのキャリアの第一歩に貴様らを倒してくれようぞ!!!」

 

「ナメるなよ!!! 旧時代の義賊崩れが!」

 

「その旧時代と定義した『時間』(とき)の凄まじさを知らぬものがよくも囀る!」

 

そんなものはとっくにご存知だ。

後輩から

先生から

そして―――自分を慕ってくれた年下の女剣士の凄まじき成長から。

 

神と魔と妖、そして人の世界が未分であったころのチカラを見てきたのだから。

 

鉄鞭は硬軟両方の特性を持っているらしく、近距離・中距離どちらにも対応できる。

 

そもそも鞭というのはどんな不心得者が使ったとしても音速を超えた攻撃が出来る得物なのだ。

 

そんな武器を達人以上の武芸者が振るえば、自ずと―――。

 

「きゃあああ!!!」

 

惨劇は広がる。十七夜が全身を叩かれてふっ飛ばされるも―――起き上がって槍を向けるぐらいにはまだまだ元気なようだ。

 

「このっ!!」

 

「俄仕立ての二刀流で私に勝てるものか」

 

次いでかかったのは巨大なクレイモア。妖精騎士ブリトマートがアーシュラに贈った剣がいつの間にか二つに分かたれたものを手にエリカは襲いかかるが、軟鞭の効果範囲がエリカを接近させない。

 

遠くから真由美たちがサポートとして障壁や水による防御鎧などを展開してくれているというのに、それが納戸程度の役にも立たない現実。

 

しかし、打ち据えられていく度にそれでも呼吸を乱していけば―――。

 

「!!!」

「接近させてもらったぞ!!!」

 

遂に軟鞭を引き戻す暇の間に、摩利が呼延灼へと接近できた。

 

「だからなんだというのですか!!」

「負けるものかぁあ!!!」

 

壬生があそこまでがんばったというのに、自分が痛いだの何だので怯むわけにはいかない。

 

硬鞭による打撃の一撃一撃。躱し損なえば、受け損なえば無残な結果が待っていそうな恐怖の中でも渡辺摩利は炎を吹き上げる剣を手に呼延灼に挑みかかる。

 

「まだまだぁっ!!!」

「ッ!!」

 

前で圧を掛け続ける摩利。その背後を狙うは愛梨。

 

武の立ち会いとしては確実に礼を失したものだが、サーヴァント相手にそのようなものは無用であろう。

 

簡単に空を飛ばさせないようにと真由美のドライアイス弾の待機が呼延灼の頭上を抑えている。

 

遠くからの支援のおかげで前だけを見据えて戦えていることに感謝あるのみ。

 

そんな遠くからある種、戦場を俯瞰で見ていた後方支援組の中でも一部は状況が『ゆるい』ことに少々、疑念を覚えていた。

 

(ここに入り込んだ時点で、この展開は分かっていた。こちらとしてもあちらとしても―――ここをド派手に壊しまくるような戦闘はご法度だとは)

 

別にこの模造阿房宮に利用価値を見ているわけではない。ただこれが空中分解するようなことがあれば、今でも横浜で火事場泥棒をしている連中に渡る危険性はある。

 

かつて冬木市でロード・エルメロイの魔力炉心を奪い取った魔術家のような所業もあり得る。

 

つまり……先程から停止ボタンを探しているのだが、どうにも見つからない。

 

「やはり劉雲徳こそがこの神殿の神官……彼を倒さない限り、彼に停止をさせない限りこの阿房宮が止まることはない」

 

それは劉道士の殺害すらも視野に入れての話であった。

 

魔術基盤への『侵入』で探った結果を話した立華に、後方支援組(この中)では一番理解が早い沓子が疑問を呈する。

 

「じゃが、劉大師はどう考えてもアーシュラに勝てん! 自殺も同然じゃ!!」

 

もしかしたら沓子にもあれぐらいの祖父母がいるからこその悲痛な発言かもしれないが、それを抜きにして事実のみを抜き出すに、そのとおりであった。

 

確かに震天将軍という異名を持つに足る魔法師ではある。

 

ある意味、この中でマトモに剣を合わせられそうなものは三人がいいところだろう。一合だけでズンバラリンというのが大半。

 

「まるで雷雲を纏った神様か竜のようです……けどアーシュラさんに比べれば大きさが足りてません」

 

眼鏡を外し、裸眼で彼らの奥底にあるもの(中身)を見ている美月。球のような汗をかいて明らかに恐怖している彼女を労るのは、吉田幹比古である。

 

その言葉通りである。

 

「どうするの藤丸さん? 摩利たちも弘―――十文字君たちもそこまで保たないわよ」

 

魔銀の槍を介してドライアイスの弾丸を精製している七草真由美の言葉通り全員がいっぱいいっぱいだ。

 

ならば―――。

 

(ごめんなさい士郎さん、アルトリアさん)

 

自分のサーヴァントに最大級のバフを掛ける。それはすなわち―――。

 

人理守護・星の守護のための剣を、殺人に向かわせるという所業につなげるからだ。

 

誤らせたのは自分(立華)

謝るべき対象は彼女の両親。

 

そして、コードキャストを介して放たれたアーシュラに対する強化が、彼女を殺人機械へと変えていく。

 

 

「ぬっ!!ぬぅううう!!!」

 

まず最初の変化は劉道士の腕が切り飛ばされたところからだ。

 

盛大なまでの出血を己の雷霆で焼くことで防ぐも、その間にもアーシュラの斬撃は苛烈を極める。

 

隻腕では防ぎきれるものではないことを悟って雷霆で義手を作ろうとするもそれを許さないように剣の舞踊はテンポとスピードを上げて、劉雲徳の全てを切り刻む。

 

まるで嵐に巻き上げられた板のように何も出来ぬままに乱流に切り刻まれていくのだ。

 

(これがイグジストライナー……エミヤ・アーシュラか!!!!)

 

この時代に、これだけの戦士と戦えたことに満足しながら―――『最後の仕掛け』を施して、大刀の尖すぎる突き……。

 

巨獣、巨竜、巨人、巨神……あらゆるものを倒しそうな恐ろしい突きが高速、否―――神速でやってくる。

 

劉の命脈を断つべく突き立てられたそれは心臓ではなくその脇の肺あたりを貫きながら壁まで持っていったのだ。

 

磔刑も同然に劉は止まり、その後ろの壁にはクモの巣のような亀裂が劉を中心にして広がっていた。

 

完全に意識を戦闘だけに向けている彼女―――涙を流している姿を正面から見て、劉は不愉快げに内心でだけ呟く。

 

(そうしておれば、歳相応の少女だろうに……)

 

抵抗するために抜け出すために魔術師は動かない。 それを見た瞬間から苦悩に満ちた顔が、一層、その色を濃くしていく。

 

(ああ、そうか……)

 

自分は最低な行為を彼女に強いたのだ。

彼女は……アーシュラちゃんは、ケン・クドウという爺の顔を重ねていたのだ。

 

それを見て、それ以上に魔術師は動けなかった。 今の斬撃は、どうしようもないほどの止めとなった。

 

まったく───呆れるほど出鱈目な一撃だったが、同時にこれ以上ないほどの一撃でもあったのだ。あれを受けたのでは、武人としても敗北した。

 

そして孫を持つ爺としても負けてしまった……。

 

心身ともに敗れたあとには……もはや出来ることは一つだった。

 

(麗蕾……達者でな)

 

剣が引き抜かれて噴水のように血が出てきた。これでいいのだ。涙を流す姫騎士の顔にそれがかかる。

 

あとを継ぐものあれば―――それは、負けではない。

 

そうして、一人の少女へと全てを向けた儀式は終結へと向かう。

 

 

 

 

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